転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

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やべえ、ありゃチートだった。




流星隊フルボッコ

「こいつはすげえ」

 

布一枚でほぼ裸姿のエーテスは手足の感触を確かめる。布の切れ目から生脚が見え隠れする度に、女性陣は目を逸らし、男性陣は思わず光太郎を睨む。決して光太郎が悪い訳ではないのだが…。光太郎の姿をしたエーテスは思い切り床を殴ると大きな音と共に床は軽く陥没した。

 

「今ならプロレスラーでも簡単に殺せそうだぜ!」

 

星の使徒にとって当初の目的はティアーユの知識であったが、南光太郎の力を手に入れる事ができるとは嬉しい誤算だった。南光太郎の力が相手に渡った。それは同時に光太郎以外のメンバーの絶望をも意味する。味方であればこれ以上ない力であるが、敵に回った場合は対抗策が全くない。だが光太郎はそんな事で絶望をしない。今までにもこれ以上の試練を乗り越えて来たのだ。

 

光太郎は天に手を掲げる。

 

「俺は絶対に負けん…変…身…!!」

 

光太郎の体が輝く。そしてRXがポージングをする。

 

「俺は太陽の子、仮面ライダーBLACK! アール、エックス!! 星の使徒よ! 貴様らがどんな手を使おうと、俺がその野望を打ち砕く!」

 

「言ってな! 貴様自身の力、たっぷり味わいな!」

 

エーテスも光太郎と同じように天に手を掲げる。

 

「変…身…!」

 

 

 

 

 

 

 

しかしエーテスの姿には何の変化もなかった。

流石の(タオ)の能力でも、光太郎の姿や頭脳はコピーできてもキングストーンを生み出すことは不可能であった。だが星の使徒側はキングストーンという存在すら知らない。光太郎と全く同じ条件になったと息巻いていたエーテスだが、この状況に急に弱腰になっていた。

 

「な、何故だ! くっ、お前たち、やってしまえ!」

 

RXの前に流星隊が立ちはだかる。

 

「我々のアーマーは強化アーマーだ。貴様らのどんな攻撃でもビクともしなー「RXパンチ!」」

 

 

バキッ

 

 

 

先頭で余裕ぶっていた男はアーマーを粉々にされ、建物の壁を突き破って飛んでいった。他の流星隊も思わず絶句する。

 

「どうやら自慢のアーマーも大した事ないようですね」

 

セフィリアがサタンサーベルを振るう。自慢であったはずのアーマーはまるで豆腐のように切断されていく。その戦闘を見て、イヴは自らの髪を刀のように尖らせた。より細く、より鋭く意識して。

 

「ナノブレード…」

 

分子レベルで鋭利にされたその刃は、如何に強固なアーマーといえども耐える事ができない。サタンサーベルには劣るも、アーマーを切り裂いていった。

 

スヴェン銃で、シャルデンは血でアーマーの関節部を狙った攻撃を行っている。

 

 

 

 

 

 

そして流星隊の半数がRXによって流星にされた頃、エキドナはエーテスを連れてGATEを開いた。

 

「くっ、この化け物どもが。だが覚えてなっ! クリードは更なる力を得てあんたたちを殺すよ! 今のうちに勝利の余韻を楽しんでおくんだね!」

 

エキドナ、エーテスは流星隊を置き去りにし、GATEに飛び込み姿を消す。

 

「くっ、逃がすか! セフィリアさん、イヴ、みんな、ここは任せる! 俺は2人を追う!」

 

「行ってください、光太郎さん。私達なら問題ありません」

 

「うん、光太郎に任されるのは、嬉しいの」

 

セフィリアとイヴがそう言って流星隊に対峙する。他のメンバーも自分を快く送り出してくれる。今までは1人で戦う事が多かった。ゴルゴムの時も、クライシス帝国の時も…。仲間がいるというのはこんなにも心強いのかと、RXは仮面の下で微笑んだ。

 

バイオライダーにチェンジする。そしてゲル化し、超高速でGATEの行く先を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物から少し離れた場所、そこにエキドナ達は身を潜めていた。

 

「こうなってしまってはティアーユを狙うのは諦めるしかないね。それにしても…奴らはどんどん強くなってる。奴らに勝つにはドクターの研究に期待するしかないようだね」

 

当面の危機は脱したと思い、安堵していた2人。しかし、相手が悪い。

 

 

「見つけたぞ!」

 

バイオライダーが2人の前に現れる。

 

「くっ、しつこいね!」

 

護符を使用して能力を強化したGATEを開き、すぐに2人は飛び込む。

 

 

 

 

 

 

 

2人は距離を置いて待機させておいた飛行船の中にいた。先ほどの場所から10キロ程は離れている。ここまで逃げれば流石の奴も諦めるだろう。

 

「おい、本当に大丈夫かよ。なんか獣の本能っていうか、防衛本能っていうか…危険信号発してるんだけどよ…」

 

「ここまで逃げれば奴も追ってこないだろう?」

 

エーテスは見えない影に怯えている。エキドナは考え過ぎだと苦笑したが、その表情もすぐに凍りついた。エーテスの背後にバイオライダーが立っているのだ。

 

「おい、エキドナ? なに固まってるんだよ。何か喋れよ、こえーじゃねえか」

 

エキドナは何も言わずにGATEを開き、1人で消えてしまった。1人残されたエーテスは何事かと不意に振り向く。そして目の前の男を眼前に迎え、大口を開けて腰を抜かした。

 

「な、な、な、なんでっ!?」

 

 

 

 

 

 

飛行船から少し離れた場所。

 

森の中でエキドナは空を飛んでいる飛行船を見上げる。

思わずエーテスを置いて1人で逃げてしまった。だが心中は「逃げなければ」としか考えられなかったのだ。アレは相手にしてはいけない存在だ。こんな場所じゃダメだ。もっと奴から離れないと…。

 

エキドナが再度GATEを開こうとした瞬間、飛行船が爆発した。真夜中の空が昼間のように一瞬明るくなった。残骸が火を灯って落下していく。だが何者かがその火を一瞬にして消していく。誰があんな大それたことを、と考えるまでもなかった。エキドナの頭の中には「アイツがやったんだ」と答えを出していた。

 

残してきたエーテスが気になるが、一刻も早く離れよう。

 

GATEを開いて中に入ろうとすると、背後から「待てっ!」という声が聞こえ、エキドナは悲鳴と共にワープした。ワープした先は先ほどより5キロ離れた場所。今度は護符を使用してもっと遠くに逃げようと考えるが、焦って震える手はなかなか護符を取り出せないでいた。

 

こわい こわい こわい こわい こわい

 

心中はそれを繰り返している。

 

そしてエキドナの予想通り、目の前にゲル状の物が降り立ち、バイオライダーに姿を変える。

 

「逃がすものか!」

 

「くっ、しつこい男は嫌われるよ!」

 

構えるバイオライダーだったが、2人の間に何者かが現れる。

バイオライダーは見覚えがあった。ゴルゴムの怪人、ヒョウ怪人とサボテン怪人だ。

 

「所詮は人間よ。逃げるしか能がない」

 

「南光太郎よ、蘇った我らの力、思い知るがいい!」

 

人間とは違う異形。

これがゴルゴムの怪人なのだ。

ヒョウ怪人はバイオライダーに向かって凄まじいスピードで突進する。

 

ヒョウ怪人は強靭な脚力をもつ。これを生かした突進はビルの壁をも容易に突き破る。しかしバイオライダーはビルではない。ヒョウ怪人の突進はバイオライダーをすり抜けてしまう。

 

「は?」

 

「バイオブレード!」

 

振り向いたヒョウ怪人の目の前には、剣を振り上げているバイオライダーの姿を月光が照らしていた。そして一刀の元に両断されるヒョウ怪人。

 

爆発を背に、次の怪人を屠ろうとサボテン怪人に相対するバイオライダー。だがサボテン怪人も大人しく殺されるのを待つばかりではない。

 

「溶けてなくなれ!」

 

身体中からサボテン針をバイオライダーに向けて発射する。

この針には溶解作用があり、どんな鋼鉄でも溶かしてしまうのだ。しかしそんな無数の針はバイオライダーの体をすり抜けていく。

 

「針が全部奴の体をすり抜けてしまうぞ!?」

 

そしてそれがサボテン怪人の最後の言葉となる。

 

「スパークカッター!」

 

バイオブレードを縦一文字に斬り上げ、サボテン怪人は分断された。

 

 

倒れているサボテン怪人の骸を見下ろすバイオライダー。そしてその目がエキドナに向いた。

 

 

 

 

 

エキドナは咄嗟に護符を取り出し、GATEを潜る。

今度は先ほどより30キロ以上離れた街の中にいる。これならもう流石に逃げ切れたろうと、エキドナは安堵から腰が抜けてしまった。

 

「…こわかった…」

 

エキドナは思わず呟く。

 

エキドナはこんな性格ではないが、あまりの恐怖で思わず幼児退行をしてしまっているのかもしれない。

 

恐怖で涙が滲んでしまっている。それを拭おうと右手を顔に運ぼうとした時、何者かにその腕を掴まれた。エキドナは過呼吸になりながらも、ゆっくりとその手に視線を移す。暗闇を月明かりが照らす。青い手だった。そしてその手から腕、腕から顔に視線を上げていく。赤い大きな目がこちらを見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

バイオライダーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に逃さん!!!」

 

 

 

「いやああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

夜の街に大きな悲鳴が響き渡る。

そしてエキドナは泡を吹いて失神してしまった。

 

 

◆◇◇◆

 

朝陽が昇る。

建物の外には、アーマーを無残に切り刻まれ裸にされた流星隊のメンバーと、恐怖で顔を引きつらせながら失神しているエーテスとエキドナがロープで捕縛されていた。

 

エキドナとエーテスはどんな酷い目にあったのかと気になったスヴェンは光太郎に尋ねるが「ただ後を追っただけ」だと言う。その程度でいい大人が、それも星の使徒ともあろう者がここまで精神を砕かれるかと疑問に感じたが、その後の説明で合点がいった。数キロ離れた場所にワープするも(ことごと)く追いつかれれば、精神も磨耗するだろう。しかも光太郎の力の恐ろしさをよく知っていれば尚更だ。

 

そして光太郎は皆に途中でゴルゴムの怪人に襲われたことを伝えた。軽く一蹴していたために襲われたという表現が正しいかはさて置き、今後も怪人が襲ってくる可能性を皆に示唆した。

 

「ゴルゴム…ですか。そんな組織があったんですね」

 

ティアーユが呟く。その呟くに光太郎は暗い表情を浮かべてしまう。自分の存在がゴルゴムを、そしていずれはクライシス帝国を引き寄せてしまったかもしれないのだ。光太郎は自身のこの世界への贖罪に全てを伝える。自分の存在が脅威となる組織を引き寄せてしまったということを。イヴやセフィリアはそれを聞いて、光太郎に非はないと寄り添ってくれた。そして目の前のティアーユも小さく頷く。

 

「あなたの責任ではありませんよ」

 

「しかし、俺がこの世界に来なければ、ゴルゴムもクライシス帝国も来なかったはずなんだ」

 

「この世界の神様…科学者としては信じられませんが、もしも本当にそのような存在の人がそう言ったとしても、それを証明などできません。あなたがこの世界に来なくても、その組織がこちらの世界に現れないという保証はありますか?

あなたが本当にその組織と戦う運命にあるのなら、その組織があなたを引き寄せたという可能性も出てきます。どちらが正解なのか、因果性のジレンマというものですが、これの答えを導き出すには時間を要します。ですが、私は信じます。あなたはこの世界を守る為にやってきたのだと…」

 

「そうだよ、光太郎。光太郎のおかげで今の私がいる。光太郎はみんなに光を…希望をくれる人。だから私は信じるよ。光太郎はきっとみんなを守りにきたんだって」

 

「光太郎さん、それ以上自分を責めるのはやめて下さい。光太郎さんの話だとゴルゴムというのは別の世界で世界を裏で管理支配していたと聞きました。こちらでもクロノスの調査で、クロノスと競うように世界を裏で管理している組織の影が存在しているのが分かっています。この組織ならば数年前から存在しています。もう少し時間をかければ全てを明るみに出せるでしょう」

 

イヴとセフィリアが光太郎の手を取り、そう微笑む。そんな3人の言葉を聞き、光太郎は青空を見上げ、目を閉じる。

 

「ありがとう」

 

光太郎はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

その光景を見て、話を聞いていたシャルデン。

 

「我らの勇者は大変な立ち位置にいるようデスね。ゴルゴム…クライシス…両者と対立することでこの世界が良い方に向けば良いのデスが…。キョーコさん、どうかしましたか?」

 

シャルデンの隣でぽーっと光太郎の顔を見つめているキョーコ。

 

「陰のある光様もか〜っくいいっスね〜♡」

 

マイペースなキョーコにシャルデンは思わず苦笑した。

 

その後、湖の畔で居眠りをしているトレインを見つけ、スヴェンやリンスから小言が飛ぶ。

 

しかし「様子見てたけど、俺の出る幕なさそうだった。それに何だか相手が憐れに思えてきちまってよ」と言うトレインに、スヴェンやリンスも顔を見合わせて納得してしまっていた。




エキドナ、エーテス、そしてその他を捕らえた光太郎たち。

そして星の使徒がティアーユを狙っているという事情を知り、ティアーユも光太郎たちと行動を共にする。

星の使徒やゴルゴムの情報が全く入ってこない一同は、警戒しつつも休日を過ごす。そんな折、目の前の空間に亀裂が入った。

次回 『現れた相棒』
ぶっちぎるぜ!!

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