大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 数々のやらかし案件を経てヨーロッパ諸国より数名の艦娘を譲渡された大坂鎮守府、目的の為と力を蓄えてきた結果であったが、それが急速に拡大し、人員的に追いつかない状態の大坂鎮守府は、早急に体制を整えつつも、次策を模索しつつ、今日も企みを巡らしていくのである。


 それでは何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


2019/04/29
 誤字脱字修正反映致しました。
 ご指摘頂きましたリア10爆発46様、拓摩様、sat様、雀怜様、柱島低督様、有難う御座います、大変助かりました。


派閥とロボ

「今回の件やけどな、(わし)はサブのとった行動は結果的にやけど正解やったと思うわ」

 

 

 天岩戸(あまのいわと)フェスが終了しての執務室、執り合えずの業務に戻る為に人口密度がほぼ髭だけになったそこでは、まだアルコールが抜け切っていない面々と吉野が会談に付いての話し合いを行っていた。

 

 染谷文吾前岩国基地司令長官を筆頭に、陸軍西日本即応集団司令長官である池田眞澄、友ヶ島警備府司令長官唐沢隆弘、そして大坂鎮守府司令長官吉野三郎。

 

 全員に共通していると言えば全員髭であり、軍の立ち位置としては慎重派に属する面々という立場にあると云う面々。

 

 

 今回の会談は一応非公式と銘打たれたものであったが、実質ヨーロッパ連合が軍を相手にと話を持ち掛けてきた場であった。

 

 それは現状ヨーロッパ連合が日本の軍内派閥というややこしい集団の中から慎重派を軍の主流派として認め、交渉相手と定めたと取り敢えず判断しても良いという状況でもあった。

 

 

「じゃのぅ、現状艦隊本部系の一派とは組織掌握率も技術面に於いても慎重派より数段上に位置しておる、それを無視した上でかの国らがおんしらに寄ると言う事はじゃ、これから先おんしは軍内部の対立派閥と国政に関わる者達に加え、国外情勢に於いても広く警戒せんといけなくなったと云う事になるのぅ」

 

「せやなぁ、今までは目の前にあった面倒な部分だけ片付けて、面倒事は大隅はんらに丸投げしとった部分もこれからは自前で何とかせんといかんやろうし、国政に片足突っ込んだんやったらヨーロッパだけやのーて、アメちゃん方面の顔色も伺わなあかんよーになった訳や」

 

 

 現況大坂鎮守府を取り巻く関係は複雑に絡み合った物となっている。

 

 

 元々深海棲艦との協力を取り付けている関係上、大坂鎮守府は軍内では腫れ物扱いとなっており、一応大隅が筆頭とされる慎重派の一派という立ち位置ではあったが、厳密に言えばそれはやや慎重派寄りという立ち位置であるだけで、今回の件でクェゼリンという拠点と深く繋がったという事も加え吉野達は独自の派閥という立ち位置を完成させつつある。

 

 そして政治面に於いては経済界との延長線上で元老院と繋がりを持つに至り、それが更に軍内では独自の派閥としての色を放つ事になっていた。

 

 更に泊地棲姫と関係を持った為に諸外国、主にヨーロッパ方面から関係性を持ち掛けられる事にもなったが、それは池田が言う様にヨーロッパ連合とアメリカとの間で難しい立ち位置を模索している日本という立場と同じく、バランスが必要とされる縮図も背負う事になる。

 

 

 全ての基点は深海棲艦という存在所以の物であったが、それを突き詰めてしまうと朔夜(防空棲姫)達もハッちゃん(泊地棲姫)側も吉野という個人を基準として成り立つ関係故に、この先吉野という個人の行動は慎重にして当然という物になってしまった。

 

 膨大な力を背景にすると言うのは一見権力を持つが為に何でも自由に出来るという印象を受けるだろうが、それに対する責任や関係性の維持を考慮せねばならないという手間が発生し、今までよりも不自由で、窮屈で、そして身の危険が増すというマイナス面が増大するというという結果を生み出す事となった。

 

 

「イギリスが代表して話に突っ込んでおったが、アレはそういう役割で場を回しておったんじゃろうのぅ、それを考えればあん時の時雨嬢ちゃんの件はヨーロッパ連合の総意じゃったと判断しておいた方がええぞ?」

 

「ですわな、あの場ではっきり拒否する手ぇいうのは幾らかあったけど、どれも結局は何かを譲歩せんといかん手ぇしかなかった、それを先方さんも知っとったからあんな無茶振りをしたんやろ」

 

「うむ、吉野のやった事は正直褒められた行動じゃなかったがの、これから繋がるじゃろう相手に初っ端これだけ強硬な事も出来るという面を見せたのは、ある意味僥倖じゃったのかも知れんの」

 

 

 新しい関係、それも国という物を背負いつつ繋がるだろうこれからは、基本的に譲歩を前提するのでは無く、どれだけ利権や国益を削らず相手と対さねばならないかという"攻め"の姿勢で臨まねばならなかった。

 

 その面で言えば暴挙に近い形で事を進めた会談であったが、そこから話を進めると考えれば実は日本という国にとっては理想的な状態でのスタートとも言える会談でもあった。

 

 

 但し、吉野という人物にとっては最悪ではあったが。

 

 

「着任してきた艦娘さんに付いても現在裏を取っている最中ですが、今の所危惧する物は出てきてないですね、まぁある程度は本国と紐付けされてはいるでしょうけど」

 

「そら仕方ねぇわな、着任した艦娘はどいつもこいつも高練度なんだろ? んなら上がどうとか以前に色々(しがらみ)があるのは当然だろうし、本人らが意図してなくても情報の漏洩ってやつぁよ、ある程度仕方がねぇ状態になっちまっうっつー部分はこれから割り切らねぇといけねぇやな」

 

 

 和気藹々というか、色々問題もちょっとだけあった艦娘達の着任劇、そこには少なからず色々な思惑も絡んでいるのは当然と言えるだろうが、既にその辺りは漣に一任しての身辺洗浄が開始されており、その結果は一両日中には出る予定であった。

 

 中間報告に上がってきたそれらの情報も予想された範疇という結果になっており、恐らくだが問題の無い状態で諸々は終息すると吉野は考えていた。

 

 

「今回の着任は純粋にこちらの貸しにしておく事で、関係性を持つ為の物であるのは間違いないと自分は判断しています」

 

「ふむ、一応その根拠を聞かせてくれんかの」

 

「先ずウチという鎮守府を調べれば、直接戦力の派手さを隠れ蓑にした情報戦の要所というのは相手も充分理解していると思います」

 

「まぁのぅ、頭ぁ張ってるもんを見てもそれは容易に想像が付くわの」

 

「その上で着任させる艦娘がそっち系(・・・・)の者を選択した場合、こちらの情報を抜くという行動は……逆に自分達の情報を抜かれるリスクを同時に背負うという事にもなります」

 

「カウンター……逆スパイかの」

 

「はい、こちらの拠点に潜入するという環境は、諜報員が供与(・・)という状況での着任と考えると、本人の安全面で言えばこっち側に付く方がメリットが大きい物になりますし、こちらとしても(ぎょ)し易くもあります」

 

「なる程の、確かに出向ではのーて供与という形で送り込むには、色々知っているもんを出した場合それを逆手に取られる危険があるからの」

 

 

 積み上げる様に一つ一つ交わされる言葉、それは老将が問答をしつつも吉野へ現状を確認させ、状況を整理させる為に誘導するという意図で行われていたが、それが進む程に皺の深い顔が力の抜けた物になっていく。

 

 元々吉野から見た染谷という人物との関係性は、大隅という師匠格の更に師匠という物であったが、携わってきた業務は其々専門分野が大きく違っている。

 

 深海棲艦との会戦初期に軍事生命線の支援を重要視して拠点造りに終始した染谷、それとは違い用兵を重視し、広く組織作りに重きを置いた大隅。

 

 そしてその大隅の仕事を支える一端として情報収集を専門として活躍してきた吉野。

 

 

 三代に渡る師弟関係という物はあったが、其々得意とする分野や組織運営は大きく掛け離れている。

 

 

 故に今回の件に代表される防諜的部分は染谷が老婆心を発揮するまでもなく、吉野が既に足場を固めている状況になっていた。

 

 会談に於いて暴走気味であった髭眼帯に一抹の不安を感じていたパチパチパンチヘッドの老躯であったが、その辺りの確認が取れたせいか最後は聞くだけの姿勢になっていった。

 

 

「なので艦娘さんに関しては暫く様子を見つつ、ウチに慣れて貰う為の教育という形で推移していくという感じでいこうかと」

 

「ふむ、良いのではないか、あの嬢ちゃん達は高練度な上にお国事情の違いもあるじゃろうからの、暫くはゆるゆるやればよいわ」

 

「ほな後の問題は第三国系(・・・)って事やなぁ」

 

「今のとこ目立った動きは無いんでしたっけ?」

 

 

 公の場に出るという事もあり、勲章やら認識票でごっちゃりとデコレートしたモスグリーンの上着を着崩した大男は、相変わらず軽い河内弁を回しながら国内の状況を説明しつつ、予定の摺り合わせを始める。

 

 

「ちっと前にここであった騒動のお陰で、突出しとった一団は取り敢えず封じ込めしとる形になっとる」

 

「封じ込め……ですか」

 

「せや、前も言うたけどな、そっち系はもう何代にも渡って日本で生活しとるモンらやからな、思想は違う言うても日本という国と分離出来る状態や無い、せやからそっち系の組織ってのは根絶が不可能になっとると思てくれ言うたよな」

 

「でしたね」

 

「んで長い間同じ日本っちゅー国で生活して、もうこの国から離れられへんのに自分は日本人やない、逆に日本人憎しっちゅうヤバいのが極少数おって、そいつらが危険なんやけど……」

 

「環境じゃなく、血筋を元に思想を持つ者……ですか」

 

「ん、もうそういうのは理屈とちゃうねん、生き方やな、そんなん相手には結局行き着くとこまで行ったらぶつかり合いしか無いし、話し合いなんちゅー暢気なもんは国益を守護する(わし)らは言うてられんから、荒事って判ってても公権でそれをやるしかないんや、でやな」

 

「……今回のウチの状況ではかの国に繋がる、若しくはそういう生き方をしている人達には、当然歓迎せざる状況であると……」

 

「せや、ここは海上拠点やさかいそこそこの安全は確保出来るやろうけど、問題はここと縁深い拠点……」

 

「ああ、ウチかい、なる程ねぇ」

 

 

 河内弁と髭眼帯の会話に眉根を寄せて髭爺が言葉を漏らす。

 

 元々呉鎮守府麾下にあった友ヶ島警備府は、大坂鎮守府の再整備から国内鎮守府へと成った際、管轄する海域を接する関係があって現在大本営麾下、指揮系統は大坂鎮守府管轄という形になっている。

 

 そして唐沢自身生活拠点を友ヶ島に置きつつも、執務は大坂と友ヶ島半々という形で執っている状態であった。

 

 

「友ヶ島警備府は地理的なモンで言うと、陸続きとちゃうから防衛面では安全に見えるけど……」

 

「直近の陸は人があんま住んでねぇからな、何かやるにしても感知し難いし、防衛って事に関しちゃ警備関係はセンサーやカメラしか置いてねぇよ」

 

「で、今回の件で唐沢さんとこもちっとヤバい状況になるかも知れんって事で、ウチから提案出来んのは二つ、基地機能や人員を大坂鎮守府に移すか、警備府周辺の警備を陸軍に移管して貰うか」

 

「警備府を大坂に移しちゃ存在意義が無くなっちまわぁな、んでも陸さんにその負担をして貰うってのはどうなんでぇ?」

 

「ああそれは問題無いですわ、警備だけっちゅー形での人員派遣は無理がありますけど、警備府が持っとる陸側の国有地をウチに借地してもらうっちゅー(てい)でそこに小規模駐屯地を作れば、ほら」

 

「なる程ねぇ、あの辺りはウチのモンらが家庭菜園として利用してるだけだから全然問題はねぇよ?」

 

「なら決まりやな、サブ、その辺りの手続きは任せてもええか?」

 

「承りました、それじゃ設備設置や人員規模なんかの詳細をウチの事務方(じむかた)へ連絡して頂けますか?」

 

 

 こうして対外的な関係を整理しつつ、同時に足場固めを本格的にする為に大坂鎮守府はより陸軍との関係性を深め、大本営麾下としつつも関西の地を根城に、派閥の一つという形で軍内へ立ち位置を見せる事になっていくのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「おいメロン子」

 

「なんでしゅか提督……」

 

 

 色々諸々な調整をする中、大坂鎮守府南端にあるコンテナヤードでは怪訝な表情の髭眼帯は、シリを押さえて涙目の夕張に向かって激オコプンプン状態で質問を投げていた。

 

 

 既にシリペシが行われたと思われるメロン子の頭には赤白ツートンカラーのジェットヘルが装備されており、いつもの制服であったが両手は指出しグローブが装備されているという格好。

 

 そして二人の少し離れた場所ではくちくかんと、何故かそこに混じった長門がキャイキャイと何かを囲んでキラキラ状態という、いつものパティーンが繰り広げられていた。

 

 

「何でまた、提督が秘密裏に購入したバイクを改造したのかちゃんとした理由を言いなさい」

 

「いえそれは……ほら、バイクとか見ちゃうとこう……何と言うかほら、ね?」

 

「今一度言います、提督のバイクを改造した明確な理由を述べなさい」

 

 

 色々な出来事が立て続きに発生し、ストレスマッハの髭眼帯はこっそりと私費を投じて趣味のバイクを購入し、出撃ドックの一部に隠蔽したガレージにそれを隠していた。

 

 元々カート移動が常という敷地の広さに加え、前島とは連絡橋で接続されているという大坂鎮守府ではバイクや車を所有するというのは何ら無理の無い環境と言うか、それが無いと不便という状態にある。

 

 

 そんな環境故車やバイクを所有しているのは吉野だけでは無く、天草ハカセはアヴェンタドールを乗り回していたり、大和はハマーに乗っていたり、時雨や夕立はモトコンポを所有していたりと鎮守府所属の半数程は自分の足を所有している。

 

 そしてこっそりと吉野が購入していたバイクは相変わらずの大型バイク、しかも相当レアとされるZ1000Rというブツであった。

 

 こっそりとそれを持ち込み、いつかツーリングにとこつこつ整備していたカワサキグリーンのそれは、現在くちくかんズの中心で何故か人型のロボとして鬼怒のポーズで立っていた。

 

 

「何故、いつも、提督の、私物を、改造しちゃうの、それも全部ロボと言うのは何故なのか」

 

「いやバイクと言えばロボじゃないですかぁ」

 

「いやその考えはおかしい」

 

「それにロボにしようとするサイズのバイクって、提督のバイクしかないんですよぉ」

 

「サイズ的なアレなら大和君のハマーとか、榛名君のGT-Rとか色々アルデショ!」

 

「提督は私に死ねと言うんですかぁ!」

 

 

 要するに髭眼帯のバイクを狙い撃ちにした訳でなく、消去法によって生贄にされたという経緯が発覚した瞬間であった。

 

 そんな理不尽な理由で選び出されてしまった提督のバイクはカワサキが誇る往年の名車。

 

 1981年、AMAスーパーバイクシリーズでエディ・ローソンがチャンピオンになり、それを記念して乗車KZ1000をモデファイし、市販したというマシンがZ1000R、通称ローソンレプリカと呼ばれるバイクであった。

 

 

 そんなマニアックかつ高価なバイクは今までの夕張ロボシリーズとは一線を画したデザインをしており、色こそカワサキグリーンであったものの、造詣は極めて人型をしており、その操作はメロンが被っているジェットヘルメット脇に装備されたマイクを利用しての音声によって行われる。

 

 

「ほ、ほら、今までと違ってローソンはちゃんとした戦闘力を有しつつも、ちゃんとバイクとして使用する事が出来るんですよ!」

 

「ローソンん?」

 

「はい、ローソンレプリカというバイクに敬意を表し、名称は機動遊撃ロボ、ローソンと名付けました」

 

 

 街のホットステーション的なネーミングがされたロボは、頭に銀色の耳っぽい何かを装備し、無理の無い人型をした形であった。

 

 ロボとしては今までのメロンシリーズとしては確かにデザイン的に人型として完成された、少年のロマンに訴えかける何かを持ったデザインとして仕上がっていた。

 

 

「バイクとしての性能は変形して損なわれるどころか僅かにアップする仕様になっているんです! マシーンローソン! ゴー!」

 

 

 メロンの言葉にガシャガシャと変形しつつ、胸と股間からタイヤを生やしてそれはバイク形態と変形していく、少しタイヤサイズに理不尽的なスケールのプロセスがあった様に見えなくもない変形は滞りなく行われ、それはバイクと呼べる形へと成った。

 

 

「さぁ、これでツーリングにも、お買い物にも利用可能です! どうでしょう!」

 

 

 ドヤ顔のメロンの向こうにはくちくかんズに囲まれたバイクが一台。

 

 しかしロボ状態のデザインを優先したそれがバイクとして変形を完了するという事は、バイクなそれはロボからハンドルとタイヤが生えただけの珍妙なブツというビジュアルという結果を生み出していた。

 

 通常ハンドルの前にあるべきビキニカウルはロボの顔面になっており、運転する者はポジション的にうつぶせ状態のロボのケツに乗って運転する事になる。 

 

 つまりこのローソンに乗って町へお買い物に行くという事は、ロボに跨ってブーンと店先に乗り付けるという事になり、超注目の的と言うか、晒し者になるという危険性を孕む事になる。

 

 

 むしろ風と友達になる為に一人ツーリングに出てしまったり、峠を攻めに行くと、後々巷のライダーの間では"ワインディングからロボ的な何かが疾走してくる"という都市伝説を生み出す可能性も示唆しちゃったりするのであった。

 

 

「おいユウバリンコ」

 

「夕張です、何ですか提督」

 

「何で自分のローレプ(Z1000R)を電人ザ○ーガーにしてしまったの?」

 

「やですね提督、ザボ○ガーじゃなくてストロング○ボーガーですよぉ」

 

「やっぱりそれか!? そのジェットヘルって大門さんの被っちゃってるアレなの!?」

 

「因みに速射○壊銃や、ロケット○ェーンパンチとか、ストロン○バズーカファイヤーも搭載しています」

 

「ちょっ!? そんな物騒な装備載せたまま提督ツーリング行けないんだけど!?」

 

「え~ 提督って銃器の携帯許可書持ってるんですから、別に問題無いと思うんですけど」

 

「いや転倒したら誘爆しちゃって大惨事不可避じゃない!? ねえっ!?」

 

「そこはそれ、例の耐爆スーツ着用なら問題ありませんよ」

 

「周り! 提督無事でも周りの被害!」

 

「なぁ夕張」

 

「……はい? どうしました長門さん」

 

 

 そんな髭眼帯をスルーして、ナガモンがモジモジとメロンに話し掛けてきた。

 

 よく見ると子犬(時津風)や朝潮を始め、現在新人教育真っ最中であった霞や島風もキラキラした状態で列を作っていた。

 

 そんな一団を見て吉野の危険度メーターがグングン上昇していき、それと共に嫌な汗が額を流れ落ちた。

 

 

「その……な、私のバイクも提督のバイクの様に改造する事は可能だろうか?」

 

「えっと長門さんのバイクは確かワルキューレでしたっけ?」

 

「うむ、アメリカンなのだがどうだろうか?」

 

「……ロボとして改修するのも可能ではありますが、アメリカンならいっそマシ○キバーみたいな感じの改修をしても面白いかも知れませんね」

 

「なる程! 流石夕張だ! それだとくちくかん達を乗せてツーリングも可能だな!」

 

「それだけだとロマン成分不足ですから、ブロ○ブースターもオプションとして用意しましょう!」

 

「ちょっと君達何おかしな相談してるの!? マ○ンキバーってナニ? ブロンブー○ターってどこでウイリーしちゃうつもりなの!?」

 

「丁度ロボベースの格納枠にも余裕がありますし、そこにバイクの移動をお願い出来ますか?」

 

「ちょっとねぇ提督の話しを聞いて……ってロボベースぅ? なぁにそれぇ?」

 

「はい? 普段スプーやローソンを格納したり、整備したりする専用施設ですが?」

 

「専用施設う?」

 

 

 怪訝な表情で首を傾げる髭眼帯の前ではメロン子がポッケから取り出したリモコンのボタンをポチリと押す、すると『ンゴゴゴ』という地響きと共にコンテナヤードと施設群の間から建物が地中からせり出してくる。

 

 それは施設と言うより西洋の城をデフォルメしちゃった白亜の城と言うか、毒々しい照明に彩られた、ぶっちゃけラブホというカンジの建物であった。

 

 

「……メロン子……アレは」

 

「はい、以前建造して結局利用されずに放置された艦娘慰安施設、『夜のスナイパー』です」

 

「……提督アレ解体しなさいって言わなかったっけ?」

 

「それがですね、躯体に例の超強化レンガとか、動力に半永久畜電池とか色々と実験的な設備を投入した結果、解体する手間が恐ろしく掛かってしまうという試算が出まして」

 

「……それで?」

 

「色々検討した結果、解体するより地下区画をエレベーター化して隠蔽した方が早いという結論に至りまして、ついでに使用予定が無かったので私の専用研究施設兼ロボの保管場所にと」

 

 

 所々ゴシック調な造りの不自然にファンシーなお城と言うかラブホ的な構造物は、用途に応じて生えたり縮んだりが可能なメロンの専用拠点として改修され、例のスプーやローソンの格納庫にも使用されていたという。

 

 そんなアレを見つつ何故かくちくかんズの目は更に輝きを増すという不思議。

 

 

 彼女達艦娘は受肉して生まれてくる際、生活的な知識と軍事的常識を元から有している状態であるが、それ以外の部分、文化的に発達してきた独特の物や、近年発達してきた娯楽という部分は生まれた後から接し、学んでいく物である。

 

 それはつまり、目の前でロボに無理矢理タイヤをはめ込んだ不細工なバイクであろうと、珍妙にキャッスルしちゃってる建物を見たとしても、それが必要以上にスケールが大きかったり、ロマン成分過多であった場合色んな意味で感性に影響を及ぼしてしまう危険性が存在していた。

 

 メイド服然り、例のパジャマ然り、それはある意味仕方ないという部分もあったが、それは軍務という厳しい管理下に於いて普通は開花しないというのか殆どであった。

 

 

 普通はそんな感性は開花しちゃったりしないのである。

 

 

 そんな色々な要素を搔き立ててしまったメロンテクノロジーは髭眼帯の制止ではどうにもならず、どんどん独自の文化を生み出していくというカオスが定着していくのであった。

 

 

 主に大坂鎮守府を中心として出来上がりつつある派閥内に於いて。

 

 

 




 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 また、拙作に於ける裏の話、今後の展開等はこっそりと活動報告に記載しております、お暇な方はそちらも見て頂けたらと思います。


それではどうか宜しくお願い致します。

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