連邦兵のザンスカール戦争記   作:かまらん

18 / 22
コンティオを逆に読むと〜?
駄目です(真顔)


第18話 コンティオ戦

目に火球が浮かぶ。…MSの爆発レベルどころではないようだ。ガウンランドの自爆が成功したのか…?飲み終えた中身が空のパックを後ろへと投げ出し、レバーを握り締める。もし自爆したとなると、あとは後続のリーンホースが、敵艦隊の旗艦であるスクイード級と接近して生身での白兵戦となる。

 

そこが正念場だ。ビッグキャノンを何としても奪取しなければならない。

 

「リーンホースが前進している…」

 

徐々に近づいてくる戦場。カイラスギリー艦隊の方を見てみると、護衛艦の3、4隻が残骸として宇宙に佇んでいた。無数の欠片でわかりづらいが、そこには微かにガウンランドと思わしき白い破片が見られる。思惑通り、自爆作戦は成功のようだ。ということは、リーンホースが前進しているのはスクイード級への接舷の為か。

 

スクイード級との接触では、非常な混戦が起きるだろう。機体の右腕にあるビームバズーカの砲身が目に映る。次こそは壊さないように気をつけないとな…

 

 

「…くるか…!」

 

迫り来る赤い影。ゾロアットか…!即座に認識し、照準を合わせる。

この距離ならば威力が減衰する事なく、武器の本領発揮が試されるだろう。

 

揺れる照準の表示が赤に変わった瞬間、レバーのボタンを押した。発射された光の大きさは、流石にバストライナーのよりも小さいものの、粒子が慌ただしく散りながら進む姿はビームライフルのそれとは大違いであった。

 

標的のゾロアットはビームシールドを構えるも、ビームの膜が突き破られ、機体の上半身ごと抉り取られて爆発した。

 

「これが…」

 

ビームライフルしか使わなかった俺にとっては、幻覚かと思ってしまうような出来事だった。難なく弾丸やビームを弾いてたビームシールドを1発で機体ごと貫くなんて…何で俺は最初っからあの武器を使わなかったんだ。

 

これなら勝てる…そう確信し、リーンホースへと目を向ける。スクイード級とリーンホースの距離はまだ少しあるな…どうにかして活路を開かないと。

 

『危ない!!』

 

その声とともに、俺の目の前で3つに重なった光の柱が通り過ぎる。光の柱達はリーンホースのカタパルトに直撃し、着弾した跡が熱で泥のように唸っている…あのビームは何かが違う…!決してゾロアットの放つビームライフルやキャノンよりも大出力のものだ!

 

何がこれを放った…?辺りを見渡すと、V(ヴィクトリー)が側に近寄っているのがわかる。さっきの声はオリファーのものだったのか。危なかった…あと少しズレていなかったら、コックピットごと熱に溶かされていただろう。

 

『散開しろ!新たなMSがこちらに近づいてくる!!…!クソッしつこいな!!』

 

新たな…MS?ゾロアットよりも高性能のやつがか?冗談じゃない…!この機に限って、そんなのが来るなんて…あのビームを見てわかる、ゾロアットよりも比にならないというのが。

オリファーは他のゾロアットと交戦中なのか、時々雑音混じりの音声が聞こえる。あいつの助けを借りることができない。

 

…遠くからこちらにやって来る桃色をした機体。肩には蟹の鋏のようなものが付いている。何とも奇抜なデザインだな、と心の片隅ではそう思えた。だが…今は、その心が恐怖にほぼ蝕まれていく。

こいつはヤバイ…!間違いなく殺されるのがオチだ!だけど背後にはリーンホースがいる…!シュラク隊も違う敵と合間見えている!ウッソ達が助けてくれる保証もない!1人でやるしかないのか…!あれと対峙するのか!?

 

脳内の思考がこれでもかという程に駆け巡り、生と死の狭間に揺れる。悩むんじゃない、戦うのが当たり前だ。それが大人、軍人としての在るべき姿だ。

 

心の中で鼓舞する。それは第三者からすれば滑稽だと思われるかもしれない。だけどこうでもしないと戦えない。そういう臆病な奴なんだ。

 

ペダルをガタンと音が鳴るほどに強く踏み続け、俺は接近して来る蟹野郎へと対峙する。性能は違えど同じMSなんだ。ビームさえ当たれば倒せる敵なんだ。モニターに映る蟹野郎をロックオンし、俺はトリガーを引いた。

 

一閃のビームはあっさりと避けられる。当たらなければ意味がないってことか。蟹野郎は、またもやべスパ製のキツネ目でこちらを凝視してきた。まるで生き物が反応したかのような動きであるため、少し寒気がする。

 

蟹野郎は∞のような軌道に沿って、胸に内蔵されている3つの砲口があるビーム兵器でこちらに打ち返してきた。やはりゾロアットとは違う。あのビーム兵器の火力の高さ。全てが上回っている。

 

「…!!」

 

3つの砲口での連射。それは無数のビームの弾幕を創り出すことが簡単であり、まさに俺にとっては脅威以外の何物でもない。幸いか、ビームシールドで衝撃が伝わって来るものの、防ぐことは可能だ。これならば…対抗しきれる。倒せる可能性だってあるかもしれない。

 

ビームバズーカをシールドと限りなく近づけさせ、被弾する箇所をなるべく少なくさせる。そして、機体のアポジで細やかに左右上下と動かし、トリガーを引いた。繰り出されるビーム同士の間を潜り抜け、蟹野郎へと進んでいくが、

 

「当たれよ…くそ!」

 

何事もなく横移動で躱され苛立つ。機体の事ばっかり言っていたが、パイロットも腕が良いと見る。動き方1つ1つ、まるで生身の人間のように滑らかだからだ。何回もMSを乗る事に慣れているんだろう。

 

俺だって、負けてはいない。こんな性能が上のやつと戦えているんだ、だから何としてでも倒してやる。

改めて意気込み、俺はレバーを握りしめた。

 

「…!」

 

胸部のビーム砲を放ちながら、こちらへと蟹野郎が接近して来る。奴は接近戦へと持ち込むつもりなのか。俺はビームバズーカを腰にマウントさせ、ビームサーベルを取り出す。

 

近づいてくる速度を見ると、遠く離れてからの射撃戦は不可能だ。ここは対峙しておかないと、胴体ごと真っ二つになる未来が見えてくる。だが、接近戦は好都合だ…明らかに射撃戦では押され気味。あれが続いていたら堕とされていたに違いない。

俺もバーニアを吹かし、蟹野郎へとビームサーベルの刀身を向け、近づいた。

 

「なっ」

 

だが、それは間違いであった。相手の右肩の鋏のようなものは、ただの飾りではなかったのだ。後ろの方向を向けていた鋏は、前方へと旋回し、巨大なビームサーベルを発生させた。その大きさは、標準のビームサーベルを遥かに上回っている。この距離でのビームサーベルの一振り。  

 

やられる…!!ビームシールドを胴体を覆う形で展開したが、

 

「っぁぁ!!?」

 

巨大な光の刀身は、その光の膜を掻き消すかのように斬り裂き、発生装置ごと腕を斬られた。小規模な爆発が起こり、俺は思わず目を瞑ってしまった。

 

 

油断だ、完全に油断していた…!今までのべスパのMSを見ればわかる事だったんだ。様々な武器を内蔵していると、仮定できるはずだったんだ。窮地に陥ったのは、偶然なんかじゃない。自分の甘さが招いたら、紛れもない必然だ。

 

レバーをとっさに引き、俺はビームバズーカを取り出す。この距離ではこちらの持っているビームサーベルが届かない…!強制的に遠距離武器の使用か…!!

 

「くそっ!」

 

近距離からのビーム…それは避けられないと思っていた。だがそれは蟹野郎の瞬間的な上昇により、コックピットを狙っていたはずが脚部に掠ってしまう。

 

何という奴なんだ…ビームを反射的に避けた才能…この敵は俺の全てを上回っているのか…!!蟹野郎はビームサーベルで切り裂く事なく、胸部の砲口を光らせた。ビーム砲で俺を倒す気か!

 

「…!っ!あ!」

 

次の手…!次の手はないか!バルカンを放ちながら考える…バルカンの弾はビームシールドによって防がれてしまう。ビームバズーカは連射を起こす事が出来ず、インターバルが何秒かある!ならばなんだ、ビームサーベルか!でもこの距離じゃ届かないだけだ!避ける…!以ての外だ。この三連柱のビームを咄嗟に避けるなんだ無理に決まってる!

 

全身から汗が湧き出てくるのがわかる。走馬灯なのか…この瞬間的が長く感じている…。死ぬのか…俺は?死んで、しまうのか?

 

「…!なにが」

 

すると、俺とは別方向から細長い円錐状のものが蟹野郎の胸部を削り取った。撃ち出そうとした砲口からスパークが重なって見える。ショットランサーだ。発射された砲口を見ると、片手、片足のみのジャベリンがバーニアを一心不乱に吹かし、蟹野郎に迫っていたのがわかった。

 

「…無茶だ…!!」

 

明らかに半壊しているのがわかる。無茶だ…あんな手負いで奴と戦おうなんて…!何で攻撃を仕掛けたんだ!まさか…俺を助けようと

 

「なにを…!早く、逃げろっ…!」

 

俺は充填した、ビームバズーカのトリガーを引く。だがそれを見ることもせず、避けてジャベリンの所へ踵を返した。俺も後を追うが、駄目だ。あの速度を追い越すことは無理だ。

 

ジャベリンへと近づいた蟹野郎は、肩から鋏をパージした…いや、違う。分離したんだ…!真っ暗闇の中で小さな線が見える。有線兵器だ…分離した鋏は小さなビームの爪を発生させ、ジャベリンの元へ向かう。

 

「やめろ…!!」

 

ビームライフルを狂うかの様に連射するジャベリン。だが…それは掠りもせず、黙々と迫っていく。

 

「やめろ!!…クソッ!!」

 

俺はペダルを潰す様に踏み、機体を走らせ、ビームバズーカの照準を定める。早く、撃たなければ…!間に合ってくれ、間に合ってくれ、間に合ってくれ!!!

 

「やめろぉぉぉぁ!!!!」

 

 

 

 

ーーーーー鋏がコックピットを噛み砕いた。

 

 

 

 

ジャベリンの動きが止まり、戦場で残骸と化す。静まり返ったその場は、命が砕けた証拠。

 

死んだ。俺を庇ったばかりに死んだ。

 

 

俺が………

 

 

殺した

 

 

 




誤字、脱字、もしアドバイスがありましたらよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。