方向を切り替え、多少はスランプ解消したかな?
では、どうぞ!!
入院二十五日目
「これが解熱剤で、こっちが鎮静剤。それでこれが媚薬」
「解熱剤、鎮静剤、媚薬……ですね」
粉末状で薄いピンク色の解熱剤。同じく粉末状で薄い黄色の鎮静剤。そして、薄赤色の錠剤が媚薬。
サラサラっと八意先生から頂いたメモ帳に簡単にではあるがメモを取る。
「媚薬は二種類あって、その赤色のが人間よう。此処には入れていないけれど、どぎつい青色の媚薬は妖怪よう。誤って人間に投与したら子孫を残せなくなるから取り扱いには注意すること。とは言っても、そっちを欲しいなんて言うのなんて殆ど居ないけどね。もし欲しいって言われたら私に言ってちょうだい。けれど、キチンと投与する相手が妖怪なのかを確認すること」
矢印を書いて、赤が人間。青が妖怪用。青色の妖怪用は使用者が妖怪なのを確認したのち八意先生に確認する。
「はい。分かりました」
「取り敢えずはこんなところね。後は塗り薬。これは傷口に塗って瘡蓋の代わり、そして消毒を兼ねてるわ。そして、此方が、見ての通り包帯ね。それでこれが―――」
□■□■
外は既に夜。八意先生の講義が終わり、それなりに綺麗に書き記した薬の見た目、効能を再度読み返す。
足の方は今ではスッキリ、と言うほどでもないが一人で歩いても特に問題は無くなった。とは言え、曲がり角ではスムーズに曲がることは出来ないのだが。
一歩曲がり角に出て停止、方向転換をしようとしたとき可愛らしい声が聞こえた。
『きゃ……とと』
「おっと、ごめんね。大丈夫?」
謝りながら声の主を確認する。
地面に付きそうな程長く延びた美しい黒い髪。触れれば簡単に折れてしまいそうな華奢な体。真っ白な肌。整った、整いすぎたその可愛らしい顔には子供っぽい笑顔と、まるで此方の全てを見透かしているような酷く濁った黒い瞳。
背筋が凍った。その美しさ、その子供っぽさからは全く想像もできない、何か言い知れぬモノに掴まれ、今にも握りつぶされてしまわれそうな恐怖。
『貴方が永琳が言っていた……固まっちゃって……フフ、昔を思い出すわ』
さっきの可愛らしい声とは裏腹に妖艶な声が俺の全身を舐め回す。気持ち悪いッ!!しかし、どこか全てを許してしまい、全てをさらけ出してしまいそうな、そんな心地好さ。
矛盾。けれど、矛盾ではない。そう考えなければならな―――
『ふぅん~』
―――い?
目の前には美しい黒い髪を携た華奢な体つきの少女の姿。その目は濁っており、まるで心の奥底まで見透しているかのような、そんな感じがする。
けれど、さっきまでの恐怖、気持ち悪さ、心地好さと言ったモノは一切感じられなくなった。
そう、目の前にいたのは少し変わった美しい少女のみ。
「ははッ……ごめんね。少し疲れてるみたいだ」
『……そうね、本当に辛そうだもの。ゆっくり休みなさいな』
一体何に恐怖していたのだろうか。一体何を気持ち悪く感じていたのか。一体何故心地好く感じたのか。それは、気の迷いなのか、それとも必然なのか、いや、これは疲れからくるものだ。
俺はそう決め付け、病室へと足を進めた。
『休んだところで、その疲れはとれないでしょうけれど……ね』
『貴方も大変ねぇ……随分なモノに憑かれちゃって……ウフフ……一時は退屈しないですみそうネェ』
ウフフ……うふふフフ……
少女の笑みは、小さく、小さく、夜の闇に溶けて行く。
その笑みが大きく歪むことになるなんて、これっぽちも考えずに。
お読みいただき有り難うございます!!
ぐーやをかなり早めに出す。
予定では3、4話後に出すつもりだったのですがね。
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
そうなると……次は……
では、また次回~