歪んだ愛をアナタに(完結)   作:ちゃるもん

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投稿です!!

漸く修行。
強くなれるといいですな(そこは作者の気分次第)

では、どうぞ!!


第16話 気配

「あ、目が覚めたようですね。おはようございます」

 

 ぼんやりと揺らぐ世界で聞こえてくる声。ゆっくりと視界のピントが合い初め、漸く声の主が紅さんであることに気が付いた。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 心配そうに顔を覗き込んでくる紅さんに妙に重い口を開き、掠れた声で大丈夫だと返した。

 

「うーん……全然大丈夫そうには見えませんね……どうしましょうか…………話を聞くだけなら出来ますか?」

「は……い」

 

 話を聞くだけならば全然問題ないので返事を返した。声を出すのも痛くはないのだが、喉の奥に何かが張り付いているみたいで息苦しい。それに体はウンともスンとも言わない。

 

「無理して返事をしなくても良いですからね?

 それでは、修行の前に色々説明しておきましょう。先程私がした行為ですが、貴方の霊力を活性化させ、パチュリーさんが流し入れた魔力を強制的に放出させるための行為です。気絶させたのは麻酔の代わりのような物で、一時的に貴方の体を仮死状態にさせていただきました。痛みでショック死されたら困りますからね。それでですが、今貴方の体は魔力の阻害なく霊力が扱える体になっています。まあ、大雑把に言ってしまえばですね、今のうちに霊力の扱いに慣れてくださいというわけですね。それと、霊力を扱えるようになるまではその右手も動きませんので、頑張ってくださいね」

「意外とスパルタね美鈴」

「そうですかね?それじゃあ……取り敢えず体が動くようになるまで待ちましょうか」

 

 紅さんはそう言うとパチュリーさんの方に歩いていった。それから少しして体に妙な違和感を覚えた。このからだ全体を波に揺らされているような、言葉では表現の使用がないこの感じ……これが霊力と言うものなのだろうか?意外と扱いやすいものなのだろうか?霊力と言うものは。これなら俺にも十分扱えそうだ。

 等と考えながらボッーとしていと紅さんが慌てた様子で戻ってきた。紅さんは辺りをキョロキョロと忙しなく見回しているが何かあったのだろうか?

 

「……変な気配がしたのですが……松さん、何かが近くに来たりはしていませんか?」

 

 いや、何も。と言う意味を込め軽く首を振る。

 

「そうですか……お騒がせして申し訳ありません。ゆっくり休んでください」

 

 紅さんはそう言い残しまたパチュリーさんの方へ戻っていった。

 

 

□■□■

 

 

 それはパチュリーさんと彼、松さんに事について話している時のことだった。

 急に松さんの体から霊力が溢れだしたのだ。霊力の量事態は一般人とさほど変わりはしないものの、活性化させたとはいえここまで爆発的に霊力が溢れだだすなんてことはまず有り得ない。それに、霊力の扱いに長けていない者がこんなことをしたら死んでも可笑しくはないのだ。霊力とは生命エネルギーと同じ様なもので、それを放出する……自殺行為にも程がある。しかし、彼はなんの変わりもなく、そこにいた。私とも、お嬢様とも、パチュリー様とも、博麗の巫女とも違う……得体の知れない、気持ち悪い気配と共に。

 私は急いで確認した。彼のそばに近寄って気配、気の痕跡も探ったが何も分からない。そこにあったのは何の取り柄もなさそうな、平凡な一人の人間。しかし、私にはそれがとても恐ろしく見えた。

 

 もし、もしも、こんな霊力も満足に扱えない者にとてつもない力が宿っていたら……?

 もしも、その力が表に出てきたら……?

 

 彼は、その力を満足に扱うことが出来るのか?

 

 答えは単純 否だ

 

 そして、そんな得体の知れないものに私は勝てるのか?

 今この場で暴走し、紅魔館を守りきれるのか?

 

 分からない

 

 相手に攻撃が通じないかもしれない。そんな相手にどう戦えばいいと言うのか。これは私の単なる想像でしかない……だとしても、外れている可能性も0ではないのだ。

 だとしたら、今の私に出来ることは何だ?松を殺すこと?確かにそれが一番手っ取り早い。けれど、お嬢様はそれを良しとはしないだろう。絶対に。それに加え、松が死んだことによってその中の何かが暴れでもしたら目も当てられない。

 だとしたら、暴走させないようにするしかない。彼を鍛え、そのナニかに負けるような事のないように……それしか私に出来ることはない。

 

「どうだった?」

「どうだった……とは?」

 

 松の元から戻ってきた私に、その口元に不気味な笑みを浮かべながら質問してくるパチュリー様。

 

「貴方も感じたんでしょう?松はね、私の魔術を何度かはね除けたのよ。そう……ただの人間の筈なのに何でかしら?霊力もまともに……いえ、考えたことすらなかったような人間がよ?もしそれが能力だとしたら……いえ、能力じゃないほうが嬉しいわね。ああぁ、いつぶりかしらこんなにも貪欲に知識を求めたくなったのは。けれど、あの子にはフランを救って貰った恩もあるし、下手に手を出せないのが残念ね。レミィも許してくれないだろうし……出来る限りの外には出したくないってのが本音なのよねぇ。本当だったら霊力の扱いも私が教えるつもりだったのだけれど、どうせ手出しが殆ど出来ないのなら誰かに任せて私は観察に徹底しようかなって思って貴女のところに連れてきたの。そうしたら案の定早速不思議な事が……あぁ、ほんっとうに良いわ……これで松に手を出せる事が出来れば百点満点だったのに」

 

 パチュリー様は不気味な笑みを浮かべたまま饒舌に、言葉を吐き続けた。

 何度か見たことがある。咲夜さんがこの館で働くようになったときもこんな風になっていた。ここまで酷くはなかったものの、その執念は凄まじいものだった。酷いときでは部屋に軟禁……と言うこともあったみたいだ。まあ、それでも待遇は悪くなかったようだが……。

 しかし、今回はそれを越えている。だとすれば、軟禁どことの話では済まなくなってくるかもしれない……そうすればスカーレットの名に傷が付いてしまう。私が彼を守らなければ……。

 

 

■□■□

 

 

 

 体が動くようになった。それと同時にあの体を覆うような暖かさも無くなり、今度は体の奥からほんのりと感じ取れるようになっていた。

 

「どうやら動けるようになったみたいですね。それでは、早速修行を始めていきましょう」

「宜しくお願いします」

「はい。よろしくお願いしますね。では、楽な姿勢で座ってください。胡座でも正座でも、足を伸ばしても構いませんよ」

 

 俺は言われた通りに楽な姿勢、胡座をかいて地面に座った。

 

「今から行うのは精神統一の修行です。やることは至って単純でこれから日が沈むまでずっとその体勢を維持してもらいます。そうですね……今からですと……取り敢えず三時間。その後一時間の休憩を入れ、そこから五時間といった所でしょうか」

「分かりました」

「最終的な目標としては、霊力を操れることでは有りますが、目標と言うものは少し高めに設定していた方が良いでしょう。寝ている状況でも霊力を維持できる。もしくは起きた直後すぐに霊力が展開できるようになる。と言うことを目標としましょうか。とは言っても言葉だけでは分かりませんよね。まあ、そのうち分かってくるようになりますよ。それと、修行中別のことを考えたり、寝てもい良いですがその姿勢だけは絶対に崩さないこと。いいですね?」

「分かりました」

 

 こうして修行が始まるのだが、これは想像以上にキツイ。

 ただ座っているだけ。そう座っているだけなのだ。手を動かすことも、足を動かすことも、首を動かすことも……何も出来ない。

 そう、それはまるで、実家に戻ったようだった。言葉がないあの食卓。ただ口に物を運ぶと言う作業のような食卓……。

 

 俺はそんな作業をたんたんとこなしていった。

 

 




お読みいただき有難うございます!!

漸く修行に入りましたね。
そして、美鈴とパチュリーが感じ取ったナニカとは一体……?

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

ほんわかものも書いてみたい今日この頃

では、また次回~

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