END3です。
自分で書いてる分、スゲェ胸糞悪い。
では、どうぞ。
それなりに歩き慣れた道をいつも通り進んでいく。
そして、大きな屋敷の前に着いた。ここが、永遠亭。俺の職場である。
屋敷の中に上り、薬を取りに行くため薬品保管室へと向かう。
にしても……今日は遊び回っている兎たちが見当たらないが、何かあったのだろうか?
何時もなら兎達が飛び跳ね追いかけっこなりなんなりをしている中庭。だが、今現在、そこには自分の足音しか聞こえない。
静か、静寂……何の不思議もないはずなのに、妙な違和感を感じる。
それを、気のせいだと頭を振りかき消す。そんな事をしていれば、いつの間にやら薬品保管室の前に着いていた。
部屋の前で、入っても大丈夫ですか?と、声を掛ける。中からはどうぞと返事が帰ってきた。
襖を開き、部屋の中へと足を踏み入れる。
ここ、一ヶ月毎日と言っていいほどに嗅いできた薬品たちのツンとする臭いが鼻を突き抜けた。
部屋の中には一つの影。俺の雇い主である八意永琳だ。
「おはようございます。八意先生」
「おはよう。あら?鈴仙は一緒じゃないの?」
「え?」
言われてから気付いたが……確かに鈴仙さんの姿が見当たらない。何時もなら家の中に既に居るか、外で鉢合わせる事が多い。と言うより、何時そうだった。そして、それに気付かなかったのはそれだけ疲れていたのだろう。
「そう、みたいですね」
「その口振りだと鈴仙が何処に居るのかも知らないのかしら?」
「知らないです」
「本当に珍しいこともあるものだわ。あの娘がサボるなんて。まあ、丁度いいわ。ちょっとこっちに来てくれないかしら?」
「分かりました」
永琳先生は椅子から折り、床に付けられた扉を開ける。その先には地下へと続く階段が伸びていた。
階段は暗く、明かりは所々にある蝋燭が揺らめいているのみ。
「この下に用があるの。付いてきてちょうだい」
「はあ、因みにこの先にはなにが?」
「ちょっと危険な実験をこの下でやってるの。あ、一応そこの扉閉めておいてね」
言われた通り扉を閉めてる。明かりは、八意先生が壁にかけてあった蝋燭を手に持っていた。
開けた時から、蝋燭は付いていたが……一体どう言う原理なのだろう?
「ここの蝋燭は私のお手製で、私の霊力を混ぜ込んであるの。だから、ちょっとやそっとじゃ消えないわよ?前変えたのが……五年くらい前だったかしら?」
「それは凄いですね。八意先生は本当に色んな事をしていますね。知らないことが無いんじゃないか?って思ってしまいますよ」
蝋燭をじっと見つめていたからか、八意先生が蝋燭について説明してくれた。
にしても、この人は色々な事をやっているし、知っている。薬関係に、蝋燭作り、弓道剣術武道、サバイバル術もお手の物。知らないことが無いのでは?と思ってしまう程だ。
「そうでも無いわ。私にだって分からない物も存在する。理解しようとする事自体を諦めた程のものがね」「…………それは、一体」
「さあ、着いたわよ」
八意先生が蝋燭を高い位置に持ち上げる。
その先には重厚な鉄の扉が静かに佇んでいた。
八意先生はその扉をゆっくりと開く。扉はなんの抵抗もなく、ぎぃぃと小さな音を出しながら開いた。
「うっ……」
そして、流れ込んで来る強烈な臭い。なんと表現すればよいのだろうか……腐った食品類と、芳香剤なんかを混ぜ合わせた臭い。とでも言えばいいのだろうか。
「臭いがキツイけど我慢してね」
「分かりました……」
そんな中でも、永琳先生は表情一つ動かさず先へと進んでいく。
扉の先には、幾つも積み重なった木箱や、実験器具であろうフラスコやビーカー。ノコギリの様なものなど、大量の物で溢れていた。
「ちょっと、ここで止まって貰えるかしら?」
「ここで、ですか……分かりました」
正直、今すぐにでも逃げだしたいところではあるが、八意先生に了承の返事を返す。
「ありがとう。だいじょうぶよ。いたみはいっしゅんだから」
八意先生の腕が持ち上がり、勢いよく振り下ろされる。咄嗟の事に理解が追いつかないが、条件反射のように俺の手が、八意先生の腕を止めていた。
「だめじゃない」
「あの……巫山戯てるんですか?」
「そんなことないわよ?わたしはね、しりたいの。人間がなんなのかを。だから、おとなしくねててね?」
クソったれ!!
八意先生を押し退け、部屋から出ようとする。しかし、その前に俺の体は押さえ付けられ、頭には衝撃が走った。
「がッ……ぁ……ぁぁぁ………………」
最後に見えたのは、扉の先の階段と、広がっていく、赤い液体だった。
■□■□
「う……ぁ……あ?」
「おはよう。気分はどうかしら?」
気が付いた。目の前には椅子に座り、何かを書いている八意永琳の姿。反射的に逃げようと体が動いたが、鎖に繋がれていたようで、それは叶わなかった。
「最悪ですね。冗談なら早く解いて貰えると有難いのですが」
「そうねぇ……研究がどれ位で終わるか次第ね。取り敢えず……これからやってみましょうか」
「…………は?」
八意永琳が手にしたのは、壁にかけてあった大きな鉈。その鉈はかなり使い古されており、歯の部分はボロボロ。何かを切断するのには適していないように見える。
「それで何をするんですか?」
「あら、分からない?」
分かっていた。むしろ、この状況下で分からない方が可笑しい。
だが、どうして?そんな事をして、一体何になると言うのか。
体が寒い。これから起るであろう現実から目をそらしたい。
そして、その鉈が……振り下ろされることは無く、優しく中指の第ニ関節に当てられた。
ズチュッゥ……ゆっくりと、鉈が引かれる。
血が腫れ物の様に膨れ、決壊。血は地面へと滴り、赤い水たまりを作っていく。
「ッぁ……」
痛みは小さい。
「ふむ……」
鉈が指から離れ、、八意永琳は机に戻り、直ぐ戻ってきた。
そして、鉈が、もう一度中指の第ニ関節に当てられ……
ズグシャ
切断された。
「ぁ……うぐギャぁぁぁあ!!!!」
一瞬遅れて、痛みが体を駆け巡る。体が熱く、冷たい。指から血液が滴り落ちるだけで、意識がある飛びそうになる。
「ねえ、今の状態を教えて?」
指を圧迫する様に抱え込み、蹲る。
「もう……新鮮な情報が欲しいのだから、早く答えなさい。貴方を早く壊したくはないのよ?」
抱え込んでいる手を捕まれ、
ズグシャ
今度は薬指が落とされた。
「みぎゃあぁあぁぁぁ!!ぁ……ぁああ……」
「さあ、答えなさい」
「い、いひゃいでしゅ!!」
「どういう風に?もっと詳しく」
「ひっ!!」
鉈をチラつかされ、体が固まる。
しかし、そんな中、何とか口を動かした。
「ゆびがあしゅくて、いたいです!!」
「こわい?」
その問に首を縦に振り、返答する。
「そう……ありがとう。今日はここまでよ。明日また頑張ってちょうだい。後これ、痛み止めね。ちゃんと飲みなさい。水はそこにあるから」
八意永琳は、切断した指を拾い、部屋から去っていった。
「うぐァ……ァ……いってえ……ァ……いてぇよ……ぅう……」
一時して、出血も止まり、痛みも大分収まった。
顔を上げると、目の前には大きめの錠剤が三粒。
目の前に置かれた薬を何のためらいもなく口に含み、飲み込む。
「んグッ……ごホッゴホッ……ぁ……あぁ……」
錠剤を、水なしで飲んだせいか、咳き込んでしまう。
水を求め、さっき八意永琳が指さしていた方向を向いてみると、そこには、ペットショップにあるような動物が水を飲むための道具によく似た物があった。
それに口を付け、勢いよく水を吸い出していく。
死にたい、死にたくない……
ああ……あの薬で死んでいられたら……どれだけ楽だったか……
■□■□
太陽が見えない中、もうすぐ一日がすぎる頃だろうか?と、考えていた。
そんな時、扉から、ぎぃぃと音が聞こえてきた。そこに居たのは、茶碗と箸を持った状態の八意永琳。
「薬は……ちゃんと飲んだのね。さ、食事にしましょう」
八意永琳は、俺の前に茶碗を置いた。中にはご飯に味噌汁をかけたもの。猫飯と言うものが入っていた。
「全部食べなさい。栄養摂取は大切よ?」
半場脅されるように茶碗に手を付ける。少し冷めた猫飯を口に運んでいく。右手は動かず、左手は指二本が存在しない。
食べずらかったが、何とか完食する事が出来た。
「食べたのね。偉いわ。そう言えば、その右手は動かないのよね……今度、結界でも張っておきましょうか。さて、と……」
八意永琳は椅子から立ち上がり、こっちに来る。その手の中には一個の瓶。そして、その瓶の中には見なれた俺の指が入っていた。
「取り敢えず、引っ付けましょうか」
そして、瓶から薬指が取り出され、俺の既になくなっている薬指の先に引っ付けた。
そして、一本の細い針と、淡く輝く糸で縫い合わされていく。
気づけば、其処には縫われた跡が残るだけの元に戻った薬指の姿。中指も、あっと言う間に縫い合わされていた。
なんなんだ、本当に何がしたいんだこの女は?
「さて、と。準備も整ったし……今日はこれね」
その手の中に収まっているのは、長く、親指程の太さがある、先端が尖った棒。
「ああ、安心して。消毒はちゃんとするわよ?」
そう言いながら、八意永琳は蝋燭の炎に棒を近付ける。棒は熱せられ、ほんのり赤くなっている。
「ね?それじゃあ、消毒も済んだことだし始めましょうか」
そう言って、その棒を俺の腹に付けた。
「ぁつ……」
先端が熱く、小さく声を上げてしまう。
ズププププ
針が腹に刺さり、進んでいく。
痛くはない。痛くはないが、腹を進んでいく異物に気持ち悪さを覚え、さっき食べた物が昇ってくる。
気持ち悪い、怖い、訳が分からない、もういやだ、なんで、ふざけるな、しにたい、しにたくない、らくになりたい
「うッ……うげぇえええ」
いろんな感情が混ざり合わさり、口から、吐瀉物として外へと出てきた。
それは、目の前にいる八意永琳にも掛かっているはずだが、彼女は気にせず。その状況を見ているだけ。
「ねえ、何で吐いたの?」
「頭が……ぐるぐるして……気持ち悪い……」
「そう」
今日は痛みが無かったからか、すんなりと答えられた。
それに満足したのか、彼女は針を抜き、止血を済ませ部屋から出ていった。
□■□■
あれから、もう何日も過ぎた。
肩を落とされた
足を切断された
爪を剥がされた
目を潰された
舌を焼かれた
耳を削がれた
胸を切られた
上げきれない程の拷問を施され、その度に治療された。
そんなある日……あの女が、拷問に使った道具を忘れていった。それは、長い棒だった。骨を砕く為の棒だった。
それを使い、壁にかけてある拷問器具の一つ、ヤスリを手繰り寄せる。
もう、思考なんて殆ど動いていない。
だけど、助かるかもしれない。そんな思いが、体を突き動かした。
ヤスリで鎖を削り、何十分と時間を掛け、
ガシャン
鎖が落ちた。手首、足首についている枷こそ外せなかったが、これで、自由に歩き回れる。
涙が零れた。
赤い涙しか流さなくなったこの瞳が、透明の涙を流した。
重厚な鉄の扉を、開き、階段を上っていく。足が震え、よろめくも、壁に手を付け、一つ一つ、上がっていく。
そして、出口が見えた。
押し開けた。
光が全身に突き刺さる。
嬉しかった。
「……松……さ……ん?」
声が聞こえた。その特長的な長い耳を持つ、隣人の姿が、鈴仙さんの姿が、そこにはあった。
「あ、え?ど、どうしたんですか!?と、取り敢えず移動しましょう!!」
助かった……助かったんだ……
涙が溢れる。
彼女がもたれ掛かってくる。
それを、よろめきながらも受け止める。
彼女は冷たかった。
頭が止まる。思考が止まる。
彼女の体には力が入っていなく、足元には、見なれた赤い液体。
「ぁ……ぁ……………ぁあ…………」
「崩壊っと」
□■□■
わざと抜け出せるようにし、抜け出した先には親しき友人。そして、その友人を殺した場合立ったまま呻き声を上げ気絶。
人間に関するレポートはかなり進んだが、それでもまだ足りない。
彼の体力ももうそろそろ限界、持って後一年だろう。
あまり支度はなかったが、彼を蓬莱人にして、外との接触を断つ。こうすれば、まだ人間としてあれるのではないだろうか?
処分が面倒くさくなるが、蓬莱人を殺す方法もないことも無い。
そうと決まれば、彼を運ばなければ。
ああ、やはり、知識が増えていくのは心地よいものだ。
これからも、私の為に頑張りなさい。
「ぁ…………アアア………ぁ……ぁぁ…………」
佐々木松くん
END 3
知識欲
END
お読みいただき有難うございます。
これにて、END3は終了です。
永琳に取って特別なのは輝夜だけです。それ以外は使える、使えない。と言った感じに分類分けされています。
うどんげなどの記憶が消えたのは、永琳の薬で消された為です。それぐらいなら出来そうだと思う。
因みに、永琳は狂っても、病んでもないです。ただ、自身の欲を満たす為だけに行動しています。
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
最終ENDに向けて頑張りますか。
では、また次回。