急に暑くなってきたこの頃、皆様どうお過ごしですか?
この時期は体がダルくなってしまいがちですが頑張ってきましょう。
では、どうぞ!!
「この先に館の主。レミリア・スカーレット様が居られます。粗相のないように。それと、危なくなったら図書館まで逃げてきてください。それでは、私は此処で失礼しますね」
「ありがとうございました」
彼女の最後のの言葉に首を傾げながら、一応お礼を言っておく。すると、こあくまさんは小さく微笑み、背中を向け来た道を戻り始めた。
一度大きく息を吸い、小さく吐き出す。
こんなにも緊張しているのは、心中を忙しなく駆け回るパチュリーさんとこあくまさんの言葉のお陰だろう。震える左手を、冷たい右手で押さえ、心を落ち着かせる。
そして、左手でゆっくりと……
……コンコンコンッ
三回乾いた音が静かに響く。
『随分と待たせたじゃないか。入ってくるがいい』
返ってきたのは楽しそうにコロコロと笑うかのような可愛らしくも、どこか重みのある声。
ギィィィ
ゆっくりと重たい扉を押し開き、中へと入る。
「し、失礼します」
『よく来たな。さあ、掛けてくれ』
指示に従い部屋の中央にある椅子に腰を掛ける。そして改めて目の前の人物を見る。人物と言えるかはどうかは疑問ではあるが……。
身長は座っているからハッキリとは分からないが、恐らく百六十センチはある。薄いピンク色のドレスを着た麗しい女性だ。その深紅の瞳は何故か見いってしまうほどに美しい。そして、一番目を奪われたその背中に生えた一対の羽。蝙蝠のような形をした羽は彼女が人間出はないことを知らしめていた。
『ふふふ……吸血鬼を見るのは初めてか?』
「えっと、そうですね」
『まあ、それもそうか。外来人であるお前が見たことがあるはずもなかろう。殆んどの吸血鬼は戦争で殺されたし、そもそも戦争を起こした理由が種族絶滅の危機を避ける為だからな。おっと、自己紹介が遅れたな。私は紅魔館当主、レミリア・スカーレットだ。レミリアで良いぞ』
「佐々木松です。よろしくお願いしますレミリアさん。あの、ところで……何で自分が外来人なのを知っていたんですか……?」
少なくとも俺からは何も言っていないはずだ。考えられるとすれば……アリスさんが話をしに来ていた……とかか?正直今の状況だと会いたくはないな……。
「ふむ、もう少し驚いてくれた方が嬉しいんだがなぁ。まあいい。それで?何でショウが外来人なのを知っていたのか。だったかな?能力で分かったと言えば簡潔で何だが……そうだな……能力についてはどの位理解している?」
能力?確か…………。
「強い願いが力として覚醒した特殊な能力…………位しか」
「そう、正解だ。寧ろそれで説明がつくのが困るな。ならもう少し深く話をしようじゃないか。そうだな……私は『運命を操る程度の能力』と言う能力を持っている。これは私が子供の頃に目覚めた能力だ。私には妹がいるのだがな、良い関係を築けるかを心配していたときに目覚めた。まあ、結局ああなってしまったのだが……。おっと、関係ないはなし……でもないのか。ショウ、一つ問おう。能力はその能力の持ち主の強い願いが具現化したもの……間違いないな?」
その筈だ。現にレミリアさんもその事について肯定していた。しかしだ、こうして問いかけていると言うことは何か見落としがあるのかもしれない………………。
「……生まれ持った才能みたいに、生まれた時から能力を持っていた……とかですか?」
「お、正解だ。外界では能力の概念など空想の産物だと聞いていたんだが強ちそうでもないのかな?そう、生まれた時から能力を持っていた。このこと事態はそこまで珍しい事でもない」
「珍しい事でもない……ですか。でもそれだと可笑しいですよね?産まれたばかりの子供に願いなんてあるのですか?」
「まず無いだろうな。そもそも感情を持ち合わせているのかも怪しい所だ。だが、珍しい事でもないと言うのは本当だ。これは人間には当てはまらないんだが、殆んどの妖怪には自身の性質とでも言えばいいか?まあ、生まれ持った役目みたいなものが有るのだよ。例えば病気を蔓延させたり、生物の視界を奪うような奴だったりな。そう言う奴等の多くは生まれ持ち能力を持ち合わせている。その性質や役目が願いの代わりをしているわけだな」
「なるほど……それなら妹さんも吸血鬼の役目のようなもので能力が?」
俺がそう問いかけると、レミリアさんはあからさまに顔を顰めた。そして小さく『それであればどれだけ良かったか……』と呟いた。
まずい事を聞いてしまったのだろうか……?と、内心焦っているとレミリアさんは苦笑いを浮かべ口を開いた。
「聞こえてしまったようだな。あんまり話したいことではないんだが……、吸血鬼にはこのような能力はない。目的が合間だからな。代わりと言っては何だが、変態、変身の方が分かりやすいか?蝙蝠や狼に変身できるんだ。人間に血を与えれば眷属として吸血鬼に出来る。他にはチャームと言って、異性を強制的に奴隷にする力なんかもあるな。お前にはあまり効果がないようだが……他には流水に弱かったり、太陽光や銀に弱かったりも入るな。今あげた六つが吸血鬼が生まれ持ち持つ能力だ。だが……妹は……フランは……」
フランと言う名前を出したレミリアさん。机の上に握られた握り拳からは血が流れ、机の上を赤く染め上げていた。
「あの……無理して話さなくてもいいですよ?初対面な訳ですし」
レミリアさんの赤い瞳が、俺の目をじっと見詰める。それだけの事なのに手にはじっとりと嫌な汗が浮かび気持ち悪い。
「まさか初対面の人間相手に励まされるとはな……。ああ、確かに初対面だ。だが、お前はある意味では私の希望なのかもしれん。最後まで話させてもらう。心して聞けよ?
フランはな……蝙蝠になれても、狼にはなれない。人間を眷属に出来ても、奴隷には出来ない。太陽光も、流水にも弱いが、銀には耐性がある……。そして、フランは生まれ持ち能力を持っていたんだ。父と母を生後一分で殺した、その身には大きすぎる『ありとあらゆるものを破壊する』能力がな……。
ふう……この話をしたのは……十年ぶりか?そうだな……。今日はこれまでにしよう。ああ、そうそう紹介しておこう。紅魔館のメイド長である十六夜咲夜だ」
『お呼びでしょうかおじょうさま』
レミリアさんが十六夜咲夜と名前を呼ぶと、その右一歩後ろに銀髪の女性が現れた。まるで瞬間移動でもしたかのように。
そして、銀髪の女性と視線が交差する。次の瞬間―――
―――ズサッ
「はえ?」
何かが左肩に突き刺さる。恐る恐る左肩を触ってみると、ドロッとした液体のなかに何か固いもの。その固いものに触れてみると、よほど切れ味が良いのかスゥーと指先が切れる感触が伝わる。
それが、銀髪の女性が投げたナイフだと気付くのに一体どれ程の時間が掛かったのだろうか?
「うがぁあああああああ!!!!」
涙が目に溜まり、決壊し、滝のように流れ落ちる。
視界の端には、二つの影。そして、その一方が何かを構えていた。
俺は訳も分からず走った。部屋から転がり出て、助かりたい一心で、唯一助けてくれるかもしれない相手の所に、ただ、がむしゃらに逃げ続けた……。
お読みいただき有難うございます!!
咲夜 の 先制攻撃 !!
原因やらなんやらは次回だよ!!
誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。
紅魔館は長くなりそうです。
では、また次回~