魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul 作:K-15
(ここは何処だ?)
夢現で目を開けた少年、アキラは眠たいのを我慢して起き上がった。
そこは眠っていた筈のベッドではなく、光が無限に広がる亜空間世界。
重力は感じられず宇宙空間のように宙に浮くアキラは、まだはっきりと覚醒しない頭で現状を把握しようとする。
「何なんだ、ここは? どうしてこんな所に」
右を見ても左を向いても、目に映るのはどこまでも続く光の空間。
地に足を付ける事も、手に何かを掴む事すら出来ない。
ぼんやりと光を眺めている事しか出来ないアキラだったが、遠くから小さな黒い点が自身に向かって近づいて来た。
「アレは……」
目を細めて黒い点が何なのかを見定めようとする。
少しずつ、でも確実に距離を縮めてくるソレは、両手両足が付いており人間と同じ姿をしていた。
近づくに従いはっきりと見えてくる人物は両手をピンと伸ばし、陸上選手バリに膝を高く上げて全力疾走して来る。
もの凄い勢いで迫ってくるソイツは、一切減速する事なく一直線にアキラに飛びかかって来た。
「ごめんなさ~~い!!」
「うわあああぁぁぁ!?」
逃げようとするも宙に浮いた状態では溺れたようにもがく事しか出来ず、誰とも知らない人物に抱きしめられるようにしてぶつかった。
抱きしめられてわかたのは、この人物が女性だと言う事。
スラリと長く伸びた綺麗な髪の毛、ローズマリーの香水がほんのりと香る。
女性にあまり耐性のないアキラにとって、肌と肌を密着させるのは未知の体験だった。
「あっ!? あ、あ、あ、ああああ、あの!?」
「本当にごめんなさい!! 全部わたくしのミスなんです~~!!」
「は、離れて下さい!! 何ですかコレは!?」
「ハッ!? 失礼しました。わたくしはメガミと言います。以後おみしりおきを!!」
「め、女神? それ名前なの? 確かに最近はDQNネーム多いけどさ」
メガミと名乗る彼女は唐突に自己紹介をし、さっきまで気が動転して居たのが嘘みたいにあっけらかんとして居る。
状況説明もなく、いきなり過ぎてアキラには理解が追い付かない。
「この度は、わたくしの至らぬ所によりアキラ様にご迷惑をお掛けしてしまい、本当にすみませんでした!!」
「何がなんだかわからない。頼むから説明してくれ。ただ謝られても訳がわからん」
「そう言えばそうですね。え~、わかりやすく簡単に申し上げますと、アキラ様は現世から飛び立たれました」
わかりやすくと言ったメガミだが、事柄を極端に省略しすぎており返ってわからなくなる。
本人に悪気がない所がより一層質が悪い。
無論たったこれだけの情報でアキラが理解出来る筈もなかった。
「いや、全然わかりやすくないし」
「ややや!? そうですか、わかりました。ではお詫びの意味も込めてわたくしからコレをプレゼントです!!」
そう言ってメガミと名乗る女は背後から何かを取り出した。
右手には赤い剣、左手には青い銃。
赤い剣は身の丈程はあり、グリップのすぐ上に黒色をした丸い球が埋め込まれて居る。
青い銃は片手で使うには大きすぎるくらいで、フレームで補強されて銃身が30センチはあった。
「コレを使って下さい。通称デバイスと呼ばれる武器です」
「使ってと言われても……こんなオモチャなんか要らないんだけど」
「まぁまぁまぁまぁ!! きっとお役立ちしますから!!」
メガミは強引にその2つをアキラへ手渡して来た。
「見た目と違って思ったより軽いな。でも、俺もう高校生だぞ? 今更こんなの貰っても……」
「それをどう使うかはアナタの自由です」
「だから要らないって」
「ではではこの辺で。良い旅を~」
ろくに説明もしないままメガミは浮かび上がると上へと飛んで行ってしまう。
満面の笑みで右手を振りながら。
そんな事で納得出来る筈がなく、アキラはジャンプして何とかして呼び止めようと試みるが、距離は離れてくばかり。
「ちょ!? ちょっと待て!! ココは何処なんだ!! 俺はどうなるんだ!! 家に帰れるんだろうな!!」
「オカシイですね? 他の方々は喜んでくれたのに? その後どうなったかは知りませんが」
「聞こえてんだろ!! 家に返せ!!」
「でもでも、もう時間がないのです。わたくしは次の場所へ向かわねばなりません。それでは!!」
返事には応えず、意味不明な言葉を残してアキラの目の前からメガミが姿を消した。
文字通り跡形もなく痕跡すら残ってない。
1人になってしまったアキラは強引に渡された剣と銃を抱えて、これからどうするのか悩むしか出来なかった。
「にしてもココは何処なんだ。俺はどうなったんだ?」
初めての出来事に少しずつ不安が過ぎる。
見渡す限り虹色の光でそれ以外は何も見えない。
誰1人として居らず手掛かりとなるモノすらなかった。
「ど……どうすれば良い!? こんなのがあっても」
不安に心が耐えられなくなって来る。
だがその時。
「何だコレ!?」
アキラの足元へ光る魔法陣が突如として現れた。
逃げようとする暇もなく、アキラは魔法陣へ体を飲み込まれて行ってしまう。
「うわあああぁぁぁ!!」
///
「イタッ!!」
気が付くとアスファルトに尻もちを付いて居た。
座ったまま見渡すソコは高層ビルが立ち並ぶ大都市のド真ん中。
「今度は何だ?」
剣と銃を抱えたまま立ち上がり人気の少ないアスファルトを歩き進む。
そしてすぐに感じる違和感。
歩きながら観察する街は何処か記憶と違う。
それが何なのかわからないまま、違和感と不安がどんどん膨れ上がって行く。
「東京……じゃない。アメリカって感じでもない。何だ? この違和感」
答えが出ぬまま前に向かって歩くしか出来ないアキラ。
すると突然、後ろから髪の毛を引っ張られた。
「いだだだだだだ!!」
「応えろ、アタシはどうしてこんな所に居るんだ!!」
髪の毛を何本か引きぬかれながら振り向いた先には2人の女。
栗色のセミボブ、ボロボロのトレーナーにジーンズとラフな格好をして赤い瞳は鋭くアキラを睨み付ける。
もう1人も服装がラフなのは同じ。
黒を基調として青白い長髪をなびかせる。
エメラルド色の瞳は同じくアキラを睨んだ。
「誰? 何ですか? 俺だって知りませんよ」
「気が付いたらこんな所に居るだけじゃない!! アタシの――」
白い服の女は目線を反らした先の剣と銃に興味を示して荒い口をとじた。
穴が空く程ジッと見つめ、素早い手付きでそれらを奪い取る。
「あっ!?」
気が付いたら剣と銃は目の前の2人に奪われてしまい、首元へ鋭い切っ先を突き立てられる。
「応えろ、さもないと殺す」
「そんなオモチャで脅されても無理なモノは無理だ。俺だって何にも知らないんだ」
「ウソを付け。だったらどうして――」
女はまた口を閉ざしてしまう。
何がしたいのか理解出来ず、アキラはただ呆然と立ち尽くす。
2人の女はさっきまでの威勢は何処へ行ったのか、跳躍してアキラから離れた。
瞬間。
「さっきの光!?」
また足元から魔法陣の光が発生した。
動けないアキラはもう1度光の中へと飲み込まれて行く。
「うわあああぁぁぁ!!」
虹色の空間にまた叫び声が木霊する。
2人の女の姿はもう見えない。
バンジージャンプのように重力に引かれ急降下し、景色がめまぐるしく変化して行く。
呼吸するのも忘れていつしか意識を手放しそうになった時。
「痛っ――くない?」
そこは見慣れた自分の部屋の中。
アキラの体はベッドの上に転がって居る。
ゆっくりと起き上がりまぶたを擦った。
指先から伝わって来る感触は夢などではなく本物だ。
「夢? にしては変だったような」
アキラの後頭部からはパラパラと髪の毛が数本零れ落ちる。
窓の外から聞こえて来るのは、家の屋根に止まるカラスの鳴き声だけ。
なのはの知識はそこまで深い訳ではありません。
おかしな所があれば指摘してくれると嬉しいです。
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