‐基本スペック‐
身長 198.8cm
体重 88㌔
パンチ力 70t
キック力 120t
ジャンプ力 60m
走力 時速315キロ
水中活動時間 30分
これに勝てる人間がいると思いますか?
ティアーユ邸を出発したのは夕刻となった。
星の使途の面々は、光太郎が仮眠をとっている間にクロノスのベルゼーが引取りに来たらしい。その頃にはエキドナやエーテスも気絶から目を覚ましていたが、現在の星の使途の居場所やゴルゴムのアジトを聞き出すことはできなかった。エーテスは昨夜のショックで言葉を忘れた猿に戻ってしまっており、エキドナも恐怖で精神を病んでしまい、幼児化していた。その原因が光太郎であることをトレイン達から聞かされたベルゼーは「程ほどにするように伝えておけ」と言われたそうだ。それを聞かされた光太郎は自身がそんな精神を追い詰める程追い詰めたつもりはないと首を傾げていたが・・・。この一件を報告されたクロノスの上層部は更に光太郎への恐怖を強め、中には「太陽の化身だ」と神格化する者も現れるが、それは別の話である。
光太郎が外に出るとスヴェンの車とは別に高級車が一台停められていた。
こちらのメンバーが増えたことを知り、ベルゼーが「好きに使え」と残していったそうだ。
中は高級車だけあって座り心地も良い。次の街への道中はこの2台で向かうことになり、片方がスヴェン、トレイン、キョーコ、シャルデンが乗り、光太郎が運転する高級車にはイヴ、セフィリア、リンスにティアーユが乗る。女性ばかりで窮屈に感じてしまう光太郎はトレインかシャルデンを誘ったが、開口一番拒否されてしまった。二人を責めてはいけない。誰が好き好んで修羅場に飛び込むものか。だが自ら置かれている状況に気づいていない光太郎は、二人に何か嫌われることをしてしまったのかな、と検討違いの事で悩んでいた。そして光太郎のバイクはティアーユの許可を得てティアーユ邸で預かってもらうことになった。
「次はどこの街に行くの?」
助手席に座るイヴが訊ねる。
「スヴェンと話し合ったんだが、北の港街で夏祭りが行われるらしい。今のところ星の使途やゴルゴムの情報もない。その情報を仕入れる為にも色んな街に行った方が収集もしやすいだろうってさ。とりあえず、そこの街なら人も大勢集まるだろうし、情報も集まるかもしれないから、そこに向かうことになってるよ」
光太郎は前方に見えるスヴェンの車に追従しながら、港街の情報が載ったパンフレットをイヴに手渡した。そのパンフレットには夜の夜空に咲く大きな花火の写真が写し出されていた。
「・・・花火・・・?」
「イヴは花火見たことないのかな。それならびっくりするだろうな」
「へー、露店もたくさん出るのね。私も何か買っていこうかしら。光太郎、荷物持ち頼むわよ」
光太郎がイヴと会話していると、後ろからリンスがパンフを覗き込み、そう割って入った。
「ト、トレインに頼みましょう」
「何よ、こんな美しいレディの荷物持ちができるって光栄なことなのよ?」
「リンス、光太郎をいじめちゃだめ」
「イヴちゃんはホント優しいし可愛いし、光太郎にはもったいないくらいよ。それにしてもティアーユさん? 星の使途に狙われてるせいで、あなたも苦労するわね。狙われていなければあの場でゆっくりできたのに」
「いいんですよ、リンスさん」
リンスは隣に座るティアーユにそう声をかける。だがティアーユはその事自体は気にしていないようだ。
「私もできるなら・・・イヴともう少し一緒にいたかったですし・・・」
「ティアーユ・・・」
「そこの街では一緒にお店を見て回りましょうね、イヴ」
「・・・うん!」
イヴはそう頷いて微笑んだ。
「・・・それに、光太郎さんのカラダにも興味ありますし・・・」
ティアーユのその小さな呟きが聞こえ、運転する光太郎は背中に冷たい汗をかいたのだった。
◆◇◇◆
ゴルゴム本拠地。
三神官ダロム・バラオム・ビシュムの三人は先日のRXと怪人との戦いのデータをとっていた。ゴルゴムの怪人、ヒョウ怪人とサボテン怪人はRXがフォームチェンジしたバイオライダーに文字通り手も足も出せず、一刀の元に倒されていた。
「・・・データでは仮面ライダーBLACKの時よりも3倍近い数値が出ている」
ダロムはデータ解析された資料に目を通す。
「あのバイオブレードという代物がサタンサーベル並の切れ味であるというなら、一刀でやられるのはまだ分かる。納得はいかんがな! だが攻撃が通用しないとはどういうことだ!?」
「落ち着きなさい、バラオム。それを判明させるためにデータを集めているのです」
「ビシュムよ、これが落ち着いていられるか! このままでは我らの同胞が無駄死によ!」
興奮を抑えきれないバラオムはそう吠える。
「・・・ヒョウ怪人が体当たりを仕掛けた瞬間、僅かであるが、ゲル状に変化させている。おそらくその状態でないと攻撃の無効化はできないのだろう。ならばそれ以外の時を狙うしかあるまい」
「ほぉ・・・弱点さえ分かれば我らの敵ではない! 要はそれをさせない状況に追い込めば良いのだな?」
「まぁ、待て。まだヤツのデータは不足している。万全を期すのだ。またあの時のような辛酸を舐めたいのか?」
ダロムはいきり立つバラオムをその言葉で抑える。彼らは皆、別世界での記憶が残されている。仮面ライダーBLACKに倒された記憶が鮮明に残っているのだ。
「いずれ・・・いずれシャドームーン様が復活なされる。その時までに南光太郎の全てのデータを集め、無力化する策を練る。今度こそ、奴を確実に仕留めるのだ」
ダロムはバラオムとビシュムにそう告げる。
自らが死すとも、世紀王シャドームーンの礎として・・・。
その光景を、小さな蟲が観察していた。
そしてその蟲が見た映像は、主に届けられる。別の空間を創り出し、そこでこの映像を見ているのは残された星の使途のメンバーだった。ほとんどのメンバーが離反し、捕らえられたため、現在はリーダーのクリードとシキ、ドクターの3人しか残されていなかった。
「南光太郎・・・恐ろしい男だ。ゴルゴムとヤツをぶつけるのが一番の良策ではないか?」
「クリード、シキの言う通りだ。あの男がいなければ、星の使途もここまで崩れることはなかったと思うよ? 人外には人外をぶつけるのが一番さ」
「・・・そうだね、ドクター。僕らはまだ、人を捨てきれていない。この世界を創り変え、その頂点に立つにはこの身はあまりにも脆弱だ。だから捨てなければならない。何百年、何千年、何万年という時間をも制し、醜い人間を屠る力と体をボクの物に! 南光太郎、あの体こそがボクの理想だ! あの男こそが人類を支配するのに相応しいよ、あはははははは!!」
クリードは映像に映る南光太郎の姿に手を伸ばし、拳を握る。
その姿を見て、ドクターも笑う。
「怪人の持つ遺伝子は解明した。これで僕らのもつナノマシンを併用すれば、数万年を生きる体に瞬間再生の生命力をもった生物が作り出せる。あとはゴルゴムとの戦いで疲弊した南光太郎を倒し、件のキングストーンというものを奪えば・・・クリード、キミはこの星の最後の支配者となることができる。ふふふ、その瞬間が楽しみだよ」
「それでクリード。これからどうする? 南光太郎とトレイン=ハートネットはしばらく静観するのか?」
「・・・そうだね。あの男が傍にいる以上、トレインにもスヴェン=ボルフィードにも近づくことはできないだろう。ならば最初の目的通り、クロノスを殲滅する。シキ、君はゴルゴムの動向を監視していてくれないかな。そしてもし南光太郎を倒せそうな機会があれば、彼らより先にキングストーンを奪ってもらいたい」
「・・・了解だ」
ゴルゴムと星の使途。
二つの組織は表面上は協力関係にあれど、その内側は相容れないものだった。
果たして、ゴルゴムはただの人間である星の使途を捨て駒へと利用できるのか。それとも星の使徒が獅子身中の虫としてゴルゴムという組織を食い破るのか。光太郎たちの考えの及ばないところで、見えない戦いが始まっていた・・・。
◆◇◇◆
ティアーユを救う戦いから3日後、光太郎たちは港街に辿り着いていた。
今日は一日中祭りを楽しめるらしく、到着したのが9時過ぎであるというのに、多くの観光客で賑わっていた。
「光太郎、お店がいっぱい! あ、あっちにはアイス屋さんもあるよ」
目を輝かせるイヴ。そんな子どもらしいイヴは、光太郎を和ませた。ゴルゴムの事を考えると、戦いのことしか頭にない自分がいる。でもそうじゃない。自分が戦うのは、目の前ではしゃぐイヴたちのような子どもたちのため。そして平和に暮らす人々のためなんだ。彼らや彼女らの笑顔を見るだけで、力を与えてもらえる気がした。そう考えていた光太郎の腰を、トレインが軽く叩いた。
「しけたツラしてんなよ。せっかくの祭りなんだ、楽しもうぜ」
「トレイン・・・」
「無愛想なツラしてると、気分まで病んでくるぜ? ほら、姫っちをエスコートしてやれよ」
「あ、ああ」
光太郎はトレインに促されてイヴに声をかけ、近くのアイスクリームを一緒に買いに向かった。それを見て微笑むトレインに、リンスが口笛を吹いて冷やかした。
「何よ、トレイン。結構かっこいいじゃない」
「だろ? あいつにとっちゃゴルゴムってやつはよっぽどの存在らしいな。そいつが現れてから、光太郎は悪い未来ばかりを考えてやがる。顔見りゃ分かるぜ。あいつには余裕が必要なんだよ」
「まぁ、お前がそう言うから、光太郎に尤もな理由を話してこの街に来たんだけどな」
トレインの隣でスヴェンがタバコに火をつけてそう言う。
「ありがとよ、スヴェン」
「気にすんな、光太郎にはオレも世話になってるしな」
「姫っちやキョーコの笑顔を傍で見りゃ、光太郎もしけたツラも消えるだろうぜ。なんせ、笑顔っていうのは感染するみたいだからな」
「へー、あんたがそこまで考えてたなんて意外ね。それでトレイン? そこに私の名前が入ってないのはどうしてかしら?」
「お前の笑顔は裏がありそうで怖いんだよ」
「なんですって!」
トレインがリンスによってシバかれる光景を横目に、耳の良いセフィリアは先程の話に自分が含まれていないことに軽くショックを受けていた。自分の笑顔はあまり良くないものなのだろうか。セフィリアは周りを見渡し、誰にも見られないように壁に向かって口角を上げて笑顔の練習を始めた。だが、それを見てしまった人物がいた。セフィリアはギギギギと首を動かし、その人物を睨む。
「・・・見ましたね?」
「いえ・・・気のせいデス」
「私の目を見て答えなさい、シャルデン。どうなのです?」
セフィリアは笑顔を浮かべてシャルデンに近付く。その笑顔は先程話に上がっていたリンスのもの以上に怖いものだった。
今日もシャルデンの胃は大ダメージだ!
光太郎たちが街中を散策していると、広い場所に出た。そこでは多くのエンジン音が聴こえている。傍にいた人に訊ねると、今日は一年に一度のバイクレースも行われるという話だ。そして賞金は300万イェン。飛び入りの選手も募集しているということで、選手たちは各々マシンのチェックをしている様子だった。
「光太郎も、バイク持ってきてれば出れたのにね」
「こればかりは仕方ないさ。運が無かったってことだな」
イヴにそう言われるが、興味はあった。傍のバイク店を見ると、飛び入りの客のためにバイクを貸出していたり、安く売っているようだ。賞金額を聞いてスヴェンが悩んでいる。賞金は魅力だが、スヴェンはバイクが得意ではないらしい。スヴェンはなけなしの財布の中身を確認し、光太郎が出場するならバイクをレンタルするという。しかし急にレンタルして出場することにしてもバイクのクセもメンテ具合も分からない。スヴェンの為に賞金をとってやりたい気持ちはあるが、こればかりは難しいだろう。
「・・・アクロバッターがいれば、良かったんだけどな」
光太郎が以前の世界に残された相棒を思い、呟いた。
すると目の前の空間が歪み、亀裂が入る。
そして亀裂が割れ、飛び出してきた影があった。
赤い目に青と黄色のフォルム。
「ライダーライダーライダー」
突然現れたそれは光太郎に擦り寄り、そう音声を発した。
それは光太郎をゴルゴムやクライス帝国といった激しい戦いを支えてくれた相棒。
アクロバッターという名のバイクであった。
久しぶりの再会を果たす光太郎とアクロバッター!
果たしてバイクレースの結果は!?
そしてアクロバッターの出現はイヴたちに何をもたらすのか!
次回 『やりすぎた』
ぶっちぎるぜ!!