既に会っていた件
では、どうぞ!!
やつれた体には、多くの傷跡。
彼女は笑った。問題ないと。疲れきった顔で、笑ってみせた。
許せなかった。
原因は何なんだと、何があったんだ。と、聞いた。
原因はすぐ近くにあった。
彼女は、憤怒、喜び、悲しみ……様々な表情を一度に見せた。
許せないと言われた。許したいと言われた。お前が来なければ、こんな事にはならなかった。けど、お前が来なければ、あの幸せも無かった。と。
原因は分かっていた。この耳で確かに聞いたから。
彼女はなにも言わなかった。
こちらを一瞥し、軽蔑の視線を浴びせ、去っていった。
むしろ、こっちの方が楽に感じた。
二人は状況を説明してくれた。
結界を張って押さえている。けれど、その結界すらも、その力でいとも容易く破壊してのける。
行って欲しい。貴方でなければ止めることは出来ないだろう。
そう言って、地下への扉が開かれた。
行きたくない。
俺なんかがどうこう出来るわけがない。
そもそも彼女は本当に俺なんかに会いたのか?
そうだ、俺なんかで止められるはずも無ければ、彼女が俺に会いたいのかも分からないじゃないか!!
自分を正当化する言葉が次から次へと、出てきては消えていく。
しかし、足は勝手に階段を降りていった。
暗い階段を降りて、目の前の扉を開く。
異臭。
部屋の中は赤と黒。
ベッドの上も、クローゼットもぐちゃぐちゃにされ、赤黒く染まっていた。
そんな部屋の中の片隅に座る人影。
髪は黒く、パキパキに固まっており、以前のような面影は見えない。
そして、ズタズタにされた衣服。その破れた隙間からは、ナイフやハサミが突き立てられていた。
そして、察した。この赤黒いのは、彼女の血なんだと。
ぴチャリぴチャリと血の上を歩き、彼女の前で膝を折る。そして、ゆっくりと彼女を抱きしめた。
『ごめんなさい……』
彼女は謝った。
『寂しくて……力が制御出来なくなって……でも、暴れたらおじさんに……嫌われちゃうから……』
『寂しかったんだね。一人にしてごめんな』
彼女は俺の胸に顔を埋め、泣き始めた。
荷が重かった。
『一緒に上に行こう。俺も一緒だから、大丈夫だろう?』
『でも……いっぱい迷惑掛けちゃた……』
『大丈夫だ。だって……』
胃の中が圧迫される。
『……家族……なんだろう?』
彼女はゆっくりと立ち上がった。
俺は彼女の手を取った。
『ありがとう、おじさん』
知れば知るほど
『やっぱり、貴方に任せて正解だったわ』
『そうですね。取り敢えず妹様。傷をどうにかしましょうか』
理解すればするほど
『妹様、お召し物でございます』
その重荷は重くなって
『先程は済まなかったな。いや、許してくれとは言わないさ。それだけの事を私は言ったのだから。だが、出来ればもう少し感覚を狭めて帰ってきて欲しい。フランも、私も……この館にいる全ての総意さ。咲夜は違うだろうかね。ククッ』
俺にのしかかる
『お帰りですか?暗いので気を付けて下さいね。ほう、定期的に帰って来ることになった。それは嬉しいですね。私の楽しみが増えました。それなら、お帰りですかではなく……いってらしゃいませ。松さん』
そして、いつしか、こう、考えるようになった。
消えたい。
と。
そんな時だった。彼女に出会ったのは。
俺の願いを叶えることが出来る。
俺の存在を消す事が出来る。
彼女は言った。
『もう少し、この世界を楽しんでみなさいな。せめて、一ヶ月。それまでに、貴方がまた同じことを強く望むのであれば、その願いを叶えましょう』
そして、一ヶ月を少し過ぎた時。彼女は、八雲紫は、もう一度俺の前に現れた。
俺の願いを叶えるために。
お読みいただき有難うございます!!
まあ、そういう事ですたい。(分かってもらえたと信じたい)
大切なものがどんどん積み重なって、いつしかしれは重荷になる。そして、それに耐えきれなくなった……
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
松くんは消えたいと言っていました。
これが、どうなるのか……
では、また次回〜