大本営第二特務課の日常   作:zero-45

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 手直し再掲載分です。

 何かご意見ご要望があればお気軽にどうぞ。


"オネーチャン"として、軍人として、提督として

「サブロー……艦娘は"何"だと思うネ?」

 

 

 金剛は呟く様にその言葉を口から押し出した。

 

 時雨を抱き締めたまま、その視線は榛名へ向いてはいるが、本当に見ている物は恐らくそうでは無い。

 

 

「何、とは?」

 

「そのままの言葉ネ、兵器だとか、人間だとか、提督達の考えはそれぞれバラバラネ、サブローも部下に艦娘を持つなら一応提督ということにナリマス、ワタシはサブローがどう思ってるか知りたいネ」

 

 

 吉野は金剛の背中を見つめている、そしてそれは抱き締められている時雨を正面から見る事にもなり、答える言葉はそのまま時雨に語る様にも見える。

 

 

「学習し、感情を持ち、己の判断で行動する、少なくとも兵器ではありえませんね」

 

「じゃあサブローは艦娘は人間で、家族だ、そんな言葉をこのコ達に言うんデスカ?」

 

「まさか? 個人的な意見ですが、そんな事を言う指揮官はこの世で最も唾棄される類いの輩だと自分は思いますよ?」

 

 

 吉野は明らかに不快な表情を露にする。

 

 

「じゃあサブローはこのコ達の事をどう扱うつもりデス?」

 

「扱いですか? それは兵であり、部下であり、共に戦う戦友ですね、家族を死ぬかも知れない場所へ送り出す事なんて自分には出来ませんよ、そんな事を言う輩は偽善者か、本当にそう思ってるなら狂人としか言い様が無い」

 

「武器や道具として扱うノ?」

 

「武器とは使う者の殺意を形にする道具です、使う者の意思は介在しても使えば常に結果は一つだけです、気分や体調でその結果が変わる、そんな不安定な存在が武器なんてナンセンスですね」

 

「随分ドライな考え方ネ……」

 

「そんなこじ付けや無理な型にはめようとするから軋轢が生まれ、精神が壊れていくんですよ、貴女達は艦娘で、兵だ、違いますか?」

 

「身も蓋も無い言い方ネ」

 

「広義としては貴女達も自分も、軍と云う組織の中では等しく兵であり、駒以外の何物でも無い、書類上は数字で処理され、計算上では只のコストとして計上される、その上で艦娘とは何かと聞かれたなら……」

 

 

 真っ直ぐこちらを見る金剛の目から視線を逸らすでなく、吉野は自分の心の内を隠す事なく打ち明ける。

 

 

「生れ落ちた瞬間には既に個として独立した自我を確立し、喜怒哀楽を持ち、人より優れた身体的特徴を備え、代謝をしない為に肉体的老化とは無縁、人間の上位互換に当たる生命体、それが艦娘だと自分は答えるでしょうね」

 

「人間以上の生命体デスカ、正にバケモノって事デスネ……」

 

「そうです、人より優れているから恐れられ、敬遠される、知っていますか? 人が何かを"化け物"と比喩する時は、醜く、嫌悪する対象をそう呼ぶ時と、己より優れ、手の届かない対等以上の存在に対して畏怖した時に使う二種類の意味があります」

 

「モノは言い様デスネ、そう持ち上げた言い方をしても、必要なら貴方もシネとこのコ達ニ命令するんでショ?」

 

「当然です、自分は軍人です、そして彼女等も軍人です、どうしても必要ならば迷わず死ねと命令を下しますよ」

 

 

 但し……と付け加え、視線を時雨に向け、吉野は言葉を続ける。

 

 

「作戦とは、戦いとは始めた時点でもう八割は決しています、確実に死ぬと判っている作戦に送り出す、そんな状況になっているって事は殆どの場合自分の不手際が招いた結果でしょう、自分の仕事はそうならない様に段取りを進め、調整をする事です」

 

 

 視線は時雨から金剛、そして榛名へと移しながら喉元のマイクに手を添えてこう言った。

 

 

「もし力及ばず、彼女達を死地へ送らなければならなくなった時、その時は当然自分もその責任を取るのが当たり前です、そしてその時、自分が彼女達に最後に掛ける言葉は不甲斐ないですが"死んでこい"では無く"一緒に死んでくれ"になるでしょうね」

 

「……自分のミスで作戦は失敗するって言ってる割には、部下を巻き込んで、一緒に死んでくれなんてトンデモナイ事を言う上官ネ」

 

「そうですね、その時は無能な指揮官の下に就いたのが不幸だったと彼女達には諦めて貰うしかありません」

 

 

 金剛は時雨から手を離す、吉野に背を向けたままなのでその表情を伺う事は出来ない。

 

 傍らに立つ時雨は無言のまま、それでも満足気に微笑みを浮かべると、金剛へ一度頷き吉野の隣へ移動した。

 

 

 金剛は屈んだままでいた姿勢を伸ばし、正対する先を見つめる、そこには自身と同じ白い巫女装束をモチーフとした衣装に身を包んた艦娘がこちらに向っていた。

 

 その艦娘に向って金剛は静かに、自虐的とも悲しみとも取れる表情を露にしながら語り掛ける。

 

 

「だそうデスヨ、ハルナ、貴女の提督は軍至上主義の塊で、極端な現実主義者デス」

 

 

 ハルナと言われた少女は既に(おか)に上がり、射弾観測室へ歩みを進めている。

 

 

「それでも貴女達を艦娘のまま受け入れ、最後は一緒に死んでくれると言ってマス」

 

 

 榛名は射弾観測室の扉を潜り、吉野の前でその歩みを止める。

 

 その眼は吉野を真っ直ぐに捕らえており、色は濁り切っている、生気は僅かばかり感じられるが其処には個の意思は微塵も感じられず、光を反射するだけの黒に近い何を詰めたガラス玉の様だ。

 

 

「ハルナはココで建造されました…… ただ"幼体"として生まれてきた為に、暫くは育成艦として管理されていましタ」

 

 

 

 "幼体"─────

 

 大本営にある艦娘建造ドック、その四機の装置は艦娘を建造する為に設置された設備であり、深海凄艦との戦いに駆り出された初期の艦娘はここから多く産み出された。

 

 時間経過と共に戦線は拡大し、主戦場は外洋へ移り、建造自体は前線に近い鎮守府が行う事が多くなった為、現在では大本営の建造設備は余り使用されていない。

 

 建造ドック自体の造りや規模はどの場所の物も等しく同じであるが、大本営にある建造ドック、それも史上初に作られた一番ドックだけは何故か他のドックとは違う建造結果を生み出す時がある。

 

 

 通常艦娘が建造された場合、艦種や種別毎にテンプレートと言われる決まった形でその姿を現す。

 

 改装以外には変化しないと言われる体躯、意思疎通を交わせる程の言語力、成人レベルに近い思考力、一般生活には困らない程度の知識と理解力、その全てを備え、凡そ生命体としては完成に近い形でその存在は生まれてくる。

 

 しかし大本営一番ドックからは稀にそれ等の水準に満たない"子供"が生まれて来る場合がある。

 

 駆逐艦と比べても尚幼い体、つたない言語、未熟な思考に合理性を欠く行動。

 

 凡そ一ヶ月前後でテンプレートとして認知される程には成長するが、その間は艦娘の身体能力を有した只の子供。

 

 その子供を大本営では幼体と呼び、成長する迄の僅かな期間は大本営に所属する姉妹艦、若しくは教育に適した艦娘に預けられる。

 

 

「良く笑い、すぐ泣いて、多少お転婆が過ぎましたがどこにでも居る可愛い子供だったネ」

 

 

 そう言う金剛は吉野の前に立つ榛名を見詰めつつ、昔の記憶を言葉に乗せる。

 

 

「そのハルナですが、ある日ちょっと目を離した隙に一人で部屋を抜け出した時があったんですケド、その時立ち入り規制がされていタ区画に迷い込んでしまいまシテ、ちょっとしたトラブルに巻き込まれマシタ」

 

 

 いつの間にか射弾観測室の前には制御室から出てきた夕張の姿が見える。

 

 

「その日の夕方ハルナは全身血まみれの状態でバリー(夕張)に連れられて戻ってきましタ、体に傷はありませんでしたが…… あの時はもう心臓が口から飛び出るかと思いましたヨ」

 

 

 そう言われた夕張は少し考えた風を見せたが、すぐ嗚呼と手を叩いて榛名を指差した。

 

 

「……えっ!? あの時のオチビちゃん、榛名さんだったの!?」

 

「デース、そう考えればここに居るのはシグシグ以外全員関係者って事にナリマスネー」

 

「……はい?」

 

「ほら! 武蔵さんがゴーイチ(試製51連装砲)暴発させた時、見学に来てた三郎さん迷子だってちっちゃいコ連れてたじゃない? あのコが……」

 

 

 夕張が榛名に向けた指を啄木鳥(きつつき)の様に忙しなく前後する。

 

 

「んんんん?」

 

 

 夕張の言う"武蔵の暴発事故"は覚えている、当時の吉野は特務課内ではまだ駆け出しのルーキーで、一人で仕事を任せて貰えてはいたものの、扱いはパシリに毛が生えた程度、周りからも"丁稚"と呼ばれていた。

 

 その駆け出しの丁稚がたまたま手掛けた案件の内、辺境部隊の間で行われていた物資の違法横流しの特定の為押さえた物証の中に、偶々廃棄されるハズであった試製51連装砲の図面が紛れ込んでいた。

 

 大型の新規装備と云う機密書類と言えば聞こえはいいが、廃棄される寸前であったその図面は精度に欠け、とても装備として実装される程の水準では無かった為、証拠として使われた後は資料として倉庫の奥に眠るか、再び廃棄される運命にあった。

 

 

 しかしその紙切れは廃棄されずに日の目を見る事になる。

 

 その不完全な図面を形にし、装備として運用しようとした艦隊かあったからだ。

 

 

 その艦隊とは当時遅々として進まない南方海域の攻略の為、大本営から一時的に呉鎮守府へ送り込まれていた大隅巌の艦隊である。

 

 

 南方海域と云えば空母や潜水艦を従えたレ級が入り組んだ潮流の先に居座り、沸いてくるザコですらどれもこれもflagshipという悪夢の様な海域だった。

 

大隅率いる呉第一艦隊はザコを蹴散らし、最深部へ攻め入り、幾度か相見えてはみたものの、対空と対潜に随伴の戦力を振り分けなければいけないせいで、肝心のレ級を落とすには一手足りないと云う一進一退を繰り返していた。

 

 鳴り物入りで投入された戦力、しかし蓋を開けてみれば惨敗とは行かぬまでも、僅かばかり及ばぬ戦果に艦隊司令の大隅は元より旗艦であった武蔵の心は焦れに焦れていた。

 

 そんな折に自分が子飼いしていた丁稚がどこからか拾ってきた 〔戦艦用新型大口径砲〕 の図面、僅かに届かぬ戦力を埋める為リスクと戦果を秤に掛けた結果、図面の装備を形にする作業が行われる事になった。

 

 

 限られた時間の中、碌なテストも行われず組み立てられたソレ(試製51連装砲)は砲撃試験の為大本営の兵装調整用試射場へ持ち込まれる。

 

 そんな無理に無茶を重ねて造られた兵器が引き起こす結果は火を見るより明らかだった。

 

 

 

 その時自分の見つけた図面が実用に耐えない物だと云う評価を受けていたのを知っていた吉野は、無理を押して雑務を引き受けると云う体でその試験に同行させて貰っていた。

 

 筋から言えばその新装備が役に立とうが立つまいが、吉野に責任は一切無い、しかしそれでも自分が関わった事から始まったこの一連の出来事を無関係と割り切るにはまだ吉野は若過ぎた。

 

 

 そして迎えた砲撃試験は、戦艦武蔵を(おか)で轟沈一歩手前迄追い込む事態を引き起こす。

 

 

 吉野は当時の惨状を思い出し、苦々しい表情で辺りに視線を巡らせる。

 

 今吉野等が居るこの場所は、正にあの時試製51連装砲の砲撃試験を行った場所であった。

 

 当時の様子を思い浮かべる、確かに忘れられない出来事ではあったが、その"惨事"ばかりに思いがいき、自分が連れていたという"迷子"と云う言葉に辿りつかない。

 

 

「あの事件の後すぐにハルナは成体になりまシタけど、ワタシ達とはチョット違う艦娘になってたネ、普段は優しくて思いやりがある明るいコだっタけど、負けん気が異常に強くテ、普段からムサシが残していった46cm砲を使っていましタ」

 

「うわぁ…… 最初から大和砲(46三連装砲)使ってたんだ……」

 

(おか)の上では"他のハルナ"とそんなに変わらないコだったヨ、でも戦場に居る時の"このコ"はいつも思い詰めた顔をして戦ってマシタ、まるで何かに追い立てられるみたいに」

 

 

 その艤装には本来搭載不可とされていた主砲を背負い、取り憑かれたかの如く戦場で砲火を放ち、歪な自分を戦場で晒して、それでも欲した物は何だったか?

 

 

「ハルナは"ムサシの様になりたい"、その為に強くなりたいと口癖の様に言ってたネ」

 

 

 金剛型としては異質な道を辿り始めた艦娘は強さを求め、その目標を戦艦武蔵を超える事としていた。

 

 

「……皆が知っての通りハルナは武蔵と演習をして勝ちましタ、多少幸運に救われたな面もありましたが、その勝ちを引き寄せたのは間違い無く、それまでハルナが重ねてきた努力と執念が生んだ結果ネ」

 

 

 

 金剛は榛名の艤装に載せられた、無骨で巨大な砲塔を見詰める。

 

 

 

「周りではムサシが手を抜いていただとか、南方海域での疲れで本領を発揮出来なかったとか言ってましたケド、二人は実力を出し切り、正々堂々勝負をしたとワタシは思いマス、その証拠にムサシは演習の後、 「次に()る時は互いに同じ条件で相見える事を願う」 と言って自分の使っていた装備をハルナに贈ってきましタ」

 

 

 

 その試製51連装砲の砲身には 〔乾坤一擲(けんこんいってき) 大和型弐番艦戦艦武蔵入魂〕 の掠れた文字が刻まれていた、文字通り魂を削り、使えるまでに仕上げ、死線を共に潜り抜けてきたソレ(51連装砲)を相手に贈ると云うのは、戦艦武蔵が榛名に対してどう云う想いを抱いたかと察するにしては余りある証ではないだろうか。

 

 

 

「ハルナが目標だったムサシに勝った事をワタシ達姉妹は喜んだネ、勝負に勝った事もそうでしたが、これでもう無茶な事をしなくなる、明るくて優しいハルナが戻ってくると思ってましたから、……でもそうはならなかったネ」

 

「……と言うと?」

 

「ハルナはムサシとの勝負の後暫くは大人しかったデス、でも暫くすると前よりも戦闘にのめり込む様になっていったネ……」

 

 

 金剛が見る榛名は相変わらず無言で、感情の抜け落ちた人形の様な姿を晒したままだ。

 

 

「無茶自体はそれまでと変わらなかったけど、榛名自身何故そんなに焦りがあるのか自分でも判らないと言ってました」

 

「戦闘依存症?……」

 

 

 夕張が悲壮な表情で言う"戦闘依存症"、戦いが常である艦娘が、己の存在意義を強く感じる戦場に長く身を置き過ぎた結果、それ以外の場所では自我を確立出来なくなり、精神的に不安定になる艦娘特有のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種。

 

 今の榛名は見た目確かに戦闘依存症に近い状態にも見える。

 

 

「どうなんでしょうネ…… それを確かめる前にハルナは新海域防衛の為、戦力再編成の召集に応じて前線へ行きましたから……」

 

「呉に出向していた第一艦隊が大本営に再編成された辺りですか……」

 

「デース、それから暫くハ手紙や電文でハルナとは連絡を取り合っていましたが、徐々に返事も少なくなって、ブインに着任した頃にはまったく返事が来なくなりましタ。」

 

「金剛さんはそれまで一度も榛名さんと会ってなかったの?」

 

「Yes、ワタシは"大本営横須賀鎮守府棟第一艦隊旗艦"デス、ココを守る責任がありマス、ハルナも任地では第一艦隊旗艦をしてると聞いてました、お互い任地を離れる事は出来ません」

 

 

 時雨の問いに、金剛は静かに首を横に振り、悲し気な表情でありながらもきっぱりとそう答えた。

 

 

「で、やっと久し振りに会えた榛名君は以前とは大分違う感じになっていたと……」

 

「違うなんて次元じゃないデス、何を言っても返事は返ってくるけど、全然感情が篭ってないネ」

 

「ですか」

 

「"あの"ムサシよりも強く、自分の感情も持たない、今のハルナは前戦で戦う指揮官からすればとても都合のいい艦娘だと思うヨ」

 

「そうでしょうねぇ……」

 

「……でも、私の自慢の妹は人形なんかじゃないネ、今日まで何があったか知らないけど、今のままのハルナを道具として扱う指揮官の下に就ける訳にはいかないネ」

 

「自分に預けるのは反対だと?」

 

「"味方の中の敵"をどうにかするのが今までサブローのしてきた仕事ネ、切り捨てる事に長けていないと出来ない仕事ヨ、友人として付き合えても妹を預ける指揮官としては一番信用出来ない部類の人間ネ」

 

「そう言われてしまうと自分としては何も反論は出来ないのが辛い処ですね……」

 

「シグレの事情も少しだけですケド、ブッキー(吹雪)に聞いてはいました、その上でさっきシグレが言おうとした"死を匂わせる言葉"は、シグレの立場や心につけ込んで、サブローが自分の道具として使うつもりで誘導してる風に見えました」

 

「ある意味それは間違ってはいないと──── 」

 

「でも──── 」

 

 

 吉野の言葉に被せる様に金剛が言葉を重ねる、その表情はたった今吐き出した苦言とは裏腹に、とても穏やかな相を表に滲ませている。

 

 

「でも、サブローは何かあればこのコ達と一緒に死んでくれるとイイマシタ、ワタシ達艦娘は別に多くは望みません、ワタシ達を在るが儘に受け入れて貰えるなら、傍に居てくれるならそれだけで命を掛けられマス」

 

「自分が言ったのは心構えです、実際そうなった時にそんな行動が出来るかどうかは保障できません」

 

「貴方は自分の感情を殺し、身内でも仕事なら迷う事無く排除する事ができる"軍の(いぬ)"デス、だから仕事に関する嘘は絶対言わないネ、もし言えない事なら嘘なんか吐かずにちゃんと"言えない"ってイイマス」

 

「それは当たり前の事でしょう?」

 

「それは違うネ、サブローは自分の立場が悪くなる事だろうと"自分の信念(仕事)に関する事で嘘は吐かない"ネ、そしてワタシが知っている〔吉野三郎〕という"友人"は、出来ない事は口にはしない臆病者デス、それだけは間違いはアリマセン」

 

「褒められてるんだか貶されてるんだか……」

 

「……今のワタシはハルナの傍に居てあげられる事が出来ないし、このコが背負ってる物を一緒に支えてあげる事が出来ないネ、……サブロー、勝手なお願いだと思いますけど、このコが探している何かを一緒に探してあげてほしいネ」

 

「探し物ですか…… あの時ここで起こった事故に何か関係があるなら、自分が一緒に探してみる価値はありそうですけど……」

 

「もしそれが見付からなかったとしても別に構わないネ、ただその時はこのコを、ハルナを"戦艦榛名"として傍に置いてあげて欲しいデス。」

 

「……」

 

「ワタシ達は寿命で死ぬ事は無い、だから終わる場所は海の上しかないネ、穏やかな死が望めないならせめて納得いく想いか、理由を持たせてあげてクダサイ。」

 

「自分も人の事言えた義理じゃありませんが、金剛さんも大概ドライですね」

 

「ワタシは金剛型戦艦ネームシップであり、戦艦榛名のオネーチャンデス、大本営横須賀鎮守府棟第一艦隊旗艦は、ワタシの名前と同じ金剛石(ダイアモンド)の様な砕けない心を持ってないと勤まらないネ!」

 

 

 敢えて自身の役職を最後に言う事で無理やり心を内へ押し込んだ金剛は、それでも最後は笑ってみせた。

 

 恐らく最後の時を迎える時であってもこの女性は今と同じく笑ってみせるだろう、そう思わせる程の様を見た吉野は静かに溜息を吐き、こう言うのであった。

 

 

「ご希望に添えるかどうか判りませんが、やれるだけ、やってみましょうか。」

 

 

 




 再掲載に伴いサブタイトルも変更しております。

 誤字脱字あるかも知れません、チェックはしていますが、もしその辺り確認された方は、お手数で無ければお知らせ下さい。

 どうか宜しくお願い致します。

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