余裕が出来たので少し早めに投下しますた。
まだまだほんわかは続きまっせ。
では、どうぞ!!
ふわふわとした感覚から一転、ひたすらに落ち続ける。暗い暗い、深い深い、終わりが見えない闇の中をただひたすらに……。
何れくらい経ったのか分からない。これが夢なのか現実なのかも分からない。いや、夢であってほしい。
そんな願いを叶えるが如く、終わりは唐突に訪れた。
目の前に現れた一本の突起。鋭く、闇の中でも目立つそれは、正確に落下し続ける俺の右肩に突きささ―――
「――うわあああ!!……はぁはぁはぁ……ゆ、め?」
ガバッ!!と起き上がり胸を押さえ付ける。少し落ち着いた所でドッと疲れが襲いかかってきた。額から流れ落ちた汗が握り締められた拳の上に落ちる。そうしてようやく『アレ』が夢だと確信を持てた。
恐る恐る右肩に手をやってみるが勿論何の変化もない強いて言うのであれば汗でグッチョリなっている事ぐらいか。
「……そう言えば、ここ、何処だ?」
夢だと確信出来たからか心に余裕ができたのだろう。漸く自分が森の中ではなく、かといって自分の家でもない、別の何処かの部屋である事が分かった。
「にしても、随分とオシャレな部屋だな」
額に浮かぶ汗を拭い部屋を見回す。花瓶に活けられた花や木製のテーブル。優しい印象の落ち着いた部屋だ。
「勝手に部屋の中を歩き回っても良いものか……」
現状を知るためには行動を起こした方が良いのだろうが……。
どうすれば良いか考えているとコンコンッとノックの音が響いた。そして、俺が返事を返す前に誰かが入ってくる。
『あら、起きてたのね。どう?変な感じとかしない?』
「………………」
『ねえ、大丈夫?』
「…………ハッ!!あ、ああ。大丈夫。特に変な感じはしないよ」
いかんいかん見とれていた。いやはや、現実に誰かに見とれるなんて現象起こりうるんだな。
美しい金色の髪。サファイアのように輝く青色の瞳。服装こそ奇抜なものだが、整いすぎた容姿と絶妙にマッチしている。西洋の人形のように可愛らしく、手が届かない。いや、触れては行けない儚いものに感じた。
「えっと、貴女が助けてくれたのですか?」
「ええ。貴方道端に倒れてたのよ?驚いたわ。わざわざ人間が魔法の森のこんな奥まで来てるなんて思わなかったんだから」
「えっと、なんかすいませ……ん?あれ?『人間が』?」
まるで自分は人間ではないです。と言っているような口振りに違和感を覚える。
「何か可笑しな事を言ったかしら?」
「いや、あの……まるで人間ではないような言い回しだなと。ああ、すいません。俺の勘違いですよね」
「…………ああ!!」
軽く頭を下げ謝ると、女の人は何かに気が付いたかのように声を上げた。
「貴方外来人なのね」
「がいらい、じん?」
外国人みたいなものだろうか?
「そう。貴方幻想郷って場所に聞き覚えは?」
「いや、聞いたことがないですが……」
「でしょうね。幻想郷は、貴方が迷い混んだこの世界の名前よ」
「はあ。それで?」
「少しは興味を持ってくれても良いと思うのだけれでど……。幻想郷には外の世界で忘れ去られた者達が集う最後の楽園。つまりは妖怪や神。妖精なんかが実在しているのよ。ねえ……何してるの?」
何って……こんなにイタイ発言ばっかりする女性を風邪かなにかと勘違いするなと言う方が難しい話である。流石に熱を計るために額に手をやったのは不味いとは思うけど。
「あ、すいません。つい」
「疑っているのね。まあ無理もないか。そっちの世界では既に忘れ去られているんだから。因みに私は魔法使い。アリス・マーガトロイドよ。アリスで良いわ」
「俺は
「呼び捨てで構わないわよ?」
「俺が構うんですよ」
いきなり初対面の女性を呼び捨てにしろなど、本人に言われても出来る筈がない。その相手が美人であれば尚更だ。にしても、容姿からして想像はしていたがやはり外国の方のようだ。それにしては日本語がかなり上手であるが。小さい頃から日本にすんでいるのだろうか?
「さて、少し話を戻すけど。幻想郷にはさっきも言った通り人ならぬ存在が存在しているわ。私もその一人ね」
「魔法使い……でしたっけ?」
「そうよ。どうせまだ信じていないようだし簡単な魔法でも見せましょうか」
アリスさんは右の手のひらを俺の方に向けパチンッと指を鳴らす。するとどうだろうか。俺の腕が勝手に動き始めるではないか!!その事に驚きを隠せずにいると今度は足が勝手に動き始めベットから立ち上がった。そうしてそのまま部屋の中を大きく一週し、またベットへと座る。
「どう?少しは信じてくれたかしら?」
「あ、ああ……。信じたくはなかったが、当事者として信じるしかないだろ…….。なあ、今のはどうやったんだ?」
「今の?今のは貴方の体に魔力、魔法の源となるものを糸状に張り付けて動かしただけよ。操りに人形ならぬ、操り人間みたいなものかしらね。抵抗すれば簡単に糸が千切れるから戦闘には向いてないけど」
「すごいな……。アリスさんみたいなのが幻想郷には一杯居るのですかね?」
「口調、無理しなくても良いのよ?ええそうね。むしろ私なんてまだ優しい方じゃないかしら?」
開いた口が塞がらない。呆れではなく驚きで。人間を操ることが出来るような存在がまだ優しい?幻想郷……一体どんな魔境なのか……。むしろ良く生きてたな俺……。
「さてと、幻想郷の事や種族の事について信じて貰えたところで別の話をしましょうか」
「別の話?」
「ええ。ぶっちゃけると貴方の体について。もう少し詳しく言うのなら貴方が吸ってしまった毒素の治療についてね」
「毒素……。具体的にどんな毒を吸ったのかってのは分からないのか?」
「難しいわね。百年近く住んでるけど森全体の環境を把握しているわけではないの。最悪なパターンとしては突然変異種。即効性だったらもうお手上げだったけど、その様子はなさそう。でも、遅効性の可能性はまだ残っているわ―――って、ちゃんと聞いてた?」
「聞いてた……聞いてたけどこんな可愛い子が俺よりも圧倒的に年上だったという事実を知って放心仕掛けていただけだ……」
「それってちゃんと聞いてたのかしら?それと、幻想郷で『見た目=年齢』は通じないわよ。特に力が強い奴等はね」
「そ、そうなのか」
「ええ。それと、もうひとつ言っておくと、幻想郷で長生きしたいなら年齢の話は極力しない事ね。特に妖怪の賢者に対してはね。下手したら存在を消されるわよ」
妖怪の賢者……。一体どんな化け物なのか……。大男?いや、年齢の話がタブーだからお女性だろうか?案外絶世の美女だったりな。いや、それはないか。
なんにせよ年齢の話はしないこと。これは覚えておかないとな。
「はあ……また話がそれた」
「なんかすいません……」
「……謝られたら私が悪いみたいじゃない。兎に角話を戻すわよ。で、戻して早速だけど数日の間は此処で暮らしてもらうわ。長くても一週間ぐらいね」
「え?いや、どうして?」
「どうしてもなにも折角助けたのに死ねられたら後味が悪いでしょ?」
「悪いでしょ?って言われても……いや、俺は願ったり叶ったりなんだろうが……。アリスさんは良いのか?こんな見ず知らずの男と一緒に住むなんて」
そして俺の理性も壊れそうで怖い。と言う本音もある。
いや、手を出すつもりはないが……。万が一と言うことも有り得るからな。
「住人が一人増えたところで特に問題はないわ。あ、襲おうなんて考えないことね。でないと……」
アリスさんがゆっくりと窓辺に近付き、窓辺にあった花瓶を手に持った。そして……
「こうなるから」
パリンッ
花瓶がガラス細工を地面に落としたときのように、アリスさんの手の中で粉々に砕け散った。
もしあれが、あの手の中に自分の頭が有ったとしたら……恐らく、いや確実にザクロが弾ける事だろう。
「い、イエッサー」
「よろしい。それじゃあ……まずはお風呂ね。もう少しで沸くでしょうから待ってて頂戴」
「分かった。何から何までありがとう」
「困った時はお互い様よ」
「そう言ってくれると助かる」
アリスさんは俺の容体を確認しにきただけの様で(起きていたせいで少しの間話したが)、最後に砕け散った花瓶を魔法で元通りにした後部屋を出ていった。
「魔法ってのは便利なものだな……花瓶が元通りだ」
少しばかり魔法と言うものに憧れながら呟いた。
『松ーお風呂いいわよー』
「分かったー」
こうして、俺の幻想郷でののんびりとした生活が始まった。
お読みいただき有難うございます。
いや~ほんわかしてますね~
このままほんわかでおわってくれたらいいですねー(棒)
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
では、また一週間後にお会いしましょう。
では、また次回~