連邦兵のザンスカール戦争記   作:かまらん

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前編と後編と分けたのに、後編が半分近く長いのは、気にしないで(小声)


第5話 ギロチンとの戦い 後編

「…見つけた!!」

 

ビームの流れ弾のせいか、それともMSなどのバーニアの風圧のせいなのかはわからないが、港町の南にある、ゴミ山が積まれている浜辺は大きなクレーターや黒い煙が上がっている。その上空では、コアファイターとトムリアットが交戦…と言うよりも、トムリアットの一方的な攻撃であった。コアファイターはトップリムだけを、合体させており、ビームライフルで撃つものの、地上戦用のMSだ。あっさり避けられたり、ビームローターで防がれる。その繰り返しだ。

 

俺はビームライフルで、トムリアットに威嚇射撃する。発射されたビームはビームローターで防がれ、そのままトムリアットはコアファイターから、距離を離す。それでも尚、狙いはコアファイターに向かっている。俺は蚊帳の外とでもいうのか? 

 

「ウッソ、早く戻れ!」

 

『大丈夫です!僕はまだ戦えます!! 』

 

「おい待て!!…あぁもう!!」

 

俺の回線での呼びかけも虚しく、ウッソはトムリアットの方へと向かう。何故かウッソの言葉には、怒りが含まれている様に聞き取れる。 何でこいつはこうまでして無茶をするんだ?そこに疑問が浮上する。だが、今そんな疑問を抱いたとしても、今の状況はウッソが危ない。あいつが撃墜されない様、出来る限りの援護はしなくては。

 

『メオ!聞いてるかい!』

 

マヘリアからの通信が繋がった。しかし、彼女の様子が慌ただしく、その事に、俺は何かしらの不安が頭によぎる。俺はトムリアットにビームを連射させながら、返答する。

 

「何だマヘリア!!」

 

マヘリアのところも、まだ戦闘中であるのか、爆発とビームの射撃音が聞こえる。ビームローターの音も、僅かにそこから聞こえている為、まだトムリアットとやりあっているみたいだ。

 

『あんたの所に、でかいフライパンが向かったわ!!警戒して!!』

 

「ふ、フライパン!?何の事だ!!」

 

マヘリアの言っている意味がわからない。何で調理器具が空飛んでんだ?彼女、幻覚でも見てるんじゃないか?…いや、冗談でも笑えないぞ、それは。

 

『ベスパのMAって事だよ!大型のキャノン砲を積んでた!!注意しな!!』

 

MAぁ!?何でそんなのがフライパンって呼ばれるんだ!もうちょっとわかりやすい言葉で言えよ!!

敵機が撃ってきたビームを、ビームシールドで防ぐ。その時、光が拡散し、眩しさにより、目を細める。こうなるなら、ヘルメットを被ればよかった。しかし、その後悔も戦いではすぐに忘れさせられる。

 

「MAだと…ふざけんな、2機で対抗できるものじゃないぞ…!?」

 

しかも地上戦用のMAとなれば、機動性も段違いだ。俺達に勝ち目がない。そんなネガティヴ思考に陥る。しかし今は、目の前の敵をどうにかしなければ。

 

『メオさん!すいませんが敵の気を引きつけてくれませんか!』

 

「ウッソ!引きつけてどうするんだ!!」

 

『僕が倒します!!』

 

俺は少し沈黙に浸ったが、ウッソはスペシャル。信じる他ないだろう。俺の腕で、倒せるとも限らないしな。

 

「わかった…。おい!この猫目野郎!こっちだ!!」

 

俺はバルカンを余す事なく、連射させる。コアファイターを攻撃していたトムリアットは、さすがに煩わしいと思ったのか、メインカメラをこっちに向ける。そして、ビームを連射させながらこちらに向かってきた。

ひ、引っかかったな!俺は後退りする事なく、トムリアットが接近してくるのを待つ。すると、その背後からコアファイターが全速力で来ているのがわかった。

 

「と、トップリムを、使うのか!?」

 

トップリムはVの(アーム)の部分であり、ウッソはMSじゃない状態で腕を変形させている。その手にはビームサーベルが握られている。

 

「ウッソ!は、早く来てくれぇ!!」

 

トムリアットは猫目センサーを開き、こちらを睨んでるかの様だ。ビームライフル、脚にあるミサイルも同時に放つ。俺の機体の周りに爆発が起き、止めどなく振動がコックピットに伝わってくる。

 

『うおおおお!!』

 

コアファイターが脇に潜り込み、桃色の刀身がトムリアットの左手を切断する。

す、スゲェ…、そんな言葉が小さく口から漏れ出る。こんな技を披露したウッソは、天才少年とも言うべきか…。

 

「!?」

 

だが敵側のパイロットは戦意が完全に喪失しておらず、海面へと下降しながら、右手のビームライフルをコアファイターに放った。

 

「あ、危ねぇ!!」

 

俺は脱兎の如く、コアファイターに向かうビームをシールドで防ぎ、下降するトムリアットに向かってビームライフルを放った。

 

「あたれぇぇ!」

 

ビームは機体の胴体、つまりコックピットを貫いた。操縦者が不在のトムリアットはそのまま火花を散らし、海へと飛沫をあげて沈没した。

 

「はぁ…はぁ…!」

 

『ありがとうございます!メオさん』

 

「これぐらいどうって事ねぇよ…」

 

やっぱりウッソは、礼儀正しい少年だな。本当はこいつがいなかったら、撃墜なんて儘ならずに、こちらの方が撃墜されたかもしれないからな。

 

空中飛行による、酔いにより、俺は頭がクラクラする。あー気持ち悪い。そんな事を思っていると、コアファイターは港町の方へと向かって行った。

 

「どこ行くんだウッソ!!」

 

『広場です!』

 

広場…彼処には何もないぞ?行ってどうすんだ?

…!いや、広場にはベスパが設置したギロチンがある!でもだからといって…

 

「そこに行って何をするつもりなんだ!?」

 

『ギロチンを…破壊しますッ!!』

 

ギロチンをだと!?あいつは一体何がしたいんだ!!すぐさま、コアファイターへとついて行き、ウッソとの会話を続ける。

 

「マヘリアからの情報だと、MAがこちらの方に向かっている!!そんな事をする暇は無いだろう!!」

 

『あのギロチンを破壊する事は…港町の住民、ロブおじさんの願いだと思うんです!すぐに戻りますから!!」

 

ウッソの気迫ある言葉に、俺はたじろいだ。ギロチンが怖くないのか…?あいつは、リガ・ミリティアの幹部である、オイ伯爵のギロチン処刑を見た事があるらしい。だとすれば、ギロチンの潜在的な恐怖も知っている筈だ。

 

港町の住民の為、今のウッソの言葉が頭の中で流れる。その言葉は、俺がウッソに対して抱いた疑問を打ち払った。

 

その逆だったんだ。恐怖を知っているからこそ、あいつは戦っているんだ。ウッソは心の葛藤を抑え、人の為に。恐怖に耐えながら、ベスパと戦っている。

それに比べて、俺は自分の心の弱さが情けないと思い、俺はレバーを握り締める。

 

「ウッソ!MAは何とか足止めするから、ギロチンなんかバラバラにしちまえ!!」

 

ウッソの手助けをする。臆病な俺である、唯一のできるの事だ。

 

『メオさん…!はい!わかりましたッ!』

 

コアファイターは港町に向かう。

 

「…あれか」

 

…どうやら、それに次いでベスパのMAが水平線の彼方から、ご登場の様だ。マヘリアの渾名の意味がわかった。巨大な砲身に、平らに広がった胴体。まさしく、「フライパン」だ。

しかし、フライパンと呼ぶには物騒だ。なにせ、戦艦の砲台レベルの大きさだぞ?あの砲身。

自分自身、こんなに余裕のある考えが出来る事が驚きだ。…いや本当は恐怖を感じている。余裕ぶって、無意識に怖くないと言い聞かせてるんだ。

こちらに迫ってくるMA。砲口がうっすらと光っている。

 

「!?…うおお!?」

 

トムリアットのビームバズーカとは桁違いの、極太なビームが放たれた。だが、さすがに長距離射撃は避けられる…が、戦艦の砲撃なんざあまり見た事が無い、俺にとってはスケールが大きすぎた。

明らかにMSをオーバーキルするレベルの威力だろ!?こんなんだったら、ジェムズガンなんて擦りでもしたら危険だ!

 

「だけど、やるしか無いよな!?」

 

自分に問いかけ、俺はMAへと向かう。フライパンの武装はあれだけじゃなさそうだ。長身の砲台を中心に、左右にキャノンが1つずつ積んでいる。それを確認し、MAは高火力の機体だと、改めて感じた。

 

「まずは牽制!」

 

ビームを2、3発放った。あのでかい図体だ、1発ぐらいは直撃するだろうと思ったが…その巨体とは裏腹に、機動性が高く、フライパンは上昇して避ける。するとそのまま、俺の頭上へと通り過ぎる。

 

「何っ!?」

 

通り過ぎたフライパンは、再び砲台をこちらに向けるため、カーブして転回、左右のビームキャノンを放つ。

 

「くそ!!」

 

ビームキャノンは、まともにビームシールドで防いでも防ぎきれない可能性がある。そうなればコックピットごと貫かれる。だけど無いよりはマシだ。ビームシールドで、コックピットを保護し、俺は精一杯にバーニアを吹かし、ギリギリに避ける。

俺の攻撃は避けられたりはしたものの、これであのMAの弱点がわかった。フライパンは前面でしか射撃ができない。だから、わざわざ転回したんだ。

ならば…と、さっきと同じくビームを放つ。フライパンは次は、斜め下へと急降下する。フライパンにとっては、側面は死角だが、あの機動力だ。狙いなんて定められないだろう。だから…

 

「いけええ!!」

 

俺の脇へ通り過ぎた、フライパンに、後ろから張り付く。フライパンの後部にある、バーニアの光の波が、目に差し込む。

俺は、フライパンとの距離が短くならないように、バーニアを限界ギリギリまでに吹かせる。もし、限界以上に稼働させてしまうと、オーバーヒートを起こしてしまい、使えなくなってしまう。俺はそんな事態が招かないよう、ギリギリの範囲で調節しながら、フライパンへと密着する。

 

「こいつの尻に掴めればいいんだ…掴めれば!」

 

機体の前面に襲う、バーニアの熱と衝撃。俺はそれに耐えながら、フライパンの後部をマニピュレーターで摑む。

 

「…がっ…!!あぁ…!?」

 

コックピットは熱気に包まれる。バーニアの部分と密着してるんだ、当たり前のことだろう。だが、それ以上に襲いかかる熱は、俺の身体に負担をかける。俺は大量の汗を流しながらも、サーベルラックからビームサーベルを取り出す。

 

「うおおお!!!」

 

そのままビームサーベルをバーニアに突き刺し、破壊することが出来た。

 

「グッ…」

 

マニュピレーターをフライパンから離す。

もう1つも壊したかったが、深入りは禁物だ。2つある内の1つを破壊できたんだ。バランスも狂うだろうと思ったが…

 

「何だと!?」

 

フライパンはさっきよりも半分は遅くなったものの、バランスも崩さずに、転回させる。

 

「嘘だろ…!!」

 

そしてそのまま、ビームが放たれ…俺は思わず目を閉じてしまった。

 

「うおお!?」

 

突如横から衝撃がくる。そのおかげか、ビームは避ける事ができた。行き場の無いビームが海面へと直撃したのか、ばしゃんと水の弾ける音が聞こえる。

何が起きたかと、目を開けてみると目の前にガンイージがいた。

 

『大丈夫かい!メオ!』

 

「あ、あぁ…!」

 

どうやら、マヘリアが俺の機体ごと押して、助けてくれたらしい。俺は大量の汗が噴き出し、止まっていた呼吸が再開する。

 

『まだ、動けるわね!』

 

「ああ、大丈夫だ!」

 

フライパンは再度ビームキャノンを放ち、俺とマヘリアは散開して避ける。

くそ…こいつまだ動けるのか…!俺の攻撃は無意味であった事に、悔しく歯軋りをする。

 

「!?コアファイターか!」

 

すると、コアファイターがこちらに向かっているのがわかった。

フライパンはその存在に気付き、ビームキャノンを放つ。すると、コアファイターのビームライフルに擦り、使い物にならなくなってしまった。しかし、それに動じず、コアファイターはフライパンへと直進する。

 

「な、まさか!?」

 

さっきのトムリアットとの戦いで行ったヤツをやるってのか!?

俺の予想は正しかった。コアファイターはそのまま、腕だけを変形、ビームサーベルを取り出し、フライパンの真下へと潜る。

そしてフライパンの長身の砲台を、ビームサーベルで斬った。砲身は熱の切断により機能しなくなり、フライパンは戦えないだろうと判断したのか、海の彼方へと撤退して行った。

 

戦場であった、海上は、ベスパが撤退した事により、静けさが戻った。

 

「…はぁ…はぁ…」

 

あまりにも過激な戦いに、手が震えている。レバーを握り過ぎたためだろう…。

 

「!?…やべぇ!」

 

機体が海面へと下降しつつある。推進剤が切れてしまった…!ただでさえランドセルの機種が古いジェムズガンだ。フライパンにしがみつこうとして、バーニアを今まで以上に、吹かせてしまったのが原因だ。

 

『メオ!』

 

「う、うおお!!…お?」

 

海面へとダイブしそうになったが、ガンイージがマニュピレーターを掴んでくれたおかげで、何とか助かった。コアファイターも駆け寄ってくる。

 

『大丈夫ですか!メオさん!』

 

「な、何とかな…しかし、ウッソ、ギロチンは破壊できたか?」

 

コアファイターも腕だけを変形させ、もう片方のマニュピレーターを掴んだ。…外から見れば、ジェムズガンが無様な姿になっているのが目にわかる。…我ながら情けないな。

 

『はい、修復できないようにしました!…後、すいませんでした、僕の我儘に付き合ったばっかりに、危険な目に遭って…』

 

「おいおい、俺が足止めするって言ったんだぜ?別にお前が謝る事は無い」

 

結果的にはみんな生き残れたんだ。それだけでも、幸運な事だった。

 

『メオ?私にも言う事あるよね〜?』

 

「あ、ああ!マヘリア、助けてくれてありがとう」

 

『どういたしまして!次、私がもし危険に陥ったら助けてね?』

 

「ああ、助けるさ。助ける!」

 

借りは返さないといけないからな。ましてやシュラク隊に2度も助けられたんだ、これ以上はこんな失態がないように気をつけないといけない。

『…といっても、またメオが足引っ張るかもしれないね〜?』

 

「な、何だと!?」

 

『ハハハハ…』

 

 

夕陽が海を差し込み、海が輝いていた。

 

 

 

 




マヘリアかわいいよマヘリア。
本編の、12話のロブおじさんに関する話は、地味に心が痛いです。
誤字、脱字、文章として成り立ってないものがありましたら、ご指摘よろしくお願いします。またアドバイスなどもありましたらよろしくお願いします。

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