うさぎと歯車   作:ななしのC

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FGOとなろうの更新で遅れました。
これも全部人理焼却ってやつの仕業なんだ。
うわああああ、礼装こねえええええダヴィンチイイイイイ


再開するうさぎ

 木組みの家が建ち並ぶ石畳の街。

石畳を鳴らすブーツの軽やかな音をBGMにココアは、これから三年間を過ごすこの街の景色に目を奪われる。

 

「ここが、こうでー…あっちがそっちで…うーん?まぁいいか!」

 

 時節、地図を見ながら道を間違えそうになるココアに隣にいるユイは、苦笑しながら現在地に指を刺してルートを示していく。

 

「こらこら、知らない街で迷子になるぞー」

 

「そんなことないよ。大丈夫、大丈夫!!」

 

 根拠のない自信を主張しながら胸を張るココア。

 彼女なら自然と正しい目的地に寄り道しながら辿り着きそうだなと心の中で呟いたユイは、

 

「さて、と…そんなココアに朗報だ。この道をまっすぐ行って突き当たりを曲がればココアの目的地があるはずだ」

 

「ほら、やっぱり大丈夫だったでしょー」

 

「六回は、道に逸れそうになったのは触れないでおこう。それじゃ、ココア。いったんお別れだ」

 

「うん、ここまでありがとう。またね、ユイ君!」

 

 一度別れれば、次に会うときは主義主張の違いで敵となる世界にいた経験から"またね"という言葉は、彼の心に深く響いた。

 大きく手を振るココアと別れ、ほんの少し足取りの軽くなったユイは、肩にかけたボストンバックを背負い直し、裏路地に歩を進める。

 

「この街は、こんなところにもウサギがいるんだな…」

 

 葉っぱを咥えた、右目の十字傷が特徴の強面ウサギに見送られ、裏路地を抜けようとすると、陰から飛び出してきた少女とぶつかってしまう。

 小さな叫び声をあげて、尻餅をついた少女。

 ユイは、すぐさま彼女に手を差し出して、声をかける。

 

「大丈夫か。前を見ていないと危ないぞ?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 ウェーブの掛かった金髪にどこかお嬢様のような気品のある少女は、ユイの手を借りて立ち上がるとスカートを軽く払い、周囲を警戒するように見渡す。

 目の前の少女の見せる行動にユイは、不思議なものを見るかのように頭をかしげる。

 

「なにか慌てたみたいだけどどうかしたのか?」

 

「その、ウサギが苦手で追いかけられてたんです」

 

 少女は、周囲にウサギの姿がないことを確認するとホッと吐息を漏らして、軽く頭を下げ、裏路地の中を通り抜けていく。ユイの背後でまた出たという叫び声が聞こえてきたが、苦笑いをして目的地に向かって歩き出した。

 

「それにしても、街中にウサギが住み着いているなんて随分変わった街だ…といっても今までいた場所も大差ないか」

 

 ウサギの代わりに子月光が石畳をうろついていたチェコのプラハの街。

 軽く思い出に浸りながら歩を進めていると、目的地に辿り着く。

 二階建ての一軒家で、一階はガレージとして改装された元セーフハウス。

 エメリッヒからユイに提供された住居だ。

 

「っと鍵は…」

 

 ポケットからエメリッヒから預かっていた家の鍵を取り出したユイは、大型のシャッターの傍にある木製のドアに鍵を差し込み、ガレージの中へと入っていく。

 大型車一台は保管できそうな余裕のあるガレージ。

 

 

 そこには、一台のバイクがシートをかけられて保管されていた。

 シートの上には、エメリッヒのドット絵の描かれた封筒。

 

「ハル兄さんからのプレゼントってことか?バイク一台に一軒家ってやりすぎじゃないの…」

 

 無造作に封筒を手に取り、封を開けるとそこには、エメリッヒからユイ宛のメッセージカードとバイクのキー。

 

 メッセージカードには、バイクは大佐からのプレゼントだと書き込まれている。

 ユイは、随分と過保護な育て親に軽く呆れながら、バイクにかけられたシートを丁寧に剥がす。

 

「こいつは…」

 

 トライアンフ社のボンネビルT100。

 なにかと縁のあるスタンダートタイプのオートバイクが埃避けにかけられていたであろう、シートの中から姿を現した。

 キャンベルの枠なプレゼントに思わず、驚きに近い喜びをが湧き上がる。

 

「最初の育て親やおばさんも愛用してたモデル。まさか、またこいつと会えるなんてな」

 

 キャンベルからの贈り物を一通り堪能したユイは、二階へ続く階段をゆっくり上っていくと一通りの生活機能を備えた2LDKの部屋が彼を招き入れる。

 一人暮らしの男には広すぎる機能的な家。

 すでに必要な家電は運び込まれており、食材さえ購入すれば、すぐにでもこの街での生活が送れる状態である。

 

「さすがにこの家は、広すぎるなぁ…」

 

 僅かに生活跡の残った部屋を一部屋ずつ見て回った彼は、無意識に窓枠の向こうに広がる木組みの家が建ち並ぶ石畳の街の景色に手を伸ばす。

 何かを掴む事はなく、空を切る鉄の腕。

 半ば無意識で行った行動に苦笑いをしながら、軽く荷物を纏め終えるとボディバックだけを背負い戸締りの終えた二階を後にする。

 

 ガレージに戻った彼は、皮のジャケットのファスナーを閉めて、フルフェイスのヘルメットを片手にバイクを外へと持ち出した。

 

 軽くエンジンを吹かしながら、満足気に口を緩めると目的地である香風家へ向かってバイクを走らせる。

 

 風を斬るように石畳の街を疾走するバイク。

 心地よい春の日差しと風を全身に受けながら、走行しているとユイの想像していた時間よりも早く目的地に辿り着いた。

 

「ラビットハウス…ここがタカヒロさんの経営する喫茶店でいいのか?」

 

 店の隅にバイクを止めたユイは、店の外に吊り下げられたウサギの看板をマジマジと見つめる。店名になぞらえて作られたであろうシンプルでかわいらしさのある看板。

 

「まさか、うさぎだらけの喫茶店ってわけじゃないだろうな…」

 

 

 

 

 やや躊躇いがちに店の扉を開くと、木目調の落ち着きのある柔らかな店内が彼を向かい入れる。こぢんまりとしていてクラシカルな雰囲気のある店内。

 奥にあるバーカウンターには、コーヒー以外にもバータイム用のアルコールの類も置いてある。

 

『いらっしゃいませ』

 

 マジマジと店内に視線を向けていると、ピンクベージュ色のセミロングの髪によく似合うピンクの制服を纏った少女が駆け寄ってくる。

 つい先ほど別れたばかりの少女の姿にユイも思わず口をぽかんと開けてしまう。

 

「って、あれ?ユイ君?」

 

「あれ、ココア?なんでここに…?」

 

「ここが私の下宿先のラビットハウスだよ!」

 

「詳しいことを聞いてなかったから、さすがに驚いたな」

 

「私もユイ君がびっくりしたよ!とりあえずお好きなお席にお座りください」

 

 別れたときと同じように胸を張り、笑顔を振りまく少女に苦笑しながら、軽く手を振って問いかける。

 

「ココア、ここのマスターに用事があるんだけど呼んで来てもらえるかな?」

 

「ええっと…それなら、ちょっと待っててね!チノちゃーん!」

 

 小走りでカウンターに向かったココアは、彼女よりも背の低い薄水色のストレートロングヘアの少女の手を引いて帰ってきた。

 無理やり連れて来られたであろう少女もどこか困惑しているようだ。

 

「ユイ君、チノちゃん連れてきたよ!」

 

「ココアさん、無理やり引っ張ってこないでください」

 

 軽く一礼した後にココアに不満げな表情を見せる少女。

 彼女もココアと同じデザインで色違いの髪の色とそっくりな色をした制服を纏っている。彼女の頭に乗せている白い生き物は、アンゴラウサギだろうか。

 ユイは、ココアの連れてきた少女に思わず困惑しながら、

 

「マスターを呼んでほしかったんだけど…もしかして、世代交代?」

 

「私はチノです。ここのマスターの孫です。それでその、マスターは去年…」

 

 ユイの疑問にチノと呼ばれた少女がやや言い淀む様に答える。

 

「あー…ごめん、最初から名前を言えばよかったか。タカヒロさんは今在宅中してるかい?」

 

「父ですか。今部屋にいると思うので、呼んできますね。えっと、あなたのお名前は…?」

 

「ユイだ。アマミ・ユイといえば大丈夫だよ」

 

「分かりました。えっと、席についてお待ちください」

 

 ストレートロングの髪を揺らしながら、やや小走りで店の奥へ向かったチノ。

 その姿はまるで、小動物のようだ。

 

 

「チノちゃん連れてくればいいかなーって思ったんだけどダメだったかな?」

 

「次からは、ちゃんと説明して呼んであげな」

 

 ココアの行動に苦笑しながら、カウンターの席に着いたユイ。

 そんな彼を見ていた濃い紫色のツインテールの少女は、首を捻りながら声をかける。

 

「ココアと知り合いなんですか?」

 

 どこかぎこちない少女の口調に苦笑したユイは、

 

「無理に敬語使わなくていい。ココアとは、ついさっき知り合ったばかりだ」

 

「そうだよリゼちゃん!この街に来る電車の中でお友達になったんだよ」

 

 ユイの返事を付け足すように補足するココア。

 ひとりでに喋りだしたココアに思わず、リゼと共に苦笑する。

 

「随分仲がいいんだな」

 

「なんでだろうなー…ココアが親しみやすいからかもしれない」

 

「それには、同感だな。えっと、ユイでいいんだよな?私はリゼだ。よろしく」

 

 差し出された手を握り返したユイ。

 彼の手を握った瞬間、リゼは僅かに表情を変化させる。

 どこか生き生きとした表情にユイは、思わず握手した手を手放した。

 

「ユイ、もしかしてハンドガンとか握ったことないか?」

 

 リゼの問いかけに思わず、固まるユイ。

 その反応に満足したのかリゼはニコニコとしながら自分の趣味を語りだした。

 

 

 

 

 

「それでだ、やはりその女性の手には9mmの方がグリップが細くて握りやすいんだが、私としては、どうしても大きく感じてしまうんだ」

 

 自身の手を見せながら、悩みを打ち明けるリゼ。

 彼女には、ユイの手のクセが本物ではなくモデルガンでできた癖だと思われたようだ。内心ほっと溜息をつきながら、彼女の話についていくユイ。

 だが、彼の語る会話の内容はどうしても親の影響でズレてくる。

 

「オートマチックに拘るからだ。やはり、シングルアクションアーミーなんてどうだ?世界で一番高貴な銃だ」

 

「いや、しかしリロードがなぁ…」

 

「強固で頑丈、信頼性もある。なによりガンプレイも楽しめるぞ」

 

「なるほど…次に買うときは、リボルバーも考えてみようかな」

 

 

 

「ちょっと、リゼちゃんユイ君、私の話し聞いてた?」

 

 会話が弾みすぎた所為で、二人が自分の話を聞いていなかった事実に気がついたココアは、やや不満そうに頬を膨らませる。

 可愛らしい反応にリゼと共に誤っているとちょうどチノが店の奥から姿を見せた。

 

「ユイさん、えっと、父の部屋の方が都合がいいとのことなので部屋までご案内します」

 

「分かった。それじゃ二人ともまた後でな」

 

 ココアとリゼに軽く手を上げて、自分の荷物をつめたボディバックを背負いチノの後に続くユイ。階段を上がってすぐにの部屋の前にユイを案内したチノは、一礼してその場を離れる。

 

 

 

 ユイが軽くノックをすると、部屋の中から入室を促す声。

 最後にあっと時と然程代わりのない男の姿に苦笑したユイは、軽く一礼した後にタカヒロの部屋に入室する。

 

「お久しぶりですタカヒロさん」

 

 90年代半ばまでキャンベルの指揮していた時代のFOXHOUNDに在籍していた男の姿がそこにはあった。




すまない…千夜ちゃんだけタイミングが掴めなくて出せなかった。
オルレアンで竜を倒して詫びさせてもらおう。これしか能がない…すまない。

あ、最後は、模造しました。

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