て言うかネタはあるけど執筆から遠ざかると文字に起こすのにグヌヌヌヌ。
とりあえずドン! 多分投稿期間は徐々に改善される筈。
筈!!(超遠い目)
それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。
2020/
誤字脱字修正反映致しました。
ご指摘頂きました頭が高いオジギ草様、柱島低督様、orione様、orione様、有難う御座います、大変助かりました。
日欧資源環送航路連絡会の発足を前日に控えた英国。
召喚された各国代表陣の母艦は、艦娘用設備を敷設した嘗ての大英帝国海軍の拠点、ポーツマス海軍基地に停泊する事になっている。
西蘭島より来た吉野達はランプレヒト・ビルングとの会談と諸事の為、二日程ヴィルムスハーフェンにあるドイツ連邦海軍第2機動隊群内欧州連合技術研所へ立ち寄っていたが、現在は当初の予定であった日欧資源環送航路連絡会の発足に立ち会う為にポーツマス海軍基地へ母艦
一応は。
「ねぇあきつさん、あの、その、何故矢矧さんと夕張さんと提督はその……
「秋月殿、その辺りはまぁ其々色々と事情を抱えているのでありますが、その辺りの説明をするのはちと時間が掛かるでありますよ……」
母艦
約三十畳程もある一部畳の一室に据えられた、ちょっと豪華な皮張りのソファーとマホガニー製ローテーブルを囲む三人。
髭眼帯こと日本海軍西蘭泊地司令長官である吉野三郎海軍少将は二人掛けのソファーに深く身を沈め、天井を仰ぎ見ながら魂が抜けたかの如く虚ろな表情を表に張り付けたまま微動だにしない。
その対面右側に座る、西蘭泊地外事課課長である矢矧はまるで死人の如くローテーブルに上半身を投げ出すように突っ伏し、やはり微動だにしない。
更にその矢矧の右隣り、髭眼帯から見て左斜めに座る西蘭泊地工廠課"夕張重工"の責任者である工作艦夕張は、右にソロバン、左に何やら色々が書き込まれた図面、更には正面に置かれた関数電卓を順に睨みながらブツブツと…… 恐らく専門的な単語であろう謎の言葉を超真顔なままで呟いていた。
それは世間一般的な雰囲気で言うと"お通夜"と呼ぶに相応しい空気が充満し、延々と続く夕張の呟きがまるで経文を垂れ流す的な状態になり、場の空気を更に"お通夜"状態にさせていた。
「秋月殿は現在西蘭泊地に着任していない種の艦娘が、此度世界中から一気に送られてくる事になったのはご存じでありますか?」
「はい。理由は聞いてませんけどその辺りはお昼頃に聞きました」
「矢矧殿はその対応を一手に引き受けつつ、明日の連絡会発足後に申し込まれている提督殿の会談の最終調整をし、更には以後関係するであろう多方面に対し根回しをしている最中でありました」
「え、それって…… 同時進行で?」
「同時進行で、であります」
恐らくそうなるであろうという予想の元、出来る事前準備は全て済ませてきたデキる艦娘矢矧。
それでも恐らくは相当な予想外は起きる筈だと構えてた矢先、ランプレヒト・ビルングが投げたビーンボールがいきなりクリティカルとなってしまい、外交関係の仕事から髭眼帯を脱落させてしまう事態へと発展させてしまった。
更にはあきつ丸が言う"現在西蘭に未着任な艦娘を世界が寄ってたかって送り込む"という事が決定し、関係する主要七か国に対し受け入れの対応をする窓口も能力的に矢矧が担当するしかない。
加えて今回は西蘭泊地外事課発足後初の外遊である。これを機に表も裏も繋ぎを持ち、今後の為の根回しもしておかなければならず。
そんな諸々が集中した矢矧は、頭オーバーフロー状態のまま髭眼帯に諸々の報告をした後、静かにローテーブルに轟沈してしまった。
「それで夕張殿でありますが、何やらビルング
「嘆願ですか。それってどれだけの技術開示をしてもいいかって事ですか?」
「そうでありますな」
「……それは、何とかなったんでしょうか」
「何ともなってないから、お通夜に経を挙げてるであります」
「あー……」
夕張は現在欧州連合技術研所より依頼のあった、新型艦娘母艦と言っても差し支えない調査用艦艇の仕様書を受け取った後、現行の西蘭製母艦の図面に条件を落とし込んでみたが、結局秘匿するべき技術範囲と、欧州連合技術研所が要求する…… 主に人が関わるべき操船や維持等の総数上限がどうしても見合わない為、その差をどう埋めるかという問題に直面していた。
細かな仕様はさておき、件の母艦は海洋研究を主とした船ではあるが、深海棲艦が跋扈する海に長期に渡り
それは現状行われている軍の作戦行動と照らし合わせても特異な物と謂わざるを得ない。何せ主目的は戦闘ではなく調査、それも期間が限定されず、言ってしまえば目的が達成されるまではずっと抜錨した状態が延々と続くという有様である。
そして関わる人的リソースは通常の艦娘母艦に比べ五分の一であり、船舶護衛に就く艦娘は約三艦隊相当ではあるがケアする人員がほぼ居ないという無茶振り。
どう考えても条件的に叢雲をコアにした
「で、諸々の報告や相談を受けてた提督殿でありますが…… まぁその……」
「ああ、そこで
「さもありなん、でありますなぁ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「えーっと、その、色々言いたい事はあるんですが、何でいきなりこうなっちゃってるのかの訳を聞いても?」
「え、うん? ちょっと前にオニーサンとこ行くって連絡したじゃん?」
「えぇ、まぁその辺は…… はい」
「で、オニーサンが何の用事でヨーロッパに来たか知んないけど、私的にはほら、ここでついでに便乗しちゃえばわざわざ泳いでそっちに行かなくてもいい訳だし? 丁度いいかなって」
プルプルする髭眼帯の前にはちっこくて白い、ぶっちゃけて言うと幼女的な深海棲艦がオシャレにティーしつつにこやかに事の次第を口にしていた。
それは嘗て人類を恐怖のズンドコに陥れ、ある意味最も凶悪というイメージを持たれ、現在北極海を根城にする海の大首魁である北方棲姫であった。
当然そんなヤバい棲姫さんが大手を振って髭眼帯の元を訪れたとなれば大混乱を通り越し、現状主要各国の代表団が集結してる現在では深刻な国家間レベルの問題となる為お忍びでの襲来ではあったが。
「丁度いい…… まぁ、うん、距離的なもので言えばそうかもしれなかったりする事が微レ存かもしれなかったりするのかなぁ」
「まぁどっちにしてもオニーサンが巣に帰る時って、インド洋を通るんでしょ?」
「うん? えぇまぁそうですね」
「んじゃ取り敢えず私は一度そこで別行動って言うか、船渠棲姫のとこに行くから」
「……は!? え!? なにそれどういう事!?」
「んー、色々事情はあるんだけど、どうしても確かめたい事と調べたい事があってね。以前から色々と誘いはあったんだ、
「えーっと? 色々と誘い? ちょっと話が見えてこないんですけど。どういう事ぉ?」
突然の来訪という傍若無人っぷりに続き、船渠棲姫という名を口にする
船渠棲姫とは原初の者でありインド洋の大首魁。髭眼帯との関係で言えば取り敢えずの縁はあっても味方とは言い難く、どちらかと言えば仮想敵に近い関係と言える。
密約という形で一時の住み分けはしていても、油断のならない仮想敵。その大首魁の誘いに
確かに
その前提のまま今回の話を聞いた場合、もし船渠棲姫が持ち掛けたという事案が吉野達の持つ諸々より
もしかしたら敵と味方、という形を伴って。
「あー、うん、まぁ予想は付いちゃうかぁ。まぁ私もオニーサンとはいい関係でいたいんだけどさ、それはまぁ
「やっぱり…… そういう話になりますかぁ。そこまで
吉野の言う"例の話"。
深海棲艦という存在が人を憎み、心を焦がす程に憎んでいても、陸まで攻め立ててまで殲滅までしようと思わないという不自然な性質を持つ謎。そして"種の成り立ちを無視し
──────自身がそうだから。
──────自身の内にある理不尽だから。
なのにそれは"何故"という問いしか持たない。そんな理不尽と何故に気付き、我慢できなくなり、全てを放り投げ"何故"に答えを求めた引き篭もり。
それが人類が最も恐れ、今も最凶と言われる原初の深海棲艦北方棲姫であった。
「聞いた話だけじゃ直接的に関係あるかどうか判んないんだけどさ、まぁ色々と興味深い事になってるって言うか、色々と…… ね?」
「そうですかぁ、まぁ
「うん? 秘密? いやそんなのないけど、口止めされてないし。寧ろオニーサンにも関係してる話だからその辺り筋を通さなきゃって思ってたんだけど?」
「はい? 秘密じゃない? てか自分にも関係する話?」
「そそ。えっと今
「えぇまぁ、そうですね」
「それって
「……そうですね、その見返りとして一定期間船渠棲姫さんとは不可侵条約を密かに結ぶって事になってるんですが」
船渠棲姫的には吉野達との関係上、北方棲姫を自身の陣営に引き込むというのは必須の筈である。なにせ現在確認されている原初の者五人の内、吉野と関係を持っている者は三人居る。
麾下に置く戦力を換算すれば、言い換えれば吉野と事を構えた場合、現状船渠棲姫に勝ちの目は無いと言える。
しかしここで北方棲姫が船渠棲姫と手を組んだ場合、純粋な戦力比は拮抗。更に言えば吉野自身は人間である為どうにかして始末してしまえば全てをひっくり返す事は可能の筈。
故に船渠棲姫的に今回北方棲姫に渡りを付けた諸々は、吉野には知られたくない筈である。なのに北方棲姫はそれらの諸々は秘密でないと言う。
「
「ん? いいんじゃない?
あっけらかんと、そして口角を不自然な形で上げた笑いを滲ませた北方棲姫を見て、吉野は色々な物を察した。
「成程、それが
「なんの事か判んないけど、まぁそうかなぁ」
利害のみを突き詰めた関係と冷めた口調で言いながらも、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……えーっと、ちょっと待って? 今のが船渠棲姫さんから
「そうだけど、何か問題が?」
「あーっと、話を要約すると、
「うん、稀にある事らしいけど、ソイツらって法則性って言うか目指す先はいつも同じらしいのよね。どんなに引き留めようとしてもそれを振り切って、いつも同じ位置に向かって陸を目指すんだって」
「深海棲艦の性質としては謎で、まぁ状況的に
「そね、深海棲艦が陸に興味を示すなんて前例は無い訳だし? 突発的な事案じゃなくて既に何回も同じ事が続くのには何か理由があるのは間違いはないと私も思うのよね」
「……ほほぅ? インド洋でぇ? 何度か陸を目指す
「う……うん、で、まぁそれが何でなのかとかいう以前に、そういう事が頻発しちゃうと縄張りの維持的に良くないからって
「ほぉん? でぇ?
北方棲姫が船渠棲姫に伝えた話。
深海棲艦の性質を無視し、陸を目指す上位個体が定期的に現れるという謎。
それは確かに縄張りを維持していく上で問題となるかも知れない。今はそういう個体は極少数ではあっても、そういう存在が増えてしまえばやらなくても良い戦いが増える事になる。
生態的に負けは無いという前提であったとしても、結局は自身に制御できない麾下の者が増えるとなれば船渠棲姫的には見過ごせない話ではある。しかもそういう事案は彼女が把握している範囲では自身の縄張りでしか起こっていないとなれば、猶更原因は究明しなくてはと思うのも仕方のない話ではあった。
「ねぇ、もしかしてこの話ってオニーサン的に何か情報掴んでたりする?」
それを見た
何せ
俗に"キレノン"と呼ばれ悪だくみを変な方向に拗らせた髭眼帯は、色んな意味で
そして
「ふむん、情報と言うか何というか、実は答えを知ってたりするかも知れないと言うか、もしそうだとして何か問題があるのかねチミィ?」
「!? まさかオニーサンッ!? 答えを知っているッ!? そ……そんなバカなッ!?」
「フフフ…… そうかそうか、真実を知りたいと言うのかねチミィ、なら教えてあげようではないか。あきつ丸クンッ! 早霜クンをこれにッ!」
こうして粛々と始まった話は危機的状況が、色んな意味で良い形に収まる事が確定したと判断した髭眼帯がそれまでの心因的疲れが裏返り暴走し急転直下、結果として
しかも他の諸々も巻き込んで。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「嘘でしょぉ…… マジでぇ……」
引き続き母艦
現在ちょっと豪華なソファーセットの傍ではorzの形でプルプルと項垂れる
その脇には相変わらず我関せずな空気を纏う早霜と、微妙な表情でそれせを見るあきつ丸と秋月。
更にはローテーブルに突っ伏しゾンビ状態の矢矧に念仏(意訳)を呟く夕張という放置されたままのオプションという、とても筆舌に尽くし難い空間が出来上がってたりした。
「まあ…… 早霜クンは…… そう…… まあ…… そうねぇ……」
「結局
未だorzでプルプルする
結局船渠棲姫の縄張りであるインド洋でたまーに起きていた、謎の行動をする上位個体とは何の事はない、ビルングから持ち掛けられた話の中心にあった
まさか船渠棲姫が吉野に密約を持ち掛けてきた裏にはそんな事情が絡んでいたとは。寧ろ全てを並べて考えれば繋がりを見出せたのではないか? そんな考えにフと至ってしまったヨシノンは急に賢者タイムに突入してしまう。
ビジュアル的にそれらの様を説明すると、急にスンッと真顔になった髭眼帯の前では相変わらずorzのまま口を△にしてプルプルする
そんなカオスの中、
寧ろこれらの責任的なアレは大体髭眼帯のせいと言えなくもなかったりする。
そして小市民日本代表と称してもおかしくはない小心者の髭眼帯はそれらを放置できる程神経は太くなかった、寧ろ小心者という質が必死に思考を加速させた。
人、それを必死のリカバリーと言う。
「……あー、
「……イイカンジに? アレがソレ? なんの話?」
orzのまま
更に数分後、ソファーに座り直した
「なにこれ…… えっと? 【人の記憶と魂の定義】?」
それらはビルングから吉野達に渡された、嘗て異端とされ歴史に埋もれた研究者の足跡であった。
当時は人類が地球を支配し、潜在的な天敵は存在しなかった。だが突然現れた深海棲艦、そして艦娘。それらの生態は、特徴は……
時系列を考慮すれば、
「オニーサン…… これ、どこで手に入れたの?」
「たまたまと言うか偶然と言うか、
食い入る様に紙束を見ていた
「今見てる資料をこっちに寄越した人達なんだけど、その内容を再現する為近々海洋調査に乗り出すらしいんだよね」
「え、マジで!?」
「で、どうだろうか。当然
吉野の言葉に口をOにしたまま
「んじゃ条件付きになるだろうけど、
「じょッ、条件ってナニ? ナニしたらいいのッ!」
「取り敢えず調査期間中船の護衛をお願いできるかな?
「流石に縄張り外の木っ端をコントロールする事はムリだけど、追っ払うくらいならワケないよ、うん!」
「だそうだよ夕張君。それなら母艦の防衛に同行する人員、若しくは艦娘さん達を操船や維持に充てれるんじゃないの?」
「……!? あッ、えと、ちょっとお待ち下さい! ええと……艦娘三艦隊分十八名とスタッフの数が…… これなら、うん、うんっ、ウチの秘匿技術を持ち出さなくてもなんとかなるかもです!」
「そんじゃ提督は先方さんに根回ししとくから、夕張君は母艦建造の件を詰めといてくれるかな?
偶然と縁が齎した
それらの話の落し処を頭の中で整理しつつも、髭眼帯は今もローテーブルに突っ伏した矢矧に視線を巡らし、そっちもどうにかしないとなと小さく溜息を吐くのであった。
・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
・誤字報告機能を使用して頂ければ本人は凄く喜びます。
・また言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。
それではどうか宜しくお願い致します。