大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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2019/12/17
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きました黒25様、坂下郁様、対艦ヘリ骸龍様、有難う御座います、大変助かりました。


心の有り様

「提督、リンガ泊地より入電、明日(みょうじつ)○九(マルキュウ):○○(マルマル)より同泊地にて大本営直通通信を利用しての軍秘会議に出席するようにと言う事です」

 

「リンガ入りの予定時刻は?」

 

「このまま戦闘が無ければ明日(みょうじつ)○三(マルサン):○○(マルマル)です」

 

「ぅーわ、こっちから言い出した事だから仕方ないけど一服もさせて貰えないとか、大隅(軍令部総長)さんも相変わらず人使いが荒いねぇ」

 

 

 マレーシア北西約三百海里、アンダマン海大ニコバル島沖。

 

 

 件の欧州支援作戦の終了と共に吉野達は帰還の途に就いていた。

 

 作戦の報告は秘匿回線で関係各所へ概要という形で現在は伝えていたが、詳細な物は同艦隊が西蘭泊地に帰還後改めて整理された報告が大本営、そして欧州連合へされる予定となっていた。

 

 

「提督が斉藤司令と大隅軍令部総長を名指しで内緒の話をなんて言えば、嫌でもこういう対応になると思うのですが」

 

「酷いな大和君、それじゃまるで自分がそういう場を設けようとしたら内容が毎度禄でもない事ばかりの物しかないみたいな言い草じゃないか」

 

「いや実際そうなんですから仕方がないと大和は思います……」

 

「まぁそっちはそっちでいいんだけどさ、んであっちの方はどうなってるのかな?」

 

 

 梅昆布茶を暢気に啜りつつ、髭眼帯はピコっと立てた人差し指を天井に向けてツンツンと指差した。

 

 

「そちらは明後日までには移動が完了するらしいのですが、いいのですか? 今回の移動で推進剤の残量が二十パーセント以下になり、もうインドネシア方面へは配置できなくなりますが」

 

「まぁ元々あの衛星は受領した時点で対応年数も推進剤も賞味期限切れだった訳だし、今工廠課が作ってる衛星を上げるまで持てばそれでいいさ」

 

「旧ケンブリッジの施設はもう稼動してるし、今使ってる衛星は移動せず日本の上空に固定するだけなら後二年は持つそうだよ? 後は来月打ち上げる衛星をパプアニューギニア辺りに置いて、更に半年後を目処にもう一機打ち上げれば北極、日本、そして南洋の前線まで衛星回線を利用した広域通信網が確立できる」

 

「そうなれば北方棲姫のテリトリーと前線派閥全てにリアルタイムで通信が可能となりますね、ただ予算がかなり嵩むので暫くは緊縮しなければと大淀さんが仰ってましたが」

 

「メタンハイドレート関係の資金回収は来年七月辺りから、メルボルンの吉野商事の再整備は三月まで掛かる……けどまぁ今年一杯乗り切れば問題はないかな」

 

諸々の騒ぎのお陰(吉野商事のM&A事変)で現在はプールしている資金を切り崩している状態ですし、広域衛星通信計画はもう少し遅らせても良かったのでは?」

 

「本来ならそうするのが理想なんだけどねぇ、ほら、今はインド洋方面がきな臭いからさ、細切れ状態の物理回線頼みだとこの先確実性と防諜面に難があるし、それを考えると調整と予算がまぁ、難しいよねぇ」

 

 

 吉野達が現在居を置く西蘭泊地、旧ニュージーランドは本土から約9400kmの位置にある。

 

 深海棲艦達が海を支配して以降長距離通信は基本物理回線のみとなっている現在、この距離は色々な問題が発生する。

 

 

 まず維持する為の労力に、防諜面での不安、更には通信ケーブルが損傷したとして、どの箇所で不具合が生じているのかの特定もかなり困難を極め、各方面への通信回線は予備も含め最低三回線は敷設する事になっている。

 

 

 しかし西蘭泊地は南半球の外れにあり、しかも海湊(泊地棲姫)のテリトリー、つまり深海棲艦の支配下にある。

 

 つまり西蘭泊地に限っては長距離物理回線は専用回線となっており、更には周囲の水深が深い関係上、回線は一旦オーストラリアにある吉野商事を介して各方面へ繋ぐ形で運用されるを得なくなっている。

 

 

 だがそこ(メルボルン)から本土へ、または各方面への通信には更に様々な国を通じて繋げる必要もあり、前述した通り防諜面でかなりの不安を抱えた物になっていた。

 

 しかも北方棲姫のテリトリーと西蘭泊地では北極と南極という、地球の上下程の距離があり、既存の衛星一つではリアルタイムの通信をするのが不可能な状態になっていた。

 

 これらの問題を解決する為には予備を含めた専用の物理回線の敷設という事になるのだが、信用の於ける直近のクェゼリンまででも距離は約三千二百海里もあり、物理的な回線の敷設は現実的ではない。

 

 他の方面へ敷設をしようとしても結局専用回線とした場合保守点検とやコストという壁がある為、実質不可能という答えが出ていた。

 

 

 派閥の拠点同士との連絡、情報の収集、北方棲姫側への繋ぎ。

 

 

 これらは吉野が西蘭に居を置いたとしても、絶対に他者を介在しない形の通信手段は必須事項としており、これまでも様々な手段を模索してはいた。

 

 結果として、以前大坂鎮守府が依佐美(よさみ)送信基地より徴発し、現在も運用している人工衛星技術を利用、それを拡大運用して長距離通信網の整備をする事が最も現実的な手段と判断された。

 

 

「まぁ学術衛星の技術だけじゃ無理があるし、諸々の手配で手痛い出費になっちゃったけどねぇ」

 

「北アメリカに対するメタンハイドレート関係の技術供与と利権を引き換えに、えーっと……」

 

「NASA、が研究してたそっち関係の資料とか死蔵してた現物とか諸々、まぁこっちが要求した範囲全部じゃないんだろうけど、思ったより重要な部分の技術供与はしてくれたって夕張君は言ってたけどね」

 

 

 深海棲艦のテリトリーは、成層圏に至る上空まで電波障害という形で人類へ影響を及ぼしている。

 

 この為宇宙空間からの監視や干渉はほぼ不可能となっているが、西蘭泊地から日本近海は海湊(泊地棲姫)-朔夜(防空棲姫)のテリトリーで繋がる関係上その問題はクリアされ、更には北方領土-北極海は北方棲姫の支配下にある。

 

 故に他国では運用できない衛星通信は、西蘭泊地に限って問題がない状態となっている。

 

 

「それで、今回の会議ではその……船渠棲姫との密約を……」

 

「うん、今回の事で判ったけど、この先五年間、この密約を維持していくにはウチだけで抱える範疇を超えちゃってるからね、色々と、だからもう斉藤(リンガ泊地司令長官)さんと大隅(軍令部総長)さん二人にはぶっちゃけちゃって巻き込んじゃおうかなぁと」

 

「あはは……これはまた、お二方の心労が嵩んでしまいますね」

 

「こっちだけ気苦労背負い込んでハゲ散らかすのは癪だし、もうみーんな揃ってハゲ散らかせばいいんだ、ほら、赤信号、みんなで渡ればなんとやらとか」

 

「その間違った標語は今回の比喩に使うにははちょっと違うんじゃないかと大和は思うのですが」

 

「まぁそっちはもう出たとこ勝負だね、こんな話欧州側に知れちゃうと国際問題どころじゃないしさ、ほら、話を聞いた時点で一蓮托生待ったなしだよ、フヒヒ」

 

 

 色々吹っ切れたのか、髭眼帯はお茶請けの煎餅をボリボリ噛み砕きつつ、とても嫌らしい笑いをニチャリと表に滲ませる。

 

 今回の件に限っては準備期間も無く、また吉野にしては珍しく根回しすらしていない状態である関係上結果がどう転ぶか判らない部分が多い。

 

 

 本来ならこの一件は一度西蘭へ帰還後じっくり精査して行動に移すべきであったが、吉野にはまだ他に考えなければならない懸念事項があった。

 

 

 船渠棲姫側から齎された"世界の真実"、その言葉と共に得たドロップ艦。

 

 これらの事案は船渠棲姫側のブラフという考え方もできるが、吉野的には妙に引っ掛かりがあり無視できない状態にあった。

 

 

 言葉の意味を模索しようにも情報が足らず、虫食いの本を読む様な気持ち悪さがそこにはあった。

 

 その気持ち悪さの先にある物は何なのかは判らないが、禄でもない何かがあると吉野の勘は告げていた。

 

 

 そんな訳でこの手の難解な謎は独自では答えに辿り着けないと考え、吉野はそっちに明るい者を頼る事にした。

 

 北方棲姫───

 

 言わずと知れた北極海の主であり、深海棲艦や艦娘とは何かという果てのない謎に懸想する深海の主である。

 

 

 船渠棲姫の言う"世界の真実"という言葉、そこから配下の轟沈へ、更には艦娘のドロップと、こういう流れを見れば北方棲姫が追い求める謎と幾らかイメージが被るのを吉野は感じ取り、情報を共有すれば何かしらの糸口が掴めるのではと思い至る。

 

 今回人工衛星を無理して移動させたのも北極海とのリアルタイム通信をする為の手段確保の行動であり、リンガに寄航した後和泉(いずみ)は西蘭へ航路を取らず、『西蘭へ異動予定の友ヶ島警備府勢を迎えに行く』という体で大坂鎮守府へ行き、そこで北方棲姫に連絡を付ける事にしていた。

 

 

「ほっぽちゃんて以前深海落ちした艦娘さん(陸奥)の話とかしてたし、その辺り何か法則性とか知ってるんじゃないかなぁ」

 

 

 誰に言うでもなく吉野は答えの出ない事案に思考を埋没させつつも、今も漆黒を見せる海をモニター越しに眺めるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「結局私は取引材料として引き渡され、同族と殺し合う事になる訳か」

 

 

 欧州水姫は顔を顰め、暗く何もない海を睨む。

 

 

 件の海戦から約一週間、鹵獲された彼女は大和や朔夜(防空棲姫)から今の世界情勢を叩き込まれると同時に、自身の立場とこれからの事も知らされていた。

 

 

 船渠棲姫は彼女へ嘘や偽りを伝えてはいなかったが、与える情報を規制して意図的に考え方の方向性をコントロールさせていた事がこの一週間での聞き取りで判明し、彼女自身も朧げながら自身が偏った認識を持っていた事を認識するに至っている。

 

 船渠棲姫が彼女へした行為を騙されたと取るか、裏切りと憎むか、結局はそれすらも個人の感情の範疇を出ない。

 

 何せ嘘や虚実は含まれず、ただ与える情報を制限しただけなのだから、船渠棲姫は欧州水姫を騙してはいない。

 

 確かに環境がそれを真実とさせていた部分もあり欧州水姫は偏った思想を持つ事になったが、実際真実とは其々にあり、正義もまた然りである。

 

 

 国民的某アニメの主人公の言に「真実はいつも一つ」と言う物があるが、あれは大きな間違いである。

 

 正しくは"真実はいつも一つ"ではなく、"事実はいつも一つ"というのが正解と言えよう。

 

 一つの事象、何者も介入し得ない事実(結果)がそこにあり、それを共有する事で個々の内にそれが真実へと成る、つまり真実とは事実を受け入れた者の主観が事実に上乗せされた混ざり物でしかない。

 

 個人の思考や思想は環境と、関わるコミュニティに拠る処が大きい、故に正義や真実という存在程あやふやな物はない。

 

 

 欧州水姫は今、そのあやふやな存在に翻弄され、その為に何に対しても懐疑的になっていた。

 

 彼女は艦娘の前世を持つ姫なのは間違いない。

 

 そして前世では碌な生き方しかできなかったのであろう、人に対して強い拒否反応を示している。

 

 また同時に深海棲艦にも同じ感情を抱いている処を見れば、前世からその部分の感情を多分に引きずっている事も確かである。

 

 

「人も嫌い、深海棲艦も嫌い、そして私達艦娘も嫌い、では貴女はどうしたいのです? 全部を相手に一人で戦うのでしょうか、それとも全部から逃げたいのですか?」

 

 

 現在欧州水姫の世話役(仮)に就く榛名は感情の篭らない視線を彼女に投げ、事実だけを淡々と口にする。

 

 それは答えの出ない問い掛けであり、正解も恐らくは存在しない。

 

 立ち位置でそれらは変化する以上、確定する答えなど存在する筈がないのだ。

 

 

 そして欧州水姫は嘗て艦娘であった、今は深海棲艦上位個体である。

 

 

 つまり人側にも深海棲艦側にも付く事ができ、どちらに転ぼうと主観でのみ選択が可能な存在意義を持つ為正義や正しさは結果に伴う。

 

 故に何も選択していない今は、必死に見つけ出そうとしても答えなど何も得られない。

 

 

「人とは欲望と自己保身の為に他者を利用する生き物だ、対して深海棲艦とは純粋に人を憎しみ、同族の為のみに生きる存在だ」

 

「人とは生きる為に必死でその為にはどんな手も使う生き物であり、深海棲艦は力のみによって他者を排除する存在です」

 

 

 たった二人だけであっても、立場と思想が違えばこれだけ見解が違う。

 

 故に確固たる意思を持つ集団では個々へ統一した思想の構築はできない。

 

 結果として自身の決断と戦う理由がなければ、今の欧州水姫にはこの先の選択すらできないという堂々巡りが待ち受ける事になる。

 

 

 榛名が吉野から欧州水姫の世話役を任される際言われたのは、戦闘行為以外の全てを自由にさせろという事のみである。

 

 彼女が敵対し暴れるなら鎮圧するのは当然だが、ここから逃亡を選んだ時は止めなくていいとまで言われている。

 

 

 彼女は船渠棲姫に翻弄され自身の立ち位置に迷いを持っている、しかもそのやり方は情報統制だけで騙したともいえないやり方。

 

 この状態でヘタにアプローチしても無駄だろうと判断した吉野は、聞かれた事に対しては対話という形で接し、それ以外は本人自身が見て、考え、導き出した答え……選択した物に委ねようと決めていた。

 

 

「……艦娘は結局、人対深海棲艦の駒として使われているだけだ、無碍な扱いを受け、あまつさえ生き方を制限され……それなのに何故、お前達は人の為に戦うのだ、ドMか? それとも考える事を捨てたのか?」

 

「随分な言われようですが、榛名達は……いえ、榛名個人としてはちゃんとした戦う理由は持ってますよ?」

 

「参考までに、お前の戦う理由という物を聞かせてはくれないか?」

 

「別にそんな深い理由はありませんけど……」

 

 

 榛名は欧州水姫の言葉に心当たりを探る。

 

 生まれた時から深海棲艦と戦うのは当たり前だった、極論で言えばこれが戦う理由に相当するだろう。

 

 

 それに疑問は持たなかった。

 

 

 そして戦うなら勝つのは当然で、勝つためには強くなければならなかった。

 

 だから強さを求め、それのみを目指し────

 

 

 そこまで考え、はたと疑問が首をもたげる。

 

 

 一番古い記憶では既に強くなりたいという感情を持っていたが、それには何か理由があったように思う。

 

 漠然とだが、何かがあって強くありたいという気持ちを持ち続けていたのは、自覚のない、それでも自身を突き動かす理由であった筈である。

 

 今に至るまで、その過程の途中ではあったが心が壊れる程に、自分を追い込む程に、それは自分にとって大切な物であった筈。

 

 それは何か? どうしてそこまでして強くなろうとしたのか?

 

 

 徐々に難しい表情になり考え込む榛名を見つつ、欧州水姫も怪訝な表情のまま答えを待つ。

 

 うんうん唸る艦娘と、黙ってそれを見守る深海の姫という場が暗い甲板に出来上がり、暫し波の音と月明かりだけがそこを支配する。

 

 

「────嗚呼、そうでした」

 

 

 ずっとそんな珍妙な空気が続くのかと思われた時間を、やや軽く、そして明るい声色が霧散させる。

 

 

「榛名が戦うのは、強くなろうとしたのは、恋しているからですね」

 

「……は?」

 

 

 予想した物とはかけ離れた、それも斜め方向に突き抜けた答えに欧州水姫は怪訝な表情のまま傾げた首の角度を深くし、逆に榛名は手をポンと叩いてうんうんと頷いている。

 

 

「そうですそうです、榛名は恋してますから、好きな人と一緒に居る為に、その方の望む事のお力となる為に、そしてその方の一番になるために戦い、誰よりも強くなりたいと思ったんでした」

 

「……なんだそれは、恋? 好きになった者の為に戦うだと? 正気かお前……」

 

「好きになったのは榛名自身の勝手、戦おうと思ったのも榛名の選択、最後に強くなろうとしたのは……全部を叶える為の手段がそれだったから、ほら、何もおかしい事はないですよね?」

 

「そんなあやふやな感情の為に命を削り、殺し……殺される可能性を受け入れるのか? これは種の存亡を掛けた戦いなんだぞ!?」

 

「貴女がどんな理由で戦うのは貴女の勝手ですし、もし最後に死んだとしても貴女が納得する答えがそこにあるならそれでいいと榛名は思いますよ?」

 

 

 暴論である。

 

 少なくとも欧州水姫にとって榛名の言葉はそれ以外の何物でもなかった。

 

 しかしそれらは逆に真実(・・)でもある、戦争と死という事実(・・)を前に戦うという選択をする為の主観(真実)

 

 それは他者には理解されず、間違いだと否定されようと、何故戦うのかという問い掛けに対して明確に出された答えである。

 

 事実榛名は戦い、生き残り人類側に立つ艦娘としてそこに居た。

 

 

「沈んでしまったら深海に引き込まれるかも知れないんだぞ、そうなったらお前が恋している相手と殺し合う事になる、それが艦娘であり深海棲艦の定めだ」

 

「……そうですね、もし榛名が沈んでしまった時は恋が実らず、それが悔しくて深海棲艦になっちゃうかも知れません、でも──」

 

 

 艦娘と深海棲艦。

 

 死という境界線を挟みどちらに転ぶかも判らない、黄泉還(よみがえ)るという呪いを背負う者達。

 

 実際にそれを経験し、今も尚自身の心を定められず苦悩する姫の前では、ニパーと笑顔を浮かべ、あっけらかんと自身の想いを口にする艦娘の姿があった。

 

 

「例え沈んで黄泉還(よみがえ)ったとしても、深海棲艦になったとしても、それで全部を忘れたとしても……きっと、初恋も、二度目の恋も、その先も、榛名は必ず提督を好きになり一緒に居る為に戦うと思います、だって───」

 

 

 それが自分の求める(生き方)で、戦う理由だから。

 

 

 榛名の答えは欧州水姫には許容できない物であった、だがそれと同時に否定もできなかった。

 

 何故なら一度決め、それを実行し、既に事を成している相手に対し自分は否定する言葉も、理由も、行動も、何も無いのだから。

 

 

 人類と深海棲艦との終わりのない戦い。

 

 吉野には吉野の、榛名には榛名の、時雨には時雨の、そしてこの戦いという事実に望む者達全てには目指す先が同じでも、違う覚悟と理由が存在する。

 

 それは縛られない心の部分にあり、本人が選択した(・・・・・・・)其々の真実である。

 

 

 こうして未だその選択が定まらない欧州水姫は取り敢えず西蘭泊地に身を寄せる事となり、自分の答えを探す事になるのであった。

 

 

 




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