転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

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コピー猿エーテス

話を聞くと、スヴェンが買い出しに出たところ(昨夜で食材を使い切ってしまったらしい)、クリードが人目も気にすることなく銃口を向けて発砲したという。剣士であるクリードが発砲と聞いて、違和感を覚えた。だがそれも続くスヴェンの説明で理解した。クリードが撃った弾は、星の使徒の古城に現れた人狼に変化させたナノマシンが混入された弾だという。それをスヴェンが受ける直前にトレインが庇った。弾丸そのものは極小で、小さな痛みしか感じなかったらしいが、その弾丸を受けた事が問題だった。流石のクリードも、執着していたトレインが人狼のような化け物に変わるのは耐えられないと、すぐに姿を消してしまったらしい。

 

そしてアジトで様子を見ていたところ、急に体が縮んでしまったという。人狼の時と同じナノマシンであれば、バイオライダーでナノマシンを破壊し、治すことは可能だ。当のトレインは「別にこのままでもいいんじゃね」と言うが、とりあえずはこちらに向かうことになったようだ。

 

「ティアーユさん、すみません。これから大勢押しかけてしまうことになりそうです」

 

「いえ、それは別に構いませんが…」

 

急に仲間がやってくることになり、家主であるティアーユに詫びる光太郎。しかしティアーユはそれを了承したにも関わらず、何か考え事をしていた。そして意を決したのか顔を上げた。

 

「光太郎さんは今、星の使徒と言われましたよね?」

 

「ええ」

 

「私は星の使徒に勧誘を受けています」

 

ティアーユは衝撃的な発言をした。光太郎もイヴもリンスも驚いている。しかしリンスの調べた情報が確かなら、ティアーユはナノマシンの権威。星の使徒がナノマシンを扱っているのなら、それに関するスペシャリストを加えようとするのは当然の流れではあった。

 

「でも…ティアーユは星の使徒じゃないんだよね?」

 

「その通りですよ、イヴ。私は命を弄ぶ行為に二度と手は貸さないと誓いました。その方たちにはお引き取り願いましたよ」

 

「でも、彼らがそう簡単に引き下がるとは思えない」

 

光太郎はクリードのトレインに対する執念深さを思い出す。それは決して諦めず、どんなことをしても手に入れるという呪いにも似た狂気に取り憑かれている。光太郎が心配事を口にすると、ティアーユは思い出したように平然と語る。

 

「あ…そういえばまた日を改めて来られるそうです。回答は明日と言っていました。『命が惜しければよく考えろ』と言われましたけど、殺されちゃうんでしょうか?」

 

自らの命の危機だというのに、首を傾げてクエスチョンマークを浮かべるティアーユに光太郎は頭を掻いた。だがティアーユの話が真実であれば、その場で星の使徒を抑えることができるかもしれない。全員で向かってくるとは思えないが、今は少しでも戦力を削いでいかなくてはならない。

 

「俺が、あなたを守ります。いや、俺だけじゃない。イヴや他の仲間たちも、あなたを絶対死なせやしませんよ」

 

「え…イヴ、あなたも戦うの?」

 

「大丈夫だよ、ティアーユ。私、これでも強くなったんだよ?」

 

「イヴ…」

 

「ティアーユさん、イヴを信頼してやって下さい。イヴは本当に強くなっています。それに俺の仲間たちも頼りになりますからね」

 

光太郎はそう笑う。

そう言ってもらえて、イヴは内心どころか嬉しさが顔に出てしまっている。自分は光太郎に信頼されている。そう思うだけでもっと強くなれる気がした。

 

「まずは俺の仲間のトレインに撃ち込まれたナノマシンを破壊して、元の姿に戻さないといけません。これはなんとかできるので、星の使徒のことを考えましょう」

 

「え、あの…ナノマシンを破壊するって、どのようにですか?」

 

ティアーユの疑問も尤もだ。ナノマシンとは100nmサイズの機械である。それは細胞や細菌よりも小さく、簡単に破壊できるものではない。理論的には可能ではあるが、宿主の体にも大きなダメージを与えることになってしまう。そんなティアーユの疑問に、光太郎はどう答えるべきか悩んでしまった。だが隣に座るイヴが「ティアーユなら大丈夫。光太郎を怖がることはしないよ」と袖を引っ張って言った。光太郎は苦笑し、ティアーユに全てを話すことを決め、その場でバイオライダーに変身した。

 

「これが、バイオライダーです」

 

もちろん、いきなり姿の変わった光太郎にティアーユは驚く。しかし怖がって距離を置くようなことはせず、立ち上がってバイオライダーに近寄り、体をペタペタと触りだした。

 

「これは…ナノマシンによるトランスですか?」

 

「いえ、キングストーンの力です」

 

「キングストーン?」

 

バイオライダーは自分の過去を語る。ゴルゴムにキングストーンを埋め込まれ、同じキングストーンを埋め込まれた親友と戦わされたこと。多くの怪人を倒してきたこと。そして怪魔界からやってきた組織とも戦ったことを…。バイオライダーが語った話はティアーユにとっては現実感が全く感じられないものである。しかし、不思議と信じられた。それは光太郎という男の人間性によるものか。

 

「それで…ナノマシンはどうやって破壊を?」

 

ティアーユは先の疑問を投げかける。バイオライダーは頷き、体をゲル化させた。ティアーユはこれにも驚き、ゲル化したバイオライダーをペタペタ触る。それはまるでオモチャを与えられた子どものようであった。ゲル化を解くバイオライダー。

 

「先ほどの状態で対象に取り付き、細胞融合をさせて同化します。そうすれば体の中のナノマシンも感じ取ることができました。あとはこの力でナノマシンを除去できます。自分の体を小さくしてナノマシンを破壊する方法もありますが…」

 

「細胞融合…体の縮小…他には? 他には何ができるんですか?」

 

「えっと…毒などの抗体をこの体で作り出すとか…かな?」

 

そこでバイオライダーは気付く。目の前の女性の眼がキラキラ輝いていることに。それもそのはず、ティアーユはバイオ科学の権威でもある。そんなバイオそのものと言えるバイオライダーが目の前にいるのだ。ティアーユはバイオライダーの手を握った。

 

「光太郎さん、こちらに来てください。縮小ってどれくらいのサイズになれるんですか?」

 

ティアーユはバイオライダーを立たせ、別の部屋に連れ込む。イヴとリンスも急変したティアーユに戸惑いながらも後を追う。その部屋は小さいながらも研究室であった。これにはバイオライダーもビックリである。バイオライダーは科学者なら誰でも口から手が出るほど欲しい逸材だ。

 

逃げ出したくなったバイオライダーだったが、ティアーユ曰く能力の正確な把握をしたいとのことだった。実験される訳ではないので、と、ティアーユの気迫に負けてそれに付き合うことになった。

 

 

検査の結果、ナノマシンは0.000 000 001メートルであるのに対し、バイオライダーの縮小限界は0.000000000000000000000001メートルとなった。単位の値はヨクトメートル。これも以前に比べて縮小限界が伸びてきている。このままいけばそのうちに10のマイナス35乗という宇宙最小単位とされている値までいくのかもしれない。細胞融合に関しても対象者には副作用もなく、バイオライダーの力であれば毒などの症状も抗体を作れて治療も可能。そしてこの世界には抗体がない為に、正常な働きをしていない為に難病にかかり命を落とす人々がいる。そんな難病を抱えている人たちに、バイオライダーの力は光となるものだった。誇張し過ぎかもしれないが、バイオライダーは全ての病気の治療法となる可能性を秘めていた。検査でそれが判明し、バイオライダーは光太郎の姿に戻る。そんな光太郎にティアーユが手を取った。

 

「光太郎さん、私はあなたが欲しいです」

 

その言葉を聞いてイヴが間に割って入り、必死になって拒否していたのはもはやテンプレであった。

 

 

 

その頃スヴェンの車の中。

 

「ハッ、光太郎さんの身に危険が迫ってきている気がします!」

 

「キョーコも感じました! ドロボウ猫の予感です!」

 

セフィリアとキョーコが更にスピードを上げるようにスヴェンに言いつけていた。

 

 

◆◇◇◆

 

 

その日の夜には全員が揃った。

こちらにやってきた後半組はイヴとティアーユの顔を見てあまりにそっくりで驚いていたが、前半組からすれば子ども姿のトレインに驚かされた。すぐにも元の姿に戻そうとしたが、トレイン曰くもう少し子ども姿で楽しみたいと言う。「電車も映画も子供料金でいけるぜ」と喜んでいる始末だ。そんなトレインに、相棒のスヴェンもため息を零す。まぁ、滅多になれる経験ではない。暫く楽しみたいという気持ちは分からないでもない。しかし翌日には星の使徒がティアーユを狙ってやってくるのだ。しかも時間を指定していない。日付が変わった瞬間に攻めてくることもあり得る。トレインが今の状況を楽しむのは少し後になりそうだ。

 

大勢の客を持て成そうとティアーユが台所に立とうとしたが、それはリンスによって阻止された。ティアーユ曰く「結構美味しい」らしいのだが、あの黒いヘドロのようなものを食す勇気は流石の光太郎もない。この日の夕食は光太郎がシャルデンに頼み、作ってもらうことになった。

 

深夜、星の使徒の襲撃に備えて光太郎は建物の外で警戒をしていた。建物の屋上にはセフィリア。ティアーユの傍はスヴェンに任せてある。襲撃してくる時間が分からない為、流石に丸一日寝ずに備えるわけにもいかない。睡眠不足は戦闘にも支障を来す。光太郎やセフィリア、トレインたちはその程度ならば問題にもしないが、他の者はそうはいかない。その為、交代で見張ることなった。イヴ、キョーコ、シャルデン、リンスには先に休んでもらっている。トレインだけは湖近くで何やら瞑想をしていた。ティアーユによるとトレインに撃ち込まれた弾丸は、勧誘の指標として渡された星の使徒からの資料に記されていたらしく、イヴと同じく自らの意思で操作可能なものだと言う。操作のコツをイヴに聞いた後、1人でそちらに向かったのだ。

イヴは生まれついてナノマシンを有していた。ナノマシンを使用したトランスの操作、それは呼吸をするのと同じくらいに容易であったろう。他人に「どうやって呼吸をするか」を尋ねられ説明するようなものだ。トレインにとってのナノマシンの操作は時間がかかりそうだ。

 

 

光太郎は腕時計を見る。

 

深夜0時になった。星の使徒が言っていた回答の日になった。突如建物内の気配が増えた。瞬間響く銃声。光太郎とセフィリアはそれに気付き、すぐに駆け込んだ。

 

「ティアーユさん!」

 

光太郎が駆け込むと、そこには妙な仮面とアーマーを着込んだ集団がティアーユとスヴェンを囲んでいた。光太郎とセフィリアもすぐにそちらに合流する。

 

「スヴェン、大丈夫か?」

 

「…今のところはな。だが気をつけろ。奴らの体は銃も効かない。何か特殊なアーマーを着込んでやがる」

 

そういうスヴェンの手には拳銃が握られていた。先ほどの銃声はスヴェンのものだったようだ。

 

 

「そいつらが着込んでるのはタクティカル・アーマーだよ。下手な攻撃なら簡単に跳ね返す代物さ」

 

仮面の集団の後ろからGATEが開かれる。この能力を使う星の使徒は1人しかいない。現れたのは光太郎の予想通り、エキドナであった。

 

「そいつらは皆、クリードを崇拝している流星隊。クリードの為なら命を捨てることも厭わない連中だよ」

 

エキドナが現れた瞬間、頭上から雨が降る。

 

血の雨(ブラッディレイン)

 

だがその雨も、アーマーを着込んだ兵隊がエキドナの盾になった事で防がれた。

 

二階からシャルデン、キョーコ、イヴ、リンスが飛び込んできた。

 

「お久しぶりデス、エキドナさん」

 

シャルデンは開口一番にかつての仲間に挨拶をする。しかし2人は既に相容れないことはシャルデン自身理解していた。

 

「シャルデンにキョーコか。あんたたち、星の使徒を抜けただけじゃ飽き足らず、クリードの敵に回るつもりかい?」

 

「私はクリードの敵に回ったつもりはありません。クロノスは今でも私の敵デス。しかしゴルゴムという組織の狙いはクロノスよりも凄惨なものデス。人類を抹消しかねません。そのような行為、見過ごす訳にはいかないのデスよ」

 

「キョーコはよく分かんないんですけど、光様のお手伝いするって決めちゃいましたから! クリードさんとは戦いたくないけど、ゴルゴムは燃やしちゃうことに決めました!」

 

「そうかい、残念だよ。だがまずはティアーユ博士。先日の答えを教えてもらおうか。星の使徒に入り、完璧なナノマシンを完成させる気はないかい?」

 

エキドナの問いにティアーユは首を振る。

 

「…その話は先日も申し上げたようにお受けするつもりはありません。あなた方は人の命を弄ぶ存在です。そのような方に、私は二度と手を貸さないと決めているのです」

 

ティアーユは気丈な態度でキッパリと断った。そしてそれはこの場での闘いの合図を意味する。エキドナは苦笑し、背後にいた仲間を呼び寄せた。

 

「やりな、エーテス」

 

エキドナの背後から現れた子ども位の大きさの星の使徒。フードが外れ見えた顔は人間のものでなかった。エーテスと呼ばれ、前線に出てきたものは猿だった。シャルデンやキョーコも知らないメンバーらしい。よってその能力は不明。エーテスはニヤリと笑うと体からオーラを発し、それをティアーユ目掛けてぶつけようとしてきた。だがそれを簡単にさせる光太郎ではない。光太郎はティアーユを庇うようにそのオーラを受けた。

 

そしてオーラが消える。光太郎は自身の体に何の変化もダメージもないことが気掛かりだった。今のは一体何のつもりだったのか。そんな光太郎の疑問に答えるように、エキドナは語る。

 

「教えてやろうか。エーテスの能力はCOPY。相手をまるまるコピーする事ができるんだよ。相手の姿、頭脳、力もね!」

 

エキドナがそう伝えた時にはエーテスの姿は変異していた。

目の前には布一枚の裸の光太郎が立っていたのだ。




光太郎の前に現れた光太郎!

エーテスの恐るべき能力に皆は驚くが、そんな能力に怖気付く光太郎ではない。

そして襲い来る流星隊。

次回 『流星隊フルボッコ』
ぶっちぎるぜ!!

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