連邦兵のザンスカール戦争記   作:かまらん

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スタンダットゥーザビクトリー!


第8話 メッメドーザの襲来 後編

「ケイト!!今は逃げろっ!!」

そんな呼び掛けは自分でも意味が無いとわかった。もしガンイージが橋から離れると、マスドライバーのレールが崩れてしまうからだ。そんな事を思いながら、ガンイージの向かうマスドライバーへと向かっている。

 

「…やばい!!」

 

だからと言ってケイトをそのままにさせられるのか。敵が撃墜しようと近づいているのだ。

高速で接近する新型。その手には、緑色の刀身のビームサーベル。奴はガンイージを貫くつもりだ…!

 

「…!やらせるかってんだ!!」

 

レバーを押し出し、バーニアをフル稼働させ、新型へと向かう。しかし、空中での機動性はあちらの方が上であり、また距離も近くは無く、追いつく事ができない。

ガンイージもバルカンで抵抗するも、そんなのは焼け石に水だった。両肩にあるビームローターで防ぎ、距離はどんどん短くなっていく。

やばい…あのままだと、ケイトが危ない…!!今更ながら機体の性能の差に、悔しさを感じてしまう。ウッソのVならば、あの新型を止められるだろう。

 

「…くそ!!この状況で、確実に助けが来る可能性が無いってのに俺は…!!」

 

人を頼ろうとしていた。自分の情けなさに奥歯を噛み締める。だが、今はそんなのどうでもいい!とにかくだ、ケイトを奴の攻撃から防がないと…!

 

「何とか奴の動きを止められれば…!!」

 

バルカンを連射させるが、新型の装甲はトムリアットよりも頑丈であり、直撃しても、何も破損した所がない…!

 

「トムリアットとは違うのか…!?」

 

ライフルを使えるはずも無い。マスドライバー…いや、放ったビームが、ガンイージにまで被害が及ぶからだ。…けど、いやどうすればいいんだ!?

 

「何か策を考えろよ!」

 

自分自身にキレながら、必死に対策を考えようとする。けど、何も思い浮かばない。その間にも新型はガンイージへと間近だった。そしてビームサーベルで、コックピットを突き刺そうと、刀身の切っ先を向ける。あのままだったら、ケイトが焼き殺されてしまう…!!

 

『め、メオ…』

 

回線でケイトが俺を呼ぶ。その声は少し、震えている。

ケイトの視線からすると、死が目の前で近づいている様なものだった。抵抗もできずに、ただ死を待つのみ…それは途轍もない恐怖だろう。絶望しか湧かないだろう。

こんなやり方でケイトは殺されようとされているんだ。そんな事はさせるか、例え新型であろうとも。

新型が何だ、俺は地球連邦の軍人なんだぞ、軍人がビビるな。

 

「この猫目野郎なんかに、好きにさせるかぁぁ!!」

 

確固たる意志で叫けぶ。ジェムズガンの左腕のビームシールドを咄嗟に見る。そしてある事を思いついた。やれるかわからないが、そんなの迷ってる暇は無い。

 

ジェムズガンのビームシールドを展開させ、腕から発生装置を取り外す。多少なら、ビームシールドは機体と独立して機能できる。その特徴を活かし、そのまま、

 

「あたれぇぇぇ!!!」

 

新型へと投げ飛ばした。ビームロータのごとく回転する、ビームシールドはそのまま、新型の頭上へと通り過ぎ…てはなかった。

 

両肩のビームロータの間に、ビームシールドが引っかかり、プロペラが食い違う。同じビーム同士だ。物理的に引っかかるのも道理だろう。そして、回転が止まった事により、新型の機体は飛行する事ができないまま、マスドライバーの下部にある崖へと滑り落ちていく。

 

「逃がすかよ…!!」

 

その隙へと、落ちていく新型へと向かう。相手側のパイロットも一体何が起きたのか、理解できずに気が動転しているだろう。新型のマニピュレーターからビームサーベルがこぼれ落ちる。パイロットがパニックになっている、その間に新型との距離を縮める。

引っ掛けたビームシールドが稼働を止めた。ビームの膜が消滅した、発生装置を斬り裂き、ビームローターが再度回転を始めた。新型はそのまま機体を起こそうとした…が、

 

「させるか…!!」

 

起きようとした機体をジェムズガンでそのまま押し倒す。1機のMSの重さが加わった事により、滑り落ちる速度がより加速する。稼働しようとしたビームローターも、機体が倒れて、プロペラが地面を巻き込むので、もはや意味を成さない。

 

『この旧式がっ…!!後少しで、撃墜スコアを伸ばせたものの…!!』

 

肌の触れ合い回線で聞こえる、野太い男の声だ。このMSのパイロットらしいな。撃墜スコアなんてふざけた単語を耳にし、俺はこのパイロットに対しての不快感が心の中で収まりきれない。

 

「悪いがここで終わらせるぞ…!!」

 

『…クッ!?』

 

そのまま、ビームサーベルをコックピットに突き刺そうとする…が、

 

「何!?」

『はははッ!!メッメドーザがこんな所でやられるものかよ!!』

 

新型の右肩にあるビームキャノンが放たれ、ビームサーベルを持っていた腕に直撃し、溶解する。だが、このまま密着しておかないと、この新型を撃墜する事が難しくなってしまう…!

 

『連邦軍のMSなんざ所詮その程度なんだよッ!!パイロットもな!!』

もう左肩にあるビームキャノンが、今度は胴体の脇腹を掠める。掠った場所は少しで穴が開き、コックピットが外に露出する。装甲が溶解しており、その所為でコックピット内に熱気が立ち込めるが、エンジンに当たらなかっただけマシだ…

新型…いやメッメドーザという名のMSが起き上がろうとする。敵パイロットの叫びに応じて、猫目のセンサーが開かれる。だが、こちらとしてもまだ終わるわけにはいかない…!

 

「まだだ…!」

 

『こ、こいつ…!?』

 

バルカンをメッメドーザのメインカメラに発射させる。至近距離でのバルカンは威力があり、メインカメラを破壊する。敵パイロットとの回線はそこで途絶える。どうやらセンサー的なものも破壊されたようだ。

 

「…!あいつのビームサーベルか…!」

 

刀身を出していない、ビームサーベルのグリップが岩に挟まっていた。これは好都合と、腕を伸ばし、グリップを握る。メッメドーザは四股を振り回し抵抗するが、もう遅い。

崖へと滑り落ちていたが、麓へとたどり着き、動きが止まった。

 

「大丈夫だ…すぐに楽にしてやる!!」

 

俺はサーベルで脇腹からコックピットを串刺しにした。抵抗していたメッメドーザは、ピクリとも動かない。パイロットは焼け死んでしまったのだろう。

 

「…」

さっきまでの激闘とは裏腹に、静けさが漂う。それは戦いの虚しさの所為なのだろうか。滑走路の方面も最初は爆撃音が聞こえていたが、今は静かになっている。ベスパの部隊を殲滅したか、或いは撤退させたのだろう。その証拠に、Vのコアファイターがこちらに向かってきているのがわかる。

メッメドーザの亡骸を目にする。結局は俺も、敵パイロットがケイトを殺そうとしていたやり方をしてしまったんだ。例え状況が違ったとしても、殺したのには変わりがない。自分自身が正しいのかわからなくなる。それが戦争の恐ろしさなのかもしれないが。

 

「ケイトは無事だろうな…?」

 

マスドライバーの柱となっていた、ガンイージへと駆け寄る。マニピュレーターを柱に固定させ、機体が落ちないようにする。

外傷は無いようだが…だからと言って、マヘリアの様に内部での衝突で怪我をしているかもしれない。

 

「大丈夫か…?」

 

コックピットのパネルを入力し、ガンイージの内部へと入る。そこには、放心状態のケイトの姿が。しかし、俺の姿を目にすると感極まったのかケイトが俺に駆け寄り、抱きついてきた。俺は唐突さに、後ろに倒れかけそうになった。

 

「お、おい…」

 

「ごめんね、今はこうさせて欲しいの…お願い」

 

顔を背けており、ケイトの表情が窺えない。だが、あんな目に遭ったんだ。やはり何かトラウマ的なものができてしまったんだろう。

このままソッとするのが1番の最善策だな。そう思い、俺はケイトの気がすむまで、その場にジッと佇んだ。

 

 

 

---------

 

 

 

「…ありがとう、もう大丈夫よ」

 

ケイトは俺から離れ、いつも通りの笑顔で感謝を述べる。だけど、やはり元気が無さそうだ。

 

「大丈夫か?別に無理すんなよ。まぁ俺も無理したくないが…さっさとベッドで休憩を取りたい。眠たいんだよな…」

 

「アハハ、私も眠いと思ったんだよ。後、少しお腹が空いたな」

 

そういや、戦闘中で気づかなかったが、こちらも腹が減っていたんだ。ゴメス大尉の乾パン、また摘まもうかな。

俺はそんなことを考えながら、上空を見る。Vのコアファイターがもう直ぐでこちらに来る。

 

「あんたと、ウッソとのやり取り見て…兄弟みたいだって言ってたの、覚えてる?」

 

「ん?あぁ…」

 

ヘレンと一緒に俺をからかっていたっけか。あの時の悲鳴は物凄くからかわられたな。

 

「あんたにはからかっていた様に見えていたのかもしれないけど…」

 

「…」

 

ケイトは目を細め、微笑みながらも、どこか寂しげだ。今の彼女が話す内容は真剣な事だと感じ取り、俺は無言で聞く。

 

「そんな風に見えるあんた達が羨ましかった。…私の家族は、事故で私以外全員が亡くなった。だから1人で生きてたんだ」

 

何て反応すればいいかわからなかった。同情したら、それはそれで偽善者だと思われるだろうし、その反対に冷酷な態度で接すれば、ただの薄情者だろう。

 

「…そして死ぬときも1人だと、思っていたんだ。実際にメオがいなかったら、あそこで死んでいたよ…」

 

「あんまりネガティヴ思考だと、ストレスが溜まる一方だぞ?そんな事思っているから、不吉な事が起きるんだ」

 

どう言葉を返せばいいか、わからない。自分が言っている内容は、まるでカウンセラーだな。そんな事を心の片隅で自覚する。

 

「別に家族がいないからって、孤独ではないだろ。友人…いや、仲間がいる時点でお前は1人じゃない。というか…まあ、あれだな…」

 

言葉が続かない。語彙力のない俺がとても恨めしい。すると、ケイトは体を震わしている。やばい、なにか気に触ることでも言ってしまったか?

 

「あははは!!まるで心理カウンセラーみたいだよ、メオ!!」

 

ケイトはどっと笑う。いや笑い転げる。こいつ…折角、俺が気を遣ってやったのに、その反応は無いだろう?

「ふふふ…さっきのは演技よ演技!メオがどこまで私を口説けるかのテストをしていたんだよ」

 

「口説けるっ!?お前、俺の親切心を弄びやがって…!!」

 

笑い涙を拭うケイト。全く、こいつは何てヤツだ。もう2度と気を遣ってやるものか、そう心に誓う。

 

「メオさん!ケイトさん!大丈夫ですかー!?」

 

「おーーい!ここだよここ!!」

 

コアファイターのコックピットからウッソが安否確認をしている。

ケイトは、さっきの態度とは一変して、元気を取り戻してるかの様だった。

まぁ…結果オーライだな。

 

「さぁて、さっきのメオの言葉、みんなにどう伝えてあげようかな?」

 

「なっ!?…や、やめろ!!」

 

それよりも、このケイトが言いふらすのをどうにかしなければ。さっきのケイトへの慰めの言葉を思い出し、俺は頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メッメドーザって個人的にはとても大好きです。あの足の部分のファンがとてもツボです。
誤字、脱字のご指摘よろしくお願いします!

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