転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

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【挿絵表示】

前回のイヴのトランス・ウンディーネ。水色半透明な感じでイメージしています。
エロい目で見ちゃダメ。

-剣聖ビルゲニア-
パンチ力4t RXより66t劣る
キック力9t RXより111t劣る
ジャンプ力30m RXより30m劣る

あ・・・(察し)

昨日投稿できなかった・・・。
スランプか・・・。


剣聖の復活! RX VS ビルゲニア

「ドクターがやられたようだ」

 

蟲が届けている映像を見て、シキはクリードにそう伝えた。仲間であるドクターが命を落としたというのに、クリードは「そうか」としか答えなかった。その表情には悲しみもない。クリードにとってはドクターもただの駒でしかなかったということか。それは自分にもいえることだ。自分もクリードにとっては駒のひとつでしかないのだろう。だがそれでもいい。クロノスよりも自分の扱うこの力が上であることを証明できれば、自分はそれでいいのだ。

 

 

「それでどうする? 南光太郎、仮面ライダーBLACK RX。状況に応じて異なる能力をもったロボライダーやバイオライダーにも変化するヤツを前に、勝てる自信でもあるのか?」

 

シキはクリードに最大の疑問を投げる。正直言って、自分はあの男に勝つビジョンが見えない。最強と信じていた(タオ)の力をもってしても、あの男は更に上をゆくだろう。その問いにクリードはようやく表情を崩し、「ないよ」と笑った。

 

「はっきり言うのだな」

「相手の力量くらいは測れるつもりさ。彼は僕よりも、そしてゴルゴムの三神官よりもずっと上の実力をもっているんだろう。仮面ライダーBLACK RX、怪人の因子とナノマシンのプログラムで身体能力が上昇し、不老不死となったこの体でも、恐らく彼の足元にも及ばない。だが、面白い物を見つけたのさ」

「面白い物だと?」

 

クリードは正面に映し出される映像を眺める。そこには桃色の鎧を着込んだ男がサタンサーベルを手に、アジト内を闊歩していた。セフィリアを下した剣聖ビルゲニア。ゴルゴム内に残されていた資料によると、彼は南光太郎、そしてその親友であった秋月信彦と同じく3万年前の皆既日食の日に生まれたものの、世紀王になれなかった男。その実力は過去の南光太郎を上回り、何度も苦しめたほどの剣士である。ビルゲニアはこちらを睨む。そしてその瞬間映像が乱れ、映らなくなってしまった。シキが操っていた蟲が破壊されたのだろう。

 

「あの男か。確かにゴルゴムの怪人よりは上の実力をもっているだろうが、南光太郎に勝てるか?」

「さぁね、僕はあの男の事はどうでもいいよ。それよりも興味があるのは彼がもっていた剣だ。サタンサーベル、と言ったかな? 僕の虎徹はこれ以上強化できない。ならば僕の能力であの剣と一体になったらどれほどの強さになるか、興味深いじゃないか」

 

クリードの道の能力は「SWORD」。今現在愛用している刀はかつて、トレインを惑わした魔女によって刀身を折られてしまった。これはそんな刀の柄をベースにして生み出した刀だ。だがあのサタンサーベルをベースに能力を使う。サタンサーベルに意思を与える。サタンサーベルと融合する。考えれば考えるほど体がゾクゾクとした。だがそのためには、この場で敗れるわけにはいかない。

 

「シキ、今日南光太郎と戦うのは得策ではないね。今はこの場を離れ、南光太郎と彼の戦いを見守ろうじゃないか」

「分かった。それでエキドナたちはどうする」

「連れて行こう。あの2人の能力はなかなか貴重だ。元の状態に戻る保証もないが、これは保険だよ」

 

クリードはそう言い、シキが符術で開けた空間から姿を消した。シキはエキドナとエーテス、そして10数人の怪人を引き連れ、この場を去っていった。

 

 

◆◇◇◆

 

ドクターを倒した光太郎はイヴとトレインの元に戻る。

 

「すまなかった、二人共」

「大丈夫だよ、光太郎」

「おう、全く問題なかったぜ」

 

イヴとトレインは笑顔を浮かべる。申し訳ない思いの光太郎だったが、逆にイヴは「あんな弱気な光太郎も新鮮だった」と別の一面が見られて嬉しそうだった。それにはトレインも同意しする。

 

「貴重な光太郎だったよな。スヴェンやシャルデンに教えてやったら驚くぞ」

「トレイン、光太郎をいじめないで。そんなことしたらトレインの朝食は1ヶ月かつお節にしてもらうから」

「いっ!? 長すぎね? せめて3日に・・・いや、その前にかつお節単体は食事で食べるもんじゃねえよ」

「猫ってかつお節好きだよね?」

「俺が好きなのは野良猫のような生き方であって、食の好みまで合わせてるつもりはねえ」

 

2人はそんな言い争いを始めた。こんな状況であるというのに、光太郎は思わず微笑んでしまった。

 

「二人共、仲がいいのは分かったから先を急ごうか。クリードを捕らえ、星の使途の非道をここで終わりにするんだ」

 

イヴとトレインは肯く。

 

 

 

「どうやらこの先にお前が望む相手はいないようだぞ」

 

 

洞穴から声が響いた。3人は瞬時に戦闘態勢に移す。日の光が洞穴から出てきた男の姿を晒す。桃色の鎧と兜を身に付け、盾とサタンサーベルをもつ剣士。光太郎はその剣士を知っていた。

 

「お前は・・・剣聖ビルゲニア!?」

「久しい、というべきか、仮面ライダーBLACK」

「貴様までこの世界に・・・」

 

ゴルゴムがこの世界に現れていたのだ。この剣士がいても不思議ではない。しかしそれ以上に光太郎が驚いていたのは、目の前のビルゲニアがサタンサーベルをその手にしていたことだ。

 

「なぜ貴様がその剣を! それはセフィリアさんが・・・」

「・・・ああ、あの女か。人間風情がこの剣を扱おうなど、身の程知らずな。この剣に相応しい者の手に渡った。それだけよ」

 

サタンサーベルを構えるビルゲニア。その圧力はセフィリア以上であるとイヴやトレインも感じ取っていた。しかしイヴはその圧力に屈することなく、前に出た。

 

「セフィリアさんは・・・?」

「あの女ならば、既にこの世にはいない」

「・・・!」

 

ビルゲニアが告げる衝撃にイヴは思わず目を見開いて膝をついてしまう。

 

「・・・セフィリア・・・さん・・・」

「ビルゲニア・・・貴様・・・!」

 

光太郎は座り込んでしまったイヴを抱き寄せ、正面に立つビルゲニアを睨む。

 

「変身するがいい、南光太郎! 世紀王として真に相応しいのはブラックサンでもシャドームーンでもない、この私なのだ!!」

 

「いいだろう・・・」

 

光太郎はトレインにイヴの体を預ける。トレインはイヴを連れてその場を離れるが、セフィリアの事がショックだったのだろう。あの気丈なイヴが涙を流してしまっているのだ。光太郎もその涙に気付いていた。静かに拳を握る。

 

ゆっくりと立ち上がる光太郎。その手を天に翳す。

 

「変 身!」

 

光太郎は叫び、姿を変化させる。

 

「俺は太陽の子! 仮面ライダーBLACK、アール、エックス!!」

「アールエックス・・・だと?」

「剣聖ビルゲニアよ! セフィリアさんをその手にかけ、イヴを泣かせた貴様を俺は許しはしない!!」

 

ビルゲニアは知らない。目の前の男は彼の知るかつての南光太郎、仮面ライダーBLACKではないのだ。ゴルゴムを壊滅させ、そして更に上の力をもつクライシス帝国をも打倒した最強の戦士に成長した男だと知らないのだ。

 

最強の男とセフィリアを下した剣士が対峙する。それを見守るトレインの頬に一筋の汗が流れた。汗が肌を伝い、大地に落ちる。その瞬間にビルゲニアの姿が何人も増えた。

 

「デモントリック!!」

 

無数の分身を生み出したビルゲニアはサタンサーベルを振るう。だがサタンサーベルがRXの体に届く前にサンライザーが輝く。

 

「ぬっ!?」

 

強烈な閃光が周囲を照らす。だが目晦ましが目的でない。ビルゲニアの視力が回復した時には自ら生み出した幾つもの分身が消滅していたのだ。しかしその程度で戦意を失うほど臆病な性格をビルゲニアは有していない。自らを火球へと変え、空中へ舞い音速でRXへ体当たりを行う。その攻撃はRXの体を何度か削っていった。

 

「死ねい、アールエックス!!」

 

「俺は、死ぬ訳にはいかない!!」

 

火球の体当たりをフォームチェンジしたロボライダーの手が止める。巨大な大岩すらも溶かし崩す程の威力を、ロボライダーは片手で止めたのだ。それどころかビルゲニアが纏う炎は見る間にロボライダーに吸い込まれていく。自らの力を吸収されていると判断したビルゲニアは姿を戻す。

 

「ロボパンチッ!」

 

「うぐっ!?」

 

ビルゲニアはロボライダーの攻撃をビルテクターで防ぐも、一発で粉砕されてしまう。かつてのライダーキックではヒビを入れられるだけに終わったが、これだけでもどれだけ強くなっているのか推し量ることができる。認めたくない。前回の世界でも仮面ライダーBLACKはどんどんと強さを増していき、自身の力に差し迫ってきた。自分がシャドームーンに敗れて以降も様々な経験を積んで成長してしまったのだろう。だがここまで力の差が拡がってしまっていると知り、ビルゲニアは大地に膝をついたままサタンサーベルを握る手に力を込めた。

 

「・・・認めぬ! 認めぬ認めぬ認めぬ! 俺の力はこんなものではない!!」

 

立ち上がるビルゲニアは妖気を纏い、その妖気は雷となって周囲の木々を灯していく。RXは強い。しかし剣聖としての誇りが後退を認めなかった。生半可な攻撃では退けることはできない。RXはサンライザーに手を翳す。

 

「リボルケインッ!」

 

光の杖を持ち、襲いかかるビルゲニアと幾度もの剣戟を打ち交わす。リボルケインとサタンサーベル、ビルセイバーの一合々々(いちごういちごう)の衝撃が島全体に広がり、頭上には暗雲が立ち込める。2人の戦士に雷が落ちるも、彼らは怯むこともなく戦い続けていた。RXとビルゲニアの自力は圧倒的な差があった。しかしビルゲニアは怒りと誇りで、自身の力を上昇させていた。

 

「死ねい、アールエックス!!」

 

・・・だが、いくら強くなっても越えられぬ壁がある。

ビルゲニアがサタンサーベルを振り上げた瞬間、RXは左手を翳した。

 

「来いっ! サタンサーベル!!」

 

ビルゲニアはサタンサーベルを振り下ろそうとしたが、その手の中に圧倒的な力を誇る剣はどこにもなかった。ビルゲニアはゴルゴムの怪人と比較しても圧倒的な強さを身につけている。確かに彼は強い。この戦いでも自身のレベルを上げていたことだろう。しかし、それでも彼は世紀王ではないのだ。聖剣は持ち主を選ぶ。真の持ち主は世紀王なのだ。そして今、聖剣はビルゲニアよりRXを選んだ。

 

ビルゲニアは驚きの余り、その手からビルセイバーが大地に落ちる。

 

RXは右手にリボルケイン。

 

左手にはサタンサーベルを持ち、自らの剣を消失させて隙をつくったビルゲニアに止めを差すべく、飛びかかる。リボルケインとサタンサーベルがビルゲニアを捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・しかし、RXはその剣を寸前で止めていた。

 

「・・・そんな・・・」

 

RXは剣を引き、目の前の人物から後退する。トレインとイヴもその人物に気付き、息を飲んだ。ビルゲニアを庇うようにしてRXの前に立つ人物。

 

セフィリア=アークス。

 

ビルゲニアは「この世にいない」と言っていたが、その人物が目の前にいたのだ。いつもの黒スーツはところどころ破れてはいるが、体自体に大きな傷は見当たらない。セフィリアは足元に落ちていたビルセイバーを手にする。

 

「セフィリアさん・・・!」

 

イヴは涙ぐみながら、思わず駆け寄った。そしてその手に触れる。

 

「良かった・・・無事だったんだ・・・」

 

そう声をかけるイヴだが、セフィリアはイヴの顔を見ようともしない。目も、どこか虚ろだ。

 

「やれいっ!」

 

頭上から命令が飛んだ。

 

その瞬間セフィリアの目に殺気が宿り、ビルセイバーで目の前の少女を両断する。

 

「姫っち!」

 

トレインが叫ぶ。慌てて飛び出そうとしたトレインだが、両断されたのは残影であった。姿を変えたバイオライダーが瞬時にイヴを救出していたのだ。トレインは思わず息を吐く。

 

「セフィリア・・・さん・・・?」

「イヴ、セフィリアさんは正気を失っている。貴様らがやったのか、ゴルゴムの神官!」

 

バイオライダーは空中で浮遊している3神官を見上げた。ダロムは立ち上がったバイオライダーを警戒しつつ、ビルゲニアに視線を移した。

 

「剣聖ビルゲニアよ。貴様から貰い受けた女、完全に記憶を抹消した。今ではゴルゴムの犬よ。今の仮面ライダーBLACK・・・いや、RXには我々の力では届かぬ。搦手を使わぬとな」

 

ビルゲニアの発言であった「セフィリアはこの世にいない」。それの意味することは、彼女の精神・人格が完全に消されてしまったことにあった。ダロムの目が怪しく光る。そしてそれと連動するかのようにセフィリアは動き出す。焦点の合わぬ眼で・・・。それはまるで、人形であった。高速で振るわれるビルセイバーを、バイオライダーはイヴから守るようにその身に受ける。

 

「うぐっ!」

 

ギィンと甲高い音と共にバイオライダーの体に火花が散った。それは人間の力ではなかった。バイオライダーは傷つけられた胸に手を当てる。

 

「ふふふ、人間と侮らん方がいいぞ、RXよ。その女は遺伝子操作で姿は変わっておらぬが怪人並の力を得ておる」

 

バラオムが口角を上げて笑う。

3神官が見抜いたRXの弱点。それはその愚かな優しさにある。以前の世界でも親友である秋月信彦を説得するために、受けなくても済んだ多くの傷を刻まれている。そして今、仲間であったセフィリアの手でRXを追い詰める。

 

「やめてくれ、セフィリアさん!」

 

バイオライダーは高速で繰り出す見えない剣を避けながらそう訴える。しかしバイオライダーの声は彼女には届かない。多くの剣線は少しずつバイオライダーを刻む。

 

「俺は・・・信彦を助けることができなかった。もう二度とあんな思いはゴメンだ!!」

 

バイオライダーは叫ぶ。そして体をゲル状に変化させ、セフィリアを包んだ。3神官も「何をするつもりだ!」と凝視する。

 

「貴様らは何度俺を怒らせれば気が済むのだ・・・!」

 

セフィリアは跳躍し、地上から20m以上離れていたはずの神官たちの頭上でビルセイバーを構えていた。そしてその剣を一閃する。3神官まとめて横薙に切りつけたセフィリア。神官は予想外の展開に大きな傷を負うも、致命傷には至らなかった。

 

「覚えておれ!」

 

その言葉を残し、空間を割って消えていった。

 

 

 

 

 

 

着地するセフィリア。

いつの間にかビルゲニアの姿もない。この島に、既に敵は残っていなかった。

 

残されたのは、人形と化した自我のないセフィリアだけである。

 

バイオライダーは細胞の同一化を解く。

 

「セフィリアさん・・・」

 

 

 

 

 

変身を解いた光太郎は、その呼びかけに何の反応も示さないセフィリアの両肩を掴む。

 

 

 

 

 

 

 

「セフィリア・・・さん・・・」

 

 

 

 

 

 

光太郎は何度も彼女の名を呼んでいた・・・。




囚われていた時の番人を救出し、ドクターを倒した光太郎たち。


一区切りの戦いは終わった。しかしその傷跡も大きかった。


記憶と自我を完全に失ったセフィリアを前に、自らの無力を噛み締める光太郎。


次回『消えた光太郎』
ぶっちぎるぜ!!

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