ガンダムブレイカー to entertain hopes 作:みなび
「やーお疲れ!キミ結構スゴイねー!」
ノゾムがシミュレーターから出てきた矢先に声をかけられた。
「ありがとうございます。」
「あぁ、タメ口でいいよ。同い年っぽいし。ところで」
ミサが何か企んでいるかのような顔をする。出会って数分だというのに既に感じているこの嫌な予感は、間違いではないだろう。
「この辺じゃみない顔だけど、どこかのチームに入ってるの?」
「入ってないけど…」
「え、入ってない?コレはコレは好都合。」
言い切る前にミサが話を進めていく。ノゾムはろくに喋る間もないまま流れにのせられ、店の外へ連れ出された。
「-でね、私の地元は小さな商店街なんだけど、駅前にタイムズユニバースの百貨店ができてからお客さん減っちゃってさ。」
「タイムズユニバースって?」
「え、タイムズユニバース知らないの!?」
「う、うん。」
普段からスーパーや家電量販店、地元の本屋などしか行かないノゾムには全く聞いたこともない名前だった。
「外国のすっごく大きな会社で、百貨店以外にも色々やってるの。最近は宇宙事業にも参入してるらしいよ。」
「へぇ。」
「まぁ、その百貨店が駅前にできて、うちの商店街のお客さん、みーんな取られちゃったんだ。」
ミサの足が止まり、こちらに向き直った。
「そこで、私は商店街の名前のガンプラチームを作って商店街の宣伝をしようと思いついたわけ。」
そう言いながらミサはやたら誇らしげに、希望に満ちた顔をしている。
「つまり、キミを我が彩渡商店街ガンプラチームにキミをスカウトしたいんだよ!」
ふと上を見ると、彩渡商店街と書かれた古びたアーチがあった。
「でも僕はこの商店街のことよく知らないし。」
断ろうとしたが、ミサは有無を言わせなかった。
「まあまあ、うちの店すぐそこだから来てよ。」
ノゾムはまたもやミサに押し負け、すごすごと付いていくことになった。
「ただいま〜」
「あぁ、おかえり。」
確かにミサの家なのだとわかる会話だ。ガンプラが一番の趣味のノゾムには実家が模型店というのはとても羨ましく思えるものだった。
「あのねお父さん。私、紹介したい人がいるの…」
ミサが恥ずかしがったような素振りを見せながらそんな台詞を口にする。わざと誤解されるように言ったのだろう。
「ああ、チームメンバー、見つかったのかい?」
が、ミサの父はミサの意図をスルーした。
「あのさぁ、もっとこう…キ、キミはまさか娘の!むぅ、許さん表に出ろ! とかないの?」
「ないよ。」ノゾムはそんなことよりも既にチームメンバーに入れられていることに驚いた。違うと一言言いたかったが、完全に機を逃して置いてけぼりにされてしまった。
「すまないね、君。強引に誘われたんだろう?ミサの父のコウイチです。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
コウイチがノゾムに話を振ってくれたおかげでようやく話をすることができた。
が、否定をし忘れたために、実質チームメンバーにされてしまったことに気がついた。
「ところで、もうすぐタウンカップだろう?参加登録しておいたよ。」
「そうだった!まずはタウンカップ優勝目指して頑張ろうね!それと、これからよろしく!」
「…うん、これからよろしく。」
ノゾムはもう流されるしかないと覚悟を決め、これで正式に彩渡商店街ガンプラチームのメンバーとなったのだった。
たぶん次の話から主人公もバンバン話し始めます。
もう流されてばかりじゃありません。