大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 お久しぶりですごめんなさいもうしません勘弁してください。

 自分です。

 ちょっとづつひっそりと更新していく前に、これからの事に対する事前説明を兼ねてギャグ無し回です。

 艦娘もデマセン、もぅJAROに訴えられてもいいくらい艦娘さんどこーです。

 そして短いです。

 はい。

 ちょっと慣らしも兼ねてるのでご感想返しもできそうにありません。

 はい。

 添削も激しくしくじってるかも知れませんがそのあたりもごめんなさい。

 はい。

 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。

2020/06/21
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました頭が高いオジギ草様、水上 風月様、有難う御座います、大変助かりました。



世界が徐々に変容していく(兆し)

 

「ふぅン? 桂艦隊の生き残りねぇ…… で? 後方に居るのが嫌だから最前線に置いて欲しいってか。そンで条件に合うウチにソイツを寄越すと?」

 

「えぇ、残念ながらウチは艦隊護衛と海域維持がメインですから。彼女(早霜)が希望する拠点と言うと…… 戦闘回数が一番多い舞鶴なのかなと思ったもんで」

 

 

 深海棲艦との闘いが始まって三十数年。艦娘という戦力によってほんの極僅かな海域を奪取し、世界はほんの半歩ばかりの微々たるものだが、嘗ての様な国家間の繋がりを構築し始めた。

 

 日本のみに顕現していた艦娘はドイツを始めとする欧州に。

 

 次いでアメリカやロシアにも嘗ての艦の魂を持つ彼女達が現れた。

 

 

 それは当初極僅かの艦との邂逅に限られていたが、現在は嘗ての日本にひけを取らない程の勢いで新たな艦娘が世界へ現れ始めた。

 

 

 これら「深海棲艦に対する戦力」が整ってゆくにつれ、世界は新たな形に変革しつつあった。

 

 

 強力な電波障害は極限られた範囲でしか人々の声を届ける事しかできず、国家間の繋がりが国境を接しなければ情報が得られない。そして大陸の中心であったとしても航空管制が不可能な今は、航空機の運用をほぼ不可能な状況にしてしまった。

 

 深海棲艦の支配する海路は言わずもがな。人類は基本陸路を用いての物資輸送を余儀なくされた。

 

 

 人が生きるには食料のみならず、燃料や資源が必要になる。一国でそれらを賄え得る国は殆ど存在しない。

 

 そして産出、加工、消費するというサイクルは世界各地に散らばっており、物流という血管によって国々は生かされている。

 

 それらを全て陸路で賄うのには距離によって増大するコスト、国家間の繋がり、そして何より輸送量の限界があった。

 

 

 消費に対応し、安定した供給が必須の世界は、艦娘という存在によって奪還した細く、長い資源環送航路に命運を託した。

 

 

 アメリカと欧州に跨る大西洋。欧州からインドネシアへ繫がるインド洋。そこから日本に繫がる東・南シナ海。これらは太平洋という世界最大の海を除き地球の約三分の二を繋ぐ長大な航路として現在は繫がっている。

 

 その内の約半分の航路は日本が受け持ち、リンガ泊地がインド洋や南シナ海の制海を請け負い、大本営を筆頭とした国内拠点の殆どがバックアップに回る形で欧州までの海域を維持する事となった。

 

 更には旧ニュージーランドを拠点とした吉野達を筆頭とした派閥は大坂鎮守府を物流の中心とし、硫黄島から西蘭島までの航路全ての維持を受け持たねばならなくなる。

 

 先ずそれらの航路は東部オセアニア資源還送航路という括りにして、吉野を筆頭とした日本海軍海上護衛総司令部の下、航路上に存在する拠点全てを管轄海域とする。

 

 これにより現在開発著しいオーストラリア東部沿岸から生み出される資源や食料は日本に送られ、大坂鎮守府をハブ港として全国へ輸送される事となり、それらの物資によってこれまでインドネシアで産出されていた資源の幾らかは欧州インドネシア資源環送航路を使って欧州へ送られ、脱ロシアの影響で困窮していた国々を潤す事となる。

 

 

 こうして東部オセアニア資源還送航路は西蘭泊地を本拠とし、クェゼリンとトラック泊地が海域維持に、大本営が担当していた定期清掃や緊急支援は舞鶴鎮守府が現在担当している。

 

 またこの配置転換によりトラック泊地の基地司令は艦隊本部に詰め、ある意味干されていた輪島の自称弟分である海軍特殊工兵隊(懲罰部隊)出身である羽田(はた)安二郎(やすじろう)中尉が着任し、戦力的に少しばかり余裕ができたリンガは再びクルイ基地を併合する。

 

 こうした新体制下、吉野が差配する拠点で最も戦闘数が多いのは舞鶴鎮守府であり、ほぼ物流と軍事物資生産管理に特化した大坂鎮守府の艦隊編成枠を融通して貰った結果、六艦隊中本体の第一・第二艦隊を除く四艦隊は常にどこかの海域維持をしているとあって、前線を希望する早霜の希望を叶えるとなれば彼女の着任先は舞鶴しかないと吉野は輪島に連絡を取っていた。

 

 

「まぁ練度はドロップしてから実戦経験皆無なんでお察し状態ですけど、諸々に必要な"勘どころ"は熟練艦に相当するかと。それと何故彼女をドイツで引き取る事になったのかという話は引き渡しの時にでも説明しますんで段取りはお願いできますか?」

 

「あー…… そっかぁ、そっち(欧州)から内地の回線じゃぁ情報漏れの心配があンだよなぁ」

 

「ですねぇ、幾ら物理回線と言っても流石に二桁近い国を跨いだ状態だと、ほぼやり取りはあちこち筒抜けでしょうし」

 

「まぁ別にこっちはいいンだけどよ…… ん~…… 桂艦隊の関係者なら千歳に預けっかなぁ」

 

「千歳君に? ああ、そう言えば彼女も"元"桂艦隊出身者でしたっけ?」

 

「そそそ。アレでも一応精鋭って言われてたし、桂艦隊のやり方は熟知してっからサ、"あの頃の艦娘"相手の初期教育には丁度いいンじゃねぇかってサ」

 

「確か"嘆きの千歳"でしたっけ? 二つ名の由来は聞いた事ないんですけど」

 

「……ダンナ、それ本人の前じゃ禁句な? 主に俺の安寧の為によ」

 

「えっと? ……えぇまぁそういう事なら? 了解です」

 

「ンで? ダンナはもちっとそっちに居なきゃダメなんだっけ?」

 

「ですねぇ…… 当初の予定以外にも片付けないといけない問題がありまして」

 

「現状邂逅済で西蘭に着任してない艦娘全ての受け渡し、って分離運用可能な母艦があってこそだよなぁ、こっちも今は母艦全部出ずっ張りだしよ」

 

「まぁオーストラリアの物資が内地に供給される分、インドネシア近辺の余剰物資は欧州に流れる事になりますから。彼らも艦隊護衛やら海域維持の為に戦力の拠出は厭わないって考えに至ったそうで」

 

「戦闘関係はウチとヤス(羽田安二郎)が。艦隊護衛とか諸々の資源生産はダンナんトコ。ンで物流関係と兵站はハゲ(九頭路里)で、海域の哨戒と補佐が飯野(飯野健二)さンと」

 

「まだまだ手が回ってませんけどね…… 深海勢が居るお蔭でなんとか、という感じですけど」

 

「しかしまぁナンだよなぁ、俺達が色々やってン間に世界は予想以上に回ってたっつーか、あちこち変に纏まっちまったっつーか」

 

「この変化に一番関係してるのは間違いなくロシアでしょうね。表面上まだ欧州と反目している体を見せていますけど、水面下では融和政策に切り替える為の根回しをしてるみたいですし、今回の諸々で親ロシア筋の産油国からも欧州連合側に打診があったそうで」

 

「まーメタンなんちゃらだっけ? アレが広がった後だと経済網から弾き出されちまうのは目に見えてっからな。その前に食い込めるだけ食い込もうって話なンだろうけどよ」

 

「で、こうなると面白くないのは特定アジア…… それも内陸に位置する国々という事で」

 

「元々海に面してねぇからなぁ、深海棲艦の被害は輸出入関連だけだろうし、逆に今まで陸路でしか物資を移動できなかったのを良いことに関税で暴利を貪ってた分近隣諸国からの恨みもそれなりに受けてるだろ? これで海路が整ったら間違いなく経済圏から締め出し食らうわな」

 

「ロシアと違い艦娘という戦力も持ち合わせてない以上今回の話には噛めませんし、人的貢献と言っても、その人数を食わせていく程の余裕は他国にはありませんから」

 

 

 深海棲艦が出現して以降、物資の輸送はほぼ陸路一択となった。

 

 それはコストが膨らみ遠く離れた国とは輸出入が成り立たないという状況を生み出した。更には海に面した国々は大なり小なり様々な被害を被り、国民総数を著しく減じた国家が多数を占めた。

 

 つまり其々の国ではそれまで飽和していた労働力が減り、消費市場が縮小。輸出入が激しく高コスト化した結果無理やりでも内需によって国を維持しなければならない結果となった。

 

 逆に自国単体で生存可能な領土を持つ国家は然程影響を受けず、逆に経済力を以て近隣の小国を従えるという形が出来上がる。

 

 資源の供給と、物流の掌握。更には人的資源の投入により経済的属国というのが当たり前というのが現在の世界。

 

 

 そこに海路による大規模な輸送が立ち直ったとなればどうなるか。一方的に決められた理不尽な取り決めによる税率や資源という名の命を握られた経済。人の流入による実効支配。それらは海に面し港を持つ国々にとって支配から抜け出す絶好の機会にある。

 

 陸路での輸送は鉄道や車両が中心となり、細かな調整は効くが輸送量という形では海路に太刀打ちができない。また日本から欧州、更には米国まで繋がった海路を利用し輸出入を行う際は、税率が極めて公平に。言い換えてしまえばこれまで大国主導で行われてきた理不尽な取り決めよりも安価になりコストが下がる。

 

 そういう海に面した国々は所謂ハブ港としての役割を持つようになり、海に面していない近隣の国も外部との輸出入が活発になるだろう。

 

 

 今まで猛威を奮っていた大国を抜きにして。

 

 

 それを可能にしたのは海路を切り開いた艦娘保有国と、新たなエネルギー資源の創出を担った西蘭泊地というのは各国共通の認識であった。

 

 ロシアにとって今までの立場は当然周辺諸国を経済で従えていた立場であったが、こと此処に至り世界の流れには逆らえず。また少数ではあったが艦娘を保有していた事もありこの世界規模の変化に対応するに至った。

 

 元々産油国の幾らかを抑えていたのも良い形で作用した。

 

 

 しかしそれらの時勢に乗れない国はどうか。艦娘を持たず、これまでの外交で他国に圧制を強い、海路を経済的な支柱とする国々に対し取引できるだけのカードを持たない内陸に位置する大国は?

 

 数はそう多くなく、内需で生きてはいけるだろう。しかしこれまでの様に周辺諸国から美味しい部分を吸い上げる手段は無くなり、また他国へ送り込んでいた国民は恐らく送り返されるだろう。総じて旨味は殆どなくなり自国で全て賄う事になる。

 

 つまり、死にはしないが生きる事に必死になる未来しかない。

 

 

「結局今回の大規模な会合の趣旨って、日本からウチ(西蘭島)までの航路と沿岸に対する防衛を強化してオーストラリア東沿岸部の生産地帯の拡大をする事と、経済圏拡大に伴う混乱を避けるためと関係各国其々が揉めない様に中心的な機関を作ってしまおうと、そんな感じと言うか……」

 

「要するに一部のアホな国が牛耳って機能してねぇ国連に見切りを付けて、別の組織を作るってンだろ?」

 

「ですねぇ。ある程度の関税や量的な割り当てに対する指針を設けておかないと、結局は搾取する側が変わるだけ…… なんてヤバい事になったりする可能性がありますから」

 

「で、その枠組みに入れなかったヤバい国とかがこれから仮想敵国になる、と」

 

「頭の痛い話ですよ。現状まだ人類は深海棲艦からほんのか細い制海権を奪取して、限られた物資の輸送を可能にしただけだと言うのに。すぐさま人類同士で足の引っ張り合いになるとか」

 

「まぁ俺達に直接関係してくンのが中とかそれに追随して色々やってた国辺りになンのかね」

 

「そこら辺も外交筋で上手く抑えてくれればいいんですけど、暫くはゴタゴタするかもですね」

 

池田さン(陸軍西日本特殊作戦群)らもそこンとこ危惧しててよ、ウチ(舞鶴鎮守府)周辺に新しい駐屯地を持ってくるつってたわ」

 

大坂(大坂鎮守府)周辺もそれなりに規模は拡大させるという話は出てますね」

 

「取り敢えず陸軍も規模拡大傾向、大坂(大坂鎮守府)もオーストラリア方面物資を仕分けする為にハブ化。ウチ(舞鶴鎮守府)は完全に防衛拠点になっちまったワケだ」

 

「諸々が落ち着いたら新規海域を切り取りに行きたいんですけど、取り敢えずトラック周辺を完全に掌握しないとそれは難しいでしょうねぇ」

 

「まぁヤス(羽田安二郎)に任しときゃそこンとこ上手くやるだろうがよ、問題は大坂(大坂鎮守府)だよなぁ…… 岩川(岩川基地)を回してた実績があるからジジイ(染谷文吾)に行って貰ったンだけどよ……」

 

「……あの二人はまぁ、相性が悪いと言うか元々岩川(岩川基地)佐世保(佐世保鎮守府)は犬猿の仲でしたし」

 

「ってより個人的にも相当反りが合わねーカンジだぜ? まぁその間でお嬢(リーゼロッテ・ホルシュタイン)が奮闘してるみたいなンだけどよぉ」

 

「……取り敢えず帰りには大坂(大坂鎮守府)に寄りますし、その時様子を見てきます」

 

「おー頼まぁ。俺はなンつーかあんなギスギスしたのはどうも苦手でよぉ」

 

 

 ギスギスした雰囲気が得意な人間なんぞ存在するのだろうか。そう思う髭眼帯であったが、取り敢えずまだ欧州では諸々の詰めが残っており、また貰い受ける艦娘をどうやって連れていくのか等問題が山積している状態である為、その辺りの問題は一時棚上げにするのだあった。

 

 

 

 




・誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
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