矢矧さんというニューカマーがINし、くちくかん達がパワーアップを果たし、そしておっぱい風もとい浦風の猛威が発揮された。
そしてメロン子がお白洲でプルプルする風景、プライスレス。
それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。
2018/05/16
誤字脱字修正反映致しました。
ご指摘頂きましたリア10爆発46様、K2様、有難う御座います、大変助かりました。
部屋の真ん中に置かれるローテーブル。
それを囲む形でどっしりとした総革張りのソファーが円形に配置されている。
それらは周りの床よりも一段低く据えられた場に置かれ、周囲には落ち着いた調度品が並び、脇に置かれたワゴンには食べ物や飲み物が用意されている。
【深海艦隊執務室】と札が掛かった部屋の中、そこは執務を行う場というよりもちょっとした高級サロンの様な作りになっており、西蘭泊地所属の深海棲艦達がティーを嗜みながら髭眼帯を取り囲む形でシッダウンしていた。
因みに現在西蘭泊地執務棟、通称西蘭奉行所はこの島唯一稼働率100%の場所になっており、未だ泊地関連施設は整備中となっており、唯一稼動状態にある奉行所内の部屋割りはこういう形で収まる事になった。
居並ぶ深海棲艦上位個体、そこにサンドされる髭眼帯。
今日は彼女達のルームが完成し、ご招待も兼ねての色々諸々のお話という事でお邪魔している髭眼帯は、何故か膝に
「ようこそ深海艦隊執務室へ、どう? 中々小洒落た作りになってるでしょ?」
「小洒落てるって言うか何と言うか、ナニココ仕事するって言うより貴族が歓談しちゃうサロンっぽくなってるんですけど……」
「まぁ仕事って言ってもちょっとした段取りを組んだり通達するのがメインで、殆どはここで待機したり寛いだりがメインになるからこんな形にしてあるの」
「うむ、わらわは和室が良かったのじゃが、洋室というのもこれで中々赴きがあって良いものじゃのと思うておる」
ホホホと笑う飛行場姫の前では
壁にはデカい油絵が幾つか掛かり、その中には達筆な筆文字で書かれた「鎧袖一触」という書まで飾られ、この部屋のコンセプトは何を基準としているのだろうという謎に苛まれつつ、
一応ここは泊地の心臓部とされる執務棟に設置された部署の筈であるが、最早そのイメージは影も形も無いと言えちゃったりした。
「えっとそれで……何か打ち合わせ的なものがあるって聞いて来たんだけど、それってどういった事についての物なのかな?」
「……打ち合わせ? なにそれ?」
「え?」
「え?」
テーブルを挟んで
それを見て何故か
そんな様を見て窓際でアンニュイなティータイムに浸っていた離島棲姫は溜息を吐いて首を左右に振り、
因みに
「あーうんうん、そうだったわ、テイトクにはこれからの事で確認と打ち合わせをしとかないといけないんだったわね」
「……いやその、人を呼び出しておいて忘れてたとかちょっとどうかって提督思ったりするんですが……」
「ちょっと浮かれてたのは認めるけど、そんなジト目で見なくてもいいじゃない」
A4用紙五枚に纏められたそれには、『西蘭泊地深海艦隊初期戦力一覧』と銘打たれた表紙と、タイトルの下段には『同艦隊運用計画草案』の付記がされている。
「現在ウチには私を筆頭に、
「姫鬼さんが総勢十三名……色々な事はあったけど、よくもまぁこれだけ集ったもんだねぇ」
「随分前に冗談半分で言ったけど、其々は当然下位個体を配下に置けちゃうから、その気になればウチだけで国の一つや二つ簡単に落す戦力がここに集結するって事になるんだけど?」
「そのつもりは微塵もないし、もし君達がそうしたいと言うのなら、残念だけどこの先君達とは袂を別つ関係になるだろうね」
冗談の様に軽く交わされた言葉は、今の腹の内ある物をそのまま晒した言葉。
それは其々を良く知っているからこそ可能な、世間話染みたやり取りに見える本音の投げ合い。
髭眼帯の顔を暫く眺めた
「大筋で言えばここに居る子と北方棲姫側から送られて来る予定の子達、これらをどう泊地で運用するのか……それについての提案が今回私がする話の趣旨になるんだけど、その前にテイトクには確認しておく事があるのよね」
「確認? ふむ……何の事に付いての確認だろうか」
「今
「君の麾下って形にしてる割には、全員にカッコカリを義務付けてるのは何故かと提督は釈然としていません」
「でも実際カッコカリを受け入れてるって事はテイトクが皆から慕われてるって事なんだから、もうちょっとそれに応えてくれてもいいと思うんだけど?」
一応軽巡棲鬼、飛行場姫、離島棲姫、そして日本に残っている駆逐棲姫と装甲空母姫という北方棲姫からの移籍組はカッコカリは済ませてある状態にあるが、まだ移ってきて日が浅いというのと、髭眼帯という男に
「て言うか今日
「本当はそっちもじっくりと問い詰めたい気持ちがあったりするけど、まぁ……今回はいいわ、他にしなくちゃならない重要な話があるし」
「それじゃこの書類にある運用草案の中身を詰めてくって事でいいのかな? だとすると自分だけじゃなくて艦隊本部の誰かも呼んだ方がいいと思うんだけど」
「その辺りの話に入る前に、もっと根本的で重要な話があるの」
「……根本的で重要な話?」
「えぇ、今の今まで私はテイトクの協力者として傍に居た訳だけど、それは私の支配下にある子達の気持ちを考えての関係だったの、私達は本来テリトリーを持ち、下位個体を支配可能とする上位種だから人間の下に付くというのは……ほら、矜持と言うか生き方的に拒絶する子も居るかも知れないって事で、これまでずっとそういう関係でテイトクと繋がってきたわ」
浮かべていた笑いが霧散し、目に宿る光がほんの少し濁った物に変化する。
それは
嘗て沖の鳥島で第二特務課課長が初めて邂逅した、人類の脅威であった頃の彼女がそこに居た。
「私の下には掛け値無しに海を支配する者達が居て、その下にも、そのまた下にも本来支配し、庇護するべき者達が居る、千なんて数には収まらない、万かそれ以上の戦力と同時に守るべき者達を率いる事が可能な……人類の敵」
口から出る言葉は事実を淡々と表す物で、それは徐々に抑揚が無い物へと変化していく。
いつもの
だが今目の前に居る彼女は、深海棲艦の長として吉野三郎という人間へ向かい合っていた。
「それでも貴方は私達を受け入れ、もしかしたら人類を敵に回すかも知れないリスクを受け入れた上で、それでも……この先一緒に地獄へ堕ちる覚悟は……あるのかしら?」
前を見る目は既に濁りを通り越した
人類の仇敵深海棲艦、人間の本能に恐怖と憎悪を植え付ける、決して分かり合えないと言われた存在がそこにあった。
「……ふむ、
防空棲姫という深海棲艦を前に、吉野三郎という男はいつもと変わらず、しかし言葉ははっきりと、相手に対して腹の中にある本音を言葉に変えて吐き出していく。
「そう思う気持ちが変わってませんし、そして恐らくこれからも変わる事は無いと思います」
吉野の言葉を聞き、じっと目を見て。
暫く無言だった彼女は「そう」とだけ呟いて。
ゆっくりとソファーに身を預け、何かを確かめる様に周りを眺め、少しづつ薄い笑いを顔に滲ませながら、再び前に座る男へ視線を戻した。
「なら、私は今、この瞬間から協力者じゃなく貴方の支配下に入るわ、肉も、血も、魂も全て貴方に捧げる……そうなったらここにある何もかもは貴方の物になるの、それが私達が誰かの支配下に入るという事、だから忘れないで……」
目に浮ぶ色はいつもの紅へ、笑う相は愉し気に。
しかしそれはこれまでとは少しだけ違う、友としてでは無く、己の全てを捧げた
「もう、戻れない、私達と貴方は一心同体……
テーブルに手を付いて身を乗り出し、指でそっと吉野の顎を下から撫で上げる。
たまにそれっぽくする
しかしその瞬間吉野は頭の芯に焼ける程の熱さを感じ、思わずビクリを身を震わせた。
本当なら頭を抱え転げまわる程の衝撃が頭の中で暴れ狂う、しかし何故か体がまったく反応せず、ただ目を見開いて体が硬直する。
深海棲艦が上下関係を結び、そして目に見えない何かで繋がった時の感覚、人間でも艦娘でも無い不可思議な存在と言われる、彼女達だけが結ぶとされる魂の絆。
個の能力が許すだけしか結べないというそれは、人としては到底許容できる物ではなかった。
でも
だから知っていた、決してあり得ない「種を超えた縁を結ぶという行為」を、今ならこの男は可能とするだろうと。
種の違いから
恐らく北方棲姫が施したそれは、吉野の死に掛けた体をどうにかする事を目的とした施術ではなく、根本的に違う目的があって成された物である事を
人の形と心を持ちつつも有体が崩れ、人としての特権である死からも遠ざかる存在に成り果ててしまい、代わりに
北方棲姫が電とハカセに伝えた、自身の研究結果から立てた仮説。
艦娘と深海棲艦とは何かに対する答えに至る為に必要不可欠なピース。
『艦娘は己から進んで自身より弱い人に縛られ、深海棲艦は強い者が弱い者を力で縛る』という性質を立証する為の実験。
それには支配力という物に限り強い弱いという物差しは肉体的な能力に依存する訳ではなく、魂の有体が基準となる、肉体はあくまでそれを収める器でしかないという考えが前提にあるのだという。
大きくオカルトに踏み込んだ研究は、電や天草の様に科学を前提とした研究では到達し得ない処にある。
今回吉野という男が
そして自身の知らない処でそんな狂った事実が進行しているのを吉野が知るのは、もう少し先の話となるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あー……いや、うん、取り敢えず君達がけじめとして立場を明確にしたいって事は判ったんだけど、別にこうしなくとも良かったんじゃないかって提督思ったりしたりするんですが」
「今まではそれで良かったかも知れぬが、先を考えれば数多くの者を統率する必要があるのじゃし、それを誰ぞに任せるという温いままでは立ち行かぬのも道理、わらわとしても主殿には諦めて全てを受け入れて貰うのが正解じゃと思うのじゃ」
未だ頭に受けた衝撃で痺れが残ったままの頭を抱えた髭眼帯の前では、ティーを口にする
「これから来るのは
「そそそ、そういう事でテイトクにはちゃんと私達を支配する者という関係を結んで、ちゃんとした上下関係というのを築かないと駄目なのよ」
「上下関係って……」
「昔の
「あー……そういえば
「ちょっと何で私の事を引き合いに出すのよっ!? そんな大昔の話なんか持ち出すの止めてよっ!」
髭眼帯の隣でフンスとしていた元ツンツン棲鬼はギロッとした視線を飛ばしながらも何故か髭眼帯に身をギュウギュウ寄せるという奇行に走り、サンドの密度が上昇していってしまう。
因みに反対側には
「次に来るのはリコリス棲姫と中間棲姫、この子達其々は
「つまり深海勢は実質主殿が率いる艦娘達と同等か、もしかするとそれ以上の戦力となるやも知れん、そう考えるとちゃんとしたけじめは必要になるのは当然じゃろ?」
「えぇ~……合計しちゃうと姫鬼さんが十五にぃ? Flagship級が二十ぅにぃ? それってもぅ西蘭泊地って深海ランドになっちゃうって事ぉ? も~ばかぁ~! これじゃ提督戦えないっぽい!?」
「元よりそれら全てを受け入れるつもりでこの島へ渡ったのであろ? ならここをキャンプ地とするならそれなりに形を整えておかんとの」
「……え、キャンプ地ぃ?」
言葉の端々に妙な単語を混ぜ混ぜする飛行場姫はお茶請けの赤福をモグモグしつつ、ものっそ真面目な相で「これがミスター生き地獄という物かえ」と対決列島的でイミフな事をブツブツと呟きつつ、胸の辺りから巨大な麩菓子をズルリと何本も取り出していた。
「で、その膨大な戦力ってテイトクの立場からして、外に出すのは対外的にちょっと不味いって事になるんでしょ?」
「あー……まぁ確かに、お引越ししたから気を使わなくて良くなったよウェ~イって調子に乗って好き勝手しちゃったら、周りの警戒心を煽る事になっちゃうのは確実だろうし」
「だけどもう私達が教導任務を解かれたという事は仕事が無い、言ってしまえばニート状態と言えなくもないわ、そこへ更に二十人以上の子が増えちゃうとすると……」
髭眼帯は
結論として髭眼帯の脳裏には姫鬼+Flagship級という深海のフレンズ三十人が、奉行所の一室で自宅警備員状態というとてもメーな
それは数も大概だが、見た目はそれ以上に壊滅的でメーな物であるのは間違いない。
寧ろ戦力的には一海域に潜む戦力など軽く吹っ飛ぶ妖怪達が潜むという、「別な意味での封印区画」が執務棟に出来ちゃうという不可避の未来は、髭眼帯的に精神衛生上とても良くない事になる事が確実と言う事に思い至り、心の中にある嫌な予感メーターの針が余裕でレッドゾーンを振り切るどころか物凄い勢いでクルクルと回ってしまう。
「それで当面は
「そそそそうだね……守りは深海勢に、人と深く関わる部分を艦娘に、確かにその配置なら対外的な問題も発生する確率は減るし誰かにニートを抱えたママンという悲しいポジを押し付けなくていいという面でも有用だし提督もぜひその案を無理からでも前向きに検討しようと思います」
「ちょっとしたテリトリーならボスを張ってる
「まぁ……色々調整は必要だけど取り敢えずこの案を叩き台に長門君達と一緒に検討するって言うかメーなんて言ったら提督権限でダウトするからほぼ決定と言うことで、そんな風味で……」
「そう、テイトクがいいって言うのなら明日にもその辺りの場を設けてナガト達と話をしてみようかしら」
「あー……まぁ細かい詰めはほっぽちゃんとこから次の人達が来てからになるんだろうし、自分はその時に参加すればいいかな」
「そうね、テイトクはまだ他にする事があるだろうし、それまではこっちで話をある程度纏めておくわ」
こうして目の前の些細な問題に目が行き髭眼帯が出したGOサインによる戦力配置は、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜の
西蘭泊地執務棟、通称奉行所と呼ばれる建物内の一室、昼には『深海艦隊執務室』と書かれていた表札は、中から出てきた離島棲姫の手によって別の物と掛け替えられる。
奉行所の中は暗く静かであったが、そこだけは控えめながらも淡い光に彩られた演出がされ、昼とはまた違った顔を垣間見せる。
鶴と亀という和の趣にある障子扉の上に掛かる、掛け替えられた木の札には、達筆な毛筆でこう記されている。
『Bar アイアンボトムサウンド』
海軍施設にあるには不吉かつあり得ないその名称は、お酒とツマミを楽しむ紳士淑女のお店であった。
昼と同じ配置のままのソファーセット。
日の光が照らすそれらは小粋なラウンジ風に見える物であった。
だが日が沈み、照らす光が天井から降り注ぐちょっと抑え気味の物へと変われば、ムーディかつ大人の雰囲気が漂うオサレな姿へと変貌する。
部屋の奥にあった木製の間仕切りはパタパタと畳んだ状態でスライドされ、壁一面に配されたカウンターバーが姿を現す。
その内側には小粋なバーテンダー風の服で身を固めた
ここは『Bar アイアンボトムサウンド』
深海棲艦上位個体、空母棲鬼がマスターを努める紳士淑女がお酒を楽しむ夜の社交場である。
「……ねぇ
「何かしらテイトク」
「えっとその……この、何と言うかこれは……」
「これ?」
「えっと、何で執務棟にあるお仕事をするルームがBarみたいな物に変貌しちゃってるのかの理由を聞いても?」
「あぁそれね、ほら、ここって間宮は飲食が中心で、鳳翔の店が小料理屋的な店になっているでしょう?」
「え、うんまぁ確かにそう言えたりするかも知れなかったりするかも知れないんだけど……」
「でもお酒をメインに楽しむ場って今まで無かったじゃない?」
「いやそれって鳳翔君のとこでも事足りてた気がするんじゃないかって提督思うんですが」
「甘いわね、鳳翔の処では確かに美味しいお酒と料理が出るけど、逆を言えば料理がメイン、ここはお酒をムードというツマミに楽しむお店だから、よりアダルティな世界を演出しているという事でちゃんと住み分けは出来てるわ」
フフンと得意気にロック・グラスに入ったウイスキーを傾ける
確かにお店としては住み分けが出来ているだろうが、店の中の店員全てが姫鬼であったり、執務棟の中で営業しちゃってたり、それ以前に店の名前がアイアンボトムサウンドという時点で色々とマズい空間が出来上がったりはしていないだろうかと。
僅かにプルプルを開始したそんな髭眼帯の前に、マスターである
ピタリと目の前で停止するそれは、小さな籠にINする数個の
お酒のツマミには確かにナッツ系の物が相性的にも良く、胡桃というブツは小粋なBarではそれなりに供される。
髭眼帯は、目の前にある
そうして見る彼女の前にも同じく籠に入った
徐にそれを取り出しバキバキと握り潰した後、オサレに中身を摘んで口に運ぶ姿は、確かに大人っぽいムーディな姿に見えなくは無いと言えるかも知れない。
しかし
砕いたそれはスタッドレスタイヤに混入される程強固なブツであり、普通の人間が素手で割るのはほぼ不可能と言っても良い。
普通の胡桃でさえ素手で割るのは常人には無理のムリムリであり、某カンフー映画なんかでは胡桃を割るというのは達人になる為の修行メニューになっていた程である。
髭眼帯の前にある籠にINされているのはそれよりも強固で頑丈な上位種、鬼胡桃。
ヒョロ助人類代表と言っても過言では無い髭眼帯には、専用器具が用意されていない時点で何をどうしてもそれの中身を取り出す事は不可能と言えるだろう。
だがここは『Barアイアンボトムサウンド』。
客もマスターも人外であり、また艦娘が来たとしても
そんなツマミとしては攻略難易度が高過ぎるブツを目の前にプルプルする髭眼帯の前には、飲み物を準備するマスター
「テイトクはお酒を飲まないって事で、今日は私が特別にノンアルコールのカクテルを作ってあげるわ」
「安心して、
「あ……あぁうん……そ、そうなんだぁ、うん……何と言うかそれは楽しみだねぇ……」
二人が言う言葉に多少は安堵するものの、何故か不安度メーターにちょこっと反応する物があったりする髭眼帯は、油断無くカウンターの向こうに居る
棚から取り出してきた銀色のシェイカーをコトリと置き、メジャーカップで数種類の液体を計りつつタパァし、髭眼帯が愛して止まない例のケミカル炭酸と氷をINして蓋をする。
流れる様に無駄の無い動きに関心する髭眼帯の視線に、フフンと得意気な表情の
カシャカシャとリズミカルかつ軽やかに振る音が聞こえる。
抑えた照明に照らされ、淡く光を返すシェイカーは演出的効果もバツグンで、
大人の雰囲気を演出する紳士淑女の社交場『Barアイアンボトムサウンド』、アルコールだけでは無く、雰囲気にも酔わせる小憎らしい演出が随所にそれとなく散りばめられている。
ゆったりとした時間、流れるジャズも相まって上質な空気がそこに漂う。
そしてブシャーという噴出音。
周りの視線はその音の元となっているマスター
カウンターの中で時が止まったかの様に動きを停止する
時が止まったかの様に怪訝な表情で髭眼帯達が見守る中、淡い光を反射するムーディーなブシャーが暫く続くが、漸くそれが収まると
確かにシェイカーにINした液体は全てノンアルコールであり、髭眼帯の好みを追求した色々を
しかし最後に入れたブツは、巷の消費者からはカセットテープの風味がすると評判の毒炭酸、ドクターペッパ、つまり炭酸飲料であった。
それをINしてシャカシャカするという行為は、物理的な法則と言うか常識に於いて、炭酸が膨張してブシャーしちゃうのは当然と言ば当然の結果と言えよう。
本来ならタンブラーに全てをINしマドラーでグルグルしなければいけない処、
暫く無言で処理をする離島棲姫と、何とも言えない気まずい空気が蔓延する紳士淑女の社交場である『Barアイアンボトムサウンド』のカウンター。
誰も言葉を発しない大人でムーディなそんな席。
そしてカウンターの処理を追えた離島棲姫はそのまま何事も無かったかのように元のポジに戻り、次いでお着替えを済ませた
色々な突っ込み処があるにはあったが、何故かツッコミをしてはいけないと言う空気がそこに蔓延し、カウンターは小粋なジャズとムーディーな照明に彩られ、ある意味空気を読む者が飲み物を嗜む
こうして泊地に日々軍務に疲れた者の心を癒す施設が新たに出来上がった事を髭眼帯は静かに祝いつつ、紳士淑女の社交場である『Barアイアンボトムサウンド』の夜は更けていくのであった。
誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。
ただ言い回しや文面は意図している部分がありますので、日本語的におかしい事になっていない限りはそのままでいく形になる事があります、その辺りはご了承下さいませ。
それではどうか宜しくお願い致します。