連邦兵のザンスカール戦争記   作:かまらん

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今回は前編と後編と分けています。


第4話 ギロチンとの戦い 前編

アーティ・ジブラルタルに向かう途中、ベスパの偵察機に見つかってしまった。引っ越し会社の偽装をしていたが、ベスパは運送機にしてはコースが外れ過ぎている事に気付き、怪しまれた。

だがウッソのコアファイターが輸送機を襲っているという芝居により、難なく障害を退ける事ができた。

そして小さな孤島で着陸し、俺は他の輸送機に搭乗していた、マーベットにも挨拶する。戦災孤児?の子供達にも挨拶をしたが、最年長のオデロという青年は挨拶はしたものの、不貞腐れた態度を取っていた。典型的な軍人嫌いなのだろう。

輸送機に積んでいたMSを整理している。ガンダム…いやV(ヴィクトリー)はコアファイターと各種パーツを合体させる、分離変形型MSというらしい。しかもその性能はジェムズガンとは大違い。どうやらロメロ爺さん達は元々、サナリィでMSを開発していたとの事。それなら、この性能も頷ける。俺は勝手に輸送機へ詰め込まれるVをまじまじと見る。

 

「こんなMSを、連邦も開発すりゃあいいんだがなぁ…」

 

「そんなにVをまじまじと見て、飽きないのかい?」

 

マヘリアが駆け寄ってきた。今この場にいるパイロット達はシュラク隊、オリファー、マーベットらだ。子供らはこっそりと、もう1つの島にある港町へと遊びに行ったらしい。俺も行きたかったなぁと、心の中で嘆く。だが、さっき言っていた通り、ベスパのイエロージャケットはまだ偵察をしている。俺達が警備をしていないと、MSと輸送機が狙われる可能性がある。

 

「そりゃあ飽きるよ。だけど警備が仕事なんだ、今の俺はMSを見る事だけが暇潰しさ」

 

「へえ、案外真面目なんだねぇ…」

 

案外って何だよ案外って。

シュラク隊とは飛行中に、すぐに打ち解けるようになっていた。同じ歳(彼女らは内緒だと言っていたが)だと思うし、共通の話題があるおかげだった。

 

「これでも軍人ですから…」

 

ふふんと俺は見せつけるように鼻を鳴らす。本当の事をいうと、こういう真面目な所をアピールしておかないと、ゴメス大尉から鉄拳制裁を食らってしまうからだ。容赦なしのアレはとても痛い。

 

「あ、確かメオもリガ・ミリティアと一緒に戦うんだよね。これからは前線で戦う仲間として、よろしく頼むわ!」

 

「よろしく…と言っておきたいが、腕がマヘリアらと違って未熟だからな。足を引っ張るような時かあるかもしれない」

 

「あぁ!大丈夫だよ!その時はジュンコによる平手打ちのご褒美が待っているから!」

 

歯を見せてニッコリと笑うマヘリア。ジュンコは強気な性格だと何となく分かる。あれから繰り出される平手打ち…ハハッ笑えねえ。

 

「そういや、ウッソのコアファイターは何処へ行ったんだ?」

 

「確か、子供達が行った港町で駐在するって言ってたよ。ほんと、13歳で1人でやりきれるなんて偉いよ」

 

MSの操縦も、コアファイターなど戦闘機の操縦も、俺とは段違いの腕だからな…。あれならリガミリティアのエースパイロットになれるんじゃないのか?だが、まだ子供だしなぁ…あの歳で戦争に駆り出されるのは如何なものかと思う。例え、本当のスペシャルとしても。

 

「ウッソが駐在している港町に、ベスパのMS部隊が来ているだと!?」

 

ゴメス大尉の大声が聞こえた。ベスパが来ているってのか。何とも運が悪い…ベスパの奴等、徹底的にリガミリティアを捜そうと必死になっているな。

 

「は、はい!奴ら、広場にギロチンを設置してきて…」

 

ぎ、ギロチン!?あいつら辺境の町で何がしたいんだ?誰かを処刑するする為なのか?無意識に握りしめる手に、震えが止まらない。ギロチンの恐怖の所為だろう。ザンスカール帝国は反乱分子を捕らえ、ギロチンにかける。その映像を数えられない程に放送した。何回も見てしまった俺はギロチンが今でもトラウマだ。

 

「おい!まだ積まれていないMSのパイロット!至急ウッソの援護に行ってくれ!!」

 

ジェムズガンと、ガンイージ…。嘘だろ…俺も出動するのか。ガンイージは誰なんだ?すると背後から、肩を叩かれた。

 

「どうやら私達出動らしいね。港町はここから西の方角よ!」

 

あのガンイージはマヘリアのものだったのか。精鋭のシュラク隊だ。こちらとしてはとても心強い。マヘリアがガンイージに向かっているのに続いて、俺もジェムズガンへと向かった。

 

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ジェムズガンも一応飛行性能はある。といっても前方にいるガンイージ程ではないけどな。

 

「おいおい、ガンイージ速すぎじゃないか?」

 

『何言ってるんだい、別にそれ程速くないだろう?ジェムズガンが遅いだけよ』

 

ぐっ…確かにそうかもしれないが。俺は何も返す言葉が無く、静かにペダルを踏み、機体のバランスを崩さないように、海の上を飛ぶ。島から、爆発の光が見える…?俺はタッチパネルで爆発が起きた場所をズームする。

島の港町の上空で、コアファイターと、海とはミスマッチな、紫のトムリアット3機が交戦中だった。

 

『どうやら既に戦闘が起こっているみたいね…メオ!あのトムリアットの動きから見て、ウッソを挟み撃ちにしようとしているわ!私は左を、貴方は右の方をお願い!』

 

「りょ、了解!」

 

ジェムズガン1機だけで、トムリアットと交戦なんて無茶な…と思ったが、状況が状況、MSが3機いるんだ。そんなにしのごの言っている場合ではない。1機、必ず撃墜してやる。そう意気込み、俺はレバーを押し出した。マヘリア機は、そのままビームライフルを放ち、回避したトムリアットを追いかけ、この場から離れていった。

動き回るコアファイターに対し、ビームトマホークを振りかざすトムリアットに照準を合わせ、前進しながら俺はビームライフルを放った。やはり高性能のMS。コアファイターへの攻撃を、邪魔する事はできたが、得意の機動性であっさりと避けられる。お返しとばかりにトムリアットは後退しながら、ビームライフルを撃ってきた。

 

「はひっ!!」

 

咄嗟にバーニアをを横に吹かせ、回避行動をとる。ビームはメインカメラにギリギリで当たりそうになり、俺は思わず変な声が出る。

 

『その機体はメオさんですか!?』

 

コアファイターへの通信回線が繋がった。3機のMSに囲まれて、もしかしてあまりの恐怖でヤバくなっているかもしれないと思ったが、それは杞憂であった。

 

「ウッソ!ここは俺が何とかするから、お前は東の方角にある輸送機へと向かえ!」

 

『大丈夫です!僕も戦えます!!』

 

「お、おい!!」

 

俺の呼び止めも届かず、コアファイターはもう1機の方へと飛んで行った。くそ、コアファイターについて行きたいが、今は目の前のこいつに専念するしかない。

 

「う、ウワァ!?」

 

高速で近づいてきた、トムリアットはビームトマホークを俺に振りかざす。ビームシールドを展開、それを受け止めるものの、胴体の排熱ダクトに蹴りを入れられる。

 

「ぐっ…!?ぐうぅ!!」

 

コックピットの直撃は免れたものの、衝撃はとんでもなくでかい。俺は腹に力を込め、衝撃に耐えながら、ビームサーベルを取り出す。

桃色の刀身が現れ、トムリアットに突きを繰り出す。しかし。左手のビームローターを機体の前に構え、防がれる。ビームとビームがぶつかり合い、眩い光がジェムズガンとトムリアットの間に発生する。

 

「くっ…!!」

 

俺が呻いていると、それを嘲笑うかのようにトムリアットの猫目センサーが開かれる。その赤黒い眼は、俺に死の恐怖を更に煽らせる。

 

「…ヒイッ!?」

 

余りにも情けない悲鳴が上がる。このままだと、ヤツの右手に握っているビームトマホークで機体ごと切断される。そんな結末が脳によぎる。死にたくない、そんな決死の思いで、俺はレバーを握りしめた。

 

「し、死ねるかぁぁぁ!!!」

 

俺は恐怖を打ち消すため、大声を上げる。ビームサーベルを横にずらし、ビームローター発生装置を斬りつけた。ブォンブォンと回転していた、ビームの羽は消滅し、トムリアットの機体は海上へと落ちていく。しかし戦闘ヘリと変形させ、海の彼方へと撤退して行った。

 

「ハァ…ハァ…」

 

あんなに俺の叫び声が凄いとは思わなかったよ。自分でも驚き、額の汗を拭う。

MS同士の接近戦があんなに緊迫したものだとは知らなかった。俺はドクンと高鳴る心臓を鎮める。

 

「ま、まだだ、ウッソやマヘリアを援護しないといけない…!」

 

全身から浮き出る疲労を抑え、すぐにマヘリアとウッソの交戦をしているであろう場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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