パチュリーと小悪魔編
では、どうぞ。
レミリアさんの部屋を後にして、大図書館、つまりはパチュリーさんたちの所へとやって来ていた。
彼女達には特に何かを借りたわけでもないが、色々と良くしてもらっているのは事実だ。だから、お礼の一つでも言わなければ俺の気が収まらない。
大図書館の廊下を真っ直ぐと進み、パチュリーさんの居るであろう場所まで進んで行く。
本棚達に囲まれるように開けた場所。その中央にぽつんと一台の机。その前に立って本を取っかえ引っ変えしながらものすごいスピードで読んでいる一人の女性。パチュリーさんだ。
パチュリーさんは俺の視線に気付いたのか、俺に手招きをした。
「いらしっしゃい松。今日はどうしたの?」
パチュリーさんは目に掛けていた眼鏡を外しニコリと微笑んだ。
「あ……ちょ、ちょっと顔を見せに」
「別に隠さなくてもいいわよ。レミィから聞いてるから」
「そうですか……」
「ああ、でも、美鈴とフランには話してないわ。フランは耐えられないでしょうし、美鈴は実力行使に出そうだしね」
「気を使わせてしまってすいません。ありがとうございます」
いいのよ。と言ってパチュリーさんは椅子に座った。
「私から言えることなんてほとんど無いわ。どうせレミィが殆ど言ってるだろうから」
椅子に座ったパチュリーさんは手元の水晶玉を弄ぶ。
「ただ、私はあなたの事を結構気に入っていたのよ?昔の咲夜を見ているような……なんて言うのかしらね?保護欲?そんなものを感じていた。だから、最後のお節介」
俺の目の前に水晶玉が浮かんだまま移動してきた。そして、パチュリーさんが手を握り締めると同時に水晶玉は砕け、そこには月の形をしたネックレスが浮かんでいた。
「これは?」
「簡単な結界術を持ち運び可能にしたの。本来なら私の管轄外なんだけど……知らない分野もたまには勉強しなくちゃね。これを持っていればその右手は自由に動かせるはずよ。さてと、これで、私の目的は終わったわ。さ、フランのところに行ってあげなさい」
目の前に浮かぶネックレスを受け取り、首に掛ける。
「ありがとうございます。パチュリーさん。さようなら」
「ええ、またね」
パチュリーさんに最期の別れを済ませ、フランのいる地下室へと向かう。
「お別れはすみましたか?」
「小悪魔さん?」
「ネックレス……受け取ってもらえたのですね。良かったです。それ、パチュリー様がずっと徹夜して、全く知らない白魔法で作られたものなんですよ。それも、かなりの高位魔法で。本来なら、その魔法式は城や国を守るために使われるものなのです。おっと、自分なんかが受け取っていいのか?なんて考えたら駄目ですよ?貴方だから、受け取っていいんです。そこの所を履き違えないように」
俺なんかのために……こんな、俺だから受け取っていい。
「そう……ですね。有難く受け取っておきます」
「はい。そうしてください。そして、もう一つ。悪魔の契約というものは、悪魔にとって絶対なものです。貴方が妹様とどのような契約をなされたかは知りませんが……キチンと考えて、どうなさるかを決めてくださいね。私からの話はその程度です。それでは、また、お待ちしておりますね」
「ええ、色々とありがとうございました。ああ、一つ頼みたいのですが……咲夜さんにも謝罪と、別れの言葉を伝えてもらっていいですか?ごめんなさい。と、さようならって」
「その程度でしたら、おやすい御用です」
「ありがとうございます」
小悪魔さんにお礼を言い、階段を下って行く。
首元に感じる暖かいものを感じながら、頬を伝うものを鬱陶しく感じながら。
さようなら
ありがとう
なんども、なんども……胸の内で、そう、繰り返しながら。
一つ一つ、階段を下りていく。
お読みいただき有難うございます。
小悪魔はさっくりと
パチュリーは形を残して
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
最終回までもう少し。
ただいま活動報告にて次回作のアンケートを行っております。
もしよろしければアンケートへの投票をよろしくお願いします。
では、また次回。