…………
では、どうぞ!!
台所に二つの影。俺と上海のものである。
アリスさんは俺の生活品を買いに人里と言う場所に向かった。流石に俺も付いていこうとしたが、仕事の次いでだから、それに今結界の外に出て下手に毒を吸ったりでもしたら本末転倒よ。と言われ付いていくことは出来なかった。
「かと言っても何もしないのもなぁ」
「しゃんはーい?」
関係はないが上海は俺に何かが有ったときの為にアリスさんが置いていってくれた。
「結界からは出れんしなぁ」
「シャンハーイ」
上海が出ちゃダメだ!!と言うよに両手を広げた。可愛いなコンチクショウ。
とは言っても、上海がそんな事をしても俺は外には出られない。何故ならこの家一帯には結界が張られており、毒の胞子等が入ってこないようになっているらしい。仮に外に出たとしても結界の範囲は狭く、家から出て三歩後には結界の外だ。
「……動かないって意外と暇なんだな」
「しゃんはーい」
うんうん。と、共感するように頷く上海。
これまだ動いてるから良いが、上海が普通の人形だったら完全に危ない人だな。
「……っし!!掃除すッか!!」
「シャンハーイ?」
「掃除するんだよ。流石に人に自分の物を買いに行かしてる。それに居候の身だからな。それぐらいはやらないと。流石にやれたとしても台所だけだろうが。許可なく他の部屋に入ったらマナー違反だからな」
「しゃんはーい!!」
「お、手伝ってくれるのか?」
上海は何処から出した雑巾を片手に拳を天高く突き上げていた。
もう、本当、あれだ……可愛い。うん。俺にも子供(?)を可愛いと感じる感情が有ったんだなと思う今日この頃である。
「よし、それじゃあ頑張るか!!」
「シャンハーイ!!」
□■□■
「………………やり過ぎた感がヤバイな」
「しゃんはーい……」
俺と上海は時間を忘れ台所のみをひたすらに、ただひたすらに……それこそ少しくすんでいた木材たちが太陽の光を反射し眩しいほどには。
上海は何処か疲れた様子で机の端でぐでーっとなっている。
そして、掃除も終わり二人してぐでーっとだらしなく突っ伏していると、家主であるアリスさんが帰ってきた。
「ただいまー……なにしてたのよアンタたち……」
「おかえりなさいアリスさん。まあ、なんと言うか掃除に熱が入ったといいますか……」
「しゃんはーい……」
「はあ、まったく……掃除してくれたのはありがたいけど、一応自分が病人だって事忘れないようにね」
アリスさんは優しく微笑んだ。
本当に、幻想郷に迷い混んで最初に出会った人がアリスさんで良かった。
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今日の人形劇も無事終わった。
一回で終わるストーリーではなく、オリジナルの長編の為か客足も安定している。それは大変喜ばしい事だ。事なのだが、物語の最後がまだ決まっていない。かといって時間は待ってはくれない。
「はあ……本当にどうしようかしら」
そんな事を呟きながら松用の服を数着見繕う。流石に人形用の服をある程度縫い合わせた物では可哀想だろう。後は食品類を買うぐらいか。
「おや?アリスがこんな所に居るとは珍しいな」
「あら慧音じゃない。その言葉そっくりそのままお返しするわ」
青を基調にした服を着こなす、銀髪の女性。人里で子供たちに勉を取っている『
「これは手痛い返しだな。それで?なんで男性用の服を見ているんだ?」
「つい先日魔法の森で倒れてた男性を助けたのよ。一応解毒はしたけど念のため一週間ぐらい家で様子を見ようと思ってね」
「なるほど。確かに魔法の森の毒は厄介な物が多いからな。にしても不思議なものだな」
慧音はその顔に面白いものを見つけたといじの悪い笑みを浮かべ私の顔を覗いてくる。
「な、なによ」
「いやなに。今アリスがやっている人形劇とそっくりだなと思ってな」
「……なにかと思えば……そんな馬鹿な事を言ってないで仕事でもしてなさいな」
内心焦っていた。
言葉には力がある。言霊と言う言葉が存在するように。たった一言で運命が変わるなんて日常茶飯事だ。そして、それはその者の力が強ければ強いほど、言葉の意味を知っていれば知っているほど、想いが強ければ強いほど、劇的に変わっていく。それは最早一つの在り方だ。世界の法則だと言ってもいいかもしれない。
つまり、だ……。私の人形劇への、あの物語への思い入れが強すぎて何かが変わってしまったのかもしれない。
「……そんな事あるはずがない……っか」
気が付けば既に魔法の森へと戻ってきていた。手には今日買うはずだった男性ものの衣類や食材たち。どうやら慧音に言われたことについて深く考え込んでいたようだ。
はあ……。と、小さく溜め息を一つ。もう何百年と生きているのだ。今さら幸運が去ったとしても気にはしない。
早く帰って紅茶でも入れましょう。そう心に決め私は帰路を急いだ。
□■□■
歩いて十分程度で私は家にたどり着いた。
何時もの道程が異様に長く感じれたのは勘違いではないだろう。だが、そんな長い道程を歩き、私は遂に我が家へと帰ってきたのだ。
何時ものように取っ手に手をかけ、開く。そして、何時ものように声を出す。
「ただいまー」
と。
しかし、何時もの私に待っていたのは何時もとは違う光景であった。松が居ることは知っているから関係はない。しかし、しかしだ……。
「……なにしてたのよアンタたち……」
流石に同居人が机に突っ伏していたら驚くだろう。しかし、私の場合は呆れが来た。何故か?彼等の近くにある片付け忘れたのであろう箒が一本立て掛けてあったから。
「おかえりなさいアリスさん。まあ、なんと言うか掃除に熱が入ったといいますか……」
やっぱり。掃除でそこまで疲れるなんて……いや、掃除してくれたのは嬉しいのだ。ただ、自分が一応病人だって事を覚えているのだろうか?
「しゃんはーい……」
上海まで……
「はあ、まったく……掃除してくれたのはありがたいけど、一応自分が病人だって事忘れないようにね」
二人は小さく返事を返した。
それがなんだか可笑しくて少し笑ってしまった。
□■□■
あれから一週間。相も変わらずアリス亭にご厄介になっている。
もうそろそろ外に出られる頃だろうか。外に出たら取り敢えず人里に向かって職を探さないとな。
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それから四日。あまり体調が宜しくない。
病人モドキだからと言って動かなすぎたのが原因だろうか?
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更に一週間。窓を開けたりと体調管理をし始め健康そのものとなった。
だが、アリスさんは外に行くのは危険だからと外に出してはくれない。
□■□■
更に一週間。流石の俺でも疑わざる終えない。
本当は信用したいが、疑いたくはないが、過保護と言い切ってしまえばそれで終わるのだが、何時しか俺は外に憧れを持ち始めた。持ってしまった。鳥籠に囚われた鳥のごとく。あの青空の下を。優々と自由気ままに歩きたいと。
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外に出たくなった。だから、アリスさんに問い掛けた。『もう外に出ても大丈夫じゃないのか?』
しかし、アリスさんは俺の思いを一蹴した。
「だめよ」
「なんでだ?」
「危険だから。大丈夫。私がどうにかしてあげルカら」
「最初は一週間もすれば大丈夫だろうって言っていたじゃないか。なあ、少しくらいいいだろ?」
俺はしつこく言い続けた。そのこと事態は良くない事だと自覚している。
だが、外への執念にも似た憧れ。その想いだけが俺を突き動かしていた。
「いい加減にしなさい松」
怒鳴るわけでもない、まるで子供を諭すかのように放たれた言葉。その言葉に俺はハッとし、自分がとても情けなかった。
アリスさんは俺を見捨てても良いのだ。なのにこうして衣食住を用意してくれ、看病までしてくれている。なのに、俺は…………。
『大丈夫……エエ。だいじょうブヨ。松はずっと……ズーット私を頼っテいればいイノ』
その笑顔はとても美しかった。
三日月のような口。光を宿さない瞳。その整った顔立ちはそんな不気味なモノを顔の上に置いてなお美しく、そして気味が悪く、俺が彼女を疑うようになるには、余りにも強烈すぎた。
お読みいただき有難うございます!!
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
『気付いたらヤンデレを書いていた。それも明らかに取って付けたかのように』
な、何を言っているのかわからねえーと思うが(ry
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
今回は少しパターンを変えていこうと思うの。
では、また次回~