Fate/if 運命の選択   作:導く眼鏡

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新鮮なワカメをGETしました。
ワカメといえば、味噌汁の具材やサラダの一品等様々な料理にワカメが入っていますね。
色々な料理に使えるワカメは体にもよく、立派な海藻だなと思いました。
何が言いたいかというと、健康の為にもワカメを食べましょう。



第12章:力を持つ意味

「がっ……!?」

「どうした少年、そんな太刀筋では当たらんぞ!」

 

衛宮邸の道場で、二人の人物が立ち会っている。

お互いに竹刀を持ち、片方が攻めてもう片方がそれを捌く形で指南している形だ。

攻めているのは、ランサーのマスターである衛宮士郎。

攻撃を捌いているのは、鎧を解除して髪を降ろしている侍、セイバー。

士郎がセイバーに一太刀当てようと必死に攻撃をするも、セイバーは全く息を切らさずに攻撃を避け切り、生じた隙に対して竹刀で反撃する。

結果、士郎が攻めているにも関わらず士郎が一方的に攻撃を喰らっているという現在の状況になってしまっていた。

 

「はぁ……はぁ……」

「どうする、少年? フラついているがまだ続けるのか?」

「当然、続ける……根をあげるにはまだ早い!」

「そんな振り方では、避けられた後の反撃に対処出来ないぞ!」

「ぐぁっ!?」

 

士郎がセイバーに斬りかかるが、あっさりと避けられて反撃を叩き込まれる。

ちなみに余談ではあるが、セイバーは士郎の攻撃を全て文字通り避けている。

竹刀は反撃時にしか使っておらず、攻撃を受け流すという動作すら行わずに全ての太刀筋を避けているのだ。

 

そして、繰り返されるそのやりとりを道場の隅に座って見物している水色の髪の女性は、手元にあった煎餅を食べながらのんびりとしている。

かれこれ、3時間ほど二人の稽古を見物しているが、その間士郎は一太刀もセイバーに竹刀を当てるどころか掠らせる事も出来ていなかった。

 

「二人とも、まだやっていたのね」

「えぇ、今の所士郎はセイバーに一太刀も当てる事が出来ていないわ」

 

新たな人物が道場に入室し、見物していた人物の隣に座りこむ。

彼女も、先程まで行っていた用事が一段落着いたらしい。

 

「呆れた、3時間もセイバーにぼこぼこにされてまだ続けるなんて、凄い根性ね」

「負けず嫌い……いえ、それだけ強くなりたいのよ。彼はそういう人間よ」

 

そもそも、何故こんな事になっているのか。

それは、時を少々遡る……

 

 

 

 

 

アーチャ-を撃退し、慎二を捕まえた士郎達は、早退して衛宮邸に集まっていた。

アーチャ-のマスターであろう慎二を捕まえた今、何時アーチャ-が再び襲って来るか分からない為に少しでも安全な所に集まった方がいいと判断したからだ。

 

「しかし、慎二がマスターだなんて正直信じられなかったわ。魔術回路がないからって、完全に油断してた」

 

当の慎二本人はというと、暴れられないように縄で縛られて無力化されている。

彼が所持していた魔導書は現在、テーブルの上に置かれている。

 

「慎二が後生大事に抱えていたこの魔導書、魔術回路の無い慎二がマスターをやれていたのと関係がありそうね……こっちは私が調べておくから、それまで衛宮君達はのんびりしていて頂戴」

 

魔導書に関して調査を行うと言いだした凛が、テーブルの上に置かれていた魔導書を抱え、一室に籠った。

恐らく、あの魔導書に関して徹底的に調べ上げるつもりなのだろう。

1時間程度じゃ終わらないのは容易に想像できる。

当然、その間士郎達はやる事がなく暇を持て余す事になったのであった。

 

 

 

 

「……セイバー、少しいいか?」

 

数分の沈黙の後、士郎がセイバーに話しかける。

 

「どうした、少年」

 

士郎は、少しだけ口籠るも、何かを決意したかのように告げる。

 

「頼みがある。俺を鍛えてくれ」

 

 

 

 

 

 

士郎は、先程の戦いで自分達の力の無さを痛感していた。

慎二は、手に入れた力を誇示する為に使っていたようなものでしかなくそこまで脅威ではなかった。

だが、ランサーはアーチャーを相手に敗北寸前まで追い詰められてしまった。

自分が不甲斐無いばかりに、ランサーの負担が増えてしまっている。

士郎にとっては、その事実が耐えられなかった。

ランサーの負担を減らす為……皆を守る為には、自分がもっと強くならなければならない。

しかし、今まで通りの鍛錬では何の意味もない。

そこで、協力してくれている仲間であるセイバーに稽古を付けてもらい、少しでも戦う為の力を身に着けたいと申し出たのだ。

 

「少年、言っておくがサーヴァントと人間では勝負にすらならない。そもそも、マスターがサーヴァントを相手に戦う等普通はあり得ない選択だという事を失念していないか?」

「分かっている。それでも、マスターが戦っちゃいけないなんて話にはならない。俺が未熟なままだと、ランサーに迷惑をかけっぱなしになる」

「だから、少しでも強くなってランサーを守りたい……か?」

「数日の特訓だけでランサーを守れるようになるとは思っていない。けれど、ランサーと一緒に戦う事位は出来る」

 

士郎の強い覚悟を伴った返答に、セイバーは少しの間考える素振りを見せる。

 

「いいだろう、ただし俺が教えるのは必要最低限の剣術だ。その先は己で切り開け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、セイバーの特訓と言う名の一方的なフルボッコが続いて現在に至る。

 

 

「が……ぁ……」

 

度重なる猛攻に、とうとう士郎が力尽きて倒れた。

士郎の体力の限界を感じたセイバーも、構えを解いて竹刀を壁に立てかける。

 

「今日はここまでにする。その様子では身体も限界だろう、ゆっくりと休め」

「まだ、だ……まだ……俺は……」

「己の肉体の管理を怠るな、少年。これ以上無理をしても身体を壊すだけだ」

 

そう言い残して、セイバーは霊体化した。

道場に残されたのは、力尽きて横たわっている士郎と見物していたランサー、凛の3人だけだ。

ランサーが士郎に駆け寄り、タオルを差し出す。凛は借りている自室に戻った。

 

「お疲れ様、士郎。今日はゆっくりと休みましょう」

「ランサー……」

「強くなりたいという気持ちは分かるけれど、それで無茶を繰り返していては貴方が先に壊れてしまうわ。焦るあまり無茶をしてはだめ、貴方一人で戦っている訳じゃない……私も、一緒に戦う。だから、安心して背中を預ける為にも……無謀な真似だけはしないで」

「…………ごめん」

「謝る必要はないわ。それより、疲れたでしょう? よく休めるように、子守唄を歌ってあげる」

 

ゆーらりゆーるれりー……

 

 

 

 

 

道場に静かな歌声が響く中、とある一室では凛が腕を組んで魔導書を睨んでいた。

 

(驚いたわ。まさか、慎二がこんな方法でアーチャ-を……けど、それはつまり慎二が仮初のマスターに過ぎないという結論に結びつく。慎二がアーチャ-の本当のマスターでないとして、一体誰が本物のアーチャ-のマスターなの?)

 

目の前に置かれている魔導書……それは、サーヴァントを律する令呪1画分の魔力を秘めている。

これがあれば、拘束力こそ弱いものの確かにサーヴァントを律する事が出来る。

だが、それも本来のマスター程の拘束力ではない。アーチャ-と契約している本命のマスターがどこかに潜んでいるのだ。

 

(少なくとも、一枚岩なんかじゃ絶対にない。あのアーチャ-……思っていた以上に面倒ね)

 

歌声と思念と共に、夜が更けていく。

こうして、激闘を繰り広げた一日は終わりを告げていった。

 

 

 

離脱したアーチャ-の謎は、ますます深まるばかり。


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