やっぱりこの場所は入れないとですよね!!
※第6話の続きとなっております。
では、どうぞ!!
右腕を必死に押さえ、家の扉を押し開ける。
『な!?いきなりなんだ!?』
中には人がいた。
これで助かる……ッ!!
血の涙とはまた違う何かがこぼれ落ちる。
『お、おまっ……随分とやられてるじゃねえか!!ま、待ってろ!!え、えっと応急処置でって、右手が……ッ!!それによく見たらこの武器ってアリスの……え、じゃあこれ……』
人影が何かをぶつぶつ言っている。声からして女の子だろうか?くそッ、涙と血で前が良く見えんッ……兎に角、兎に角事情を説明しないと……。
『いやいやそんな訳ないか。大丈夫か?もうすぐ血が止まるからな?後は……一応魔法以外でも止血はしておいたよさそうだな。武器は……ちゃんと治療できる状態じゃないと抜くのは危ないか……って、どうしんだ?口をパクパクさせて』
嘘……うそだろ?何で声が出ないんだよッ!!チクショウ!!どうにか、どうにかして伝えないとッ!!アイツが、アイツが来る……ッ!!
『なにか伝えたいのか?』
うっすらと視界に映るその姿に安堵を覚えた。心がスーッと溶けていくかのように―――
■□■□
『魔理沙!?ここに松が!!男の人が来なかった!?って、酷い臭いねッ。魔理沙!!いないの!?松!!いるなら出てきて!!……………………』
声が響く。その度に体が震える。最早ただの直感でしかなかった。とてつもなく嫌な予感がした。まるで体全体をねっとりと舐められているような感覚。気が付けば目の前の誰かを捕まえ、扉の影に隠れるように小さく踞った。
誰かの口を左手で押さえ、暴れないでくれッお願いだからッと必死に祈る。少しの間静かな空間が生まれ、そしてアイツが入ってきた。
扉が壁となり姿は見えない。だが、部屋の中をコッコッコッと忙しなく歩く音が永遠にも感じられる程に長く続いている。
額から汗が流れる。ポタポタと、その歩く音と共に。汗が流れ、傷口へと入り込むと体全身が焼かれているようのな錯覚に陥る。必死に口を噛み締め痛みを我慢する。早くどっかに行ってくれッ!!頼む……ッ、頼む……ッ。
『…………ほんとうニいないミタイネ』
不意にそんな声が聞こえた。
目の前の扉がゆっくりと閉まっていく。そして、視界が開かれる。
アイツは居なかった。
助かったんだ。そう理解したのは窓からうっすら見える人影が森の奥へと消えるのが見えてから。
は……はは……たすかった…………たすかったん……………だ…………………………ああ……………なんだ、か………さ、む…………い………………
ドサッ
『―――!!』
■□■□
「おい!!大丈夫か!?くそッ一体何がどうなってんだよ!!?」
魔法薬の調合をしてたらいきなり扉が開いた。血塗れで、目からは血が流れ、肩にはアリスの武器が、そして右手が無い男が扉を開いた。つまりは訪問者。そしてその後、アリスが入ってきた。男は見えていたか分からないが、私は見えていた。扉の隙間から、私の友人であるアリスの姿が。
その服には血がこびりついていた。近くをふよふよ飛んでいる人形も真っ赤に染まっていた。
最初はその姿に驚いた。しかし、その様子はとても切羽詰まった、焦っている様子だった。私は何かしらのすれ違いが合ったのだろう。そう考えた。しかし、部屋全体を見回したアリスは、打って変わって冷静、苛つき、疑問等といった感情が溢れ出していた。そして、忙しなく部屋を漁って行った後、アリスは外に出ていった。
「くそッ……マジで何があったんだ?咄嗟に庇ったが……」
ああもう!!と頭を乱雑に掻きむしり情報を整理しようとするも、思考は複雑に絡み合った糸が如くほどけることはない。むしろ、こんな事に時間を割くくらいならこの男を早く医者に連れていかないと!!
床に倒れている男を魔法で持ち上げる。出来るだけ慎重に、かつ迅速に。そして、愛用の箒を手に取り外へ。そのまま空高く飛び上がった。
目指すは竹林。幻想郷随一の医学の持ち主八意永琳にこの男を診せるためだ。しかし一つ問題がある。彼女が住む永遠亭にどうやってたどり着くか。
「なんだよな……。妹紅を見付けられれば良いんだが……」
隣に浮かばせている男の首筋に手を当ててみる。
トクンットクンッとゾッとするような肌の冷たさの中に弱々しく血が流れているのが感じ取れた。
「見付けられれば確実に助けれる……が、見つけられなかったら……」
『死』
たった一文字。その一文字が心を締め付けた。
私はまた誰の役にも立てないのか?と。
「……嫌だ……そんなのは、絶対に、イヤだ!!お前は絶対に助けてみせる!!アリスの事を聞かなくちゃいけないんだからな!!」
最後にそれらしい理由を、逃げ道を作った。相変わらず私は弱い。もし、助けると誓った手前助けられなかったら……死なせてしまったら……。
相変わらず私は弱い。それで、何度も何度も何度も友人達に迷惑を掛けてきたのにッ!!
頬を冷たい何かが流れ落ちる。
それと同時に、強引に進行方向を切り替えた。
まるで、逃げるかのように。深く、深く、帽子をかぶり直しす。まるで何かを隠すかのように。頬を流れる感情の塊を忘れるかのように……。
■□■□
紅い城
なにも知らぬものが見たら十中八九そう答えるであろう城。
大きな湖の孤島にそびえ立つ城は、目が痛くなるほどに紅く、かつ、どこか目を奪われるほどに美しい。
その紅い城の名は『紅魔館』。悪魔が住まう城である。
■□■□
どれ程だろうか?何時もなら十分と掛からない空中移動が、これほどまでに永く感じられたのは。徐々に徐々に大きくなっていく紅魔館の姿がとても煩わしい。いっそのこと一気に加速したいところだがあまり負担を掛ける訳にはいけない。
「もう少し……ッ!!もう少しだけ持ってくれッ!!」
紅魔館まで残り一分足らず。近づくにつれ強くなる敵意を無視して私は紅魔館の門を駆け抜けた。
そのまま玄関を蹴破り、地下を目指す。右に曲がり、左に曲がり、階段を降り、扉をぶち破る。
「なっ!?」
その瞬間私の体は止まった。目の前には紫色の服を着た友人の姿が。
『こんな夜中にまで盗みに来るなんて……とんだひねくれた根性ね。魔理沙?』
彼女の名前は『パチュリー・ノーレッジ』。紅魔館の大図書館を管理する魔女。そして、私が今現在頼りにしている人物でもある。
「待ってくれ!!今回は違うんだ!!コイツを、コイツを助けてやってくれ!!」
「コイツ?ああ、そっちの人間?まあ、助けられないこともないけど……随分必死なのね。もしかしげ恋煩いと言うものかしら?興味深いわね」
「私はコイツに聞かなきゃならない事があるんだ!!たのむ……ッ!!」
「…………分かったわ。貴方がここから盗んでいった本を全部返してくれるのならね」
「本当か!?」
「あら意外、もう少し渋ると思ったのだけれど。それじゃあ直しておくからさっさと本を持ってきなさい」
私はいつの間にか動くようになっていた体を勢いよく反転し大図書館を後にした。
その頃には、私のなかにあの男を助けれた。私は人の役にたてたんだ!!私は足手まといなんかじゃない!!と、自分勝手な感情だけが私のなかを支配していた。
□■□■
「本当に行った……まあ、約束を守ってくれると信じて修理に取り掛かりましょうか。魔理沙がアナタにご乱心な訳も聞いてみたいしね」
お読みいただき有難うございます!!
安定の紅魔館。話の構成を考えやすいからしょうがないよね!!
さて……誰を落とそうか(ゲス顔)
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
手始めに……
では、また次回~