イヴのオリジナルトランスの「ゲル化」名称変更します。
やりたい放題やりすぎたかな・・・。ごめんなさい。
ドクターは見た。
炎の中から現れた男を。そこにいたのは仮面ライダーBLACK RXという男ではなく、以前自分たちが確認したバイオライダーでもなかった。この男は一体どれだけの力を隠し持っているというのか、それを見る度にドクターの胃はキリキリと痛んだ。
ベルーガが何度もバズーカを撃ち込むがそれをモノともしない。確かに直撃を受けているはずなのに倒れもせず、仰け反りもせず歩を進める。
「ガアアアアア!」
ナイザーは吠え、超スピードでロボライダーの懐に入り込んだ。そしてオリハルコン製のトンファーを振るう。しかしロボライダーはそれを避ける。圧倒的な防御力をもつロボライダーであるが、決して鈍重という訳ではない。
ロボライダーはナイザーの腕を取り、投げ飛ばす。だがそこに弾丸が切れたベルーガがバズーカを振り上げて跳躍していた。振り下ろされるオリハルコン製のバズーカ。その時、ロボライダーの拳が光った。
「アアアアアっ!」
「・・・ロボパンチ!!」
ぶつかり合うバズーカと拳。周囲に轟音と衝撃波が走る。
打ち勝ったのは・・・ロボライダーであった。オリハルコン製のバズーカ「ウルスラグナ」はロボパンチの前に粉々に砕け散ったのである。ロボパンチを直接受けた訳でないベルーガの体もその衝撃から巨躯に多くの傷を負うが、瞬時に再生されていく。
「・・・ナノマシンか。ならば!」
ロボライダーはベルーカの体を掴む。暴れるベルーガだが、ロボライダーの力には児戯にも等しい。ロボライダーの目が光る。
「ハイパーリンク!」
彼らの不死の秘密。それは体内に撃ち込まれたナノマシンにある。以前人狼と相対した時にバイオライダーであればそれを破壊することは可能だった。しかし今の彼らはそれにゴルゴムの怪人の因子が組み込まれてしまっている。破壊ではダメなのだ。彼らは人の姿を取り戻すことができなくなる。
ロボライダーの行うハイパーリンクは、触れただけであらゆる機械をコントロールできる。ナノマシンを操作し、人の姿を取り戻すようプログラムを行う。ベルーガの細胞がナノマシンによって組み替えられていく。不死を打ち消し怪人の遺伝子を殺し、ただ人に戻るように、体内を駆け巡る。
ロボライダーの手が離れ、彼はもうひとりの犠牲者ナイザーに向き合う。その場に倒れている獣人であったベルーガは、戦意も失い、人の姿に戻り気を失っていた。その表情は心なしか穏やかであった。
「な、な、何をしたあぁぁぁ!?」
砂漠の空間にドクターの声が響く。
自身が手を加えて改造を施した作業が灰燼に帰したのだ。かつての人狼とは訳が違う。バイオライダーになり、ナノマシンを破壊されて不死を消されるのならまだ分かる。しかし今の彼らは怪人なのだ。遺伝子レベルで怪人なのだ。それを人の姿に戻すなど、自分の技術では到底行うことができない。ドクターはただただ驚愕していた。
・・・ナノマシン。それは無限の可能性を秘めている。本来のナノマシンの能力であれば遺伝子レベルの操作はできなかったろう。しかしロボライダーはそれを完全に操り、強化し、不可能を可能としたのだ。そして最後に自滅するプログラムへ書き換え、ナイザーの体内からナノマシンは完全に消滅した。
ロボライダーはナイザーに手を伸ばす。
◆◇◇◆
その頃、トレインはジェノスと対峙していた。
ステージは街の中である。しかしこの場には2人の姿しかなかった。
オリハルコンの鋼線を避けながら発砲するが、直前に切断されるか、命中しても怪人と化した体には効果が見られなかった。そして今のトレインの体は子どもの姿である。銃弾をひとつ撃つ事に反動で手首を痛めてしまう。
「やっぱりこの姿じゃきついか・・・」
この姿を堪能するためにいつまでも元に戻ろうとしていなかったトレインだったが、事戦闘となるとこの体は不便であった。本来の感覚に体がついていかず、こうして愛銃も満足に使用することができない。
トレインはジェノスと距離をとり、意識を集中する。
光太郎が砂漠の空間に立たされていたように、トレインが街の中にいたように、イヴも別空間にいた。
イヴは辺りを見渡す。大小様々なぬいぐるみが置かれ、屋内にいたはずであるのにピンクの空には色とりどりな風船が飛んでいた。
「・・・ここ、どこ?」
一緒にいたはずの光太郎とトレインもいない。光太郎の名を呼ぼうとした瞬間、イヴの体を冷たい感覚が支配する。イヴは咄嗟にその場を飛び退いた。
その場に巨大な槍が天空から落下した。衝撃波が周囲のぬいぐるみを切り刻む。
「うっ・・・」
体を硬質化させたイヴだったが、あまりにも急であったため全てを防ぐことはできなかった。イヴの柔肌に赤い線が刻まれる。だが自らを傷つけたその槍よりも、驚くことが目の前に存在していた。
「ベルゼー・・・さん・・・」
巨大な槍の影から見知った男が現れたのだ。しかしその瞳は光を失い、虚ろだ。イヴは本能的に「危険だ」と感じた。肌がピリピリと痛む。ベルゼーが自分に巨大な殺気を放っているのだ。あの優しかったベルゼーが、である。
ベルゼーは槍を手に持ち、振るう。
それだけで大地に傷跡を残す。イヴはどうするべきか思考を巡らせた。今のベルゼーはまともではない。しかしあの優しい人が、自分にこれほどの殺気を向けるとは思えなかった。正気を失っている。いや、失わされていると言った方が正しい。星の使徒によって・・・。一体どうやって? 催眠? それとも・・・。
槍の先端がこちらに向いた瞬間、イヴはハッとして飛び上がった。
トランス・エンジェル
背に羽根を生やし、縦横無尽に飛ぶことで狙いを定めさせない。イヴがベルゼーの背後の上空に位置すると、ベルゼーの姿が一瞬で消えた。空中にいたイヴの真上に飛び上がっており、オリハルコン製の槍「グングニル」を構えていたのである。イヴは咄嗟に腕を振り、防御する。
トランス・シールド
しかしベルゼーの刺突は強力で、イヴのシールドを容易く粉砕した。そして勢いよく大地に叩きつけられる。
「・・・うっ」
「・・・・・・・・・」
倒れ、傷ついた腕を抑えるイヴ。ベルゼーはそんな隙だらけのイヴに対し、見下ろしているだけで攻撃を加えようとしなかった。そんなベルゼーに声がかけられる。
「何してる、早くそいつを捕らえるんだ! そいつが南光太郎へ勝利する為の鍵なんだぞ! さっさとしろ!!」
この声はイヴにも聞き覚えがあった。星の使途のドクターの声だ。その声を聞き、ベルゼーは顔を歪ませる。ゆっくりと腕を上げ、その手をイヴに伸ばした。
「ドクター・・・あなたがベルゼーさんを・・・?」
「そうだ! 怪人の因子と超再生のナノマシンを組み込んだ時の番人、いや、今は星の番人のそいつに貴様が勝てる可能性はゼロだ! とっとと諦めて捕まるんだな!」
「・・・何を、焦ってるの?」
「・・・う、ボクは何も焦ってなどいない!」
ドクターはそう答えるが、口調、声の大きさ等で丸分かりである。
「そっか・・・光太郎があなたを追い詰めてるんだね」
その答えはイヴもすぐ下すことができた。光太郎は、今自分がこうしている間も戦ってるんだ。そしてそれはトレインも一緒。自分だけがこうしていつまでも倒れている訳にはいかない。
イヴは傷ついた体で立ち上がり、ベルゼーに相対する。
「・・・私はいつまでも弱い子どもじゃない。光太郎の弱点じゃない。私が目指すのは・・・光太郎の力。ドクター、私はあなたの思い通りにはならない」
まだ戦意のあるイヴを前に、ベルゼーは伸ばす手を止め、再び槍を構えた。そして体を膨張させる。体毛を生やし、牙を伸ばし、獣人と化すベルゼー。そんなベルゼーに、イヴは悲しい表情を浮かべる。
「・・・ベルゼーさん、少しだけ待っていてください。この悪夢は・・・すぐに終わりますから」
ベルゼーは刺突を繰り出す。だがその瞬間、イヴの体が輝いた。
トランス・ウンディーネ
イヴの体が透明な水へとトランスを遂げた。
突き出された槍も、その体には無意味であった。掴み取ろうとするベルゼーだが、何人も水を掴むことなどできはしない。
イヴの体の一部が鞭のようにしなり、ベルゼーの足元を崩した。そしてベルゼーの体を水が覆う。その水は見る間に凍りついていった。
そして完全に凍りつく。だが凍てつく氷の中にいようと、今のベルゼーは怪人の怪力とタフさを身につけている。常人であればこの場で終わっていたが、ベルゼーを囲う檻は亀裂が入り、粉砕された。しかしイヴは次の行動に移っていた。
腕の一部を鋭い刃に変え、ベルゼーの槍を持っている凍りついていた右腕を切り落とす。
トランス・ナノスライサー
通常の怪人の肉体であればいくら分子レベルに鋭くされたイヴのナノスライサーであっても傷つくことはあっても切断まではできなかったろう。しかし事前に凍傷レベルにまで凍らせたことで、それを可能にした。ベルゼーは腕を再生させるが、彼を武器と切り離すことには成功したのだ。
そんなベルゼーの不甲斐なさにドクターは憤慨する。
「何をしてるこの役たたずが! そんなガキ一匹にいつまでも時間をかけているんじゃない! このクズが!!」
「ベルゼーさんは役たたずじゃない! そんなに言うのなら、あなたが私の前に出てきてください。自分は安全な場所から出てこようともせず、自分の欲望のために人の痛みや苦しみも理解しようともしない。あなたこそが本当のクズです!」
「だ、黙れガキがあああぁぁぁぁ!!」
自分の半分にも満たない歳の子どもにこうまで言われたのである。怒り狂うのも当然といえよう。しかし、正論である。イヴは既にドクターを見下げ果てていた。だが今は目の前の男を止めなければならない。時の番人として人類としては最高クラスの実力をもっていた男。そして今は怪人の因子と再生のナノマシンを組み込まれ、怪人の中でも上位の実力をもつ男を。でもきっと、光太郎ならば勝ててしまうのだろう。あの人は・・・どんなことも乗り越えてしまう人だから。そんな光太郎の
イヴの水の体が輝く。
ベルゼーを止める為に、新たなトランスを。
イヴの体からいくつもの蔓が伸び、ベルゼーを拘束する。そしてその無数の蔓の先端はナノスライサーのように鋭利になり、ベルゼーの皮膚を貫く。
トランス・フラワー
イヴは絹のような衣を纏い、足元は植物のような葉や花で覆われていた。そしてベルゼーの体に蔓を通してナノマシンを注入する。神経を麻痺させるようにプログラムされたナノマシンと再生を打ち消すナノマシンを。再生能力を消去されてしまえば、如何に怪人といえども神経を麻痺されては動くこともできなくなる。しかもそれはナノマシンという機械での麻痺だ。成長したイヴのプログラム能力は体から離れたナノマシンであっても死滅することなく暫くの間は稼働し続ける。
「ベルゼーさん、私では・・・あなたの体を治すことまではできない・・・。ごめんなさい」
元の姿に戻ったイヴは倒れているベルゼーにそう呟く。その呟きに「気にすることはない」と返事が返ってきた。イヴも驚いて顔を上げる。ベルゼーは倒れながらも、正気に戻っていたのだ。
「・・・すまなかったな。私はお前に刃を向けていたようだ」
「ううん。ベルゼーさんのせいじゃありません」
「・・・・・・・・・流石は、南光太郎の
ベルゼーは思い出す。イヴと初めて会った光景を。
自分の顔を見て怖がり、光太郎の影に隠れていたのは今思うと笑えてしまう。自分はそんなに子どもに好かれない出で立ちかと思うのと同時に、あの自分に怯えていた子どもが、今では正気でなかったとはいえ自分を打ち負かす程に成長していることにある種の感動を覚える。
「誇るがいい、イヴ。お前はもう、立派に光太郎の力となっている・・・!」
ベルゼーはそう言って、気を失った。ベルゼーの手にイヴは自身の手を重ね「ありがとうございます」と呟いて立ち上がった。
そして虚空を睨む。
この優しい人をこんな目に遭わせた男を。
ベルゼーを下す程に成長したイヴ。
そして遂に光太郎たちの前にドクターが姿を現す!
だがドクターは震えながらも光太郎の弱点を告げる。
光太郎の前に現れた女性。その女性は一体何者なのか!?
次回『消えた記憶』
ぶっちぎるぜ!!