歪んだ愛をアナタに(完結)   作:ちゃるもん

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投稿です!!

……テンプレ乙

では、ドウゾ!!


第12話 憧れ

 何時ものように本を読んだり、意味もなく右手を握っては開いてみたり……。認めたくはないが、それが私の日常だ。もうこんな生活を五百年近く過ごしている。まぁ、実際にはもう少し短いだろうが……。

 最初の頃はお姉様が人間を連れてきたりして~が出来るようにとか何とか言っていたが、それも百年も続けば何時しか無くなり、二百年経てば訪れるものは一気に減り、それから更に二百年の間は誰も訪れなかった。

 ご飯は毎日同じ時間に扉の前に置かれ、お風呂は備え付け。唯一の娯楽である読書は新しい本が一ヶ月に一回一冊の本が扉の前に置かれているので、それを何回も読み返している。部屋の奥には、私の体が埋るほどの本の山が出来ているほどには沢山の本を読んだ。それが、外で沢山に含まれるかどうかも私には知るよしもないが。

 

 まあ、そんなことはどうだっていい。そう……どうだっていいのだ。

 

 今日、この日、この時、この部屋に、来客が訪れたのだ!!

 

 しかし、その来客はズタボロだった。身体中に切り傷が、所々ナイフも刺さっている。出血も酷い。少し言葉を交えたらパタリと来客は倒れてしまった。

 

 どうしようか?

 助けた方が良いのだろうが、処置の方法なんて分からない。取り敢えずは簡単な治療魔法で出血を止めれば……。

 そう考えた私は早速行動へと移した。先ずは男を治療しやすい場所、ベットまで移動させ、服をはだけさせる。後は男を包み込むように魔法陣を展開して……。うん。初めてだったけどどうにかできた。後はこの男が起きるのを待つばかりだ。

 

□■□■

 

 男は三時間後位には目を覚ました。

 最初もそうだったがこの男は吸血鬼が怖くないのだろうか?まあ、そんなことは些細な事。そうだ、どうせ助けたなら外の話をしてもらおう。

 

□■□■

 

 すごい……外にはそんな大きな建物が存在しているなんて……!!

 

 男は私が一々大袈裟に反応するのが楽しいのかどんどん饒舌となっていった。しかし、大袈裟になる事許してほしい。此だけ長いときをこの牢獄で過ごしてきたのだから……。

 

 おじさんが話していた物はげんそうきょうの風景ではなく、更にその外の世界の風景らしい。ではげんそうきょうの風景はどんななの?と聞いてみたが、おじさんもげんそうきょうに来たのはつい最近らしく、知らないと首を振られた。

 

 

 

 

 

 ああ、此処まで外に出たいと願ったのは何時ぶりだろうか?

 今ではお姉様が出した条件も覚えてはないけれど、ああ、外に出たい……!!

 外に出て、外の外の世界と、幻想郷との違いをこの目で見たい、確かめたい!!

 

 

 

 

 

 だから、私はおじさんに提案した。

 私と契約してほしいと。私を此処から、この牢獄から解き放ってくれと。代わりに私は貴方の盾となる……だから、どうか……!!

 

 おじさんは黙り、そして、私に手を差し伸べた。

 私はおじさんの顔を見た。生まれて初めて見る笑顔と言うものだった。

 私は手を取るのを躊躇った。だって、怖かったから……。この手を取れば……外に行ける……けれど、確実にお姉様と顔を会わせなければ行けない……そうしたら、私はここに連れ戻され、おじさんは殺されてしまうんじゃないのか……。

 

 けれど、けれど…………。

 

 

 

 ごめんなさいおじさん。私が絶対に守って見せるから……。私を外に―――

 

 

 

 おじさんの大きな手に握りしめられた私の右手。

 そして、耳を燻る心地のよい声…………何時か本で読んだ気がするこの感情……この酔ってしまいそうな甘く、苦しい感情……。

 

 

 

 

 ああ、これがきっと―――――

 

 

 

『うん。それじゃあ行こうか』

 

 

 

 

 こうして、私は約五百年ぶりにこの部屋から踏み出したのだ。

 

 

 

 

□■□■

 

 未だに名前を聞いていない少女と手を繋ぎ、階段を上っていく。最初こそ少女の足取りはたどたどしいものではあったが、今は確りと自分の力で立っている。

 そうして、今、漸く階段を上りきった。

 

「良かった……無事だったのね」

 

 階段の入り口にはパチュリーさんが心配そうな顔で佇んでいた。その額にはうっすらと汗が見えることから随分と心配させてしまったのだろう。

 

「心配させてしまったようで……すいません。ところですあのメイドの方は?」

「ああ、咲夜の事?軽く懲らしめて今は隣の部屋で寝てるわよ……いや、ちょっと待ちなさいな。聞かれたから答えちゃったけど何でフランもつて来てるのよ?」

「え?いや、外に出たいと言ってましたので」

 

 パチュリーさんは俺の答えに小さく溜め息をつ吐いた。どうしたのだろうか?なにか不味いことでもしてしまったのだろうか?

 

「いい?その子は……いや、どうせだからレミィに話してもらいましょう。その後も話さなければならないことが沢山あるのだかし、それに、私だけが喋りぱなっしと言うのも何だか詰まらないわ。小悪魔は咲夜の……メイドの世話をさせているから……此を持っていきなさい」

「これは?」

 

 パチュリーさんが渡してきたのは手のひらサイズの半透明の球体。ガラス玉か何かだろうか?

 

「そこに館内の地図を出すからそれを頼りに進みなさい。それで、レミィの話が終わったら戻ってくるように。それとフラン」

『………………なに』

「そんな殺気を出さなくてもなにもしないわ。って言ってもムダでしょうけれど……それだけの事を私は、私たちはしてきているのだから…………でも、でもねフラン……そんな最低な私だけど、少しだけ、少しだけでいいから、言わせて頂戴……」

 

 パチュリーさんはその瞳から大粒の涙を流し、ゆっくりと少女の肩を掴み抱き締めた。

 困惑している少女を、ただ、ただ、壊さないように抱き締め

 

「ごめんね……ごめんね、ごめんなさい…………おかえり、フラン………」

 

 少女は答えなかった。しかし、その噛み締められた唇。パチュリーさんの服を握り締めるその手。そして、その頬に伝うもの……。

 

 何とも言えない気持ちが心を締め付けていく感じがした。

 

 




お読みいただき有難うございます!!

ひ。フランちゃん参戦ね。
テンプレテンプレ

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

さて、フランちゃんは主人公の癒やしとなれるのか

では、また次回~

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