転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

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現れた謎の男ダロム!

死角から伸びたエキドナの腕を、予見眼(ヴィジョンアイ)を使用していたスヴェンが掴んだ事で二人の攻防が止まった。

 

エキドナは理解した。

スヴェンの先読みするかのような回避や動き。それが示すものは…。

 

「未来予知ってことかい」

 

「ご明察だな。だが今更わかっても遅い」

 

スヴェンはエキドナの持っていた銃を奪い、自作の麻酔弾をセットしてエキドナの腕に銃口を向ける。だがその時、スヴェン目掛けて呪符が飛んできた。咄嗟のことであったのでエキドナの腕を離して回避するスヴェン。その呪符は床に当たって爆発を起こした。

 

「チッ」

 

スヴェンが敵を目視すると、エキドナの隣には覆面の男シキが立っていた。

 

「あんたは南光太郎の相手をしていたんじゃなかったのかい?」

 

「………引くぞ」

 

「ま、その方が良さそうだね」

 

エキドナはそう言ってGATEを作り、シキと一緒に消えてしまった。再び攻撃されるかと警戒したが、どうやら本当に逃げたようだ。スヴェンは右目を眼帯で封じ、そしてやってきた強烈な睡魔に耐える。まだ戦いが終わった訳ではない。こんな場所で呑気に寝ている場合ではないのだ。

 

 

スヴェンとエキドナの戦いがこうして終わった頃、別の場所では激しい剣戟が行われていた。セフィリアとクリードの戦いである。力はクリードに分があるが、剣の性能と速さ、剣技はセフィリアに軍配が上がる。自身の幻想虎徹(イマジンブレード)をLV3に引き上げたクリードだったが、徐々に追い詰められていった。その中でもサタンサーベルの影響が大きかった。セフィリアがサタンサーベルを振るう度に凄まじい剣圧が襲ってくる。自分の右腕と化しているこの刀でも全てを防ぎきることができていない。

 

クリードは不本意ながら一度距離を置いた。

自分の伸縮自在なこの右腕なら、距離は関係ない。こうして距離を置き、一方的に切り刻んでくれる。クリードがそう考えていると、セフィリアはサタンサーベルを掲げた。

 

「この剣の声が聴こえます。この剣にはこのような力もあるようですよ?」

 

「…なに?」

 

サタンサーベルの刀身が光る。そしてその閃光がクリードに襲いかかった。クリードは目を見開いて避ける。クリードがいた場所は巨大な穴がぽっかりと空いていた。直撃したらただでは済まない、クリードはそう歯嚙みした。

 

クリードが飛び退いたその場所には銃弾が迫ってきていた。今の状態では避けることもできず、クリードは咄嗟に剣と一体化している右腕を盾に銃弾を受け止める。そしてその先にいるトレインを視界に入れた。

 

「…トレイン!」

 

「旗色が悪そうだな、クリード。諦めた方がいいんじゃねえか?」

 

「君を呪いから解放するまでは諦める訳にはいかないんだよ、トレイン」

 

確かにクリードも今の状態では分が悪いことは理解できている。しかしここで捕らえられる訳にもいかない。

 

「セフィリア=アークス、君は必ず殺す。そしてトレイン、君は僕の元に来るんだ!」

 

「クリード、1つのことに執着すると周りが見えなくなるようだな。そんなこと言ってられる状況じゃないみたいだぜ?」

 

「なに…?」

 

そう言われ、周囲の気配を探るクリード。

そして背後からやってきた人物を見やった。

 

そこにいたのはクロノスの奇襲暗殺チームのケルベロスのメンバーだった。

ナンバー(ファイブ)のナイザー=ブラッカイマー。

ナンバー(セブン)のジェノス=ハザード。

ナンバー(イレブン)のベルーガ=J=ハード。

 

正面のトレインの隣にはスヴェンとイヴ。

そして今、城の奥から南光太郎とシャルデン、キョーコがやって来た。

 

「…やぁ、君たち。その場にいる理由を聞かせてもらおうか」

 

「クリード…南光太郎から話を聞きました。今はどうやらクロノスと争っている場合ではないようデス」

 

「シャルデン…どうやら君も呪いにかけられてしまったようだね。悲しいことだ」

 

「クリード、私はそんなものにかけられていない。私自身が考え、決めた事なのデス!」

 

「呪いにかけられて辛いだろう? 僕が一思いに殺してあげよう。この周りの邪魔者と一緒にね!」

 

シャルデンの言葉はクリードには届かない。シャルデンは悲しい表情を浮かべるも、手袋を外して能力を発現させる。

 

「…仕方ありません。私はこんなところで殺される訳にはいかない。私を殺すと言うのなら、クリード、あなたといえども戦うしかない」

 

如何にクリードとはいえど、周りにいる10人の相手をして勝てる可能性は低い。どう切り抜けようか思考を巡らせていると、城の奥から飛び出してきた生物がいた。

 

その人とは言えない異形に、誰もが目を疑う。

2mを超える人狼だった。こんな生物が存在するとは誰もが想像していなかったのだ。光太郎を除いてだが…。

 

そしてクリードの傍にGATEが形成される。

中から現れたのはエキドナとシキ、気を失っていたはずのドクターだった。

 

「ふふ、その男は元掃除屋だ。クリードを狙ってきたのだが、折角なので僕の実験のモルモットになってもらったのさ」

 

ドクターは自慢気に語る。

 

「人間を自己満足の為に実験のモルモットだと…貴様!」

 

人を人とも思わない行為に怒りを覚える光太郎。そんな光太郎の顔を見たドクターは思わずエキドナの影に隠れる。

 

「い、い、い、いくら君でもこのモンスターは倒すのは困難だよ。やってみれば分かるさ」

 

ドクターがそう言った直後、トンファーを持ったスキンヘッドの男が人狼に並び立っていた。そしてトンファーを回して一閃。人狼の頭は弾け飛んだ。正に一瞬だった。

 

「狼なんぞに遅れをとるケルベロスじゃないんだぜ、旦那」

 

そう言ってドクターを睨むナイザー。しかしドクターはまだ余裕の表情を浮かべている。そしてナイザーも他の面々も気付く。人狼の頭が再生されたことに。人狼は何事もなかったかのようにナイザーを見下して舌舐めずりをしている。

 

「再生した…だと?」

 

「ふふふ、その男には特殊なナノマシンを注入してある。どんな損傷だろうと、瞬時に治癒してしまうのさ」

 

「へっ、そうかよ」

 

ならば再生が追いつかないスピードで粉々に粉砕するだけだ。

ナイザーがそう答えを出し、トンファーを回そうとした瞬間、ナイザーの肩に手を置く男がいた。南光太郎が変身したRXだ。

 

「この男に罪はない。殺す事はない。俺に任せてくれ」

 

「…あんたが南光太郎か。どうするんだ? この犬っころを元に戻す手立てでもあるっていうのか?」

 

「できるかどうか分からないが…やってみる」

 

RXのその言葉にナイザーは場を任せて、後ろに下がる。

そしてRXはその姿を青い仮面のフォームに変えた。

 

「バイオッ、ライダッ! とうっ!」

 

イヴ以外の全員が驚く中、バイオライダーは体をゲル化し、人狼の内部に入り込む。そしてドクターが言っていたナノマシンを次々と破壊していった。バイオライダーが人狼の体に入り込んで数秒、人狼から飛び出したバイオライダーはすぐさまRXへと姿を戻した。

 

今何が起こったのか、周りにいる者たちは理解していない。しかしそれでも人狼が苦しみ出し、どんどん体が縮んでいくという現象から、バイオライダーが何かを起こしたということは理解した。そして全員がそう理解した頃には、人狼は人間に戻り横たわっていた。

 

しかしドクターはもはや驚かない。再生するという実験の成功はこの目で確認できたのだ。もはやこの場にいる必要もなくなった。

 

「クリード、一度引こう。これなら君の望んでいたナノマシンの完成に一歩近付いた。こんなところで捕まる訳にはいかないからね」

 

「…そうだね」

 

クリードたちが引く姿勢を見せた瞬間、セフィリアがサタンサーベルを構え飛び込んだ。そしてそこで光太郎はセフィリアがサタンサーベルを持っていたことに初めて気が付いた。

 

「クリード、このまま逃すと思っているのですか!」

 

その神速の動きに、エキドナもシキもドクターも反応できていない。クリードが応戦しようと右腕を掲げた直後、激しい光が彼らを襲った。あまりの光に皆目を細める。

 

そして光が治まった時、そこにクリードたちの姿はなかった。

 

「あそこ!」

 

イヴが上空を指差した。そこには光の球に包まれたクリードたちがいた。だがそれを発生させたのは恐らくクリードたちではない。それを行なったのはその手前で浮遊しているフードの男であった。

 

皆が「何者だ?」と見上げる中、RXだけは別の意味で驚いていた。

 

「貴様は…ゴルゴムの神官ダロム!」

 

「…その声、覚えているぞ。この世界とは異なる場所で我らの悲願を邪魔したブラックサン、いや、仮面ライダーBlackか! よもやこの世界でも我らの邪魔をしに来るとはな」

 

「なに! どういうことだ!?」

 

「どういう訳か貴様は我ら知っている仮面ライダーBlackの頃よりもパワーアップしておるようだ。ならばこの場で戦うようなマネはせんよ」

 

そして光の球と共に姿を消していく。

 

「この人間どもは我らの思想に近い。ゴルゴムがもらってゆく。南光太郎よ、貴様はいずれ必ず! 我らが打ち倒してくれようぞ!!」

 

 

 

ダロムの声が辺りに響き渡り、そして完全に姿を消した。

 

いつかやってくるであろうと危惧していたゴルゴムの襲来。それが今、星の使徒殲滅を待たずしてやってきてしまった。

 

ゴルゴムの狙いは世界の支配。

この世界でもそれを狙っているに違いない。

だが、俺がいる限り貴様らの思い通りにはさせん!

 

「おのれ…ゴルゴム!」

 

RXは静かに拳を握った。

 

 

 

 

◆◇◇◆

 

 

星の使徒であるリオンはクロノスの監視下に置かれ、空の彼方に飛んでいったマロは現在調査中とのことだった。「余計な手間をかけさせてくれるね〜」とジェノスに言われ、光太郎は肩を落としていた。

シャルデンとキョーコの処遇はクロノスと揉めたが、光太郎は既に二人を仲間と認めている。

 

「俺の仲間に手出しはさせん!」

 

の一言に、クロノス上層部も口を紡ぐ他なかった。

セフィリアの報告により、南光太郎はクロノスの戦力では到底太刀打ちできないものと判断していた。そして今は別の危険な組織が現れたことにより、南光太郎の力が何よりも必要になったのだ。

シャルデンとキョーコは光太郎の元に置くことになり、それを監視するという大義名分を得て、セフィリアは改めて光太郎と共にすることとなった。

 

 

そして嵐の様だった1日が終わり、宿で目を覚ました光太郎はこれからのことを考えていた。

 

星の使徒は半壊。そして残りのメンバーもゴルゴムに連れ去られた。クライシス帝国がいつ襲来してくるかは分からないが、今はゴルゴムに集中しよう。ゴルゴムが次に打ってくる手は一体なんだ? しかし考えてもなかなか考えが浮かばなかった。

 

「くそっ」

 

光太郎はため息をついて寝返りを打つ。

 

そしてそこに招かれざる客がいたのにようやく気付いた。

自分の隣に黒髪の女性がすーすーと寝息を立てて眠っていたのだ。

 

「うわあああっ!?」

 

光太郎は思わず飛び上がってベッドから転落する。

その物音で目を覚ましたキョーコは未だ眠気の残る目を擦りながら「光さま、おはようございますぅ」と挨拶した。

 

「あ、ああ、おはよう…じゃない! なんでキョーコちゃんが俺の部屋に!?」

 

「えー、だってシャルデンさんが言ってましたよ。『光太郎の傍が一番安心デス。なるべく彼と一緒に行動するようにして下さい』って」

 

「いや、だからって同じベッドに寝るのは勘弁してくれ!」

 

光太郎がそう説得していると、物音を聞きつけた仲間が駆けつけてきた。

 

「光太郎、どうしたの?」

 

「光太郎さん、敵襲ですか!?」

 

勢い良く部屋に飛び込んでくるイヴとセフィリアを先頭に、その後ろをスヴェンとシャルデンがやってくる。トレインは恐らく気にせず寝ているのだろう。

 

そして光太郎のベッドの上で寝巻きを着たキョーコの姿を見て、イヴとセフィリアは固まる。

 

「光太郎、なんでこの人が光太郎のベッドにいるの?」

 

「光太郎さん、この宿にはイヴもいるのですよ? どのような考えでこのような下賎な行為に及んだのか、しっかりと私が納得いくまで説明して下さいね」

 

「あ、シャルデンさん。言われた通り一緒に行動するようにしましたよー」

 

修羅場である。

イヴとセフィリアに正座させられ弁明もさせてもらえずに叱られている光太郎に、「私が言いたいのはそうではなく」とシャルデンに改めて説明を受けているキョーコ。そんな状況をただ一人冷静に眺めるスヴェンは「アホらし」とため息をついて寝室へ戻っていった。

 

光太郎にとって、この時ばかりはゴルゴムより女性陣の方が恐かったという…。




セフィリアのサタンサーベルからクリードたちを救ったのはまさかのダロムだった!

星の使徒を連れ去ったゴルゴムの狙いは一体何なのか!?

そして、リンスから一枚の写真が送られてきた。

次回 『イヴに似た女性は』
ぶっちぎるぜ!!

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