【完結】とある再起の悪役令嬢(ヴィレイネス)   作:家葉 テイク

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一三七話:新たなる難問

「──ふむ、どうやら概ね状況は順調に推移しているらしい」

 

 

 どこから取り出したのか、パッド機器を確認しながら、銀髪の『人間』は嘯くようにそう言った。

 

 

「木原端数はドレンチャー=木原=レパトリと潜入していた近江手裏、偶然居合わせた扶桑彩愛と衝突し、ダウン。配下のサイボーグであるレディバードは近江に鹵獲される、か……。便利な『嫌普性』だったのだが、いい加減手綱を握るのも難しかったし丁度よかったな」

 

「……何を見ているんですの?」

 

「ん? ああ、前方のヴェントが倒されたらしいのでね。改めて戦況全体を把握しているところだ。お、これは面白いぞ。迎電部隊(スパークシグナル)と『ブロック』と蠢動俊三が手を組んで動き出したらしい。ふふふ、反乱分子がより取り見取りだな」

 

「それって全然笑いごとじゃないのではなくて!?!?」

 

 

 アレイスターは楽しそうに笑っているが、迎電部隊(スパークシグナル)も『ブロック』も蠢動俊三も、レイシアは聞いたことがある。

 いずれもアレイスターに反旗を翻すべく暗躍していたド悪党どもである。一人だけでも厄介な事件を引き起こしていたというのに、そいつらがまとまって、このタイミングでアレイスターに反旗を翻したとなったら、そんなものは一大事である。ただでさえ神の右席を相手にしないといけないというのに、そんなのもう殆ど詰みではないか? とレイシアは思う。

 そしてそこまで思って、ふと気が付いた。

 

 

「……()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 三人いる神の右席のうちの一人が、撃退されている、という事実に。

 

 

「ああ。どうやらやってくれたようだな」

 

「そうですの……。ドッペルゲンガーが、ですわね? アイツ、意外と強かったんですのね……」

 

「いや、違う。ドッペルゲンガーも戦闘に加わってはいるが、要因としてはシレン=ブラックガードの活躍が大きいよ。同じく戦闘に参加していた木原相似の尽力もあるようだが」

 

「は……!?」

 

 

 アレイスターのあっさりとした説明に、レイシアは目を丸くする。

 レイシアの持っている情報からしたら、あまりにも目まぐるしすぎる展開である。ドッペルゲンガーだけでなく、木原数多によって悪性を刺激されたシレンが、同じく木原数多と関係の深い木原相似とともに、ヴェントを倒す? 勢力図としては完全に敵対しているはずなのに、アウトプットとしては完全にアレイスターの利になっているではないか。

 

 

「木原数多はシレンの攻撃性を刺激しているが、その善性までは完全に歪め切れていない、ということなのかもしれないな」

 

 

 アレイスターはしれっとレイシアの疑念に対してフォローを入れつつ、

 

 

「だが、これは良いニュースであると同時に悪いニュースでもある。シレンは、彼女本来の善性によって彼女が今まで歩んできた道程で得た仲間の助力を得ている。それでいて、シレン自体は木原数多から注入された悪意によって我々を狙っているわけだ。これが何を意味するか、分かるかね」

 

「……、わたくし達の前に、かつての仲間たちが立ち塞がる可能性がある。そういうことかしら」

 

 

 表情を暗くしながら、レイシアは答えた。

 彼女にしてみれば、慣れ親しんだ仲間たちと敵対するのだ。気分が重くならないわけがない。それでも。たとえ一度は仲違いしてしまうとしても、決めたのだ。シレンを救う、と。

 

 

(わたくしの仲間達は、そんなわたくしの想いを理解してくれないほど狭量じゃない。彼らとの絆を信じればこそ、わたくしは躊躇わずに戦える)

 

 

 ゆっくりと、研ぎ澄ますように。

 レイシアは、かつての仲間達と衝突することへの覚悟を決めていく。

 

 

「……あ、でも、シレンが右席と戦ってくれているのは分かりましたし心強いですけど、結局反乱分子のほうはどうするのでして? ぶっちゃけこのままだと、神の右席を撃退しても学園都市を乗っ取られてしまいましたみたいな未来も十分考えられると思うのですけれど」

 

 当然の懸念を表明するレイシアに、アレイスターはさらりと答え、

 

 

「心配いらない。私の部下が既に動いてくれているし──」

 

 

 直後、特大の爆弾を落とした。

 

 

「上条当麻が現場に向かっているからな。どうやら連中、反乱の過程で罪のない女の子を巻き込んだらしい」

 

「とっととわたくし達も介入しますわよ!! そんな流れ、どう考えても回り回って神の右席も含めた全部の事件の中心地になっていくに決まっているではありませんの!!」

 

 

 


 

 

 

最終章 予定調和なんて知らない 

Theory_"was"_Broken.   

 

一三七話:新たなる難問

Not_Over_Yet.

 

 

 


 

 

 

 シレンを後部座席に乗せた浜面とフレンダは、そのままテッラとアックアから逃げるように車を走らせていく。

 

 

「……助かりましたわ、浜面さん、フレンダさん。ナイスタイミングでしたわね」

 

「まぁ、アンタには微細とか駒場さんの件で借りがあるしな。協力くらいならしてやるよ」

 

 

 ──何を隠そう、浜面とフレンダもまた、シレンが助けを求めた協力者なのだった。

 実は、あのドッペルゲンガーの一件の折にレイシアとフレンダは和解がてら連絡先を交換していたのである。流石フレンダというべきフットワークの軽さだった。

 だとしても『アイテム』なんて敵対組織の一員に助けを求めるなよとレイシアあたりがいたら口酸っぱく言っていただろうが、今はそんなことを言っていられるような状況ではない。とにかく使えるものは敵対暗部組織であろうと使わないといけないのである。

 

 なお、シレンが彼女達に依頼したのは情報収集と、状況によってはシレンの移動の補助だ。当初は白黒鋸刃(ジャギドエッジ)が使用不可とは知らなかったシレンだが、それでもAIMジャマーなどで状況によっては能力が使えなくなる可能性も考えてはいた。

 そういう局面において、無能力者(レベル0)でありながら強い善性と実力を持っている浜面とフレンダは頼りになる。そういう判断である。

 そして実際に、白黒鋸刃(ジャギドエッジ)が使用不能になっている状況においては浜面とフレンダの『アシ』は非常に重要だ。何せ、シレンには与えられたタイムリミットはもう二時間もないのだから。

 

 

「…………、」

 

 

 心配そうに後方を確認するシレンへ、浜面はからかうように、

 

 

「なんだ? 流石に追撃が心配かね? 安心しろよ。連中はこの街の悪党やらヒーローにも喧嘩を売ってる。そいつらの応対をしなくちゃならない以上、あとしばらくは逃げる車を追いかけるような余裕もないだろ」

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 シレンは真面目くさった顔でそう言う。

 

 

「彼らの主目的がアレイスター=クロウリーや学園都市の中枢の他に、わたくしや当麻さんであることは先ほど聞いて分かりました。わたくしのこれまでの行動を見れば是非もないでしょう。……わたくしだって、こうなった以上『誰も巻き込みたくない』なんて聖人ぶった綺麗事を言うつもりはありません。ですが……」

 

「誰かに任せて逃げるのは罪悪感があるって? かーっ、駄目だな。分かってねえよ聖女サマ。アンタ、強者の考えってのが染みついちまってるぜ」

 

 

 言い淀むシレンに、浜面はきっぱりとそう言ってのけた。

 彼は顎で助手席に座る相棒へ言葉を促すと、フレンダは行儀悪く助手席を抱きすくめるような形で後部座席の方へ向き直る。

 

 

「結局、逃げることが戦闘を放棄することだって、誰が決めた訳?」

 

 

 明確な、パラダイムシフトに繋がる提言を。

 

 

「さっき、アンタの仲間だって男……馬場とか言ったっけ? そいつから聞いたわよ。アンタ、能力使えなくなって、代わりに妙な異能が使えるようになっているらしいじゃない。えーと……」

 

奇想外し(リザルトツイスター)。……害意を持った行動を音によって失敗させる……それだけの異能ですわ」

 

「そう、それ!」

 

 

 フレンダはそう言って、人差し指を立てる。

 シレン自身は特に奇想外し(リザルトツイスター)の情報は共有していないのだが、おそらく馬場が気をまわしてくれたのだろう。シレンが連絡した協力者には、今のシレンの状況をきちんと伝えてくれているのかもしれない。

 事情を察したシレンへ畳みかけるように、フレンダは忠告する。

 

 

「だったらいい加減、超能力者(レベル5)の──強者の戦い方ってヤツは忘れなさい。結局、弱者は待ち受けない。真っ向からぶつからない。とことんまで直接戦闘を避けて、無様に醜く逃げ惑って、勝利につながる条件(ピース)をかき集め続ける。そうやって鬼ごっこをしながら勝ちってゴールを目指す訳よ」

 

 

 そうやって最後に笑えてれば勝ちなんだからね、とフレンダは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「そもそも、神の右席とかいう連中に突っ込んでいった連中だって、アンタにそうやって『自分が巻き込みました』ってツラされてたらキレると思うぜ。『ふざけんな。テメェの為じゃねえ、俺たちは自分の意思で首を突っ込んだんだ』ってよ」

 

「…………、……そうですわね」

 

 

 ニッと笑いかけてくる浜面に、シレンも息を吐くように笑った。

 確かに、その通りだ。確かに敵の目的はシレンや上条なのかもしれないが、戦場に参加することを選んだのは彼ら自身だ。その判断にまで責任を負おうとするのは、傲慢というものである。特に上条あたりが聞けば、きっと同じことを数倍の怒りを込めて突き付けられていただろう。

 ならば自分がすべきは、各々の善性で神の右席に立ち向かってくれる者達への感謝と、神の右席を打破するための策を練ることである。

 

 

「それに、神の右席の連中も、別にコンビで動いているわけでもねえらしいぞ」

 

 

 運転しながら、浜面はそんな情報を付け加えた。

 浜面は片手でワゴンの存在しない天井を指さしながら、

 

 

「この屋根、実はあの緑の僧侶にやられたんだけどよ。あの時ヤツは一人で動いていた。どうも連中、同じ目的で来たのは間違いないらしいけど、それぞれの間で使命に対する温度感みてえなのが違うらしい」

 

「そうそう。ムキムキマッチョの方は戦闘を避けてる感じだったけど、緑の方はもうとりあえず全部ぶっ壊すって感じ? っつか、結局あいつらって何者な訳?」

 

「なるほど……そういう状況でしたか」

 

 

 シレンは頷いて、

 

 

「──二人が一度襲われた緑の僧侶は、左方のテッラ。『光の処刑』という、物体の優先順位を変更する……能力を使う、学園都市外部の能力者だと思っていただければ。また、その応用で小麦粉を刃物みたいに振り回せますわ」

 

「なるほど。道理でミサイル弾を直撃させても傷一つついてないわけね」

 

 

 フレンダは手をぽんと叩きながら納得する。

 

 

「ですが、戦場において厄介なのはもう一人の方ですわ。後方のアックア。『二重聖人』という稀有な体質を持つ彼は、生身で音速を超える挙動を取ることができます。……まぁ、超能力者(レベル5)みたいなものとお考え下さい」

 

「何よそれ……、じゃあ、こんな車なんて速攻で追いつけちゃうじゃない!」

 

「ええ。……わたくし達が今も彼に追い詰められていないのは、ひとえにこの街のヒーローや悪党達による攻撃がそれだけ彼らにとっても厄介だということでしょう。ですが……それにしたっていつまで続く拮抗かは分かりません」

 

 

 確かに彼らの尽力は尊いものだが、それだけで何とかできるほど神の右席というのは甘い戦力ではない。

 おそらく一〇分としないうちに殲滅されるか、あるいは振り切られる。そしてそうなれば、早晩シレン達は発見され、音速の挙動で追い詰められてしまうだろう。そうなれば、単なる無能力者(レベル0)の集まりでしかない今のシレン達ではどうしようもない。

 

 

(……垣根さんがあそこでダウンさせられてしまったのが、やっぱり痛いな……。クソ、あの時俺がもっとちゃんとしておけば……!)

 

 

 内心で悪態を吐きながらも、シレンは思考を切り替える。

 アックアとテッラの脅威は確かに大きいが、二人のコンビネーションが疎というのはシレン達にとっては吉報である。

 というか、そもそも左方のテッラは『正しい歴史』においては後方のアックアに殺害されている登場人物だ。『光の処刑』が実用化されているということは、時期的に考えてもテッラが『光の処刑』の調整の為に民間人を犠牲にしている情報はアックアに伝わっている可能性がある。そういう意味でも、二人の間に仲間意識のようなものがある可能性は極めて低いだろう。

 

 

(……やっぱり、やるなら分断と各個撃破。できれば、テッラさんの方からどうにかしたい。でも……どうやって!? 『光の処刑』だって『天罰術式』と同レベルの化け物だ。一瞬で倒せるような相手じゃない以上、どうやったってアックアさんの介入は避けられない……!)

 

 

 と。

 そこで、浜面が突然車を止めた。

 きょとんとするシレンをからかうように、助手席に座るフレンダは立ち上がって言う。

 

 

「結局、悩んでいるみたいね、シレン」

 

 

 左方のテッラと後方のアックア。

 一〇億の頂点に立つ四人のうちの二人という特記戦力を相手にしながら。

 

 

「でも、大丈夫。神の右席は苦も無く倒せるわ。──ヤツら自身の能力でね」

 

 

 それを感じさせない、不敵な笑みで。

 

 

 


 

 

 

 ──その、数分後。

 

 

 左方のテッラは、襲い掛かってきた少年少女を一通り撃退した後で一息吐いていた。

 

 状況は、テッラにとっては不愉快そのものと言っていい。

 そもそもアックアとは成り行きで行動を共にしているものの、テッラとは反りが合わない。協力などできないし、神の右席同士で攻撃力が()()()()()せいで、いちいち攻撃の余波に対しても対応する必要がある。

 その上、学園都市の兵力は様々な種類のものがひっきりなしに襲ってくる。『光の処刑』は調整不足のせいで一度に一つの対象しか扱うことができないから、こうした乱戦状況は得意ではないのだ。

 

 …………おそらくは、そうした相性不利も含めてこの街の王がどこかで手引きをしているのだろうが。

 

 

(鬱陶しい猿どもとはいえ、いちいち対処していては切りがありませんねー。全く、こういう事態の為にヴェントがいるというのに、いったい彼女はどこで何をしているのでしょうかー。利敵行為で粛清してもいいんですけどー)

 

 

 方針の転換。

 そちらについてテッラが思考を巡らせていた、ちょうどその時だった。

 

 

 一人の令嬢が、テッラの前に現れたのは。

 

 レイシア=ブラックガード。

 『神の右席』の抹殺対象の一人。

 その姿を認めた瞬間、テッラは瞬時に周辺の状況を確認する。彼の味方──一応──である後方のアックアは、南西一〇〇メートルの大通りで『ヒーロー』や『悪党』と戦闘中だ。元が民間人ということで手心を加えているせいで瞬殺できていないようだが、あの程度であればものの数秒で片がつくだろう。

 どうやらレイシアは情報にあった白黒鋸刃(ジャギドエッジ)以外の『何か』を扱うようだが──その不確定要素を踏まえても、テッラ側に分がある。

 その上で、テッラは言う。

 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

 こうすれば、レイシアは『大気』という透明な牢獄に囚われて指一本動けない。

 左方のテッラは慢心しない。くだらない異教の猿相手だとしても、いや、だからこそ、これ以上の苦戦は認められない。だから駄目押しをする。

 

 

 

「さあ、懺悔の時間ですよー、異教徒の少女。煉獄で己の罪を詫びなさい!!」

 

 

 レイシアの頭上から、白の断頭刃が振り下ろされる。殺傷力は低いが、それでも防御なしに頭部に受ければ命に関わる一撃だ。

 まさしく、必殺。

 その一手を前にして、レイシアは──

 

 

「『光の処刑』。案外、呆気ないものでしたわね?」

 

 

 すい、と。

 あっさり、あらゆる前提を無視するみたいに一歩後ろに下がることで、必殺を破綻させた。

 

 

「な、……ッ!? 術式は──正常に作動している!! これは、一体……!?」

 

 

 想定の範囲外の事態に一瞬茫然とするテッラを置いてきぼりにするように、レイシアはさらに後方へとバックステップで距離を取る。

 テッラは慌てて振り下ろしたギロチンを回収して迎撃しようとするも、

 

 

「この因果は捻転する!!」

 

 

 ボファッ!!!! と、フィンガースナップ一つでその『害意』は捻じ曲げられる。

 

 優先順位の変更。

 

 小麦粉による断頭刃(ギロチン)

 

 二つの手札を立て続けに無効化されたテッラは、まき散らされた小麦粉の霧の中で立ち尽くすしかなく────

 

 

「……無様であるな、テッラ」

 

 

 ズドン!! と両者の間に降り立った一人の男によって救われた。

 

 

「……流石に、返す言葉もありませんねー。彼女、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 飄々と返すテッラに、アックアが何かを言おうとしたのと同じタイミングで。

 小麦粉による霧の向こうで、レイシアが声を上げた。

 

 

「──後方のアックア。厄介な男が出ましたわね。……ですが、少々迂闊なのではなくて? そこは小麦粉まみれ。先ほども言いましたが……」

 

「粉塵爆発、であるか? 拙いブラフである。この屋外、風もある状況で粉塵爆発など起こせまい」

 

 

 しかし、アックアは落ち着き払ってレイシアに言い返す。

 流石にアックアも、ここまで来れば段々と状況が見えてくる。

 

 粉塵爆発を警戒して水による迎撃を行ったのは、先ほどの攻防で見せた。先ほどと同じ手を打ってきたということは、同じ対策を取ってほしいという意思の表れだろう。電撃か、あるいは別の何かか。ともかく、レイシアはアックアが『水』による防御をとることを期待した策を練ってきている。

 だが、そうと分かっていればこちらの打つ手は簡単だ。ただ小麦粉を回収してやればいい。失敗させられたとはいえテッラは別に術式を失ったわけではないので、そうしてしまえば邪魔な煙幕も消える。あとは詰将棋だ。いろいろと不可解なことは多いが、そのあたりは無力化した後でゆっくり尋問すればいい。

 

 横で、テッラが小麦粉を操ろうとした瞬間。

 

 

「……まぁ、分かってしまいますか。ええそうですわ。先ほどの発言は完全なるブラフ。粉塵爆発などおこせません。…………()()()()()()()

 

 

 神の右席は知らない。

 

 今回の彼女には、あらゆる爆発を操ることができるエキスパートがついていることを。

 

 

「改めて言います。…………粉塵爆発というのは、ご存知でして?」

 

 

 二人の男がそれに対して何か反応する間もなく、周囲は破滅的な爆発に巻き込まれた。

 

 

 


 

 

 

 その時。

 あらかじめ見繕っておいた物陰に隠れて爆発をやり過ごしていたシレンは、粉塵爆発に神の右席二人を巻き込むという決定的な戦果を前にしながら、静かに思考を巡らせていた。

 

 

(────フレンダさん)

 

 

 その思考が意味するものは。

 

 

(死んだら、恨むからなっっっっ!!!!)

 

 

 

 『まだ、何も終わっていない』。


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