実際、現代の人間が幻想郷に辿り着いたら生きづらいと思う。
生活しにくいではなくて、生きづらい。
言葉は似てるのに、こんなにも意味が違う。本当に人間って難しいですよね。
では、どうぞ!!
門のところにいた女性に戻るように言われ、朧気な記憶を頼りに何とか図書館の前までやって来れた。
「それで?なんで館内から出たのかしら?」
「いや……その、大したことでは……アハハ」
「……まあいいわ。それにフランも居ないみたいだし此方としては都合がよくなっていると言うことであまり詮索はしないでおきましょう」
パチュリーさんはそう言って手に持っていた本を机の上に置いた。
「内容が内容だから分割して話すわよ。まず、貴方には霊力をある程度操ってもらえるようになってもらうわ」
「霊力……人間のエネルギーみたいなものでしたっけ?」
「そうね。そんな感じの認識で大丈夫よ。それで、霊力を操って貰う理由としてはその手ね」
パチュリーさんは俺の金属の義手を指差した。
「それは魔道金属。アダマンティウムまでには届かないけれどかなりの強度を持っているからそう簡単には壊れてくれないわよ。まあ、使用した材料が材料だしね。それで、その義手を動かす方法が霊力等による物なの。さっき館のそとに出たわよね?」
「……出ました……」
「どうだった?義手は動いたかしら?」
「いや、急に動かなくなりました」
「でしょう?そのお陰で私が渡した水晶も落としたみたいだし。別に大したものじゃないから良いのだけれど、今後は気を付けなさい」
「はい……」
パチュリーさんは良しッと満足げ頷き話を続けた。
「それで、さっきも話したけれどその義手の原動力は魔力や霊力等といったものが使われていて、この館内は私が防護魔法を掛けているから一度動かせばずっと動くだろうけど、外だとそうもいかないのよ。だから貴方にはその義手を動かす程度の技術は学んで、実行できるようになってもらうわ」
霊力……何となく分からないでもないが、……あれだ、陰陽師とかの奴だ。だけど、自分がその霊力を使うとなったらどうすれば良いのだろうか?
「ああ、それなら私が教えるから気楽に構えなさい。そりゃあ最初は大変でしょうけれどね」
「そうですか。よろしくお願いしますパチュリーさん」
「それじゃあ、もう一つ……とは言ってもこれが最後の話になるのだけれど……」
■□■□
「そう……ですか…………」
「ごめんなさいね。本当ならもう少しどうにかしてあげたかったのだけれど……私の専門分野ではないの……許してちょうだい……」
「許すも何もパチュリーさんは俺を助けてくれただけなんですよね?なら、俺がパチュリーさんに感謝する事はあれど、恨んだりするような事は有りませんよ。むしろ、こんな身体にしてしまった俺自身を恨むべきです。にしても……まさか俺の体がこんな事になるなんて……昔の俺は絶対に想像していなかったでしょうね」
「……ごめんなさい」
「謝らなくて良いですってば。むしろあれは自分への嫌みですよ。もっと自分の身体ぐらい大切にしろや!!って」
「…………ふふふ、意外と優しいのね」
パチュリーさんは笑ってくれた。それは作り笑いであったけれど、笑ってくれた。だから俺も作り物の本当のこの気持ちでおどけてみせるのだ。
■□■□
パチュリーさんに案内された部屋で一夜を過ごし、何事もなく目を覚ます。すると、目を覚ましたのを見計らったようにこあくまさんが部屋へと入ってきた。
「佐々木様。レミリア様から部屋まで来るようにとの事です」
そう告げたこあくまさんは部屋から出ていった。
俺は直ぐに準備を済ませ(とはいっても着替えなんて無いので、歯を磨いて、顔を洗った程度だが)部屋を出る。また前回のように何かしらの方法で案内してくれるのだろう。と思いつつ部屋を出て、既に起きていたパチュリーさんとこあくまさんに軽く挨拶をした後、図書館から出る。案の定外にいたメイドさん(妖精という奴だろうか?)に案内され、レミリアさんの部屋の前まで何事もなく来れた。
扉をノックし返事を待つ。『ショウか。待っていた入ってくれ』と返事は直ぐに帰ってきた。
「失礼します。おはようございますレミリアさん」
「吸血鬼からしたら夜だがなっと、こんなふざける為に呼んだ訳ではないのだ」
最初こそおどけるように笑っていたが、一瞬にしてその顔から笑みは消え、真剣な表情で此方を見ていた。そして……
「この度は済まなかった」
膝を折り、地に額を付け謝ったのだ。俺はただ、それを見ているしかできなかった。訳がわからなすぎて、動けなかった。何故なら、今目の前で起きている出来事は、社長が平に対して土下座をしていることとほぼ同じだからである。
「えっと、あの……状況が理解できないのですが……。と、兎に角顔を上げてください!!」
「それは出来ない」
「どうして!?」
「私は紅魔館の主。そしてショウは客人だ。だというのに私はショウに危険が及ぶと分かっていながら、ただの私欲の為だけに咲夜を煽った。紅魔館の主として、客人相手にこれ程の無礼はない。本当に……ッ!!済まなかったッ!!そして、フランを……私の、妹を……すくってくれ……てッ、感謝するッ!!ありが、とうッ」
耳に届く謝罪と感謝の言葉。そして、微かに聞こえる水の音……顔を上げてくれなんて、冗談でも言えなかった。
■□■□
それから数分、レミリアさんが顔を上げ漸く話が出来る状況になった。
「んっ、それじゃあ話を始めようか」
そう言うレミリアさんの頬はうっすらと朱に染まっていた。
「はい。それで、自分に話とは一体?」
「いやなに、ショウは被害者な訳だから、事情を話しておかねばと思ってな」
「事情ですか」
「ああ……。まず、私はああなることは知っていた」
「知っていた?」
「私には見えるのだよ……運命という奴がね」
そう言えば……この間運命を操るだとか何とか言っていた気がする……。
「まあ覚えていないのも無理はない。なんせあんな状況にしてしまったのだからな。私にはあのとき幾万と言う数の運命が見えていた。運命というのは血管のようなものでな、大きな血管から枝分かれして細い血管に繋がっている。私はフランを救いたかった。外に出したかった……しかし、な?駄目だった……私も父と母のように殺されるのではないのか……?そんな死への恐怖が私を進ませようとはしなかった。それでも何とかしようとはしたのだがな……?だが、その頃には、フランの心へ私の声は届かなかった。それから三百年……お前が現れた。そして、見えたのだ、傷だらけになりながらフランの部屋に逃げ込むお前が。フランの手を握っていたお前が。しかし、それもしょせんは運命なのだ。そう都合の良い方へと必ず転がるわけではない。それでも、私は雲をつかむきような気持ちで、お前に、ショウに賭けたのだ」
「そうですか……。お役にたてたようで何よりです」
「ああ……本当に、ほんっとうに済まなかった。そして、フランを救ってくれて、どうも、ありがとう!!」
俺は振り替えることなく部屋を出た。扉を閉めるときにチラッと見えた飛び欄隙間からはレミリアさんが深々と頭を下げているのが見えた。
ああ、本当に、この世界は俺には生きづらい
お読みいただき有難うございます!!
パチュリー様はこの世界では黒魔術に近いものを扱っている設定です。
レミリア様は……どうしようかね?
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
(カリスマブレイクは)ないです。
では、また次回~