原付免許、後は筆記のみ
では、どうぞ!!
「…………松さん……何かあったのですか?かなり精神が不安定のようですが」
修行が始まって十分程度の頃、紅さんが口を開いた。
精神が不安定……霧雨さんとの会話の後、ずっと考えていた事がある。俺は、前に進めているのだろうか?霧雨さんは前を向いて進んでいる。そう見えた、感じた。けれど、パチュリーさんが言うには停滞している、と。
だったら、俺はどうなるのだろうか?あれだけ進んでいるように見える霧雨さんですら、停滞していると言うのに……。
「……魔理沙さん、来てましたね。会いました?」
「……はい」
「魔理沙さんと何か有ったのですか?」
「…………いえ、何も」
「そうですか。では、修行の続きをしましょう。邪魔してすいませんでした」
「………………」
紅さんはそう言って、目を閉じた。
なんだよ……昨日はあれだけ言っていた癖に……。
無意識にそんな事を考えていた。
そして、そんな自分が嫌だった。昨日、あれだけ自分から突き放したと言うのに、助けを求めていた自分が。そして、手をさしのべられなかったからと言って、毒づいている自分が……情けない。
□■□■
「松さん?」
「は?あ、えっと、なんですか?」
気が付くと目の前に紅さんの顔があった。何故か心配そうな表情をしているが、一体どうしたのだろうか?
「何度か呼び掛けたのですが、反応がなくてですね……まあ、兎に角、午前の分は終了です。ぼーっとしていたのは昨日の疲れかもしれませんし……少し長めに休憩を取りましょうか。一時間半後、再開と言うことで。食事は、一応用意しておきましたが、足りなかったら言ってくださいね」
紅さんはそう言って、手に持っていたバスケットを俺に渡し去っていた。
バスケットを開き中のオニギリを一つ取りだし一口…………少し塩辛いオニギリを合計三つ、全て食べ終えバスケットを閉じる。
取り敢えず立ち上がり、空を見上げる。空は晴れてはいるものの、大きな雲が結構見られる。これは夕方辺りに雨が降るかもしれないな……。
「空を見上げてどうかしたのか?」
その時俺に声が掛けられた。声の方向を向いてみると、そこには日傘をさしたレミリアさんの姿。
「夕方辺りに雨がふりそうだな、と」
「ほう……確かに降る確率はかなり高いな。しかし、まさかショウにも運命を見る力があるとは驚きだ」
「まさか、ただの予測ですよ」
「ああ、知っているさ。私と同じ力を持つものがそう易々と居てたまるか。だが、恐ろしいかな、時に人間はその予測を未来予知、果てはその先まで読むときがある。ショウには出来ないのか?」
「どうでしょうかね?もしかしたら出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。人間は臆病なんですよ。良くしてくれる相手でも完全に信用する事は出来ない。その、同族ですら信じきれない程の臆病さは、いつしか人間の一番の武器なんじゃないかと。そうなれば、人間以外のモノを受け入れることも出来ないのはしょうがないのかもしれません」
「だろうな。私もそう思うよ。もし、人間共が私たち妖怪、怪異、化物と言った存在を受け入れる度量があれば、私達はこうして絶滅の危機に瀕しなかった」
レミリアさんの言葉には怒気が含まれていた。
「……自分自身を受け入れる事さえ出来ない個体が居る種族ですから」
「それは人間だけの話ではない。妖怪にだって言えることだ。ところで、今時間は大丈夫か?」
「はい。一時間程でしたら」
「だったら少し付き合ってほしいんだが」
「構いませんよ」
「済まないな。では、付いてきてくれ」
レミリアさんの後に続き、俺は紅魔館の中へと入った。
□■□■
「ふむ…………王手」
パチリッと軽快な音が響く。俺は今、レミリアさんと将棋をしていた。どうやら以前頂いた物らしく、ルールを知っている相手がパチュリーさんしかいなく、そのパチュリーさんはルールは知っているが興味が無いらしい。その為、対戦できなかったようだ。
「…………」
「…………王手」
「…………」
「…………王手」
パチリッパチリッパチリッパチリッ
軽快な音が四度、追い詰められているのは俺。そして、駒を多く所持しているのはレミリアさん。
「…………」
「……詰みだ」
パチリッパチリッ
二度、音が響く。そして、俺の持つ王将が逃げ場を失った。
「です、ね……参りました」
「ふむ、チェスとはまた違った面白味があるな。対戦ありがとう。なあ、ショウ……私はお前に何が有ったのか知らない。だが、予想は出来る。咲夜か魔理沙と話して何か思うところが有ったのだろう?そして、パチェに何か指摘された……そんな所か」
「…………それも、運命を見て知ったのですか?」
「最初に言っただろう?私はお前に何が有ったのか知らない、とな。今のは唯の予想さ。で?何を言われた?何を思い悩んでいる?良ければ、教えてくれ」
俺は口を固く閉ざした。
「…………話したくないのなら無理はしなくていいさ。けれど、忘れるなよ、お前を助けたいって思っている奴が居るってことをな。因みに、私じゃないぞ?いや、私もどうにか力になりたいとは思うが、如何せんこのような立場なのでな。ショウ一人だけにずっと掛かりっきりと言うわけにはいかんのだ。分かってくれると有難い。そうだな…………態々私を顎で使った罰だ、言うなとは言われたが言ってしまおうか」
黙ってレミリアさんの言葉を聞いていたが、不意にレミリアさんの口が大きく歪む。それはまるで、子供が悪戯を思い付かんだかのように無邪気な笑顔だった。
「実はな?私は頼まれたんだ。お前の味方になって欲しいとな。まったく、言われなくともわかっていると言うのに。と、話がそれ始めた……で、だ。それを私に頼んだのはな?お前の師に当たる、紅美鈴だ。さて、種明かしも済んだ事だ。さっさといかんと修行に遅れてしまうぞ?」
■□■□
「……………まったく……一体何時になったら気付くのか……これで少しは、いや、いっそのこと気付いてくれれば早いのだがなぁ……まったく、あの臆病者め」
ショウが出ていった扉を見つめながら、私は小さく呟いたのだった。
お読みいただき有難うございます!!
さて、紅魔編はいつまで続くのやら……
ちゃるもんにも分かりませんな!!
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
にしても、臆病だからうんぬんのところ、結構ごっちゃになったな。
よう反省。
では、また次回~