転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

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今回の表紙絵

光太郎が1人で行けば全て済む気がしますけど、それは無しの方向で(笑)


悲しみの涙・炎の王子

星の使途の居所は判明した。

しかし距離が距離だ。この港街から星の使徒がいるであろう島までは3000キロ以上離れている。まともに行っても2日はかかる計算だ。

 

光太郎は単独で先に向かおうとするも、それはイヴやセフィリアによって止められた。光太郎一人かもうひとりくらいであればアクロバッターのケタ外れのスピードで数時間で到着することができる。光太郎もイヴたちが自分を心配してくれているのは理解しているつもりだ。

 

「分かった。だが全員で向かうことは避けよう。リンスさんとティアーユさんはこの場に残ってください。スヴェン、シャルデン、キョーコちゃん、えっと・・・ジパングマンさんはこの場に残ってティアーユさんの守りを」

「ってことは、向かうのはオレと姫っちとセフィ姐、そして光太郎ってことか」

 

光太郎の案にトレインが肯く。確かに戦いの場となるであろう島に、戦闘要員ではないリンス・ティアーユの両名を連れて行くことは危険だろう。そしてティアーユは星の使徒に狙われている。光太郎たちが島を攻めている間にそちらを狙わないとも限らない。もし星の使途がやってきてもシャルデンやキョーコはもうその組織に与することはないであろうし(ジパングマンは分からないが)、万が一としてスヴェンも残る。

 

「少数精鋭だが良いと思うぜ」

「光太郎さんが調べてくれた島までは距離があります。すぐにでも向かいましょう」

 

セフィリアはすぐに愛剣サタンサーベルを手にし、部下を救うため、そしてクロノスの、光太郎の敵である星の使途を討伐するために動き始める。居残り組は「気をつけて」と声をかけるが、内心は「光太郎なら大丈夫だろう」という安心感があった。しかし当の光太郎は敵を過小評価しない。非道を尽くす者は例え人間であろうと全力を尽くす覚悟だ。

 

外に出た光太郎たち、そこで待機していたアクロバッターが近寄る。

 

《行くのか、ライダー》

「ああ。急いで星の使途のいる島に行かないといけないんだ」

《ならば乗れ、ライダー。すぐにでも向かおう》

 

ヘッドライトを点滅させるアクロバッターにトレインが声をかける。

 

(わり)いアクロバッター。俺たちもそこに一緒に行きたいんだけどよ、どうにかならないか?」

《・・・さすがに4人は無理だ。諦めろ》

「ライドロンがいれば・・・」

 

光太郎は手を顎につけて考え込み、かつて共にあった光の車を思い浮かべる。今までは必要に応じて呼ぶことはなかったが、以前の世界と同じように自分が呼べば駆けつけてくれるのだろうか。

 

「どう思う? アクロバッター」

《・・・その問いに回答を出したくはない》

「光太郎、ライドロンって?」

 

返答を黙秘するアクロバッター。そして今まで光太郎から聞いたことのない言葉を気にし、訊ねるイヴに光太郎は説明した。

ライドロン。通称光の車。アクロバッターと同じく意思をもち、かつて共に戦ってくれた仲間。以前の世界では自分が呼べば、アクロバッター同様にすぐに駆けつけてくれたと話した。

 

そう説明する姿の光太郎を見て、その脇に止まるアクロバッターは心なしか小さく見える。落ち込んでいるのだろうか。

 

だがモノは試しと光太郎は目を閉じ、心中でライドロンの名を呼ぶ。今こそお前が必要なのだと、呼びかけた。すると見覚えのある現象が起きた。目の前の空間に亀裂が入る。そしてそれはガラスのように割れ、異空間から赤い車が飛び出してそれは光太郎の前で停止する。

 

「来てくれたか、ライドロン!」

 

光太郎は嬉しそうだ。思わずその車体に駆け寄った。

ライドロンであればイヴやセフィリア、トレインも乗り込むことができる。これで人数の問題は解決した。皆はすぐにライドロンに乗り、光太郎はアクロバッターにもしも星の使途やゴルゴムの怪人が襲ってきた場合の守護をお願いした。

 

「頼むよ、アクロバッター」

《・・・それがライダーの望みなら任せよ。全てが終わったらライドロンとは長い話しをせねばならないだろう》

 

アクロバッターの言葉には「やむを得ず」了承した節が感じ取れたトレインだったが、鈍感な光太郎はそんなものに気づくはずもない。純粋に願いを聞き入れてくれたアクロバッターに「ありがとう!」と感謝していた。状況的に不謹慎かもしれないが、そんな鈍感な光太郎を想う奴らは苦労するだろうなとトレインは苦笑した。主に車内にいる自分以外の人物だが・・・。

 

そしてライドロンはエンジンをかける。そして瞬間、トレインたちが見ていた外の景色が流れた。一瞬で街を抜け、そしてなぜか正面に海を迎える。

 

「お、おい光太郎! 前、前見ろって!」

 

トレインがそう焦って呼びかけるが、光太郎は聞こえているはずだが方向転換しようともしない。

 

「ハートネット、光太郎さんのことです。信じなさい」

「そうだよトレイン」

 

セフィリアとイヴは動じていない。そして2人が信じていた通り、ライドロンは何事もなく走行していた。トレインの心配を余所に、海上を走っているのだ。それもものすごいスピードで。

 

「陸路を行くと障害物があって余計に時間がかかる。こちらから行った方が早く到着するはずだ」

 

光太郎はハンドルを操作して目的地を目指す。海上を走行できるのなら、確かにその方が遥かに距離を短縮できるだろう。このスピードなら尚更だ。一体どのくらいのスピードが出ているのかとトレインはスピードメーターを覗き込む。現在は1400キロという数字が表示されていた。先日のバイクレースでアクロバッターは700キロで走っていた。最高時速は750キロらしいが、ほぼその倍だ。そしてメーターには1500キロまで記されていたため、海上でなければそこまでのスピードが出せるということだろう。このスピードであれば3000kmの距離もたった2時間程で到着できる。

 

 

ライドロンは光の矢の如く、一線の影を残して消えていった。

 

 

◆◇◇◆

 

 

 

 

その頃、ゴルゴムアジトでは・・・。

南光太郎がこちらに向かっているという情報を得てはいたが、今はそれどころではなかったのだ。3神官の前には複数の怪人がこちらに向かって敵意を放っていた。

 

「やってくれるではないか、人間」

 

バラオムが怒りの表情を顕にする。自分たちと相対している怪人たちの背後で、星の使途クリード=ディスケンスは楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 

「やぁ、神官ども。キミ達のおかげで僕の計画は成った。感謝しているよ。だがこの世界を管理するのはキミ達ではない。君たちには品性が感じられないからね。だからここで退場してもらうことにした」

 

クリードの駒となった怪人たちがダロムたちを取り囲む。だがダロムは冷静に状況を観察していた。いくらゴルゴムの怪人が敵に回ったとはいえ、自分たちが本来の姿を出せば大した脅威ではない。だが今ここには南光太郎が向かっているのだ。いくらクリードたちを潰したとて、疲弊した後に光太郎とぶつかるのは得策ではない。ならば星の使途と光太郎が潰し合い、残った方を最後に手を下す方が遥かに効率的だ。人間相手に後手に回るのは恥辱であるが、ダロムは撤退を考えていた。そしてそう決断してからのダロムの動きは早かった。襲いかかる怪人の手が伸びる前にバラオムとビシュムを連れ、時空に穴をあけて飛び込み姿を消す。

 

神官に逃げられたが、クリードに焦りはない。今となってはあの3人とて脅威ではないのだ。クリードが認める脅威・・・それはすぐにやってくるだろう。クリードは笑いながらゴルゴムの玉座へと腰を下ろした。

 

 

 

 

 

場を脱した3神官。

現在はアジトであった島の目前の海上で浮遊していた。

バラオムは憤慨している。人間程度に遅れをとったこともそうだが、そんな相手に逃げを選択したダロムに対してもだ。

 

「ダロム、なぜ逃げた!」

「分かっていよう。あのまま戦ってもクリードには勝てよう。しかし我らも消耗する。そんな状態でパワーアップを果たしている仮面ライダーBLACKと戦うつもりか」

「・・・くっ、おのれ」

「………」

「ビシュム、どうした」

「いや、バラオム…予知の一種か分かりませんが、その場は危険な気がするのです」

「ははは、何を言っている、ビシュー」

 

そこまで言ってバラオムは体をくの字に曲げ、ダロムとビシュムの2人の前から一瞬で姿を消した。

 

ダロムは上空を見た。バラオムが人形のように力なく舞い上げられていた。彼らには何が起こったのかを見る事ができなかった。そしてバラオムは身動きせず海水に沈む。混乱から回復してはいなかったが、ダロムは自身の念動力でバラオムを海中から引き上げた。

 

「…バラオム、無事か?」

「ガハッ…な、何が起きた!?」

「それが…我らにも分からぬ」

 

人間よりも遥かに優れた耐久力をもつ体であるというのに、バラオムは大きなダメージを負ってしまっていた。半死半生だ。

 

 

 

 

 

◆◇◇◆

 

光太郎たちは海上を猛スピードなんて生易しいものでない速度で走行していた。そしてその島をすぐ目の前まで迫っていた。戦闘態勢に移ろうとするトレインだったが、車内に軽い衝撃が伝わった。何事かとトレインはイヴたちと顔を見合わせる。彼らには一瞬の事で何が起きたのか分からなかったのだ。トレインの隣で運転する光太郎だけが青い顔をしていた。

 

「光太郎、どうかしたのか?」

「…海の上に浮いていた人を轢いたかもしれない」

「は? 何で人が海上に浮いてるんだよ。怪人じゃないのか?」

 

トレイン大正解。

光太郎が運転するライドロンが轢いたのはバラオムだった。トレインに言われてみれば、光太郎も轢いてしまう直前に見た姿はゴルゴムの神官だったような気もした。

 

「確かに…あの顔は3神官の一人だった」

「だろ? 敵の数を減らしたんだ。良かったじゃねえか」

 

期せずして、光太郎はバラオムにライドロンでのライディングアローを行っていたのだ。

 

既に島に到着していたライドロンは停車し、彼らは自分たちが通って来た海上に視線を向ける。だが彼らに敵の心配をしていられる程余裕はなかった。ライドロンの前から多くの怪人が迫ってきたのだ。

 

「やるか?」

 

トレインが愛銃ハーディスを手にする。それをセフィリアが制した。

 

「ハートネット、あの数の怪人を相手にするには時間も体力も消耗します。あの者たちを無視して中央に攻めるのも良いですが、挟み討ちは戦略的にも危険です。ここは私が引き受けますから、あなた達はこのままクリードの元へ進んでください」

「セフィリアさん…大丈夫だよね?」

 

彼らの視界に入っている怪人は既に10体を超える。彼らは知る由もなかったが、ベルゼーとケルベロスの四人がかりで一体でも太刀打ちできなかった相手がそれだけいるのだ。しかしセフィリアにはそれすらも屠る事ができる剣がある。だが戦いに危険は付き物だ。イヴは心配して車外に出たセフィリアに声をかける。

 

「大丈夫ですよ、イヴ。あの者達は私がこの場で抑えます。あなたは光太郎さんの傍で、光太郎さんの力になってあげてくださいね」

「…うん!」

 

光太郎もセフィリアの実力は知っている。怪人相手というのが心配を外せないファクターなのだが、セフィリアは光太郎を真っ直ぐ見つめてきた。

 

「光太郎さん、あなたは優しい人です。それは美徳なのでしょう。ですがあなたの力として…剣として戦場に立つ私の身を案じて、先に進むのを拒むのは私にとって悲壮の思いです。私を信じてください」

 

「セフィリアさん…。分かった! ですが絶対に無理はしないでください」

 

光太郎の言葉に微笑んで肯くセフィリア。

ライドロンは数人の怪人を撥ねながら中央へと消えていった。

 

残された怪人が不気味な瞳でセフィリアを標的に定める。

そんな多くの敵意を受けながらも、セフィリアは臆することなく剣を抜いた。

 

「大切なあの方に信頼される。これ以上の喜びはありません。さぁ、かかってきなさい。南光太郎の剣の力、その身をもって知りなさい!」

 

セフィリアの体が揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジトの壁に穴を開け、侵入を果たした3人。

屋内ではこれ以上ライドロンで進むのはできそうになかった。光太郎はライドロンに礼を言い、イヴとトレインと共に狭い通路を走る。そして目の前の不思議な扉が行く手を遮っていた。

 

「…手術室?」

 

イヴは目の前の扉を見て呟く。光太郎は改造手術をする場を想像した。当時のことを思い出したくはないが、今はそんな事を言っている場合ではない。光太郎たちはその部屋の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

光太郎の目の前には見渡す限りの砂漠が広がっていた。

 

「な、なんだここは!?」

 

そして気付く。今まで自分の隣にいた筈のイヴとトレインの姿が無いことに…。2人の名を呼ぶが、声は返ってこなかった。

 

光太郎の前に蜃気楼のように現れた人物たちがいた。光太郎を見知った顔だ。

 

ケルベロスのナイザーとベルーガだ。

しかし光太郎は構えをとり、目の前の2人を警戒する。目は虚ろで妖気すら放っていた。

 

「うゔゔううう…」

 

歯を剥き出して唸る2人。

突如、ベルーガが持っていた巨大バズーカを振り上げて一足飛びで光太郎に向かってきた。そして振り下ろされるオリハルコン製のバズーカ。間一髪かわした光太郎だが、光太郎がいたであろう場所は巨大なクレーターができていた。人間の力ではない。

 

その攻撃をかわした光太郎だったが、その身を背後からナイザーに羽交締めされてしまう。振り解こうとするも、怪力のためか身動きすらとれなかった。

 

「やめろ! 俺は2人と戦うつもりはない!」

「うゔゔうううあああああ!!」

 

ナイザーは吠えて光太郎の腕を取り、そのまま床に叩きつける。

 

 

 

しかし叩きつけられる瞬間、光太郎の姿はRXへと変化していた。RXは体を捻って着地し、反対にナイザーの体を遠くへ投げ飛ばす。

 

だが尋常な様子でない。

一体2人に何が起きたのか逡巡するRXに、別の声が響いてきた。

 

「や、やぁ、南光太郎。僕が用意した兵器は楽しんでもらえているかな?」

「この声は…ドクターか!」

「ひぃ…、ふ、ふふふ、ナンバーズのその2人にはゴルゴムの怪人の因子を組み込んである。更には超再生能力も加わっている。何時ぞや君が戦ったゴルゴムの怪人よりも、遥かに強力になっていると考えてもらっても構わないよ? 今度は…今度こそはお前が僕に跪く番だ!」

 

ドクターの声は笑い声と共に消えていった。それと同時にナイザー、ベルーガ両名の体が膨れ上がり、まるで獣人のような様相に変化した。

 

ナイザーはRXの目の前に飛び、持っていたトンファーを回す。一瞬で何撃もの攻撃を受けたRXの体には火花が散った。

 

「くっ…!」

 

膝をつくRX。その場を跳躍したナイザーの影から、バズーカを構えるベルーガの姿があった。発射される巨大な弾丸。RXはその弾丸を片手で受け止める。ひしゃげる弾丸は火を吹き、辺りを爆炎が包んだ。

 

その光景を見て、ナイザーとベルーガは更に唸る。

 

「「うゔゔう…コロセ…コロセ…」」

 

爆炎の中で影が動く。

 

「「コロセ…コロセ…オレたちを…コロセ……!」」

 

ナイザーとベルーガは獣の表情になりながらも涙を流す。

 

血の涙を…。

 

 

 

 

 

 

燃え盛る炎の中から手が伸びる。

だがそれはRXのものではない。

 

 

 

「体を改造され…自らの意思とは無関係に操られるその無念と悲しみ! 全てこの身で受け止めよう!」

 

ロボットのようなフォルムの体が、炎の中で輝いている。

 

 

「…アールエックス! ロボライダー!」

 

炎が全てロボライダーの体に取り込まれ、体の輝きが消える。

その場に立っていたのは炎の王子だった。




ナンバーズの悲しみを受け、変化したロボライダー。

だがロボライダーの前に改造されたナンバーズがいるように、イヴとトレインの前にも脅威が立ちはだかっていた!

ナンバーズの槍がイヴを襲う!!

次回『あの人に並び立つ為に』
ぶっちぎるぜ!!

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