ちょっと色々時間がとれなくなる予定なので急ぎ加筆し直しての投下です……が、添削する時間がなかったというかそんな風味で何卒……何卒ご容赦の程を。
次話は来週投稿予定。
それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。
2021/08/25
誤字脱字修正反映致しました。
ご指摘頂きましたリア10爆発46様、頭が高いオジギ草様、酔誤郎様、水上 風月様、有難う御座います、大変助かりました。
「それで? 我が西蘭泊地はまたしても教導任務を行わなければならない上に、太平洋方面の防衛を担う事になったと。そう提督は言うのだな?」
西蘭泊地
その様はある意味"いつもの"と言えなくはないが、その"いつもの"の種類が通常業務のそれではなく、ある意味修羅場と言うか提督を詰問するウーメンの集いと言うか、そっち方面の"いつもの"である事は間違いない。
プルプルしつつ事の次第を説明する髭眼帯の横には、業務拡大のしわ寄せをモロに食らって横たわりピクピク痙攣する矢矧、新たに色々諸々ロマン的なアレコレを作る事になるだろうと予想しニヤニヤするメロン子。更には新たな予算編成に片頭痛に苛まれ、アイ〇ノンをVRヘッドセットよろしく装備した状態で話を聞く大淀という、ある意味修羅場が展開されていた。
「正直東方戦線方面軍云々は、緊急時の艦隊編成さえ決めておけば平時は現状維持で事足りるんだけど、教導関係は流石に西蘭泊地に召喚する訳にはいかないからさ、メルボルン辺りに施設を用意して、人員も幾らか配置するしかないんだけど」
「大坂にあった特殊兵学校レベルの教育を施すのは現状難しいのではないか? 設備はどうにかなっても教官と仮想敵となる深海勢を捻出するのは難しいと思う」
「せやなぁ、長門が懸念しとるように、今は対橋梁棲姫の為にオーストラリア南海域の防衛は固めとかんとならんし、南極開発に手ぇ出しとるから深海勢も今は手一杯やん?」
「そうなんだよねぇ、一応ほっぽちゃんの名代してるムツ君からは幾らか姫か鬼クラスの上位個体をこっちに送るって話は聞いてるけど、その内のどれだけの者が艦娘と歩調を合わせれるかはまぁ、多分お察しだと思うんだよねぇ」
北方棲姫は現在テリトリーを離れて行動している為、テリトリーの差配は
未だ北極圏に休眠状態で存在する上位個体はそれなりに居るそうだが、元々は戦火を避け逃げてきた者達が殆どである。それらの者達を西蘭へ送ったとして、艦娘と直に接し、教導と言う特殊な業務に就けるかというと、恐らく難しいだろうというのが
「まぁ提督としてはこの話受けるつもりなんでしょ? ならもう話は"どうすれば教導任務ができるか"で統一した方がいいと僕は思うんだけど」
はい、と例の赤いメタリックな缶飲料を渡しつつ、スススと自然に髭眼帯の隣にシッダウンする時雨は、本人曰く、"秘書艦が業務を成す為の特等席"を確保する事に成功する。
「どうせほっぽの縄張りから来た深海勢の初期調練もしなくちゃいけないし、未着任艦もそれなりに来るって司令官は言ってなかったかい? ならもうそっちもまとめてメルボルンでやってしまえばいいんじゃないかな」
西蘭泊地では、現在未着任とされている艦種が二桁を越えている。その人員も大本営から送られてくる予定となっており、北方棲姫のテリトリーから来る予定の人員を合わせると五十を超える事は確実であった。
"提督の知恵袋"を自称する
因みに幾らフォールディングしちゃえると言っても人が座れるチェアーである。大きさ的にポケットから取り出すのは物理法則的に不可能な筈であるがそこは突っ込んではいけない。彼女達艦娘の個人収納は国家機密よりも厳密に秘匿されており、無暗やたらに関わってしまうととても良くない事が起こってしまうからである。
「やはり泊地からある程度の人員を捻出しなければならんか……ふむ、なら教導任務にはこの私が……」
「ねぇ長門君」
「ん? 何だ提督」
「何故そこで占守型海防艦の制服(XXXLサイズ)が君の胸ポケッツからスルリと取り出されているのか、その辺りの経緯と用途を提督に説明してくれるかな?」
「ん? それは何事も形から入るのが取り敢えずの基本なのではと思ったのでお手製のユニフォオムを装備しようと思ったのだが、それが何か?」
「君の言う基本かつ取り敢えずの範疇は世間一般基準ではとても危険な行為を多分に含んでると提督は思うので取り敢えずその占守型海防艦の制服(XXXLサイズ)は封印して欲しいんだけど」
「む、なら択捉型の制服(XXXL)ならどうだ」
「デザインに対してのダメ出しじゃなく艦種の垣根の問題!! て言うか世界のビッグセブンと言われた大戦艦が海防艦にクラスチェンジとか斜め上にも程がアルデショ!?」
髭眼帯がツッコミを入れた時点で誤解を含んだ色々を察したナガモンは、ポッケから次々と占守型、択捉型の他に御蔵型や日振型の制服を取り出しては次々と並べ始めた。当然それらのサイズは全てXXXLであるのは言うまでもない。
「長門が着るとなるとXXXLではピッチピチになるのではないかしら? 元になる海防艦のサイズを考慮すれば最低そこはXXXXL辺りではならないのではなくて?」
「ちょっと加賀君も突っ込むトコはそこじゃないからね!?」
「いや、海防艦の制服は例の機能美溢れる提督指定の水着に通ずるものがある。なのでこれら私専用になるお手製である海防艦のユニフォオムのサイズはXXXLでいいのだ」
普通なら見目麗しい艦娘がピッチピチな制服を着ると聞けばある意味夢や希望が感じられるだろう。しかし今それを纏おうとしているのはナガトナガトである。長門型海防艦のピッチピチの制服と事実を言葉にしてしまうと、何故か膨らんだ筈の夢や希望が萎んでしまうと思うのは気のせいだろうか。
「結局教導任務は受けるって事で決定みたいね。まぁ私としては大坂でも通い妻してた訳だし、その辺りは慣れてるから大丈夫だけど」
艦隊総旗艦のナガモンを中心とした間違った話し合いの間隙を縫って、勘違い耳年魔の
目の前で展開されるアレな光景にプルプルしつつ、プイッと視線を逸らした髭眼帯は超真顔でメルボルンへ出向させるべき人員をリストアップしていく。
「教導任務という事は、責任者は以前と同じ大和になるのかadmiral」
「そうだね。余裕が無いって言っても大坂時代とは違って今はなんとかなる程度の人員は揃ってるけど、責任者は経験者にやって貰わないとダメなんじゃないかな」
ふむふむと納得しつつ、グラーフはごく自然に執務机の後ろに立ち、パイオツを髭眼帯の頭に乗せていつもの定位置に展開を完了する。そしてチチのディスプレイスタンドと化してしまった吉野だが、その辺りはもう慣れたと言うか諦めているのだろう、特にツッコミは入れずに黙々とリストアップを進めていった。
「施設的には前回と同じく一度に受け入れるのは三艦隊分の物を造るつもりで。ただ付帯する生活支援とかはは施設が泊地に隣接してない関係で給糧課の人員を拡充しつつ、交代で出向って事になるかな」
「提督、それについてなのですが、そろそろ龍鳳も春風も充分独り立ちできるくらい経験を積んでますし、メルボルンの給糧課は二人に任せようと思うのですがどうでしょうか?」
「ん? いやそこは鳳翔君に間宮君のどちらかが行かないと辛くない?」
「いえ、そろそろ龍鳳も春風も充分独り立ちできるくらい経験を積んでますし、メルボルンの給糧課は二人に任せようと思うのですがどうでしょうか?」
「いやだから補助じゃなく責任者として着任する訳だから……」
「しかしそろそろ龍鳳も春風も充分独り立ちできるくらい経験を積んでますし、メルボルンの給糧課は二人に任せようと思うのですがどうでしょうか?」
何故かリフレインする返事に髭眼帯はカキカキしてたメモから視線を上げ、鳳翔と間宮を見る。
そこには何故か凍り付く程の笑顔を湛え、ゴゴゴゴゴという擬音を背負うオカンとドン・マミーヤが居たりしたりした。
「……そろそろ、龍鳳も春風も、充分独り立ちできるくらい、経験を積んでますし、メルボルンの給糧課は、二人に任せようと思うのですが、どうでしょうか?」
「……ア、ハイ」
何故かプルプル度を増した髭眼帯は、給糧課のドン二人の言葉を聞き反射的に返事を口にしていた。そんな髭眼帯の肩をポンポンと誰かが叩くので振り向くと、そこには何故か球磨が深い溜息を吐きつつ、ゆっくりと首を左右に振っていた。
「提督、LOVE勢の執着心を舐めてはいけないクマ。我慢度メーターのゲインが大きいキャラって、許容範囲を越えた場合のリバウンドはネルソンタッチや長門タッチを軽く越えるクマ」
「え、なにそれ怖い」
世界が誇るビッグセブン達の特殊連撃を越えてくるリバウンドとは一体……と思いつつも、髭眼帯はプルプル震えながらメルボルン給糧課の責任者の欄に龍鳳と春風の名前をカキカキするのである。
現状の西蘭泊地は、規模も人員も大坂鎮守府の頃より拡大・拡充した関係で、以前のように吉野が全て差配するのは実質無理があるという事で、大まかな方針を各所の代表に通達し、細かな調整は現場でされた後再び吉野へ上がってくる形になっている。
今回の教導任務の件に関しても若干の調整は必要ではあったが、初めて取り掛かる業務でない為やると決めてからの動きは早かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
オーストラリア南東部。メルボルンを望むポートフィリップス湾は、入り口が狭く内部が広い、所謂袋型の地形になっている。
湾へ至る入口はそれなりに広く平坦な土地が豊富な上、海岸線とあって人が居なくなって久しい。
このポートフィリップス湾も現在吉野商事の所有となっており、最奥のポートメルボルンビーチ一帯は現在西蘭泊地の外事課関係の施設が設置されていた。
「ビーチじゃなくて敢えてスワン・ベイに教導施設を設置ですか。確かに土地は余ってますけど、外事課とこっちを分けちゃったら人員的に厳しくないですかね?」
「夕張君のいう事も尤もだけど、あっちは政治的組織な上に、外交の専門部署だからね。幾ら軍の関係者でも不特定多数の出入りが予想される学舎なんかと併設するのは色んな意味でマズいんだよねぇ」
ポートフィリップ湾の入り口西側に広がる細長い土地。スワン・ベイと呼ばれる一帯には嘗て大坂鎮守府にあった海軍特殊兵学校を元に、更に規模を拡大した施設が建てられる予定となっていた。
紀伊水道奥の大阪湾内にあった大坂鎮守府周辺は凪が基本であり、教導に於いても人工波を水路に発生させるなどして教導を行ってきた。
しかしポートフィリップス湾は内部は大阪湾と同じく基本は凪であるが、そこから出ればタスマニア島がある為それなりに波風が立ち、更に西に出ればグレートオーストラリア湾、東に出ればタスマン海、つまり外洋へと段階的に環境を選択できる。
しかも水深自体浅瀬から世界有数の深海まで選べるとあれば、ある意味どの艦種に対しても教導が可能な理想的立地と言えよう。
前を見れば遥かな向こうにタスマニア島、後ろを見ればメルボルン。そんな海岸に立つのは髭眼帯と時雨にメロン子、そして教導課の代表の叢雲。
兵学校の校長は前回もそうであった様に大和が就任する事になっていたが、彼女は現在泊地で過去の兵学校時代の資料を元に、教導に関わる事になった者達と準備をしている為ここには居ない。
「……ねぇあんた、気持ちは判るんだけど、いい加減現実を認めたらどうなのよ」
「うん、僕もそろそろ現実逃避はどうかなって思うんだけど……」
何故かプルプルしつつメロン子と真面目な話をしている髭眼帯に対し、ムチムチ同盟盟主であるムチムチの叢雲はジト目の三白眼かつ口を△にしつつ苦言的なセリフを口にしていた。
その言葉にピクリと動きを止めた髭眼帯はソロリと視線をメロン子と逆の方に向けた。
「はじめまして吹雪です。よろしくお願い致します」
ペカーとした笑顔で海軍式の敬礼をしつつ、吹雪型 1番艦のネームシップである吹雪が着任の挨拶を口にした。
「エェー……」
「ワシントン条約制限下で設計された、世界中を驚愕させたクラスを超えた特型駆逐艦の1番艦、吹雪です。私たちは、後の艦隊型駆逐艦のベースとなりました。はいっ、頑張ります!」
「いや吹雪さん、ものっそいい笑顔でおきまりのセリフ口にしちゃってますが、一体なんの御用なんでしょうか……」
「はいっ、頑張ります!」
「いやなにを!?」
確かに吹雪と言えばポテトビレッジの申し子であり、とある世界線では主人公(笑)を務め、やたらと明るいパンツさんと言われていた。今髭眼帯の目の前に居る吹雪はある意味吹雪らしい吹雪と言えちゃったりするので、特におかしな事はない。
ただし、今にこやかに敬礼している吹雪が、例の"最初の五人"の一人、かつ、初代大本営総旗艦の吹雪であるという注釈が付帯しなければであるが。
「何事も基本が大事と言いますし、ここは一つ私も若かりし頃の自分に立ち返り、一からやり直そうかと」
「一からやり直すって、一体何をどう一からやり直すおつもりですか軍令部付き筆頭秘書艦殿」
「そうですね……取り敢えずは、三郎さんの秘書艦三人の再教育からでしょうか」
「え!? 僕達吹雪さんに教育されちゃうの!?」
「いやどんな業務に就くのかとかの話じゃなくて! なんで吹雪さんがここに居るかの訳を聞かせて欲しいんですけど!?」
「だーかーらぁ、大隅が
「だからなんで大隅さんが元師になったら吹雪さんが秘書艦辞めてウチに来る事になるの!? 途中の経緯すっ飛ばし過ぎて提督ワケワカメなんですけど!?」
現在日本は本格的に欧州方面と繋がる形で支配海域を維持している。そして政治的にも経済的にも嘗ての様な人類の生存圏が復活しつつあった。
今までは軍部主導でしか繋がれなかった世界は急速に変化しつつあり、国と国は政治と経済で繫がりつつあった。そして軍部の発言権は否が応でも弱くなっていき、嘗てのドイツ海軍のようになってしまうのではないかと軍部では危惧されるようになった。
その為政治将校として現内閣と深く関わりがある元師、
つまり、大隅大将はジョブチェンジを果たし大隅
「司令官……いえ、大隅大将は元師になった瞬間から政治将校としての務めを成さねばなりません、その場合私が秘書艦では武のイメージが強過ぎるのです」
深海棲艦が現れてから三十幾年、当時直接その脅威に晒された、または戦った者達は、世代的に現在は各界のトップとして活動しているケースが多い。それはつまり"最初の五人"の戦いをリアルタイムで見てきた者達が各界の代表者を勤めているとも言える。
それ故政治将校として政界と経済界に深る関わるだろう元師の秘書艦に吹雪が就くとなれば、武の色が濃過ぎて相手に威圧を与える事になるのは確かであった。
それ程までに、現役時代の彼女達"最初の五人"の戦いは苛烈であったと言えよう。
その吹雪であるが、最初に彼女の提督を務めたのは坂田であったが、彼が元師に就く事になった後は先述の理由から大隅の秘書艦に就任。そして今回その大隅が元師になるという事で吹雪は再び秘書艦の任を辞し、ついでとばかりに大本営から西蘭泊地へとトランスファーしてしまった。
「えっとその……確かに吹雪さんが対外的にアレで元師の秘書艦になるのはマズいと言うのは理解できますけど、艦娘関係の取りまとめとかもありますし、後任の寺田さんをサポートすればどうかとか思ったりするんですけど」
「何か面と向かってアレでマズいとか言われるとなんだコノヤロウと思わなくもないですが、それは取り敢えず横に置いといて」
相変わらず何を考えているか判らない相で突っ込みを入れる吹雪に、長い付き合いの髭眼帯は何かを感じ取ったのだろう、思わずプイッと視線を逸らし、何もない大海原を見ながらプルプル震え始めた。
「先ず寺田さんには長年連れ添った秘書艦達が居ます、今更私がそこに割り込むのも無粋ですし、なにより職場のお局様というのは邪魔者以外の何者でもないと思うのです」
大本営の創設からずっと軍政の頂点の補佐をしてきた吹雪は、世代的に寺田等を育ててきた立場であるとも言える。幾ら立場があるからと言っても、そういう者を補佐に据え、使うとなれば確かに気を使うかもしれないなと吉野は納得する。
「そして現状はレンドリース関係で、大本営に数多の海外艦が所属する事になりました。海を越え、深海棲艦の只中を打通し、私達は漸く孤独から脱したのです。そして軍は……日本は世界と繋がり、新たな道を模索する段階に至っています。ならば私のような過去の亡霊がいつまでも上位に居座るのは好ましくありません」
嘗て絶望で染まった海を切り拓き制海権の奪取に奮闘した彼女達"最初の五人"は、後に続く"建造された艦娘達"へ後事を託すかのように壊れ、歴史の表舞台からひっそりと姿を消した。後に裏方として軍を支える事になったが、それすら時代の流れと言わんばかりに厄介払いとなり、生きる場を失いつつあった。
『狡兎死して走狗煮らる』という言葉がある。嘗て英雄として、希望として海を守ってきた五人の少女は、その言葉の意味を体現するかの如く、結局一人を除き南半球の片隅に集う事になった。
最後の最後まで、大本営という中央組織を支える事に拘った少女は、眩しそうに目を細めつつ何もないバス海峡を見渡しつつこう言った。
「ここは私の知る海ではありません、でも、漸く……家族と暮らせるようになるんですね」
滅多に感情を表に出さない、初代大本営総旗艦と呼ばれた少女は珍しく笑顔を滲ませ、両手を開きつつ髭眼帯を見る。
「これから私の事はお姉さま、若しくはお姉ちゃんと呼んで下さい」
「いえ、そこは吹雪さん若しくはパンツさんでお願いします」
どこまでが本気でどこからが戯れか判らない、色々と台無しな二人の会話に周りの者は怪訝な表情を滲ませるというカオスが、ここに広がり始めた。
「相変わらず三郎さんは……いえ、これからは司令官とお呼びするべきでしょうか。司令官はパンツが好きなんですね」
「言葉一つで他人を陥れる悪癖は今も健在ですね、因みに自分は木綿で白は趣味ではないのでノーサンキューです」
木綿かつ白。それはポテトビレッジ艦と呼ばれる艦娘達に長年受け継がれる掟であった。
「因みに私は吹雪型だけど木綿でもなければ色は黒よ」
「僕も黒かな」
「今日は白にグリーンの縞パン+タイツ装備です」
何故か叢雲に時雨、そしてメロン子が無駄にパンツアピールをしたりするが、それを聞いた吹雪は何故か腰に手を当てポージングしつつ、不敵な笑みを浮かべた。
「木綿に白、確かにそれは吹雪型駆逐艦の標準装備です。しかし私もとある世界線では主人公と呼ばれ、パンツの伝道師の異名も持っています。木綿に白は吹雪型ネームシップとして譲れない部分ですが、それ以外……例えば、形状なんかには制約が設けられている訳ではないのですよ?」
何故かパンツさんを中心にパンツアピールが始まり、更には熱いパンツ議論が勃発した事に、場の中心かつアピール対象になってしまった髭眼帯は、そんな話題を口にしてしまった己の迂闊さにプルプルしつつ、嫌な予感メーターがグングンと上昇していくのを感じていた。
「今私の装備しているのは掟に従って木綿に白ですが、形状は左右で結ぶタイプの……所謂ヒモパンです」
一体この人は何をドヤ顔でアピールしているのだろう。そう髭眼帯は思ったりしたが、ここでツッコミを入れるととても良くない事が起こるかも知れないと凄く怪訝な表情のままパンツさんのカミングアウトをプルプルしつつ聞いていた。
「しかも材質は木綿で尚且つ色が白ですから、何かがあった時……そうですね、外出する際マスクを忘れた時、ヒモパンならそのままマスクの代わりに使用する事が可能です」
「履いてたパンツをマスクとして装着するという選択は人としてどうかなと思うのと同時に、その場合は特定部分がノーガードになってしまうのではないかととても提督は危惧するのですが……」
「そういう場合はポッケから予備のパンツを出して履くので大丈夫です」
「予備のパンツは持ち歩くのにマスクは常備してないんだぁ……むしろ予備のパンツをマスクとして使わないのかって思うのは提督だけではないと思います」
「まぁポケットの性質を考えるとパンツは入っても、マスクは無理だからしょうがないよね」
「え、なにそれ君達のポケットって何がどうなってそういう制限が掛かってる訳!?」
「なによ、そんなの常識じゃない」
「ですよねぇ~」
常々説明をしている事だが、彼女達艦娘の不思議ポケットの諸々は謎と不思議にまみれており、ヘタに関わると命の危機に直結してしまうので、基本的に関わってはいけないと海軍兵学校では教え込まれたりする程、重要機密に指定されている。
こうして何故か新たな施設の候補地の下見に来た筈の髭眼帯達は、初日から予期せぬ訪問者に翻弄され、本格的な視察は翌日に繰越す事になってしまったという。
・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
・誤字報告機能を使用して頂ければ本人は凄く喜びます。
・また言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。
それではどうか宜しくお願い致します。