転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

12 / 52
ただ頻繁に更新してるだけで大した文章も書けてないのに恐縮です。

それでもそんなお話でも、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!


クリードは俺が捕らえる。殺し屋でなく掃除屋として!

トレインがのんびりカフェ「ケット.シー」にやってきた時、気絶したマスクの男はクロノスの工作員によって運び出されるところだった。その事にも驚いたが、カフェ内にこんな場所に不釣り合いな人物もいて、そちらにも驚かされた。

 

「まさか時の番人(クロノ・ナンバーズ)のトップが2人も揃ってるなんて、何かあるのかよ。まさかあんたまで光太郎に同行してるのか?」

 

「…私は案内人に過ぎん。南光太郎に興味はあったがな」

 

ベルゼーは明後日の方を向いて目を閉じたままそう答える。

時の番人がわざわざカフェへの案内人を受ける訳はないだろう。となると目的は自分か、とトレインはため息をついた。

 

「よう、アネット! 何か食わせてくれ!」

 

そしてカウンター席に座り食事を催促する。

 

「…はぁ、あんたはまたタダ飯食らいに来たのかい」

 

「チッチッ、アネット、これを見な」

 

トレインは懐から大金を取り出した。

 

「スヴェンがこれでツケを払えってよ」

 

「そうかい、毎度あり。でも全額にはまだ足りないよ」

 

「うぐっ…まぁ追々ってことで、今日も飯を頼むぜ!」

 

そんな会話を聞いてトレインの隣の席にセフィリアが座る。トレインの体はビクッと跳ね、緊張しているのが誰の目にも分かった。

 

「ハートネット、そのような生活をしているのですね…。私が立て替えましょうか?」

 

セフィリアの温情にトレインは顔を合わせないまま顔に冷や汗を浮かべたまま丁寧に断っていた。このままクリードの話をするかと思っていた光太郎だったが、意外とその話題は上らなかった。場所を配慮しているのかもしれない。食事中はたわい無い話を交わしながら時間を過ごした。ベルゼーだけは食事を取らず、腕を組んで壁にもたれ掛かっていたが…お腹は減らないのだろうか?

 

「姫っちも元気してたか?」

 

「トレインは相変わらず能天気で安心したよ」

 

「お、おおう…姫っちの毒舌は相変わらずだな…」

 

光太郎はそんな2人の掛け合いを聞きながら苦笑する。イヴは自分に対してあんな態度はとらない。イヴがあんな態度を示すのはトレインだけなのだ。トレインに兄妹のような親愛を抱いているのだろうか。自分はイヴにとってちゃんとした親代りができているだろうか、と光太郎は考える。しかし何度も泣かせてしまっていたことを思い出し、軽くショックを受けた。

 

「お、おい光太郎。なんでそんなに落ち込んでるんだ?」

 

「いや、俺は良いパパになれないかもしれないと思って…」

 

「…は?」

 

その後はイヴが必死になって「そんなことないよ!」と慰めてくれるが、子どもにフォローされる親の姿を連想させ、それが余計に光太郎を落ち込ませた。

 

食事を終えた一同はトレインのアジトに戻る。その頃には相棒のスヴェンも戻って来ていた。トレインに追随する面々に驚いて、口に咥えていたタバコを落としてしまっていたが…。

 

 

 

◆◇◇◆

 

 

サンゼルスシティで行われた大事件。

その首謀者がクリード=ディスケンスであること。そして星の使徒の面々が関わっていることをセフィリアから伝えられたトレインとスヴェンは真剣な表情を浮かべていた。トレインからはピリピリした空気が感じられる。

 

「大統領が殺られたことは知っていたが…まさかクリードの連中の仕業だったとはな…」

 

スヴェンはタバコの煙を吐いて視線を相棒のトレインに向ける。トレインは彼にしては珍しく無表情であったが、相棒であるスヴェンには分かる。「クリード」の名が出た瞬間に雰囲気が変わっていた。

 

「世界各国の政府はクリードに30億イェンの懸賞金をかけました」

 

「さ…30億!? 過去TOP3に入る高額賞金じゃねえか!」

 

「世界はそれだけクリードを危険視しているのです。ハートネット、あなたは…あなたにこのような話をするのは心苦しい。以前の私なら淡々と伝えたのでしょうが…」

 

セフィリアはそう言って俯く。過去の自分であれば目的の為に使えるモノは何でも利用したろう。それがクロノスの為であるならば。しかし最近の自分はそのように冷たい氷のような意志で動くことができないでいた。これでは時の番人のリーダーは務まらない。これも光太郎に出会った影響なのだろう。だからといって彼を恨むつもりは毛頭ない。

 

「…変わったな、セフィ姐」

 

「ベルゼーにも言われました」

 

「…そっか」

 

トレインはソファーに身を預け、天井を見上げた。そんなトレインにセフィリアは意を決して伝える。

 

「ハートネット。私は時の番人を一時的にですが外されています。他のナンバーズへ指示を出すことはできませんが、恐らくクロノス上層部はクリード含む星の使徒の抹殺の命令を下すでしょう。あなたにとってクリードは大切な方の仇であることも承知しています。あなたは…クリードをどうしたいと思っているのですか?」

 

セフィリアの問いかけに、トレインは暫く答えず静寂が部屋を支配する。

 

 

「……他の奴には取らせねえ」

 

そしてトレインは小さく呟く。

 

「クリードはサヤの仇だ。だがサヤなら…どんな犯罪者でも殺すことは選ばないだろう。どんな犯罪者でもやり直そうとする気があるならいつでも平和な世界に戻れるって考える奴だった。そんなところは光太郎、お前に似てるぜ」

 

「トレイン…」

 

苦笑してそう言うトレインに、光太郎はトレインのいう今は亡き会ったこともないサヤという人物に思いを馳せた。

 

「俺はサヤの仇を討つ! ただしサヤのやり方でだ」

 

「ハートネット、それは…」

 

「俺は…今は掃除屋だ。掃除屋として、クリードを捕まえてやるぜ!」

 

トレインは大切な人の仇に対して、そう答えを出した。

…強いな、誰も彼も。光太郎はそう心中で呟く。そしてソファーから立ち上がり、トレインの前に歩み寄る。

 

「同じ掃除屋として俺もトレインに協力するよ! 絶対にクリードを捕まえ、これ以上の被害者が出ないようにしよう!」

 

「…遠慮しても無理矢理手を貸してくるんだろ? 光太郎が意外と頑固だっていうのは分かってるつもりだし、断るのは諦めてるぜ」

 

トレインはそう苦笑して光太郎から差し出された手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、本題なんだが」

 

「今のが本題じゃねえの!?」

 

話を続ける光太郎にトレインは思わずツッコむ。

 

光太郎は鈍いのだろう。どこかおかしな部分があったかと首を傾げているが、見当がつかなかったらしい。仕方なくトレインは光太郎の話を促した。

 

「イヴとセフィリアさんにはもう伝えているんだが、俺はこの世界の人間ではないんだ」

 

「「…は?」」

 

突然の光太郎の告白に素っ頓狂な声を出すトレインとスヴェン。

壁に身を預けているベルゼーでさえ思わず顔を上げた程だ。

 

そして光太郎はトレイン達が混乱から回復する前に自分ことについて全て話した。自分が別の世界から来た転生者であること。この体の主も別世界のもので、それに憑依転生したこと。光太郎がその世界で悪の組織と戦ったことや、自分がこの世界に来たことで、その悪の組織がこの世界にも生まれようとしていることも。

 

しかしこの話にスヴェンはついていけず笑う。

 

「おいおい、光太郎。SFの映画や小説じゃあるまいし、そんなの信じられる訳ないだろう?」

 

「でもよ、スヴェン、光太郎の変身した姿と力をどう説明するんだ? その話を丸々信じると、妙に納得できちまうんだけど…」

 

「い、いや、まぁ確かにあんな技術聞いたこともないが…」

 

「それに、光太郎がそんなウソをつくと思うか?」

 

トレインとスヴェンは光太郎の顔を凝視する。そしてスヴェンもすぐに納得した。光太郎は純粋過ぎる。そして純粋さ故に良くも悪くも顔に出る。ウソをつけないタイプというやつだ。そんな光太郎の顔を見るが、真剣な表情をそのもので、いずれやって来るであろう組織というモノに気を張っているのが分かった。

 

「分かった、信じるぜ」

 

スヴェンは話の腰を折って悪かったと謝罪し、光太郎の話の続きを促した。

 

光太郎は話を続ける。今は人間同士で争っている場合ではない。ゴルゴム・クライシスに備えることは勿論だが、その為には星の使徒の悪行を止める必要があるとのことだった。その為にもまずは星の使徒のアジトを探さなければらならなかった。そこで今まで黙っていたベルゼーが口を開く。

 

「クロノスは星の使徒のアジトにある程度の見当はつけている。クリードの懸賞金が発表されて以降、何人かの掃除屋が姿を消しているエリアがある。おそらくその周辺にアジトのようなものがあるのだろう」

 

「…クロノスはもう掴んでいたという訳ですか。そうなると正確な場所が分かり次第『ケルベロス』が送り込まれることになりそうですね」

 

セフィリアはベルゼーの話を聞いて、上層部が下すであろう指令を読んだ。

 

「ケルベロス…?」

 

きょとんしているイヴ。それにトレインが苦笑して説明する。

 

「姫っちは分かんねえよな。ケルベロスっていうのは空想上の生物で地獄の番犬って言われてんだ。でもクロノスではナンバーズの奇襲暗殺チーム名になってる。大仰な名前つけてやがるよな」

 

「………」

 

「どうした姫っち、怖くなったか?」

 

「…トレインに教えられるなんて…なんていうんだろう、この気持ち。そうだ、屈辱だ」

 

「…ひどくね?」

 

2人がそんなやり取りをしている間、光太郎はケルベロスについて考えていた。クロノスの暗殺の実行部隊。そういうクロノスの暗部は光太郎にとって納得できないものだった。トレインは掃除屋としてクリードを捕らえることを決めた。自分もそうしたいと思っている。クロノスが居場所を掴む前に星の使徒のアジトを探し出し、先に捕らえなければならない。

 

クロノスにそんな敵対心を抱いている光太郎に、セフィリアは悲しい表情を浮かべた。クライシスを失くした自分はもうナンバーズでもなく、クロノスの為の剣であることもできない。しかしそうありたいと思うのは確かだ。しかしこの人の剣でもありたいと考えてしまう。クロノスと光太郎。セフィリアの中で、その2つが揺れていた。

 

 

そんな時、ベルゼーが部屋を出て行こうとしているのにセフィリアは気付いた。

 

「…ベルゼー?」

 

「星の使徒がいるであろうエリアは先に渡した資料の中に記されている。クロノスのケルベロスより先に掃除屋として捕まえたいのだろう? ならば私は部外者だ。退散させてもらおう」

 

「ベルゼー、いろいろお世話になりました。ありごとうございます」

 

「…フッ」

 

セフィリアはそう礼を述べると、ベルゼーは僅かに微笑んで去っていった。

 

ベルゼーを見送った面々。そこでスヴェンが立ち上がった。そして旅の身支度を始める。

 

「そんじゃ、ま、掃除屋としての仕事に取り掛かるとするか。30億イェンもありゃ借金を全部返してもお釣りがくるぜ!」

 

「セフィ姐と一緒に動くのはクロノスでの任務でも一度も無かったな。宜しく頼むぜ」

 

「ええ、よろしくお願いしますね、ハートネット」

 

そこでトレインは以前からあった自分に対するセフィリアのプレッシャーが薄れていたのに気付いた。そしてそれが光太郎に注がれている。今も隙をみては光太郎を目で追っていた。

 

「…光太郎」

 

「トレイン、どうした?」

 

オレ(黒猫)は知らないうちにお前に不吉を届けちまったらしい。悪りぃな…」

 

「…?」

 

言葉の意味を理解できていない光太郎に、トレインは軽く肩を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◇◆

 

その頃星の使徒のアジトである古城では…。

 

「…クリード。デュラム=グラスターが先走り、クロノスに捕らえられたようデスよ」

 

「デュラム…? それ、誰だったかなぁ」

 

「………」

 

哀れデュラム!!




星の使徒の元へ向かう光太郎。

そしてついに相対する!

光太郎とトレインを仲間に加えようと誘うクリードに、2人の言葉が飛ぶ。

次回 『掃除屋』
ぶっちぎるぜ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。