大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 予定とは行動を起こす前の計画から導き出した指針である。
 そして現実的に予定というもので全てが上手く運ぶ結果は殆ど無く、大抵は終わった後の結果と比較対象される存在、それが予定とも言える。
 当初の予定とは掛け離れた形としての今を行く大坂鎮守府は、予定とされた物では収まらない状態にまで色々が膨らみ、結果としてその修正の為に時間とコストを掛けるのが今となっていた。
 それは人に対してだけでなく、鎮守府の施設に対してもである。


 それでは何かご意見ご質問があればお気軽にどうぞ。


2017/06/28
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたMWKURAYUKI様、皇國臣民様、orione様、京勇樹様、拓摩様、リア10爆発46様、有難う御座います、大変助かりました。


艦娘寮リニューアル

「随分お待たせしてしまいましたがこれで寮の改装工事は完了です、荷物は既に皆さん運び込んでいる様ですので、夜には全ての作業は完了しそうですね」

 

 

 梅雨明けも近い関西地方、現在髭眼帯率いる大坂鎮守府では急激に人員が増えた関係で、寮の元々の部屋数が60に対し人員が77名という、一部相部屋という配置にしても足りないという問題が発生していた。

 

 元々は現在の人員の1/3程という想定で設計された寮は、収容人数もそれに沿った物として作られていた、その人数に加え教導で宿泊するだろう人数も計算し、用意された寮の部屋総数が60部屋という数だったのである。

 

 しかし急遽教導で来た者達に割り当てられる筈だった部屋を鎮守府の者へ開放したという事は、教導する艦娘を受け入れる余裕が現在鎮守府には無いと言う事になり、寮をそれに対応した形に整えないと受け入れ人員の宿泊する部屋が無く、その煽りを受けて教導任務が停滞してしまう為急遽寮の増築をする事になった。

 

 

「んっと、元々の寮の西側に同じ規模の建物を増築する形で建蔽率(けんぺいりつ)を倍にする、と、いう事はだ、部屋数は今までの倍の120部屋って事になるのかな?」

 

「元々寮の一階は共用スペースが入ってましたから、その辺り建て増しした分の拡張が必要ない場所を部屋として充てましたんで、部屋数は全部で135になりますね」

 

 

 改装された寮の一階ロビーでは、パタパタと荷物を手に各部屋へと引越ししている艦娘達を横目に図面を広げて説明する夕張と、説明を聞く髭眼帯の姿があった。

 

 本来なら施設の工事やそれに関係する設計・仕様等は吉野が管理しておく必要があったのだが、最近発生した諸々の案件で多忙を極め、それに関わる時間が捻出出来ないという事情と、それでも早急に手を打たないと軍務が滞るという切迫した状況、更に工法が既存の物を隣にもう一つ建て連結という単純な物であった為に、この増築工事は夕張と事務方が管理する形で進められていた。

 

 

「あーなる程、確かに一階の共用スペースをそのまんま倍にしちゃうと無駄な部分が多くなっちゃうから、その辺りは部屋として使うって事ね」

 

「ですね、それで一階部分には15部屋あるんですけど、そこは主に鳳翔さんや間宮さんを始めとする主計課所属の方達と、長門さんや龍驤さんみたいな責任者に就いてる方達が入る予定になってます」

 

「ふむ、主計課は朝早くて夜遅いし、責任者の子達も外に近い位置に部屋がある方が便利って事か」

 

「逆に人数が増えれば相対的に面積が必要になる大広間や浴場等は、そのまま建て増し側へ空間を広げる形になってますね」

 

「なる程、今までの建物のまま裏に同じ規模の建物をも一つくっつけて建てたのは、その辺りの事情も汲んでって事になるのか」

 

「縦に増すより横方向へ増築すれば、地盤へ過重を集中する事もなくなりますし、基地の防衛という観点でも高層建築は回避した方がいいですから」

 

「まぁ今までの倍の容積を縦にってなれば、単純に5~6階建てになっちゃうし、共用スペースの確保が難しいくなっちゃうからねぇ」

 

 

 今までの艦娘寮は一階部分を共用スペースに充て、二階から三階部分を各人の部屋として利用する三階建ての施設であった。

 

 今回の改装工事はその寮の西側を少し整備し、それまでの寮を表裏逆の形で連結した様な状態で建て増しする事で建物の容積率を倍にする工法が採用された。

 

 共用スペースの一部はそのまま面積を倍に、そうしなくても良い部分を部屋として造り、二階三階は今まで西側に位置した廊下方向へ部屋を少し建て増し、廊下を挟んで同じ造りの部屋を配するという状態になっていた。

 

 

「いや~でも大変でしたよ、も~色々面倒があって結局竣工まで一月掛かっちゃいました」

 

「妖精さんもフル活動して一ヶ月とか君にしちゃ随分時間掛かったね、何か問題があったの?」

 

「いえ問題と言うか、工事に着手した後色々皆からあれもこれもって希望が来ちゃいまして、その度に仕様変更とかギミック関係仕込んでましたから、二度手間になったり、材料調達に……」

 

「スタァップ! ワンモァプリーヅ……リピートアフターミー」

 

「はい? えっと何がでしょう?」

 

「……希望ぅ? 仕様変更ぅ? 材料調達ぅ?」

 

「はい、折角寮を改装するんならと言う事で、皆が色々と希望する機能とか設備を可能な限り盛り込んでみました」

 

「あー……えっと、その辺り提督何も聞いてないと言うか、何と言うかその辺り追加で予算が必要になるんじゃないの?」

 

「その辺りは大淀さんと都度相談して調整しましたので大丈夫ですよ?」

 

「大丈夫なんだぁ……そっか、そうなんだぁ……」

 

 

 懸念していた一つであった寮の改装が終わり、やれやれと思っていた髭眼帯であったが、メロン子が言う艦娘達が希望するあれこれを寮に盛り込んだという言葉を聞き、嫌な予感メーターがグングンと上昇していった。

 

 何せ寮の改築工事が着工した時点では既に建材は全て鎮守府へ運び込まれていた筈であり、材料調達に於いても余程特殊な物でなければ工期に関わる程の事は起こらないスケジュールであると報告だけは受けていた。

 

 更に妖精さんという謎技術のエキスパートが関わっている筈なのに、たかが寮の建て増しに一ヶ月も時間を要したという事に髭眼帯の眉間の皺が深くなっていった。

 

 何せ瓦礫交じりの更地であった旧大阪鎮守府を稼動状態まで整備するのに要した期間は約半月、それの倍の期間を今回の改装では要したと言うのである。

 

 

 それはつまり、それと比較して倍の何かをこの改装で寮に仕込んだという事になっちゃったりするのである。

 

 

「因みに夕張君、その……色々と……追加した機能と言うか仕掛けって……」

 

「あ、提督お疲れ様です、今回は色々とご無理を聞いて頂き有難う御座いました」

 

「あ……あぁ鳳翔君お疲れ様、何? 店改装したの?」

 

「はい、今までの席数では最近足りない部分もありましたので、店舗の拡張と機材の追加をさてせ頂きまして、丁度今晩から営業を再開する処です」

 

「なる程、って店が大きくなったら君と龍鳳君二人だけで営業は大丈夫なの?」

 

「それなんですが、神威さんと(空母棲鬼)さん、後は(潜水棲姫)ちゃんがローテーションで手伝いに入ってくれる事になっていますので」

 

「あーそうなんだ、なら大丈夫だねぇ」

 

「調理器具だけじゃなく囲炉裏を入れてみたり、後加工食品を作る場所もあるので提督がお好きだと言う……何だったかしら、ハウ……ハウカト?」

 

「……ハウカットル?」

 

「そうそれです! (空母棲鬼)さん達からお聞きした深海家庭料理も特別にお出しする事が出来ますから」

 

「深海手料理ぃ? 提督がお好きぃ? ナニソレどうしてそうなってるのぉ?」

 

「あっすいません、この話は内緒なんでした、ですのでお越しになる際は知らない振りをして頂けますか?」

 

「えっ、いやちょっ! 鳳翔君その深海手料理ってくっさいアレと言うかぶっちゃけあのくっさい料理が」

 

「それでは準備がありますのでこれで、それではご来店、お待ちしていますね?」

 

 

 プルプル震える髭眼帯にオカンは振り向き、ニコリと微笑んだ口元に指を立てつつ店へと戻っていった。

 

 その時微かに見えた店内は、今までとは違い広々とした空間が広がり、更にその中をパタパタと右往左往している神威と、カウンターの向こうで何かを作っているのだろう(空母棲鬼)の姿と、何故かその脇で目のハイライトを薄くして佇む龍鳳の姿が見えた。

 

 

 オカンが入ると共にカラカラと閉じられていく引き戸。

 

 

 それは吉野からすれば見えてしまった地獄の蓋が閉じられる様に見えたという。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「現在拡張した共有エリアは鳳翔さんのお店、大広間、大浴場、リネン室、後は会議室と応接室を新たに設置してます」

 

「あー……そっかぁ、ふーん……そうなんだぁ」

 

「もー提督何ですかさっきから抜け殻みたいになっちゃって、ちゃんと説明聞いてます?」

 

「うんまぁ聞いてるよ、うん……」

 

「本当ですか? なーんか存在感が半分になっちゃったって言うか、モブ度が増しちゃってますよ? あ、そうだ提督ここなんですが」

 

 

 テンションアゲアゲなメロン子は、入り口ロビーを入った階段脇へプルプルしつつ項垂れる髭眼帯を引っ張っていく。

 

 目の前には三機のエレベーターのドア、片方は今までもあった型の物が二つ、そしてその隣にはその倍はあろうかと言う扉が並んでいるのが見える。

 

 

「このエレベーターなんですが、手前から二つは普通タイプなので提督も利用出来ますが、奥の物は訓練を兼ねたRCサイロになってまして、間違って入っちゃうと怪我する可能性があるので気を付けて下さいね?」

 

「え? RCサイロってナニ?」

 

 

 夕張の言葉に怪訝な表情になる髭眼帯の前で、チーンという音と共に扉が開く。

 

 そこにはちょっとフカフカした床みたいな何かと、壁面に色々なブツが埋め込まれた謎の空間が見える。

 

 

 そしてその謎空間は何だろうと髭眼帯が確かめようとした瞬間、何かが上から落下してきたのか、ボスンという音と共にめくりあがったスカートと、パンツが着地するのが見えた。

 

 

「あっ、提督さん? なにしてるっぽい?」

 

「いやその……君こそ何してんの?」

 

「飲み物買い忘れたから酒保に行くっぽい! 提督さんも暇なら一緒に行くっぽい?」

 

 

 ニコニコとするポイヌ(夕立)、怪訝な表情で固まる髭眼帯、そしてポイヌの後ろにある謎空間。

 

 

「そこはロッククライミングで二階と三階に行ける様設置したRC(ロッククライミング)サイロです」

 

「……うん、何か上まで吹き抜けで壁面に貝殻とか、鉄筋とか色々埋め込まれているね……」

 

「霧島さん考案の"トレーニングを無理なく生活に取り入れるスタイル"という設備の一つで……」

 

「え~……何その脳筋思想、上に行くのにここヨジヨジしてくの? 無理なくってこれどう見ても無理やり設備だと提督思うんだけど……」

 

「一階に行くのに便利っぽい!」

 

 

 霧島ネキのライフスタイル改善的脳筋設備は割と理論に穴があり、利用初日の時点で想定外の使い方がされているのが発覚したという悲しい現実がそこにあった。

 

 

「ああうん夕立君、飛び降りるのはいいけど、怪我とかその辺り色々気をつけてね?」

 

「わかったっぽい!」

 

「スカートがめくれてパンツ見えてたのは突っ込まないんですね」

 

「どうしてピンポインツでその辺りだけ抽出するの!? 敢えてコメント控えてた提督の気遣いぶち壊さないで!?」

 

「提督さんパンツ見たいっぽい?」

 

「そこに反応しないで! 割とマジで!」

 

「あ、そうだ提督さん飲み物以外に何かオヤツとかいらないっぽい?」

 

「え? オヤツ? そうだねポテチとか……って夜食べるヤツ?」

 

「ん、今皆で提督さんの部屋でお茶してるから、夕立が買出しに来たっぽい」

 

「……ん? どこでお茶してるって?」

 

「え? 提督さんのお部屋だけど?」

 

 

 怪訝な表情で首を捻る髭眼帯、そしてニコニコとして耳っぽいアレをピコピコするポイヌ(夕立)

 

 そこから何かを察したのか、メロン子がああと言いつつポンと手を叩くという何と言うか不吉なパターンが展開されていく。

 

 

「今度の改装の件で提督何も要望してませんでしたよね?」

 

「うん、今までのままで何も不都合無かったし、別にこれと言って要望出す必要性を感じなかったからね」

 

「それでですね、寮を拡張した事もあって、提督の部屋もちょっと広くして、後は皆の要望を取り入れまして……」

 

「おいメロン子」

 

「何です?」

 

「提督のマイルームに何したの? 皆の要望を取り入れたって何?」

 

「えっと、取り敢えず広さが今までの3倍程の60㎡に拡張されましたね」

 

「今までの3倍ぃ?」

 

「あ、私物はそのままですから安心して下さい」

 

「それは私物以外は安心じゃないって事!? ね? その辺りどうなの!?」

 

「ご心配なら確認してみます?」

 

「あ、お部屋に行くっぽい? じゃ夕立が案内してあげる!」

 

「いや場所変ってないなら案内とかいらないってか提督ロッククライミング無理だから! それとパンツ見えてるからね夕立君!」

 

 

 結局何のかんのと霧島ネキのライフスタイルは、一部の者に受け入れられつつある事を髭眼帯がポイヌのスカートを直しつつ思い知った瞬間であった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「……おいメロン子」

 

「はい、なんでしょう提督」

 

「この……この扉はナニ?」

 

 

 プルプル震える髭眼帯とメロン子の前には、やたらとデカい飾り格子の引き戸が立ちはだかり、その脇には毛筆で『大坂鎮守府司令長官・吉野三郎臥房(がぼう)』と書かれた平板が掛かっていた。

 

 その看板的なアレと、引き戸的アレは何と言うか高級旅館の一室的空気が漂い、髭眼帯の不安度メーターと嫌な予感メーターが揃ってレッドゾーンへ突入する。

 

 

「それは武蔵さんがデザインした旅籠風の引き戸ですね」

 

「……旅籠? 旅館……武蔵旅館……あっ!」

 

「表札の書は大和さんの物です、中々達筆ですよねぇ」

 

 

 軍事拠点の寮という近代化した建物の中に突然現れる旅館然とした扉、その空気を読まな佇まいは大和型姉妹の合作による全力の物であり、当然司令長官の私室と言う事もあり戦艦の主砲ですら耐える強度を誇るという狂った造りになっていた。

 

 

「それじゃ入りましょうか」

 

 

 夕張がリモコン的なブツのボタンを押すと、引き戸がウィーンと開き、例のファミリーなマート的な音楽が流れてきた。

 

 

「このデザインで自動ドアとか色々ぶち壊しデショ! てかこの音楽! これ大本営の秘密基地でもやってたよね!? 提督のマイルームに何してくれてんの君ら!」

 

 

 髭眼帯のツッコミを無視して中に入った夕張の先には防犯を意識してだろうか中扉が設置されており、その脇には中に居る者たちの物だろう、ゲタ箱に満載された靴という、マジもんの旅館的空気が漂っていた。

 

 そこで靴を脱いで扉をノックするメロン子。

 

 

「……髭」

 

「モブ」

 

「良し、入れ」

 

「良しじゃないよ!? ナニ今の合言葉!? モブって誰の事言ってるの君達!? ねえっ!?」

 

「む、提督か、寮の施設確認は終わったのか?」

 

「……まぁ大体は、てか長門君提督の部屋で何してるの?」

 

「うむ? いや間宮に誘われて茶を頂いていたのだが」

 

「えっ? 間宮さんも居るの?」

 

「他に何名か居るが、それがどうした?」

 

「君達こそどうしたの!? 何で揃って提督の部屋にINしてるの!?」

 

「ああ色々と防犯機能とか、後は其々が希望した設備の状況を確認したついでに茶をしていたのだが」

 

「……其々が希望? 提督のマイルームに君達何希望したのよ?」

 

 

 怪訝な表情のまま髭眼帯が入った室内は、何と言うか外が旅館然として和のテイストなのとは違い、赤絨毯に重厚な円形テーブル、暖炉的なブツ、他にはどこぞで見た事のあるジュークボックス等が配置され、その向こうでは何故か着物を着た一航戦の青いヤツが例の持ち歌を熱唱していた。

 

 モダンな洋風、かつ品のある佇まいの部屋はいいのだが、それは一般ピーポーの感覚しか持ち合わせていない髭眼帯からしてみればとても落ち着かない感じのルームであり、更にそこでレディカガの生歌と言うシチュはとても言葉に出来ないカオスな空間となっていた。

 

 

「提督お帰りなさいませ、どうですか? この部屋は大和が某帝○ホテルのスイートルームを意識してデザインしたんですよ」

 

「……○国ホテル? ホテル……大和ホテル……あっ!」

 

 

 姉妹揃って全力でデザインした提督のマイルームは、入り口が旅館、入ってすぐの部屋がホテルという、ある意味自虐ネタと言うかそれでいいのか大和型と髭眼帯が突っ込みを入れてしまう様な造りになってしまっていた。

 

 

「部屋はモダンな造りになっていますが、そこの提督専用の椅子を利用すれば執務棟地下の指揮所迄行ける『魔の提督椅子』システムが……」

 

「また提督の私室から椅子でゴーシステム組んだの!? 何大本営の秘密基地と同じ造り目指してるのメロン子!?」

 

「ここでお食事が作れる様にキッチンも完備しています」

 

「間宮さん、提督部屋で食事食べないのに……何でスイートルームな一角にアイランドキッチンがデーンとしてるんですか……」

 

「え? それはほら、夜明けのコーヒーだけでは栄養が偏りますから、お食事も作れるようにと鳳翔さんと相談して……」

 

 

 何か頬を赤らめ爆弾発言を垂れ流すマミーヤの向こうではモダンなルームの一角に自己主張をするキッチンがあり、何故かそこでは金剛型長女と次女が料理をしている姿が見えた。

 

 それを確認した髭眼帯はそのままここに居ると良く無い事が起こるという予感でプルプル震え始め、隣の部屋へ退避する為にドアを開け放った。

 

 

「あ、提督お仕事終わったの?」

 

「えっとまだ途中みたいなカンジと言うか……時雨君、ナニシテンノ?」

 

「え? 提督のベッドメイクだけど?」

 

「ベッド……それ提督のベッドなの?」

 

「うん、そうだけど」

 

 

 未だカガのソングが背後から聞こえる部屋から一歩踏み込んだ隣の部屋は、半分畳敷きであり、そこにテレビだのゲームだの髭眼帯の私物が見慣れた配置で置かれた物凄く安心できる空間が存在していたが、もう半分は何と言うか直径3mを超えようかという巨大な円形の何かがデーンと据えられており、それに小さな秘書艦がシーツを被せているという絵面(えづら)が見えていた。

 

 

「何でベッドが円形なワケ?」

 

「え? だってダブル以上のサイズだとこのベッドしかないって夕張さんが」

 

「おいユウバリンコ……」

 

「夕張です、そのベッドはほら、提督がお休みの時ですね、潜り込みするメンバーからベッドが狭いという意見が前からありまして」

 

「それが何故丸いベッドに?」

 

「夜のスナイパーにあった物を転用しました、大丈夫です! 回りますから!」

 

「何でベッドが回ると提督の安心度が増すのか、その辺りじっくりと聞かせて貰おうか……」

 

「ohオンセーン最高ネー!」

 

「あれは岩風呂って言うのよアイオワ」

 

 

 メロン子の生尻ペシペシが敢行され、悲鳴が轟く室内、ベッドの奥にあるドアがカラカラと開き、中からタオル一枚だけ巻いたアイオワとサラトガが現れるという事象が流れ作業の様に巡り、色んな意味で固まる髭眼帯。

 

 

「何Admiral……メロンのパンツめくって昼からお盛んネ、meも混ざっていい?」

 

「……えっと君達その格好、何してんの?」

 

「あ、奥は電ちゃんとハカセの要望で岩風呂になってるから」

 

「何で提督のマイルームにそんな要望を加味しちゃうのハカセ達!?」

 

「日本のお風呂は素晴らしいと聞いていたので、はしたないとは思いましたがお先に使わせて頂きました」

 

「いやそれはいいんだけど君ら服! 服着て! 提督からのお願い!」

 

「Why? Japanではbathから上がったら裸でmilkを飲むのが決まりなんデショ?」

 

「何その微妙に捻じ曲がった常識!?」

 

「いや、風呂上りには扇風機の風に当たりながら牛乳、これは譲れない」

 

「譲れないのはいいけどグラ子タオル位巻いて! マッパとかどうなのそれ!? むしろ何人出てくるの!? 奥の岩風呂どれだけ巨大なの!?」

 

 

 シリペシ状態でツッコミを入れる髭眼帯の向こうからは、ワラワラと主に海外勢が湯気ホカホカの状態で出てくると言うカオス。

 

 そしてどこから持ち出したのか扇風機をブオーンして腰に手を当て、並んで牛乳を一気する様は、もはや各国を代表する艦娘のエリート的な威厳は欠片も感じられなかった。

 

 

「時雨さん、YES・NO枕買って来ました……よ」

 

「……これは一体何事でしょう?」

 

 

 そんな風呂屋の脱衣所然とした異空間に、神通と榛名が例のイラッシャ~イで供される枕を抱えてINするという緊急事態。

 

 

 そして脇ではメロン子生尻ペシ敢行中の髭眼帯。

 

 

 

 こうして色々といがみ合い微妙な関係だった武蔵殺しと雷撃の鬼の息の合ったタッグと言うか制裁と言うか蹂躙が展開され、後に大坂鎮守府の攻めの双璧と呼ばれるコンビが誕生するのであった。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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