台風……やばくね?
では、どうぞ!!
パチュリーが言った通り、風邪を引いた。
私が、ではない。
私が唯一信じている、おじさんがだ。
私のせいだ
私が、おじさんを守るって言ったのに
私は何をしていた?
何もしていないじゃないか……
□■□■
風邪を引いた。
あれだけ雨に打たれ特に何もせずボーッとしていたら風邪を引いても当然か。
ああ、馬鹿みたいだ。一人で勝手に悩んで、人様に迷惑を掛けて、挙げ句風邪を引いて更に迷惑を掛ける。
こんなことなら、変わろうなんて思わなければ良かった。
直ぐにでも、元の世界に帰る方法を探していれば良かった。もしくは、自殺でもすれば良かった。
最初の頃、アリスさんに助けて貰った当初に自殺をしてれば良かったのだ。
けれど、俺は生きている。
人様に迷惑を掛け、アホみたいに一人で悩んで、風邪まで引いているけれど、俺は、生きている。
どうすれば迷惑をかけないで済むのか……そんなものは簡単だ。俺がこの屋敷から出ていけば良い。まだ右手は動かないけれど、動かそうとするのではなく、動かないものとして生活すれば右腕はどうとでもなる。むしろ、鈍器を持った状態なのだから幾分マシなのかもしれない。
なら、仮に出ていったとして、すむ場所はどうする?
どうせ生い先短いだろうし、適当にブラブラして野宿でもすればいいだろう。殺されるなら殺される。生きるなら生きる。そんなもので良いのだ。
「なら黙って出ていくのか?外は結構な雨だが」
「出来るならそうしたい所だが、変な跡を残していくのも後々面倒だ。一言詫びを入れて出ていく」
「そうかそうか、君が命の恩人……ではないが、居候の身分で主人になにも言わず出ていくのかと思ったよ」
「……何時から居たのですか?」
何時の間にか部屋に居たレミリアさんに問う。
本当に何時から居たのだろうか?
「いやなに、ショウが風邪を引いた、と聞いてな。見舞いに来た。それと、キチンと扉から入ってきたぞ。ついさっきな。全く……自分との相談なら心のなかでやってもらいたいものだ。全部漏れていたぞ?」
「そうですか。気を付けます。それで?レミリアさんは私に何か用が有ったのでは?」
「おお、そうだった。早く治してくれよ?何だかフランの様子が可笑しいみたいでね。あの子が今信じられるのは君だけなんだ。確りしてくれよ?それと、咲夜の事なんだが……まあ、アッチには一時会わないようにしてくれ。今は部屋で安静にさせているが……かなり精神的にも肉体的にも不味い状況だ」
「肉体的にも……ですか?」
精神的になら分かる。何故なら、いきなり目の前に殺意を抱く相手が現れ、良いように言われたのだから。けれど、肉体的にもとは一体どういう事だろうか?戻したりで食事をマトモに取れていない……とかか?
「それだけならどれだけ良かったか……。言ってしまえば自虐、自分の手だったり足だったりをナイフで切り裂いている。さっきも言った通り、今は部屋で安静にさせているからこれ以上悪化はしないだろう。いやはや、押さえ付けるのには苦労した。最初はトラウマを無くして欲しかっただけなんだが……どうやら裏目に出たようだな。だが、まだ完全に道が途絶えたわけではない。少なくとも私の目には、最悪の結果だけは写っていないから安心してくれ。それに、ショウにもこれ以上迷惑は掛けないように尽力しよう。変な重荷も背負わせてしまって申し訳なかった。さて、結構話し込んでしまったな。私はこれで失礼するとしよう。ああ、そうだ、昼食は美鈴が作ってくれるそうだ。態々ショウの為に休みまで貰ってな。全く……門番が休みを取るとはどう言う事だ。まあそう言うわけで、キチンと全部食べてやれよ?では、私はこれで失礼しよう。早く風邪を治してくれ。ではな」
レミリアさんにはニヤニヤしながら部屋を去っていった。
俺は聞きに徹していたが……十六夜さんがそんな事になっているなんて……ますますこの館を早く出ていかなくてはならないのではないか?
そうだ、早く出ていかないと……だから、早くこの風邪を早く治して、レミリアさんやパチュリーさんに挨拶をしなければ。そうすれば、誰も俺を止めようなんてしない。俺はこれで自由に、また、孤独に戻れるんだ。
ああ、そうすれば誰かに頼ろうなんて馬鹿な考えで悩むこともなくなるし誰かとの関係で頭を抱えることもなくなるこの手を扱えるような努力もしなくてすむんだああなんだ良いことずくめじゃないか何をこんなに色々考えていたんだろう最初から助けて貰った礼だけいってさっさと出ていってしまっていれば良かったそうすれば誰にも迷惑をかけなくてすんだこうしてその事について悩まずにすんだそして―――
―――こんな馬鹿な感情で胸が苦しくなるような事もなかったのに……ッ!!
考えれば、考えるほど、頭はごちゃごちゃになって、その笑顔が頭から離れなくなって、涙が溢れて、拭っても、拭っても、怖くて、恐ろしくて、眩しくて、悔しくて、寂しくて、全部吐き出してしまいたいって思って、また怖くなって、恐ろしくなって、そして……
「ウッ…………ウッァアア……ァア…………くそぉ……くそぉぉ……」
……愛おしくて
雨は強くなり、止むことはない。ただ、ずっとずっと溜めていた分を吐き出すのみ。
お読みいただき有難うございます!!
咲夜さん退場(出番が無くなるとは言っていない)
涙の分だけ強くなれるよ。
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
口内炎が辛い……
では、また次回~