転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

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復活! 赤き剣‼︎

星の使徒の面々が戦闘態勢に入る。光太郎はそれぞれの敵を確認した。

 

「トレイン、クリードの相手は任せる。だが無茶はしないでくれ!」

 

「ああ」

 

光太郎の指示を受けて飛び出すトレイン。それを確認してクリードは見えない刀を抜いた。あれも(タオ)の力なのだろう。

 

「スヴェン、あの女性を頼む。女性とはいえ星の使徒のメンバーだ。油断はしないでくれ! 無力化したらイヴやトレインの援護を頼む!」

 

「紳士として女性にはあまり手は出したくないんだが、そうも言ってられる状況じゃなさそうだな」

 

タバコの火を消し、スヴェンはエキドナと相対する。

 

「星の使徒にも子どもがいるのか…。イヴ、悪いがあの子を無力化してくれ。だが危なくなったらすぐに引いてほしい」

 

「心配しないで、光太郎」

 

イヴはボードに乗ったリオンへ向かった。

 

そして今、光太郎の前には5人の星の使徒が立っていた。

だがここで時間をかける訳にはいかない。すぐに仲間の助けに向かわなければならないのだ。

 

光太郎は天に手を掲げる。

 

「変 身!」

 

光太郎の体は光り輝き、RXへと変化する。

だがその瞬間天から強烈な重圧が襲った。

 

「むっ!」

 

その重圧は凄まじく、大地は見る間にヒビ割れ陥没していく。相手を見やると、日本の古い衣装のようなものに身を纏った体格のよい男がこちらに手を向けていた。どうやらあの男の仕業らしい。

 

「ほう、俺の『重力』を受けても立っていられるか。それならもっと強くしてやるよ!」

 

その男の宣言通り、重圧は更に3倍、4倍へと強くなる。だがRXは姿勢を崩さないでいた。その姿に、重力を操っていた男、マロは背中に冷たい汗を感じた。既に10t以上の重力をかけているというのになぜ膝をつかないのか。目の前にいる男は本当に実在している人間なのかと疑う程だった。

 

「マロさん、そのままでお願いしマス」

 

シャルデンが手袋を外し、手から血の人形シャルデンが形成された。

 

血の雨(ブラッディレイン)

 

コンクリートをも砕く血の弾丸がマロの重力を得て天空からRXに振り注ぐ。それが全てRXに命中した。

 

「キョーコさん!」

 

「はーい」

 

キョーコは思い切り息を吸い込む。そして…

 

超熱熱息(ちょーアツアツブレス)

 

キョーコの体内で1000度近くまで上げられた灼熱の息がRXに襲いかかった。高温の大気が城の壁を焦がし、溶かしていく。これを受けたらどんな人間でも炭化して終わりだ。

 

しかし…彼らの前に立つはただの人間ではない。

赤い目を光らせ、その体はダメージらしきものも感じられなかった。

 

「マジかよ」

 

マロは驚く。今かいている冷や汗は間違いではなかった。目の前の男は只者じゃない。そこへ、シキが呪符を取り出す。

 

「マロ、そのままヤツの動きを止めておけ」

 

魔妖蛾

 

呪符が光り、ムカデと蛾が融合したような巨大な怪物が現れた。怪物はRXの真上から大きな口を開けて襲いかかる。が、RXは右拳を振り上げ、その衝撃で怪物は粉砕された。

 

10tの重力ががかって尚、それをモノともせず動くRX。こうなってしまっては重圧なんて効果はない。

 

その時、RXは何かの存在を感じていた。

 

「この力の波動は…」

 

その様子をドクターはじっくりと観察していた。

 

ふむ、キョーコ君の高温の息を防いだという事は、あの体には1000度以上の耐熱効果があるのか。全く焦げ付いていないことから1200度近くまでは防がれそうだ。そしてマロの重力にも耐えている。耐熱・耐圧に優れた体…今すぐにでも解剖して調べてみたいじゃないか!

 

ドクターがそんなことを考えていると、重力をかけられたRXが一歩踏み出した。解剖はしてみたい。だがこの相手をどうやって無力化する? 近付けばあの力によって先ほどの蟲のようにやられてしまう。だがこちらの攻撃では火力が足りない。そして自分の能力は今の状況では使用することができない。ならば、別の手を使うまでだ。

 

「そのままその男を止めておくんだ! 僕はあの娘を使ってそいつを無力化してやる!」

 

リオンが相手にしているイヴという少女を盾にするのが一番確実だ。

ドクターはその考えに至り、イヴを捕らえようと戦線から背を向けた。そして目の前の壁にぶつかり思わず尻餅をついた。ズレた眼鏡をかけ直し、目の前の壁を見上げる。

 

…いや、それは壁ではなかった。10tの重圧をかけられ、自由に動く事が出来なかったはずのRXが、そこにいたのだ。

 

「ひぃ…ひぃぃ…」

 

ドクターは思わず尻餅をついた状態で後ずさった。RXの両の目が光る。そしてドクターはRXに胸倉を掴まれて無理矢理立たせられた。

 

「イヴを…どうするつもりだったんだ…?」

 

「あ…あの…」

 

だがそこに仲間が駆けつける。マロの重力張り手が背を向けているRXに何度も叩き込まれた。

 

 

「隙を見せたな! 敵に背中を向けるからだ、このバカめが! であぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

「うるさい」

 

 

ペシッ

 

RXの下方向からの手刀を受けたマロはその勢いのまま吹き飛び、古城の壁を突き抜け、空高く舞い上がり、そのうち見えなくなってしまった。

 

 

「「「……………」」」

 

 

 

シキ、シャルデン、キョーコはマロが壊した穴から見える青空を見上げながら呆然としていた。今一体何が起きたのか、それすらも彼らは理解できていない。

 

RXに掴まれてしまって逃げることのできないドクターだけは、飛んでいった同志よりも自分の命の心配をしている。必死にRXの手を解こうとしているが、まるで工具がなにかで固定されているかのように微塵も動かすことができなかった。

 

「…イヴを…子どもを利用するつもりだったのか…!」

 

グググッと胸倉を掴むRXの手に更なる力が加わる。

 

「あ、あの…たしゅけ……」

 

「貴様のような非道、許す訳にはいかん!!」

 

「ひぃぃぃ…!」

 

だがその瞬間、黒い刃がドクターの服を切り裂いた。そのおかげでドクターはRXから解放されるも、あまりの恐怖の為失禁し、失神してしまっている。

 

先ほどの黒い刃はシャルデンの血で作られたものだったようだ。シャルデンは血でドクターを掴み、自分たちの元に引き寄せた。

 

「この様子では…ドクターはこの戦いの最中に戦線復帰は難しそうデスね」

 

「あー、ドクターさん、お漏らししちゃってますねー」

 

シャルデンは冷静にRXと自分たちの力量を測る。こちらの攻撃パターンは自分の血での斬撃、刺突、怪我を負わせればそこからの吸血。しかしRXは未だ無傷であり、自分の斬撃などが通用するとも思えない。キョーコの1000度近い高熱も効果はない。エキドナが持っている武器も通用しないだろうし、クリードの剣も通用するかどうかだ。あとはリオンの能力を使った真空状態に追い込むかだが、この男を素通りして行くことは不可能だろう。後はシキの多種に渡る呪符に頼るしか手は無くなっていた。

 

「シキさん、まだ手はありマスか?」

 

「無論だ。私の最高の力で奴を葬ってみせよう!」

 

シキは呪符を取り出す。

 

「これは私の操る魔蟲の中でも最高の術! いくら貴様でもこの魔蟲には敵うまい! 戦闘魔蟲・刹鬼!!」

 

 

 

シキが持っていた呪符が光輝く。

 

そこには人型の怪物が立っていた。そして怪物は目を光らせる。

 

「主、ご命令を」

 

「刹鬼、あの男を殺せ!」

 

シキはRXを指差し、そう告げる。命令を下された刹鬼はRXを見やり「御意」と一言残し、姿を消した。

 

しかし消えたのではなかった。

刹鬼は瞬時にRXの背後に回り、その首を切り落とそうと動いていたのだ。だがそれも瞬時に身を翻したRXによって防がれる。

 

「貴様…我の動きが見えたのか…!」

 

「こいつは…人間ではないのか。ならば…!」

 

RXは蹴りを放ち、刹鬼を遠くに吹き飛ばす。そしてその隙にサンライザーに手を翳す。

 

 

「リボルケイン!」

 

光の杖がRXの手に収められた。

蹴りを受けた刹鬼は腹を押さえて悔しがる。

 

「主の前でこんな醜態を…許さん、貴様、絶対に許さんぞ!」

 

刹鬼の口の中が光る。

 

「これは我の最強の技! 収束された超音波、人間の貴様には防げまい!」

 

哭鳴閃

 

刹鬼の口から見えない何かが放出された。

 

「はぁっ!」

 

しかしRXはその見えない何かをリボルケインで叩き斬った。その衝撃で気絶していたドクターが宙を舞う。

 

自分の最高の技が、超音波が斬られた。その信じられない現実に、理解が追い付こうとした直後に、RXが自分の懐に潜り込んでいたのに気付いた。そして光の杖が自分の腹部に突き出される。

 

「ぐ…ぐあああああ…!」

 

得体の知れない何かが自分の体に注ぎ込まれていく。

 

 

 

 

止めろ、やめてくれ!

 

 

 

 

それ以上我にその力を……。

 

 

 

 

 

そして我は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

刹鬼から距離を取り、リボルケインを振るRX。そして背後で刹鬼が倒れ、大爆発を起こした。

 

RXが振り返ると、その場にはシャルデンとキョーコの姿しか見えなかった。覆面のシキという男の気配を探るが、今の爆発の隙に逃げ出したようだ。

 

RXは2人に歩み寄る。シャルデンは既に勝機は無いものと諦めており、キョーコは腰を抜かして座り込んでしまっていた。せめてキョーコだけでも逃がしたいと考えるシャルデンだったが、目の前の男相手にはそれも難しいことは察していた。

 

「我々の負けデス。私の命は奪われてもいい。しかしキョーコさんの命は助けてくださいまセンか?」

 

「…シャ、シャルデンさん!」

 

「良いのデス。クロノスとの戦いで命を落とす覚悟はできていました。その前にこうなるとは思っていませんでしたが…」

 

シャルデンの前で変身を解く南光太郎。

それに驚いているシャルデンに、光太郎は微笑んだ。

 

「俺は君たちの命を取るつもりなんて元からない。ただ、悪いことをやめて、できれば俺の力になって欲しいんだ。キョーコちゃん…だったかな? キミも怖がらせて悪かったね」

 

光太郎はそう言ってキョーコを抱きかかえる。

 

「あ、あの、ちょっと…」

 

「今後無意味に人を傷つけない、それを守ってくれれば俺は君たちにこれ以上何もしないさ」

 

そう微笑む光太郎に、シャルデンは太陽のようなものを見た。自分にとっては眩しい存在の太陽に。

 

「話だけは聞きマス。協力してするかどうかは、内容次第デス」

 

シャルデンはそう光太郎に返し、光太郎もシャルデンに対し頷いた。

だがこの時光太郎は気付いていなかった。

 

自分が抱きかかえていた女子高生が、自分を見て顔を紅潮させていた事に。そして心中で「カッコイイ!」と叫んでいた事に。

 

 

 

 

◆◇◇◆

 

時間は少し遡る。

光太郎が戦っていた場より少し離れた所で、戦っている2つの影があった。それは決してありえないバトルフィールド。

 

城の上空でボードに乗って飛んでいる星の使徒の少年リオンと、天使の翼を背に生やしたイヴが空中で戦いを繰り広げていた。

 

だが戦況はリオン有利のようである。イヴは息を切らしながら肩で呼吸をしていた。

 

「思ったよりはやるようだけど、その程度の動きじゃ空中で俺に勝つなんて10年早いぜ?」

 

自らの勝ちを宣言するリオンだが、イヴは諦めの表情など浮かべてはいない。まだイヴの目には力が宿っている。

 

「私は最後まで諦めない。だって南光太郎のパートナーだから!」

 

「へー、そんな大層な奴なんだな。その南光太郎っていう奴は」

 

「…覚えておくとイイよ? 南光太郎は世界で一番強くて優しい…掃除屋なんだよ!」

 

 

 

 

イヴがリオンと戦っていた眼下でトレインとクリードも戦闘を続けていた。剣士と戦うときはその間合いに気を配るが、クリードは道能力によって剣を透明化することができ、更には気の込め方1つで刀身の収縮も可能としたのだ。その為、トレインはなかなか踏み込めずにいた。トレインの早撃ちも、クリードは難なくその剣で切り落としていく。

 

「あはははは! どうしたトレイン、その程度かい!?」

 

「ちっ、戦闘中にお喋りしてると舌噛むぜ」

 

トレインはクリードの斬撃を避けながら銃弾の補充を行う。クリードの見えない剣、伸びる剣は厄介だが、そろそろ見慣れてきていた。後は動きの隙にこいつをぶち込むだけだ。トレインは愛銃ハーディスに込められた相棒が作った特殊弾を撃ち込む隙を探る。

 

「どうしたトレイン! そうやって逃げているだけなんて君らしくないじゃないか!」

 

「そろそろその手品も見飽きてきたぜ。道能力っていうのも大したことないんだな!」

 

トレインのその言葉にクリードの斬撃が止まる。攻撃の隙かと思ったが、今撃ち込んでも切り落とされてしまうだろう。

 

「トレイン、どうやら君は僕の能力がこの程度だと本当に思っているのかい?」

 

「…なに?」

 

「見せてあげるよ、トレイン。僕の幻想虎徹(イマジンブレード)の…LV.2をね!」

 

クリードの持つ剣が光り、その瞬間、体がざわめいてトレインは思わず飛び退いた。そして今自分がいた場所を何かの生物が鋭い速さで通り抜けて行ったのをトレインの優れた動体視力は捉えていた。それがなんだったのか、正面に立つクリードを見てハッキリした。

クリードの持つ透明の剣だった物が、まるで生き物のようにこちらを見て、大口を開けて笑っている。

 

「これが僕の力だ。昔の君に戻ればこれ以上の力を手に入れることが出来るんだ! 今すぐにでも僕の元においでよ!」

 

「言ったろ? 俺は掃除屋だ、サヤと同じ掃除屋だ。お前のような犯罪者の誘惑には負けねえんだぜ?」

 

クリードの額に青筋が浮かぶ。

 

サヤ…? あの魔女の名前を僕に聞かせないでおくれよ。

あの魔女がトレインをおかしくしてしまった。弱くしてしまった。

 

「あの魔女がああぁぁぁぁぁ!!!」

 

クリードが咆哮していた背後に、飛び込んでいた者がいた。

 

「クリード、すぐ熱くなるその性格は変わっていないようですね」

 

背後から現れたセフィリアは持っていた剣でクリードを一閃した。

 

 

 

 

…かのように見えた。

セフィリアはすぐに気付く。自分の持っていた剣の刀身が何者かに折られていた。そしてその主は大口を開けてこちらを襲ってきた。

 

「…くっ!」

 

跳躍。そしてトレインの隣に降り立った。

そんなセフィリアの姿を見て、クリードは苦笑する。

 

「おやぁ、誰かと思えば時の番人のセフィリア=アークスじゃないか。余りにも脆い剣だったので、君とは思わなかったよ。愛刀のクライストはどうしたんだい?」

 

やはりあの剣では強度が足りなかったようだ。確かにクライストならあの程度で折れることなどなかったのだが…。しかしクリードにしてみれば絶好の機会というやつだ。自分の敵、クロノス。その最強戦力である剣士が、今や剣を失って目の前にいるのだから。

 

「トレイン、少し待っててくれ。この女を殺し、すぐに先ほどの戦いを再開しようじゃないか」

 

「…! クリード、待て!」

 

「あはは、さようなら、セフィリア=アークス!!」

 

目の前に迫る生きた剣。

 

その剣が大口を開けて自分の眼前にまで届いていた。

 

 

剣を失った私に防ぐ術はなかった。

 

しかし私はこんなところで死ぬ訳にはいかない。

 

私は…私は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの人の剣になりたい!

 

 

そう強く願った瞬間、目の前に強烈な赤い光がその場を、古城を、街を、大陸を走った。

 

セフィリアの目に入ったのは剣の柄。セフィリアは思わずその柄を手に取り、迫ってきていた剣を払った。

 

 

セフィリアが手していたのは黄金の柄に赤き刀身の剣。

 

RXの体内にあるキングストーンと同等の力を秘め、創世王の証とされる剣。

 

そして、光となって消滅したはずの剣。

 

その剣、サタンサーベルが今、セフィリアの手の内に確かに復活していたのだった。




RXのための剣としてセフィリアの前に現れたサタンサーベル。

サタンサーベルの強大な力を振るうセフィリア。

そんなセフィリアを見て、負けじとイヴは新たなるトランスを行う!!

次回 『光太郎とひとつになって得た力』
ぶっちぎるぜ!!

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