歪んだ愛をアナタに(完結)   作:ちゃるもん

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投稿です!!

さあ、救いの時間だ!!

では、どうぞ!!


第6話 一筋の光

 一ヶ月と少しぶりの外に多少の感銘、何も言わずに出てきてしまったと言う罪悪感等が入り交じり、訳がわからない感情を生み出している。

 外へと続いているのであろう街道は真夜中だと言うのに月明かりで問題なく歩けた。

 アリス亭を出て早十分。もうそろそろ外に出られるのではないだろうか?と思いながら進んでいると、前から見慣れた人物が走って来た。

 

 俺は反射的に上げようとした手を止めた。

 

 挨拶も無しに出ていこうとした屑が家主に対して気軽に挨拶をしていいものなのか?

 と言う自問自答からから、友人のように手を上げて挨拶するのが躊躇われた。

 

 俺がそんな事を考えていると、その人影は、アリスさんは俺の目の前まで迫っていた。

 

「あ、えっと……」

「何をしてるのかしラ?」

「その……」

「何をしてルノカしら?言えないコトナの?ネエ?」

「うぐッ……アリス、さん……」

 

 アリスさんが伸ばした腕は俺の首を掴み、宙へと吊り上げた。

 息が出来ない苦しいクルシイくるしい。酸素を取り込もうと口をパクパクと何度も開くが、一向に肺まで酸素は届かない。手先足先から徐々に感覚が無くなっていき、目の前が赤く点滅する。

 

『だいじょウブよ松。直ぐニ直してアゲルカラね』

 

 白と黒と赤とが点滅を続ける世界でアリスさんはそう言った。

 まるで死んでも生き返らせてやろうと言うかが如く、淡々と、恍惚に、そういい放った。

 感覚が既にない体がぶるりッと震える。

 本能が逃げろッ!!と言っているのが分かった。

 

 必死にもがく。感覚がない体を必死に動かしもがき続ける。すると、足先に何かがぶつかったと同時に地面へと叩き付けられる。

 

「がはぁ!!はぁはぁ……」

 

 唐突に体内へと侵入してきた酸素は口を鼻を通り、肺に溜まり、体全体へと流れていく。赤、黒、白と点滅していた視界も正常に元の景色を写し、目の前には木を背に横たわるアリスさんの姿も写った。恐らくがむしゃらに振った足がアリスさんにぶつっかって、そのまま後ろの木に後頭部でも強打したのだろう。多分死んではいはず……。死んで……ないよ、な?

 

 ピクリとも動かないその姿に、やってしまったのか?と不安を覚える。いや、気絶しているだけだと言い聞かせるも、不安は増していく一方。

 どうする近付いて安否を確認したほうが良いのではないか?だが、こっちも殺されかけた身……いや、だが……。そう、そうだ……死んでないのを確認して逃げればいい……。それなら大丈夫……だいじょうぶ……。

 

 そろりそろりと近付き、アリスさんの肩を揺らす……反応はない。身体中の血の気がサーッと引いていく。少し震える手で右手首を掴み、脈を確かめてみるとドクンッドクンッと力強く脈打っていた。生きていた事への安心に体から力が抜ける。だが、ここで起きてまたさっきと同じような事になったら……。つい先ほどの恐怖が蘇り、早く逃げようとアリスさんの右手首から手を離した―――

 

 

―――ガシッ!!

 

 

「ひッ!!」

『ねエ……ドコにいくのォー?』

 

 耳にまとわりつくようなネットりとした声が静かに届く。

 逃げようとしても、逃げられない。さっきまでアリスさんの手首を掴んでいた腕が、今度は逆に自分の手首掴まれたからだ。逃れようと腕を引っ張ってもまるで石像を相手にしているかのようにビクともしない。

 

「くそッ!!くそッ!!クソッ!!」

 

 目から止め止めなく涙が溢れてくる。兎に角逃げないと、逃げないとッ!!そんな考えだけが渦巻いている。

 

『ネエ……ドコにいくのカ聞いてるデショ?ねェ』

 

 

ビキビキビキッ!!

 

 

「うぎゃぁああああアアアアああッ!!アッ!!アアァ!!はな、はなぜェエ!!」

 

 

 握り絞められた手首から嫌な音が鳴り響く。

 どれだけ泣き叫ぼうとも、どれだけ逃れようと引っ張っても、何も意味をなさず、そして―――

 

 

―――グブゥチャ

 

 

 その呆気ない音と共に握りしめられ、腕と手首が離れた。

 急に訪れた解放に、尻餅をつく。何が起きたのかが理解できない。したくない。

 右腕の先には本来有るべきはずの五本の指も、手のひらも、手の甲も何も存在していない。手首から先が消え、手首が繋がっていなければならない場所からは紅い液体が湧き水のように吹き出している。

 では、手首から先は何処に行ってしまったのか。目の前にはアリスさんしかいない。そして、アリスさんはその両手に赤黒い妙に生々しい『ナニか』を大切そうに抱えていた。

 しかし現実はあまりにも非常で、残酷で、残忍で、目を反らす事すらも許してはくれなかった。

 

「ぁ……ぁああぁ……あぁぁぁああぁぁぁっぁぉあぁっぁぁああ!???!!!!?!」

 

 もはや痛みですらない激痛に声を荒げる。

 しかし、そんな中ですらハッキリと聞こえる一つの声があった。

 

『アは……アはアはあハアはアハアはアハアはアハアハあハアハアハあハアハアはアハアはアハアハあハアハアハあアハあハアハアハアはアはあははあはハハははアアハハハハはあはは―――』

 

 その笑い声とも、奇声とも取れる声に体が震え、気付けば背を向けて走っていた。痛みも忘れ、ただがむしゃらに。耳にまとわりつくようなあの声から逃げるように、ただがむしゃらに走り続けた。

 

『そとはァ……アブないのヨォ?』

「!?」

 

 唐突に目の前に現れた人形。その人形の手には一本の武器が握り締められていた。

 月の明かりを艶かしく反射するソレは一本の針、ランスと呼ばれるものであった。ランスを持った人形はゆっくりと、正確に右肩を狙い突進。少しその針が刺さった所で急停止。そして、ゆっくりと俺の肩を抉り始めた。力を入れる度に血が吹き出し、人形の青い服を赤く塗りあげていく。

 声なんて出なかった。いや、出せなかった。まるで口を縫い合わされたように。

 目からは紅い涙が流れた。声が出せない代わりとなって、紅い涙が。

 

『んッ―――!!』

 

 そこから何が起きたカなんて分からない。

 人形が地面に落ち、後ろからはさっきまでとは違う荒げる声が聞こえた。

 訳が分からなかった。けれど、逃げられると希望を見いだした。真っ暗闇のなかで一筋の光を見た。

 

 走った、走った、走った走った走った走った走った走った走った走った走った走った走った走った

 

 そして、見つけた。

 淡い光を放つ建物を。

 あの家とは明らかに違う建物を―――――――

 

 




お読みいただき有難うございます!!

……なんか物足りなく感じるちゃるもんは大事なネジをなん十本と忘れているのだろう……(悟り)

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

これゾン読む→ユーちゃんかわええ→書きたいなぁ→東方にぶちこんだの書いてみるか!!
予定は未定

では、また次回~

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