エミリアの正体を教えられたのは、私が騎士団に入団してからだった。私はジョシュアの父であるレオンから、エミリアは人間ではなく自分の遺伝子を元に作られた
あの時、エミリアとの思い出が全て砕け散ってしまった。今まで妹だと思って可愛がっていたあの子が、人間ではなかった。しかも名乗っている名前は、本当ならばお母様から生まれる筈だった子供の名前だった。
まるでエミリアが、その赤子の役割を奪い取って生まれてきたような気がして、私はあの子を嫌うようになった。
あの子は自分の正体を知らない。だから、私がどれだけ冷たくしてもずっと「姉さん」と呼び続けた。
どうせあの子の心臓には魔剣の破片が埋め込まれている。せいぜい血を魔剣に吸われて、用済みになってから死ねばいいと思っていたことがあった。でも、彼女を罵倒したり、そんなことを思う度に、私はどうしても幼少の頃に一緒に遊んでいたことを思い出してしまう。
計画を知っていた両親に冷たくされながら、1人で子供部屋で私の帰りを待っていたあの子の顔を思い出すと、憎たらしいという感情が消え失せてしまう。
あの子が消えればいいの? それとも、あの子と姉妹として生きていけばいいの?
エミリアをナバウレアまで連れ去って来るまで、ずっと考えていたわ。
そろそろジョシュアの儀式が始まる。儀式が始まれば彼女の心臓から魔剣の破片は抜き取られ、エミリアは死ぬ。
いいじゃないの。それで憎たらしい
でも、私はあの子と姉妹として生きてきた・・・・・・。ジョシュアは私よりも遥かに弱いから、ハルバードを彼に向かって振るえば簡単に殺せる。そうすれば彼女を助け出せる。
どうすればいいの?
彼女は
今まで彼女が憎たらしかったからジョシュアの計画に手を貸していた。でも、儀式が始まるのが近くなってくるにつれて、私は小さい頃の思い出を次々に思い出してしまう。
どうすればいいか分からない。
「エリスッ!」
「!!」
私は右手を額から離すと、氷を纏ったハルバードを構えた。私の目の前には、刀と小太刀を構えた少年が立っている。
彼を迎え撃たなければならない。
氷漬けになったハルバードの柄を握り、先端部を力也くんに向ける。
彼はエミリアをナバウレアから連れ去った少年だった。フランシスカを退けてエミリアと一緒にオルトバルカ王国まで逃げ、モリガンという傭兵ギルドを結成している。
彼にとって、きっとエミリアは大切な仲間なのね。彼ならば、エミリアが人間ではなくても大切にしてくれるかもしれないわ。
「さあ、エリス。時間を稼げ。余所者を殺せ」
彼を殺さないと。
彼を殺せば、あの偽物の妹とお別れできる。
私は刀を構えて突進してくる少年に向かって、ハルバードの先端部を突き出した。力也くんはその先端部を小太刀で弾くと、ハルバードを受け流しながら横に回り込んで来る。
「エミリアが憎かったのか!?」
彼が叫びながら振り上げた刀を躱し、私は後ろにジャンプして距離を取ってから再び氷のハルバードを突き出す。力也くんはその先端部を横に躱すと、前傾姿勢になりながら刀を構えて接近してきたわ。そのまま接近するつもりなのかしら?
私はハルバードを回転させると、凍り付いた柄を接近してくる彼に叩き付けた。力也くんは何とか刀でガードしたみたいだけど、そのまま後ろに吹っ飛ばされてしまう。
「ええ、憎かったわ!」
「くっ・・・・・・! だが、一緒に遊んでたんだろう!? エミリアの姉として、一緒に過ごして来たんだろうがッ! 家族を捨てるのか!?」
「黙りなさいッ! あの子は・・・・・・!!」
凍り付いたハルバードが放つ冷気をまき散らしながら、先端部を彼に向けて走り始める。
半年しか一緒にいなかったくせに、何が分かるのよ!?
私は何年も彼女と一緒にいたわ。でも、今まで妹だと思っていたのは私の遺伝子を元に作られた偽物の妹だったのよ!?
「じゃあ、なんであんな悲しい顔をしてたんだよ!?」
「!」
彼に向かって突き出そうとしていたハルバードの先端が、ぴたりと止まった。
悲しそうな顔ですって?
何を言ってるのよ。もう少しであの偽物の妹が死ぬのよ?
そう思いながら再びハルバードを突き出そうとした瞬間、いきなりあの子と遊んでいた幼少期の光景がフラッシュバックした。玩具の入っている箱の中からお気に入りの人形を持って来る彼女と、剣術の訓練から帰ったばかりの私が笑い合っている。
『お姉ちゃん』
幻聴が聞こえてきた瞬間、思わず私はハルバードから右手を離し、再び額を押さえてしまった。目の前で刀を構えている彼は、私を攻撃せずにそのまま私を見つめている。
「本当にエミリアを嫌ってるなら、あんな悲しい顔はしないだろ!? 本当はエミリアとまた一緒にいたいって思ってるんじゃないのか!?」
「そんなわけ・・・・・・! あ、あの子は私の――――」
「家族だろうがッ!」
家族・・・・・・?
額から右手を静かに離し、私を睨みつけている彼の顔を見つめる。
「小さい頃の思い出はあるんだろ!?」
「思い出・・・・・・」
小さい頃は、彼女と一緒にいる時間が一番楽しかった。訓練でやったことを離し始めると、エミリアはいつも楽しそうに聞いてくれていた。そして私が話を終えると、今度はエミリアが1人で読んでいた絵本の話をしてくれる。彼女にその絵本を読んでもらったこともあった。
彼女の正体を教えられて思い出は砕かれてしまったけど、まだエミリアと一緒にいた思い出はある。
やっぱり、彼女は――――私の妹だった。
「私――――」
「――――お疲れさま、エリス」
私が喋ろうとした瞬間、ジョシュアのふざけた声が私の声を切り裂いた。彼の声を聴いた瞬間、足元に広がっていた巨大な魔法陣が紫色の光を放ち始める。
はっとしてジョシュアの方を振り向くと、ジョシュアはエミリアの胸に手を近づけているところだったわ。しかもジョシュアの右手には、この足元の魔法陣と同じ模様が浮かび上がっていた。
「では、魔剣の破片をもらおうか」
「てめえッ!」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
破片を彼女から取り出したら、エミリアが死んでしまう!
私と力也くんは叫びながら走り出した。ジョシュアに魔剣を渡すわけにはいかないし、エミリアを死なせるわけにはいかない!
彼女は、私の妹なんだから!
必死に走りながらハルバードを突き出すけど、まだジョシュアを貫くことは出来ない。隣を絶叫しながら走る力也くんもあの飛び道具を取り出してジョシュアを狙うけど、間違いなく間に合わない。
そんな。エミリアが死んでしまう。
謝らないといけないのに。彼女に謝って、彼女とまた姉妹として一緒に生きたかったのに。
「――――姉さん」
エミリアは虚ろな目で私の顔を見つめると、私の事を姉さんと呼んだ。
そして、彼女の声が消えた瞬間、紫色の模様が浮き上がったジョシュアの右腕が、エミリアの胸を貫いた。
「―――――嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「ハッハッハッハッハッハッ! これが最後の破片かぁ!」
エミリアの胸から手を引き抜いたジョシュアの手にあったのは、彼女の心臓の破片がこびりついた金属片だった。まるで鉄屑のようなその破片は、エミリアの血で赤黒く染まっていなければ、がらくたの中から出てきそうなただの破片だ。
あれが、彼女の心臓の中に埋め込まれていた魔剣の破片らしい。心臓からその破片を引き抜かれた彼女は、目を見開いて血涙を流しながら動かなくなっている。
「エミ・・・・・・リ・・・ア・・・・・・!?」
ジョシュアに向けていたアサルトライフルを地面に落としてしまった俺は、突っ走るのを止めて棒立ちになった。
死んだのか・・・・・・? エミリアが死んだ・・・・・・?
嘘だろう? まだ生きている筈だ。だってエミリアは・・・・・・俺と一緒に旅をしてきた仲間なんだぞ・・・・・・? 転生者やレリエルと一緒に戦った戦友なんだぞ・・・・・・!?
本当に死んでしまったのか?
俺は信じられず、目を見開きながらエミリアの顔を見つめていた。もしエミリアが死んでしまったと認めてしまったら、俺は壊れてしまうかもしれない。
破片からエミリアの心臓の破片を摘み取って投げ捨てたジョシュアは、狂喜しながら腰の鞘から魔剣を引き抜き、最後の破片を先端部にはめ込む。すると先端部に付着していたエミリアの血がチンクエディアを長くしたような形状の刀身全体に広がり始め、脈動を始めた。
魔剣が復活したんだ。
かつてレリエルの心臓を貫いた大天使の剣が、伝説の吸血鬼が刻みつけた呪いを抱いて復活してしまった。
「悲しむなよ、2人ともぉ。エリスの遺伝子を使えばエミリアをまた生産できるんだからさ。いくらでも作れるんだぜ? なにせ、
「ジョシュアぁ・・・・・・・・・!!」
よくもエミリアを・・・・・・!
しかも、エミリアをいくらでも生産できるだと・・・・・・!? ふざけるな。彼女は俺たちの仲間だ。エリスの遺伝子から作られていたとしても、彼女は人間なんだ!
「このクソ野郎がぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
絶対に許さん! このクソ野郎を穴だらけにしてやる!
俺はジョシュアの野郎を睨みつけてSaritch308ARのトリガーを引きながら、ナバウレアで最初に戦った時に殺しておけばよかったと後悔していた。あの時、ジョシュアは俺と戦って敗北し、自分でルールを破って魔術で攻撃してきた。俺はジョシュアに小型の散弾をぶっ放して傷を負わせるだけで済ませたんだが、あの時に殺しておけば、エミリアの心臓から魔剣を取り出すというジョシュアの計画はとっくに頓挫していた筈だ!
甘かったんだ・・・・・・! エミリアは、俺のせいで・・・・・・! 俺の甘さのせいで・・・・・・!!
絶叫しながらジョシュアに7.62mm弾をフルオート射撃で次々に叩き込む。だけど、ジョシュアは脈動する魔剣を掲げたまま突っ立っていた。
すると、ジョシュアを穴だらけにする筈だった7.62mm弾の群れが、ジョシュアの肉体を食い破る前にいきなり何かに弾かれたんだ。まるで戦車に銃弾を弾かれているように、ジョシュアの目の前にある何かに弾丸たちが砕かれ、跳弾していく。
「すごい・・・・・・! いいぞ! これが魔剣の力か! これがあれば、世界を支配できるぞ・・・・・・!」
「くそ、弾切れだ・・・・・・!」
空になったマガジンを取り外し、新しいマガジンを装着してからコッキングレバーを引いた俺は、再びフルオート射撃で攻撃を続けた。でも、やっぱり弾丸は見えない何かに当たって跳弾し、地面に無意味な風穴を開けるだけだ。
「そんな・・・・・・エミリア・・・・・・!」
「おい、エリス!」
エミリアを殺されてかなりショックを受けてしまったんだろう。銃撃を続ける俺の隣で呆然としていたエリスが、動かなくなってしまったエミリアを見つめながらいきなり膝をついてしまう。
「この魔剣があれば最強だ。――――そうだ、もうエリスも用済みだねぇ」
「!」
「エリス!」
膝をついて涙を流しているエリスを嘲笑いながら、ジョシュアは漆黒の魔剣を振り上げた。すると刀身がいきなり血のように紅いオーラを放出し始め、刀身は瞬く間にそのオーラに包み込まれてしまう。
そして、ジョシュアはその真っ赤に変色した魔剣を、膝をついているエリスに向かって振り下ろし、真紅の衝撃波を放った。まるで戦車砲のような爆音を轟かせながら、エリスに向かって巨大な真紅の衝撃波が駆け抜けて行く。
俺はアサルトライフルを投げ捨てると、彼女に向かって走り出した。レベルとステータスが高かったおかげで辛うじて衝撃波が到達する前にエリスの傍らに辿り着く事が出来た俺は、彼女の体を掴み、一緒に衝撃波の目の前から飛び退いた。
ジョシュアが放った衝撃波は置き去りにされたエリスのハルバードと冷気を飲み込み、消滅させてから後方にあった防壁を突き破り、死体だらけになった草原へと突き抜けていった。
なんて威力だ・・・・・・! 直撃したら、転生者でも消滅しちまうぞ!?
「あれは・・・・・・!?」
その時、ジョシュアの衝撃波が突き破っていった防壁の向こう側に転がっていた騎士の死体が、いきなり起き上がったのが見えた。俺か外にいる信也たちが蹂躙した騎士だろう。死んだふりをしていたのかと思ったけど、その死体の腹は抉り取られていて、肉や肋骨が見えている。あんな傷を負えば間違いなく即死しているだろう。死んだふりをしていられる筈がなかった。
起き上がったのはその騎士だけではなかった。その傍らでズタズタにされていた死体や、首が千切れ飛んだ死体が次々に起き上がり、地面に転がっている剣や槍を拾い上げると、呻き声をあげながら草原をさまよい始めたんだ。
まるで、騎士の格好をしたゾンビの群れだ。
まさか、魔剣の影響なのか・・・・・・?
「見ていろ、余所者。僕はこの魔剣で世界を支配する。・・・・・・そのあとに、僕に跪いた人間共の前でお前を処刑してやる。ハッハッハッハッハッ!!」
「待て、ジョシュア!」
あのクソ野郎が魔剣を掲げた瞬間、背中に真っ赤な翼が出現した。吸血鬼たちが空を飛ぶために背中から生やしていた翼に形状が似ているような気がする。魔剣はレリエルの血を吸っているから、レリエルの影響なのかもしれない。
ジョシュアは背中から血のように紅い蝙蝠の翼を生やすと、高笑いしながら空へと舞い上がった。脈動を繰り返す禍々しい剣を持って紅い翼で空を舞うジョシュアは、まるで魔王のようだった。
とにかく、駐屯地から脱出しなければならない。このままではあのゾンビの群れに殺されてしまう。
俺はちらりと縛り付けられたままのエミリアを見た。どうやら彼女はゾンビになっていないようだ。
縛り付けられているエミリアの亡骸に駆け寄った俺は、鞘の中から小太刀を引き抜き、彼女の両手と両足を縛っていた鎖に思い切り漆黒の刀身を叩き付けた。漆黒の刀身が食い込んだ瞬間、金属音と火花が撒き散らされ、彼女の両腕を縛り付けていた鎖が両断される。俺はそのまま両足を縛り付けている鎖を両断してエミリアを解放すると、胸に大きな穴をあけられて絶命しているエミリアを思い切り抱き締めた。
すまない、エミリア・・・・・・。あの時、俺がジョシュアに止めを刺していれば・・・・・・!!
彼女の冷たい体からは血の臭いがしたけど、まだ甘い匂いが残っていた。俺はその甘い匂いを刻みつけてからエミリアの亡骸から顔を離すと、そっと彼女の流した血涙を拭き取り、瞼を閉じさせた。
「帰ろうぜ、エミリア・・・・・・。みんな待ってるからさ・・・・・・」
もしかしたら返事をしてくれるかもしれないと思ったけど、やっぱり彼女は何も言わなかった。俺は端末を操作して背中のアンチマテリアルライフルの装備を解除してから彼女を背負うと、突入してきた時に開けた防壁の大穴を目指して歩き出す。
「ごめんなさい、エミリア・・・・・・。ごめんなさい・・・・・・! お姉ちゃんを許して・・・・・・!」
「・・・・・・おい、エリス。逃げるぞ」
膝をついてエミリアに謝り続けるエリスを見下ろしながら俺は言った。でも、エリスは立ち上がろうとしない。
「―――何やってんだ? 早くしないと、あのゾンビ共にやられるぞ」
「・・・・・・いいのよ」
「あ?」
「死んでも・・・・・・いいの・・・・・・。私が計画に手を貸したから、エミリアは・・・・・・」
自分がジョシュアの計画に手を貸してしまったせいでエミリアが死んでしまったから、ここで死にたいって事なのか。
「だから、お願い。・・・・・・私を置いて行って」
「・・・・・・ふざけんじゃねえ。お前も来るんだ」
俺は膝をついているエリスに右手を伸ばした。でも、俺の右手が彼女の肩に触れた瞬間、いきなりエリスが手を振り上げて俺の腕を振り払う。
背負っていたエミリアを一旦静かに下ろした俺は、もう一度エリスに向かって手を伸ばした。彼女はまた俺の手を振り払おうとしてきたけど、すぐにその手を押さえつけ、エリスを立たせる。
「離してよ! お願い、死なせて!」
「ふざけるなッ!」
俺が絶叫した直後、ゾンビ共の呻き声が入り込んで来る駐屯地の庭に、平手打ちの音が響き渡った。俺は振り払った右手で頬に平手打ちを喰らったエリスの胸ぐらを掴むと、涙を流している彼女に向かって叫んだ。
「エミリアはお前に生きてほしいと思ってるに決まってる!」
「何で・・・・・・!? 彼女と半年しか一緒にいなかったくせに、何が分かるの!?」
「俺にも弟がいるんだよ! いいか、エリス! もし俺が弟のせいで死んでそいつを残す羽目になったとしてもなぁ、謝罪するために死んでほしいとは全く思わない! 償いたいんだったら生きてほしいって思うんだよ! ここで死ぬのはただの自己満足にしかならないんだぞ!?」
確かに俺はエミリアの家族ではないから分からない。余計なお世話なのかもしれない。でも、俺にも弟がいる。もしあいつのせいで俺が死んだとしても、俺は信也に生きてほしいと思うだろう。
「――――それに、エミリアは最後までお前のことを姉さんって呼んでたぞ」
「エミリア・・・・・・・・・」
ジョシュアに魔剣の破片を抜き取られる直前、エミリアは最後に自分を助けようとするエリスに向かって姉さんと言っていた。
あれだけ冷たくされたというのに、彼女はまだエリスを姉だと言ったんだ。いつかまた昔の優しい姉に戻ってくれると思っていたに違いない。だから、どれだけ冷たくされ、自分が人間ではないと言われても、彼女はエリスの事を姉さんと呼んだんだ。
「きっと彼女は、お前に死んでほしいとは思ってないと思うぜ」
「うぅ・・・・・・っ! エミリア・・・・・・・・・!」
「だから・・・・・・行こうぜ、エリス。――――生きよう」
再びエミリアの亡骸を背負った俺は、嗚咽するエリスに右手を伸ばした。今度は振り払わずに俺の手を握ってくれたエリスは、涙を拭い去りながら頷く。
俺はエリスの手を引くと、エミリアの亡骸を背負ったまま防壁の大穴に向かって走り出した。
ジョシュアをぶっ殺すまで、死ぬわけにはいかなかった。