交わる筈の無い物語、邂逅する筈の無い者達が集う事になる世界、そんな世界の住人が邂逅する時、何が起こるのか。
(※)御注意
今回も引き続き坂下郁様の作品世界とコラボレートしたお話になります、又話の時間軸として今回の話はあちら様の32話前半と後半の間にあたる部分を大坂鎮守府側で埋めた形のお話になりますので、合わせで読んで頂く事で意味が通る仕様となっております。
坂下郁 様 連載
【逃げ水の鎮守府-艦隊りこれくしょん-】
https://novel.syosetu.org/98338/
一応内容としては互いの世界観を崩さず、更に作品世界の物語を絡ませつつも、別作品との絡みという話では無く、どちらかと言うと今まで続いている連載の中に自然な形として組み込む話を目指した展開にしようという試みで進行する努力を致します。
また『大本営第二特務課の日常』側ではこのコラボ展開に絡む話は、サブタイトルは『日常という名の非日常の始まり』に統一する予定で御座いますので、それを目安に読んで頂けたらと思います。
以下の内容に興味が無い、又は趣味趣向が合わない方がおられましたらブラウザバック推奨になります。
それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。
2018/07/25
誤字脱字修正反映致しました。
ご指摘頂きましたしろっこ様、じゃーまん様、sat様、酔誤郎様、有難う御座います、大変助かりました。
「深海艦隊旗艦より入電 "ワレ敵艦隊発見セリ コレヨリ攻撃ニウツル" 繰り返します、"ワレ敵艦隊発見セリ コレヨリ攻撃ニウツル"」
大坂鎮守府地下三階、そこは避難シェルターも兼ねる戦闘指揮所。
旧大阪鎮守府壊滅の際は基地機能全てが地上施設として運用されていた為、深海棲艦の攻撃第一陣が襲った時点でこの鎮守府の基地機能は喪失してしまうという憂き目を見ている。
その教訓を生かし、軍では地下に設備を設置する余裕のある拠点は幾らか予備的に基地機能の分散を図るというのが軍事拠点設計時の基本になっていた。
そしてこの大坂鎮守府は元々脆弱な地盤を改良する為に基礎を入れる代わりに広大な地下区画を配するという形で再整備された関係で、基地の予備機能に加え、研究ラボや独立した地下発電施設も内蔵した形の造りになっていた。
それは潤沢な資金に飽かせ造った訳では無く、ここを拠点にと通達を受けた時点で、夕張や明石が 『周りのライフラインから切り離されても落ちない拠点』 を目指し、無理を推して資金や資源をかき集めて作った要塞であった。
そんな地下施設にある指揮所は中央に円形のディスプレイを兼ねた巨大なテーブルが据えられており、本来映し出される事が無い筈の陸軍管轄のレーダー施設からの情報や、呉管轄の海上情報などが投影され、大阪湾周辺の情報が映像化されてそこに映し出されていた。
そのシステムはまだ使えるとは言っても他所のデータを無言で横から拝借する物であり、本来必要なデータを部分的に拾う設計になっている筈であったが、未だシステムの調整が上手くいかず全ての情報がONになるかOFFになるかの二択状態。
枝が付いて情報漏洩の危険性も孕んではいたが、今回に限っては大坂鎮守府の担当海域外の情報も必要であり、またシステムのテストも兼ねて現在そこは"目一杯本気モード"のシステム稼動真っ最中なのであった。
「アアソウデスカ…… 余り派手にやらないでねってお伝え下さい……」
そんなテーブルの淡い光に下から照らされたヒョロ助の顔は凄く…… とても珍妙かつ沈痛な面持ちになっていた。
横を見ればアームに保持された状態の椅子に座ったoh淀と妙高がオペレーターとして情報の纏めと近海情報を管理し、そこから抽出された重要データが正面にある複数のディスプレイに流れていく。
上を見れば天井全体に張り付いたパネルランプがやや絞った光量で部屋全体を照らし、足元には黒ツナギの妖精さん達が現在進行形でシステムの調整の為右往左往している状態。
確かに戦略拠点という思想で言えば攻撃の余波を受け難い地下に基地機能を格納するのは利に適ってはいる、だがその施設に足を踏み込んでみればどこぞのSFチックな装備に周りを埋め尽くされ、しかもそこに表示されるのは民間軍事関係無しに収集される情報の数々。
「……メロン子」
「はい、何でしょう提督」
「このテーブル? に出ているデータとか、どこから引っ張ってキテンノ?」
「ああそれは呉の大阪管区南港防衛隊のホストコンピューターにリンクさせて、ここ一帯の海上情報を引っ張って来ています」
「く……呉の基地ハックしちゃってんの?」
「後は神戸の西日本広域汽船港湾部からも民間船関係のデータも持ってきてますので、海域一帯の情報漏れはありませんのでご安心下さい」
「民間からもデータ盗んでるの?……」
「それと、万が一の為に陸軍信太山駐屯地から広域対空データリンクのデータも流れてきてますので、空からの備えもバッチリですよ!」
海軍・陸軍・民間相手に情報泥棒をするというジェットストリームアタックな結果が、指揮所中央の直径5mはあろうかというテーブルに絶賛ライブ中継されている。
そんな基地周辺オールレンジで安全システムは、同時にオールレンジで吉野の立場が危うくなるというシステムでもあった。
そんな物を目の当たりにしてプルプル振るえつつ吉野はそれを直視出来ずにプイッと横を向く、するとそこの壁には何故だか壁に埋め込むには不自然な円形のメーターらしき物があった、そんな不自然なブツを何だと観察しても動いている気配が無い様に見える。
「ああ、あれですか、やはりこんな設備の場所には松○メーターは外せませんよね」
「○本メーターってナニ!? ヤ○トなの!? アル○ディアなの!? ナニシチャッテンノ!? ねえっ!?」
某宇宙の戦艦の廊下や壁に埋めこまれた例の用途不明な丸いメータ、そんなブツが壁や床のあちこちに埋め込まれた大坂鎮守府戦闘指揮所、其処はロマンと情報が満載の伏魔殿となっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「対象艦隊と思われる一団を確認、現在は小型の母艦と思われる艦艇1を中心に艦娘が展開、数は6、内二人が先行している物と思われます」
ウイーンとアームに持ち上げられて壁面の端末に移動しつつ妙高が現在の状況をテーブルモニターに反映させると、其処にはターゲットを示す緑の光点が幾つかと、そこから南に展開する深海艦隊の青い光点が確認出来る。
その青い光点の一つ、B-4と表記されるそれが単騎で北上を開始する。
其々に振られた番号は、深海艦隊という区分のBlueを頭文字に番号で管理された物。
B-1 旗艦
B-2 副艦
B-3
B-4
B-5
B-6
ちょっとした海域でもお目に掛かれない地獄のオールスターズがそこに存在していた。
因みに大坂鎮守府では第一艦隊はRed、第二艦隊はYellowという色によってデータ上区分されており、それがモニターに映し出される際は色分けして表示する様になっていた。
「
「ですね、しかし提督、宜しかったんですか?」
「何が?」
「
「だねぇ、元老院でも色々揉めているから未だに彼女達の事は一般への発表はされてないし、バレちゃったら軍はおろか世界中から日本は総叩きになっちゃうだろうねぇ」
「彼女達が無断で海域へ抜錨するというのは確か不可侵条約に触れる行為だと記憶していますが……」
「まぁ先にその不可侵条約の根幹を揺るがす行為に及んだのは向こう側だし、ここで彼女達を縛る事をしちゃうと多分我々と彼女達の縁は切れちゃうんじゃないかなって思うんだけど」
「それでも現況は軍内部での話ですし、政府筋からしてみれば現在彼女達が行っている戦闘行為は重大な条約違反という事になりませんか?」
「もしそれが元で不味い状況になったらさ、皆でどっかトンズラでもしちゃおうか、ほらハワイ辺り、あそこは今誰も居ないから一等地の土地なんかロハで使いたい放題だよ?」
軽く言うその言葉は冗談では無く、それが可能な準備も完了している事は大淀も知っている、それは日本を捨て、世界から狙われる日々に身を投じる物だという事も理解していた。
そんな事になってでもこの基地司令長官は彼女達との約束を果たすと覚悟を決め、同時に自分達もそれに付いていくと決めていた。
膨大な力を蓄え、情報を掻き集めるのはその"もしも"の時の為に、そんな規格外の基地を構築したのは渡らなければならない断崖に、渡した綱を少しでも太くする為。
モニターを見るその男の目はいつもの如く、この地での暮らしが破綻する危険を孕んでいてもそれを受け入れる前提でそれを見ていた。
「一蓮托生……毒を食らえばなんとやら……ですか」
そんな自嘲交じりの笑いを漏らす眼鏡を見て、並ぶ妙高も苦笑を漏らす。
そんな二人のインカムに第一報が入る。
『前に出てた片っぽ仕留めた……一旦下がる』
「Headquater了解、B-4は安全域に離脱を、以後艦隊援護に回るか帰還するかの判断はお任せします、お疲れ様でした」
『ん……了解』
モニター上の光点の一つが緑から無力化を示す黄色に変わる、それの艦種はまだ判らないが、それを切っ掛けに互いの光点が急接近し、本格的な戦闘の火蓋が切って落とされた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「で、威嚇程度に収めろと言われて抜錨した結果がコレか?……」
入渠施設の前で渋い顔の長門は手にした報告書を片手に溜息を吐いていた、その紙に記されているのはビルマルク、鹿島、羽黒、龍驤の名前。
其々交戦の末鹵獲してきた状態で大坂鎮守府へ連れて来られ、現在は叢雲と電の監視の下入渠中という状態であった。
「本当ならちょっと脅しをくれて退かせるつもりだったんだけど、思ったよりデキる連中だったから加減間違えちゃったわ」
「ほう? それ程か?」
「ええ、戦艦棲姫シスターズの姉が開幕一番ぶっ飛ばされちゃってね……目が点になっちゃったわよ」
「ビスマルク……高速戦艦と聞いていたが、中々胆力がありそうだな」
「あー、それ違う」
「ん? 何がだ?」
「姉をぶっ飛ばしたの、何かピンクの髪の駆逐艦だったわ」
「……何だと?」
話を聞くと、睨み合いの続くその状況にいつものネガティブモードを発動した戦艦棲姫の片割れが、突如突貫してきた駆逐艦にぼてくり回され、それが発端で場がしっちゃかめっちゃかになってしまったのだという。
その駆逐艦は特徴を聞くと恐らく白露型五番艦の春雨である事は判ったが、それが使用していた武装は砲でも無ければ魚雷でも無く、鎖の先に鉄球を繋いだ近接武器、所謂モーニングスターという物であった。
「……そ、そうか、まぁ世の中にはポン刀振り回す駆逐艦やラムアタックをかます戦艦も居る事だし、まぁ在り得ん話ではないな……」
その後、詳しい状況を纏めた艦隊総旗艦は連れて来た艦娘の処置を
もしこの時長門がそこに留まっていたなら、査察部隊の艦娘達はあんな地獄を味わう事が無かったのではないかと監視をしていたむちむちくちくかんが後に述懐したという。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……何よこれ?」
「グラーフツェッペリン監修、明石セレクション新作『オクトーバーフェストドレス赤・ディアンドル-ドイツの風を添えて-』よ」
先程治療を終えたビスマルクは一人で入渠施設脇のロッカールームへ連れ込まれていた。
その外では深海勢に囲まれたMIGOの面々が毛布に包まれ待機状態であり、その一番前に居たビスマルクのみが室内に連れて行かれたとあって不安な表情で扉を見詰めている。
「これをどうするって言うのよ?」
「何だ、
「失礼ね! 私はこれでもちゃんとしたドイツ生まれよっ!」
「ふむ、ならそれを着るのに何の躊躇いがあるというのだ?」
「……貴女ねぇ……これ、これのどこがチロルドレスだって言うのよ……」
オクトーバーフェストドレス
それはドイツを代表する女性用民族衣装の一つ、それは他にチロルドレス、又はディアンドルとも称される。
基本形状は襟が開いたブラウスの上にボディスと言われるワンピースタイプの胴衣がセットになった物であり、その多くは腹部にコルセット背面にあるかの様な調整と飾りを兼ねた紐が配され、セットとなるハーフタイプエプロンは結び目が右なら未婚者、左なら既婚者という区分がなされた状態で結ばれている。
イメージが難しい場合はアルプスで羊と戯れるあの少女のアニメで村のオネーチャんやオニャノコ達が着ているアレを思い出せば間違いでは無いだろう。
そして今ビス子の前に置かれたソレは、そのドレスを基本にグラ子が明石と相談して吉野の前で着る為にカスタムしたブツである。
そしてそんなサイコパスボインボインドイツ空母監修のそれは、スカートの裾が短くなっており、エプロンはヒラヒラの装飾が施され、更にボディスの胸部がやや下になった形になっている為にそれを着ると胸と言うかパイパイと言うか、たわわな果実がそこに乗っかる形になりナチュラルにボインボインになるという造詣になっていた。
判り易く説明すれば、バインバインが過度に強調されたアンナ○ラーズちっくなドイツ民族衣装と思えば間違いでは無いだろう。
「これに何か問題が?」
「問題あるわよっ! 何これこんなの着たら……その……ああもう判るでしょ!」
そんな折衝が更衣室で繰り広げられるが現実は非情である、ここは大坂鎮守府で大きなレディは鹵獲された所謂敗者、そこに
部屋の外で待機する者の耳に 『ミギャーーー!』 という断末魔が響き渡り、暫く何かゴソゴソという
そしてそれが収まりドアからグラ子が何かを肩に担いで出てくると、それを待機していた榛名にパスして目のハイライトを薄くした見ないで見ないでを部屋に引きずり込む。
龍驤が榛名の担いでいるそれに目を向けると、亀の甲羅状に結ばれたロープで緊縛されたミニスカ民族衣装のドイツ海軍が誇る戦艦の姿。
「あ……悪魔や、悪魔が中に棲んどる……」
エセ関西弁のフルフラット軽空母の口から漏れるそれは引き続き室内から轟く断末魔に掻き消され、彼女達の精神をポキポキと折りまくった末に大坂鎮守府という伏魔殿の恐ろしさを別な意味で心に刻み込んだという。
因みに鹿島や羽黒も意匠は違う物のバインバインやプリンプリンが強調された明石謹製せくすぃ衣装というか、バブル期のイケイケガール達でも引くような格好で縛られるという艶かしいそれを見て覚悟を決めた龍驤であったが、そこはそれどんな要望にも応えるというラインナップの明石セレクション。
最後に更衣室から自分の足で出てきたまな板の姿は、爽やかな春を思わせる水色のズックに淡い草色のスカート、そしてゴツイいつものバイザーの変わりに黄色い帽子を頭に乗せ、更には斜め掛けにされた黄色のかばんにはハンドメイドと思われるチューリップがあしらわれた物が装備。
じっと俯く足元には白いソックスと、マジックで『りゅうじょう』と名前が書かれた上履きが視界に入り、それを見ると何故か乾いた笑いが口から漏れ出していた。
園児龍驤誕生の瞬間である。
「なぁ……ちょっち聞いてええ?」
「何かしら?」
「なんかうちだけ他のモンとちゃう感じの服なんやけど、何で?」
「何でって言われても、サイズ的に色々選んでたらフィットしたのがそれだったから」
「ほーん……そっかぁ、うちに合うドレス的な服無かったって事かいな、ほなしゃーないなぁ……」
「着たいならあるにはあるけど、それだと胸に引っ掛かる部分が貴女だと先っちょだけになっちゃうから痛いんじゃないの?」
「先っちょとか生々しい事言うなっ! 涙が止まらんよーになるやんかっ!」
榛名に担がれたボンレス状態のバインバイン三人と、それにトボトボと付いて行く園児という珍妙な行列が入渠施設から執務室まで練り歩くという拷問を経て、彼女らはやっと査察対象の親玉である大坂鎮守府基地司令吉野と邂逅を果たしたという。
───────────────────────────
そして世の性的に色んな意味での紳士がイメージプレイした結果、その手で顕現させてしまう結末に及んでいた……
『無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~』
https://novel.syosetu.org/83197/
作者、マエストロたんぺい様、そう……紛れも無くヤツさ!
園児龍驤はまだいい、ある意味プリティささえ感じるこの違和感の無さ。
しかしチャイルドプレイ鹿島、貴様はダメだ、人しとて……そしてユンケル事変のあの苦い思い出は今も忘れない……
誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。
それではどうか宜しくお願い致します。