歪んだ愛をアナタに(完結)   作:ちゃるもん

52 / 55
投稿です。

フランとの別れです。

では、どうぞ。


第49話 言い聞かせながら

階段を降りた先には一つの扉。

その扉を開く前に目を擦る。こんな顔を見せたら心配させてしまう。

 

何度か目元を擦り、もう大丈夫だろうと扉をノックする。

 

ココっン

 

手が震えていたのか、ノックの音が二重になって響く。

咄嗟に腕を引き、右手で抑え込む。

 

「はーい?だれー?」

 

ガチャっと扉が開き、その奥から見慣れた顔が出てくる。

 

「あ!!おじさん!!」

 

フランドールが抱き着いてきたので、それを優しく受け入れる。

 

「久しぶり、フランドール」

「うん!!取り敢えず入って入って」

 

フランドールに後押しされる形で部屋へと入っていく。部屋の中は綺麗なもの……でもなく、多くの本が散乱していた。

 

「私ね、知ってるよ。パチュリーと、お姉様が話してるの聞いたの」

 

唐突の告白。

ドクン。心臓が跳ねた。息がつまり、呼吸が出来ない。

 

「だから、勉強しようって思った。最初は、おじさんがいなくならなくても済むように、強くなろうって。そうすれば、おじさんも安心して此処で暮らせるだろうって……そう……思ってた……」

 

フランドールの瞳には涙が溜まり今にも零れ落ちそうで……でも、俺は何も出来なかった。

 

「魔法もいっぱい覚えたよ、治すのも、壊すのも、人がどんな生き物なのかも、悪魔との契約も……今ならおじさんを守り切れる。絶対に。でも、ダメ、なんだよね……おじさんは、それじゃぁ……辛いんだよね。私の自己満足だけが、残るんだけなんだよね……」

「……ごめん……ごめんな……」

 

目尻に溜まった涙が零れ初め、スカートに染みを作り消えていく。

 

「おじさんは……悪くないよ。勝手に私が依存していただけだから……おじさん、は……悪くないッ、から……う、ううッ」

 

目尻に溜まった涙は遂に決壊し、フランドールは嗚咽を出しながら泣き出してしまった。

それなのに、俺はどうすればいいのか分からなかった。

だから、そのフランドールの体を優しく抱き締めた。

 

「うぁぁぁ!!」

 

泣きじゃくるフランドールの頭を撫でてやることしか、俺には出来なかった。

 

 

□■□■

 

 

「……ありがとう、おじさん」

 

泣き止んだフランドールが離れていく。目は真っ赤に晴れていた。

 

「……あーあ、本当だったらおじさんが泣いてたみたいだから、慰めようと思ってたのになー」

 

フランドールは陽気な声を出しながら、くるりと回り、背を向けた。

 

「バレてたか」

 

だから、俺も陽気な声で返事を返した。

 

「バレてるよ。だって。おじさんとは繋がってるんだから。悪魔との契約でね。これを通して、私はおじさんが何を考えてるのかが分かるようになった。おじさん……女の子が泣いたからって戸惑ってるだけだとダメだよ?そういう時は優しく抱きしめて、頭を撫でてあげるのが一つの正解。おじさん、行動は正しいのに心の中では戸惑ってばかりなんだもん」

「あれで良かったのか……俺の苦労は一体……」

 

陽気な声に、陽気な声で返す。

 

「でも、これも今日でおしまい。おじさんとの契約は、今日でおしまい」

 

震えた陽気な声が耳へと届く。

 

「さようなら、おじさん。私がこうしていられるのは、おじさんが。あの時、私の手を握ってくれたから。そうして、私が今も今までも、そして、これからも……進んでいけるのは、おじさんが私を救ってくれたから。だから、本当にありがとう。さようなら、おじさん」

 

フランドールと、俺の間に現れた光の糸が消滅した。恐らく、今のが俺とフランドールを繋いでいた契約なのだろう。

 

「……フランドール。君と会えて、君を救えて、今、本当に良かったと思える。俺と出会ってくれて、本当にありがとう。どうか、これからも、俺の代わりに進んでくれ。ありがとう、さようなら」

 

背を向け、部屋から去る。後ろから聞こえる小さな声に振り返るなと、振り返るのは、フランドールを侮辱する行為だと。

 

 

 

 

 

『あ…………うぁ……おじさん……おじさん…………いやだ……おじさん……そばに、いてよぉ…………ぁ…………ぁぁ…………』

 

 

 

 

 

そう、自分に言い聞かせながら。

 

 




お読みいただき有難うございます。

契約は両者が了承している状況ですので、簡単に消すことが出来ました。
恐らく、フランからすれば、この契約は消えて欲しくなかったでしょうね。消えなかったらそれは……

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

アンケート結果が全部同数になってしもうた。どうしましょう……

では、また次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。