転生・太陽の子   作:白黒yu-ki

11 / 52
感想や指摘など更新の力となります!
いつもありがとうごさいます♪

サブタイは正確ではありません。

「RX vs ○○」の時点で相手に同情するのが正しい答えです。
これ、期末テストに出ますから覚えておきましょうね?(ウソ


RX&I&IIvs狂気のガンマン=同情

T‐レックスをキングストーンという物の力で2億年程前の時代に送り届けたと言われた時には、流石にイヴもセフィリアも目を丸くした。目の前の人はできないことは本当に何も無いと思わされる。しかしそれでも彼もひとりの人間だ。どんなに強くても、どんなに万能でも、恐怖や罪悪感に独りでは耐えられない。耐えられたとしてもそれは心が死んでいるのだ。光太郎をそんな目に遭わせはしない。

 

「ね、光太郎」

 

「・・・? なんだい、イヴ?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

正午、海岸の日陰で休んでいた光太郎にイヴはそう言って笑った。

早朝に恐竜が暴れたビーチであるが、時間も早かったおかげもあって目撃者はいなかった。だからこそ大々的に取り上げられず、こうして何事もなく海水浴を楽しめている。問題は海岸近くにあるあそこの施設だろう。

 

そこの研究者は流石に知らず存ぜずでは済まないだろうし、危険なT‐レックスの姿が消えてしまったのだ。いつ被害が出るか研究者は戦々恐々としていることだろう。その辺りはセフィリアが「任せてください」と言ってどこかに行ってしまった。そんなセフィリアが先日のビキニ水着を着て、光太郎とイヴに飲み物を持ってきた。

 

「遺伝子の研究は解体させました」

 

光太郎とイヴは飲み物を受け取ってセフィリアからの報告を聞く。セフィリアの話によると、その研究に多額の投資をしていた富豪、マダム=フレシアという婦人を危険な研究を行っていたということで拘束したそうだ。T‐レックスに関しては光太郎が過去に送り届けてしまったため物的証拠が無いが、そこは状況証拠とクロノスの根回しによる圧力で解決した。クロノス上層部への報告には「南光太郎が2億年前に送り届けました」と正直に伝えた。クロノス上層部は白目を剥いていたらしい。

 

セフィリアは光太郎の隣に座る。そして飲み物を一口飲み、光太郎を見つめる。

 

「光太郎さん、私を鍛えてもらえませんか?」

 

「え・・・」

 

「光太郎さんが言う組織の怪人という相手は、とてもお強いのでしょう? 私も光太郎さんの力になりたいのです」

 

「光太郎、私も鍛えて欲しい」

 

セフィリアとイヴは真剣な瞳をこちらに向けている。ゴルゴムやクライシスの恐ろしさを知る光太郎としては、なるべく戦線に出て欲しくないというのが本音だが、万が一のこともある。少しでも力を底上げできていれば、自衛の力となるかもしれない。そう考えた光太郎は了承した。

 

そして青空を見上げる。

いずれやってくるであろうゴルゴムやクライシス帝国。そして・・・なぜだろうか。それらと別の何かが合わさり、もっと強大な何かになって襲いかかってくるような、そんな危機感が拭えずにいた。

 

 

 

 

 

◆◇◇◆

 

その頃、サミットが行われているサンゼルスシティではあちらこちらから爆発音が響いていた。

警官隊や軍隊も物ともせず、殺戮を行う星の使途。(タオ)の力を使う彼らに、普通の人間では太刀打ちできない。拳銃も、戦車も圧倒的な数も彼らの前では無力だった。

 

そしてサミットを行っていたサンゼルスシティの大統領にしてクロノスの幹部であるエリックの前に、こんな大それたことをしでかした首謀者が現れた。トレインの元相棒にしてクロノスに追われる男、クリード=ディスケンス。クリードはエリックの命乞いを聞く耳ももたず「醜い」と見えない刀で額を一突きした。

 

そして地獄絵図となっているサンゼルスシティを見下ろし、高笑いする。

 

さあ 始めよう 諸君

 

無能な秘密結社の老人たちに思い知らせてやるんだ

 

この先の世界を導くのはあなた達ではない

 

我々だという事を…

 

手始めにこの街を血に染める…

 

革命戦争の始まりだ…!!

 

 

 

 

 

星の使徒がサンゼルスシティを襲った報はすぐにセフィリアの元にも届いた。

 

「世界政府はクリードに30億イェンの懸賞金をかけるそうです。これに対しクロノスはクリードの抹殺に向け、本腰を入れることになりました」

 

宿に戻ったセフィリアは上層部より受けた報告を光太郎とイヴに伝えた。それを聞いて光太郎は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。今は人間同士で争っている場合ではないと言うのに・・・。そんな表情の光太郎を見ながら、セフィリアはやや逡巡しながらも次の言葉を続ける。

 

「このことをハートネットに伝えたいと思います」

 

「・・・トレインに?」

 

イヴは首を傾げる。

 

「ええ。クリードはクロノスにいた頃のハートネットのパートナーだったのです。そして・・・ハートネットに自由を教えた女性の仇です」

 

光太郎とイヴは驚いた。トレインが元殺し屋であることは聞いている。しかしそのような辛い事があったとは信じられなかった。いつも飄々としているあのトレインの心の奥底では、憎しみの火が今も消えず燻っているのだろうか。それとも隠しているだけで燃え盛っているのか・・・。大切な人を失う辛さと憎しみを経験した光太郎だからこそ、簡単に消えるものでないと理解できるのだ。仇を討つために相手の命を奪う。それを光太郎は正しいとも間違っているとも言えなかった。

 

 

直後、光太郎は身構えた。

光太郎の突然の動きに驚いたイヴは、光太郎の視線の先にいた人物がいつの間にか部屋に入ってきていたのに気付いた。

 

「何者だ!」

 

「ふっ…完璧に気配を消していたというのにコレか」

 

「…光太郎さん、心配は入りません。時の番人(クロノ・ナンバーズ)のナンバーII(ツー)、ベルゼー=ロシュフォールです。ハートネットへの居場所を調べてもらい、送迎の為の車を用意してもらったんですよ」

 

「…ベルゼーだ。南光太郎、お前のことはクロノスでも話題になっている。上層部も南光太郎(アンタッチャブル)には近付くなと恐れる者がいる程だ」

 

ベルゼーはそう言ってセフィリアに新しい剣を渡す。

 

「オリハルコン製ではないが、武器も無しでは動き辛かろう。オリハルコン製の武器を除けば最上の刀を持参した」

 

「ありがとうございます、ベルゼー」

 

そう言って微笑むセフィリアにベルゼーは苦笑する。

 

「…暫く見ぬうちに変わったな」

 

「そうでしょうか…」

 

セフィリアはそう言って手を口元につけて考え込む。それはきっと光太郎やイヴと接してきたからであろう。ベルゼーはそう判断し、戦士としてはさて置き、女性としては良い変化なのだろうと目を閉じた。

 

そして再び目を開けたベルゼーはイヴと目が合った。自分を見る目は何処となく怯えているようにも見える。ベルゼーはポケットに手を入れるが、その動作が余計にイヴを怖がらせた。しかしベルゼーがポケットから取り出したのは飴だった。それをイヴに差し出す。

 

「…舐めるか?」

 

「い、いらない…」

 

「……そうか」

 

拒否されたベルゼーは内心ショックであったが、それを表面に出さず飴を仕舞い込んだ。それを見てセフィリアは笑う。

 

「大丈夫ですよ、イヴ。ベルゼーはこう見えてとても優しいのですから」

 

セフィリアはフォローするが、ベルゼーはそれ以上喋ることなく、部屋を出て行った。相当ショックだったのだろうか。それとも元々無口な人なのか、光太郎には判断つかなかったが、どちらにせよ、今はトレインの元に行くのを急がなければならない。そしてトレインは仇に対してどのような答えを出すのだろうか。

 

 

 

 

◆◇◇◆

 

噂のトレインは現在アジトのベッドの上でゴロゴロしていた。それを見かねて、スヴェンはパソコンで次の賞金首を探しながらため息をついた。

 

「…トレイン、いい加減起きて情報収集でもしてきたらどうだ?」

 

「いいじゃねーか。昨日仕事で爆弾魔も捕まえたんだし、仕事の次の日くらいのんびりしてもよー」

 

「まだ俺たちには1500万イェンの借金があるんだぞ。時は金なりって言うだろ。時間が惜しい、働け」

 

「ちぇー」

 

トレインはブーブーとブーイングを言いながらも立ち上がる。そしてスヴェンから20万イェンを渡された。

 

「とりあえず、アネットに借金を返してきてくれ。俺の方は弾が心許なくなってきたから、補充してくるぜ」

 

「あいよー」

 

トレインはスヴェンに背を向けて右手をひらひらさせてアジトを出て行った。世間ではサンゼルスシティの襲撃事件で報道を騒がせているというのに、相変わらずマイペースな奴だ。スヴェンは「それもトレインの奴の長所か」と苦笑してアジトを後にした。

 

 

 

 

 

 

光太郎たちは一晩かけてトレインたちがいるというアジトにやってきた。しかしそのアジトには人の気配もなく、どうやらすれ違いになってしまったらしい。だがベルゼーには次の心当たりがあるようだ。ベルゼーによると、カフェ「ケット.シー」という店をトレイン達は懇意にしているらしく、そこにいる可能性も、とのことだった。

 

どちらにせよ、他に手掛かりのない自分たちはそこに行くしかない。また車に乗り込んで件のカフェへと向かった。

 

カフェ「ケット.シー」。

元・掃除屋であった女性が引退と同時に始めた店で、今では情報屋に転向しているというのがクロノスが調べ上げた資料に載っていた。

 

クロノスのその情報網には感心すると同時に恐怖を覚える。何せ、自分たちのプライバシーが筒抜けなのだ。今こうしている間にも見張られているのかもしれない。そう思って右隣に座る女性を見ると、案の定ずっとこちらを見続けている。

 

「あの…」

 

「光太郎さん、何か?」

 

セフィリアはそう微笑む。

 

「俺の顔、何かついてます?」

 

「いえ、何もついていませんよ」

 

「そ、そうですか」

 

ならばなぜ、じっとこちらを凝視しているのだろうか。光太郎は居た堪れなくなり、肩を竦めた。

 

カフェ「キャット.シー」に到着した頃には光太郎は憔悴していた。「ずるい」とイヴまでが加わってきたからだ。両側から常に視線を送られるなんてどんな罰ゲームなのか。

 

カフェの戸には「現在準備中」の札が掛けられている。しかしベルゼーはそれを気にもせず、光太郎が止める間もなく戸を開けて入って行った。光太郎も慌てて後に続く。

 

店内にいたのは女性が一人だけであった。40歳くらいだろうか。女性は営業時間前に店内に入ってきた非常識な客に不機嫌な表情だ。

 

「なんだい、表の札見なかったのかい? まだ準備中だよ」

 

「あの、俺たちトレインとスヴェンに会いに来たんです。でも留守で会えなくて…。だからもしかしてこちらに来ていないかなと思ったんですが…」

 

女店主は光太郎の姿を上から下までじっくり観察する。

そして開店時間前の客をカウンター席に促した。

 

「トレインたちの居場所は分からないが、こちらにツケで食べにくるか、そのうち帰ってくるだろう。せっかく店に来たんだ。少しくらい何か食べていきな」

 

女店主にそう言われ一同は顔を見合わせたものの、素直に従うことにした。そしてメニューを見て注文しようとしたところ、カフェの入り口の戸が勢い良く開け放たれた。

 

もしやトレインたちかと光太郎は期待したが、そこにいたのは荒野のガンマン風スタイルの少し変わったマスクをつけている男だった。

 

「また営業時間前に来た客かい」

 

店主はそう言うが、男はただ一言「黒猫(ブラック・キャット)の居場所を教えな」と言ってきた。その瞬間、ベルゼーの姿が消えた。

 

 

 

「貴様は何者だ」

 

瞬時にマスクの男の背後に回り込み、持っていた槍を構えていた。

 

男は背後にいるベルゼーの声に驚いて振り返ろうとした直後、首元に冷たい物が触れた。

 

「動かないでください」

 

セフィリアのその淡々とした言葉に、男は顔は動かさず視線で首元に触れている物を確認する。そこにはセフィリアの持っていた剣の刀身が添えられていた。

 

「な…貴様等何者(なにもん)だ?」

 

「質問をしているのはこちら側だ」

 

「あなたに質問する権利はありません。正直に答えなさい。あなたは何者で、なぜトレイン=ハートネットの居場所を探るのですか?」

 

セフィリアはそう問いかけるが男は答えない。そして男はセフィリアの額に刻まれたI(ワン)の刻印に気付いた。

 

「そうか…お前が時の番人(クロノ・ナンバーズ)のトップか。クリードから聞いてはいたがこんな細面な女がそうだとはな」

 

「…! あなたは星の使徒ということですか」

 

「…くくっ、どうだろうな」

 

男にとっては絶望的な状況のはずだ。しかしあの余裕はなんだ。セフィリアさんもベルゼーも男が武器を取り出さないように、下手な動きをしないように警戒している。この状況下にあって打開する策があるというのだろうか。光太郎はイヴに女店主を守って欲しいと小さな声で伝え、イヴもすぐに頷いてくれた。

 

 

男はため息をつく。

 

「はぁ、流石の俺もこんな状況じゃどうしようもできねえな、クックックッ」

 

その時、男のマスクが上下に開閉した。セフィリアはそこにある物にすぐ気付いた。マスクの中に隠れていた物。あれは銃だった。マスクが開閉して1秒にも満たない時間。セフィリアの優れた動体視力が銃口に光が灯ったのを確認する。銃弾ではない何かが放たれようとしていた。

 

だが自分の体が誰かに抱き寄せられ、光り輝いている手がマスクの銃口を押さえつけていた。

 

 

 

 

 

 

直後爆音が響く。

衝撃はあったがセフィリアの体にどこも痛みはない。顔を見上げるとそこにはRXの顔があった。そして今、自分はRXに抱きとめられている姿勢であることに気付く。

 

「あ、あの…ありがとうございます」

 

RXに礼を述べて離れるセフィリア。遠くではイヴがジト目で睨んできているが、今は気付いていないフリをした。先ほどの衝撃で気を失い、倒れている男に視線を落とす。

 

「暴発…したということですか?」

 

RXはその手で銃口を塞ぎ、銃弾ではない何かが発射口を通ることができずに暴発したようだ。クロノスの調査によると星の使徒は全員が(タオ)使いとのことであり、先程の光はこの男の能力であったのかもしれない。今となってはどうでもいいことだが…。

 

 

一部始終を見ていた女店主アネット=ピアスはトレインやスヴェンからある程度の話は聞いている。時の番人や鋼の男。そして星の使徒のことも…。しかしそれでもマスクの男は「運のない男だね」と同情したくなる程の間の悪さだった。世界でも最強級の戦士が3人もいる所に単独で乗り込んでしまったのだから…。




クロノスに捕らわれたマスクの男、デュラム=グラスター!

しかし彼の出番は本編では名前も出ることなくこれで終了となる!!

トレイン達と再会した光太郎はクリードについて話し合うが、トレインは親友の仇をどうするつもりなのか!?

次回 『クリードは俺が捕らえる。殺し屋でなく掃除屋として!』
ぶっちぎるぜ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。