歪んだ愛をアナタに(完結)   作:ちゃるもん

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投稿です!!

松くんが薬の説明に行っている時のうどんげと永琳の会話です。

では、どうぞ!!


第38話 材料

「よく聞きなさいうどんげ」

 

 やめて……

 

「原因は分からない」

 

 知っているから……

 

「恐らく、あの右手が原因でしょうけど」

 

 もう、知っているから……

 

「彼は……」

 

 言わなくていい……

 

「佐々木松は……」

 

 分かっている……分かっているから……

 

「もう……長くはない……」

 

 頭に響く感情の波。

 耳に届く慕う者の言葉。

 

 信じたくなんてない。全てを忘れ去ってしまいたい。

 

 けれど、忘れることなんて出来ない。信じないと言う選択肢もない。

 

 私の忌々しいこの力が、嘘ではないと言っているから。

 ずっと前から、それこそ出会った時から知っていた。その弱々しく、強すぎる波を感じていたから。

 

 失いたくない。漸く、私を見てくれる人が現れたのに、なんでこんな……

 

「うどんげ……」

 

 師匠が私の名前を呼んだ。その声に一つの事思い出す。

 

 この人物は誰だ?八意永琳。月の頭脳とまで呼ばれていた天才。特にその力は薬学に注がれ『蓬莱の薬』と呼ばれる不老不死になれる薬を開発したほど。そう『不老不死』である。死の概念が無くなった存在。そして、その薬の効果は眉唾物ではなく、目の前の八意永琳が生き証人。蓬莱の薬……不老不死になれ、効果も実証されている。それを飲ませれば……

 

「蓬莱の薬を飲ませれば」

「可能性は有るでしょう。でも、彼は能力のせいなのか、右手のせいなのか、体質なのか分からないけれど……薬や毒に耐性を持っているようなの。だから、蓬莱の薬も効くかどうか……仮に効いたとしたて、副作用が出るかもしない。それ以前にそれ以前に彼が人の道から外れることを良しとするかも分からない―――」

 

 蓬莱の薬も効くかどうか……効力がない……不老不死になれない……不老不死になれない……不老不死になれない……

 

「―――んげ!!うどんげ!!」

「……なんですか」

「なんで私が睨まれなくちゃいけないのよ……。いい、私は松に蓬莱の薬を飲ませること事態に反対はしない。むしろ飲んでほしい。そうすればデータも取れるから。でもね、出来る限り無理強いはしたくないの。だから、説得は任せたわよ」

 

 

□■□■

 

 

 鈴仙は部屋から飛び出ていった。

 

「頼んだわよ」

 

 一人となった部屋で小さく呟く。

 久しぶりに気分が高揚しているのが分かった。

 月でも地上でも分からないことだらけだった。だから分かりたくて勉強した。分からないを分かるにするために。その中でも、特筆して分かるようになって楽しかったのが薬学だった。けれど、それ以上に分からないものが有った。人間と言う生物だ。人間と言う生物は恐怖、喜び、悲しみ……分からなすぎて、理解することを諦めた。それは、分からなすぎたのも一つの要因だが、それ以上に、実験材料が存在しないのだ。化物になれば分かるのだろうかとも思ったが、意味はなかった。やはり、実験材料が必要なのだと理解した。

 姫様は駄目だ。あのお方は愛しいから。それに、既に人間ではない。私と同じ化物だから。

 けれど、漸く分かるかもしれない。人間と言う存在が。分かるのかもしれないのだ。

 しかし、分かる前に死んでしまったらどうしよう?ある程度実験したあとに薬を飲ませ不老不死になれば……その状態で何処かに閉じ込めておけば人間と似たようなモノになるのではないのだろうか?なんにせよ、こんな機会はもう訪れないだろうから、有意義なジッケンにしなければ。

 

『あア……楽シみネェ』

 




お読みいただき有り難うございます!!

真に危ないのは師匠でした。
そして、松くんは長くないそうです。一体何が長くないのでしょうね?(すっとぼけ)

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

愛のない病みはやっぱり好きにはなれませんね。

では、また次回~

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