俺が旅に出てから暫くの時が経った。
現在俺は数学の教師やってます。
……どうしてこうなった?
あれは今から三年前のこと。
俺が五人目の眷属を仲間にした翌日のこと。
あの時ほど今から死ぬかもしれないと覚悟を決めたことはない。
だって、あの二人魔力と殺気を全開にして人間界にある俺の隠れ屋に詰め寄ってきたんだもの。
魔王二人、しかもその内の一人は『超越者』として名を知られている二人が血走った目で家に詰め寄ってきたら誰だって怖いよね?
取り敢えず、話だけでもと思い聞いてみると、来年からリアスちゃんとソーナちゃんが駒王町の実質的な管理者になり駒王学園に入学するらしい。
でも、いきなりあの二人に管理の全てを任せるのはシスコンである二人には心配らしく俺に二人の補助をお願いしたいらしい。
……正直な話、俺は知るかという気持ちが大きかった。
何故俺が俺よりしっかりとしているあの二人の補助をしなければならないと思った。
あの二人は幼少の時しか知らないが、二人ともかなり優秀だった覚えしかない。
具体的にはままごとで俺の胃にダイレクトアタックを延々と繰り返してくるぐらいに。
思い出しただけで胃が……!
俺が思い出したように痛みだす胃の痛みに耐えていると、セラが心配そうに俺が押さえている腹に顔を近づけ擦ってくれた。
いや、それは嬉しいんだけどね。
この構図って見る人が見たら誤解しちゃうんじゃないかな?
胃の痛みを抑えるために少し前屈みになっている俺に同じく前屈みになって俺の腹部を擦っている(一応)美少女。
うん。危ない光景だ。
それを指摘しようとした瞬間家の扉が開き、俺の『
空気が凍るというのはこういうことをいうんだろうか?
物凄く冷たい視線を向けてくる銀髪の女性と『
セラは(善意で)俺の腹を擦ってくれているのでセラを犠牲にするわけにもいかず慌ててセラを抱き抱えて逃げ出す俺。
抱き抱えたセラの顔が真っ赤になり、俺の胸に顔を擦り付けてくる。
流石ビッチ。あざとい。
それを見て更に本気で俺を殺しに来るジャンヌ。聖剣は洒落にならないから勘弁してほしい。
下級悪魔…いや、中級悪魔でさえ、触れるだけで消滅しかねない魔力をその手に集めだすメイドさん。セラのせいで防御力はかなり強化されてはいるがセラを抱き抱えている状態でそれを防ぐのは大分厳しいです。
唯一理由を知っているサーゼクスは止めようとしない。
俺が何をしたっていうんだー!!
結局、二人が落ち着いたのはサーゼクスが飽きたのか二人を魔王権限で止めた後だった。
二人が止まった後、サーゼクスが理由を説明すると、ジャンヌはそっぽを向き、銀髪の女性…グレイフィア・ルキフグスさんは深々と頭を下げた。
ジャンヌも『騎士』なら見習って欲しいものである。
因みに、セラは未だに俺の腕の中にいる。
魔王権限で「帰るまではこのままにしとけ」とのこと。
ジャンヌが忌々しそうに此方を睨んでくるので、できれば早く降ろしたいが、いつの間にか撮られていた俺がセラを抱き抱えている写真を冥界中にばら蒔くと脅迫…もとい、提案されたので降ろすのを諦めた。
くそぅ…あの貧乳少女が見ない間にこんな巨乳になりやがって。揉んでやろうか?
そんなことを考えた瞬間顔を赤くしたセラと般若のような顔をしたジャンヌに殴られた。
女の勘は鋭すぎるって事を忘れてた。ちくしょう。
っと暫く話が逸れていたが元々の本題である管理者の補助として駒王町に行くか行かないかっていう話に戻った。
俺は当然断るって言おうとしたら、また写真をネタに提案された。
…実質的な悪魔であるトップの魔王の命令を聞かないのは一悪魔としてはおかしいよね。仕方がない。受けてやろうではないか。だから、さぁそのネガを寄越しなさい。
先に誓約書にサインしろって?
ははは、仕方がないなぁ。サインしてやろ…ってこれ、一度サインしたら契約完了するか雇い主が破棄するまで絶対に解けない魔法の契約書じゃねぇか!
そんな物この程度の話で持ち出すなよ!
こうしておけば俺が途中で約束を破ることがなくなるって?流石サーゼクスだ。俺の事をよく知っている。
しかし、今はその無駄な理解力が恨めしい!!
ふとグレイフィアさんの方に目を向けるとなんだか同情の気持ちがこもった目で見られた。
───貴女も苦労しているんですね。
───ええ。お互い頑張りましょう。
この世界で生まれて数百年。初めて人と目と目だけで会話が成立した瞬間だった。決して嬉しいものではないけど。
しかし、何が気に入らなかったのかジャンヌとセラ、ついでにサーゼクスにまた殴られた。
ジャンヌとセラはいつもの事としてサーゼクスお前は何でだ?
その後、グレイフィアさんに頬をつねられていたのを見て少しスッキリしたが。ざまぁ。
こうして俺は契約書にサインして駒王町の管理者の補助役となったのだが、契約書の細かい制約の中に駒王学園の教師になるというのが書かれており俺は渋々契約に従って数学の教師になったのである。
良い子の皆は契約書の制約欄はしっかりと読もうね。俺みたいに騙されちゃ駄目だぞ。
そんなこんなで教師になって早三年。
何だかんだで教師生活が楽しく感じていた。
いゃあ教え子ってのは可愛いものだね。分からない所があったら、せんせぇ、せんせぇって教科書片手に寄ってきて理解できたら満面の笑みでお礼を言ってくる。
やべぇ。やめらんねぇわ、これ。
だが、兵藤、松田、元浜。
てめぇらは駄目だ。
何度覗きや、セクハラを繰り返し反省文書かせれば気がすむんだ。
そのせいで、最近は変態三人組が何かしたら俺が面倒を見るみたいな感じに思われちまってるじゃねぇか。
少しは自重しやがれ。
…何?「イケメンには、俺達みたいな気持ちは分からない」だと。
ふざけんなよ。自分でいうのもなんだが生まれてこのかた(生まれる前も含めて)モテたことなんて一回もねぇよ。そんなやつがイケメンの筈がねぇだろうが。
…何でそこで血の涙を流すんだよ。
鏡をよく見ろ?いつも見てるよ。
女子生徒の様子をよく見ろ?
見てるよ。お前らも知っているだろうけど見すぎてるせいで俺の事を気持ち悪がっているのか、何人か話しかけただけで顔を真っ赤にして逃げていくだろ。
よく休日に町で俺と女の子達が一緒にいるのをよく見かける?
あれはただ単に買い物に付き合っているだけだろ。それに女だけって訳ではなく男も数人いるだろ。よく見ろよ。
……おい、お前らなんでそんな鬼気迫る顔になって俺を見るんだよ。
「絶対彼女作ってやる」?「これだからイケメンは」?
お前らが何にそこまで怒っているのか分からないが……取り敢えず
俺がいつまで経っても帰れねぇだろうが。
反省文(三人会わせた一年間での通算百回目)を書かせた俺は、眷属達と住んでいる家に帰った。
って言っても今はジャンヌしかいないんだけども他は修業の旅に出たり用事があったりで忙しいらしいし。
……寂しくないよ。多分。きっと。メイビー。
少なくとも『
うちの眷属での数少ない癒しだし。もう片割れは帰ってこなくていいけど。ドMの雌豚はお呼びではありません。
それにしても、彼女かぁ。
俺も欲しいな。あの変態どもめ。俺がイケメンだなんて分かりやすい嘘つきやがって。
見ろ!商店街の奥さん連中なんか俺が愛想笑いを送るだけで顔を赤くして倒れるんだぞ。
こんな俺がイケメンの訳がない。
その後も俺が家に帰るまで奥さん連中が次々に倒れるという事件が続き落ち込み布団の中で泣きながら寝ることになった。
その翌日、兵藤に彼女ができたという話を聞き驚くと同時に妬んだのは別の話だ。
今回出てきた眷属の設定です。
名前:ジャンヌ(原作キャラ)
種族:転生悪魔(元人間)
駒:騎士
性別:女
筋力:C
耐久:D
敏捷:A
魔力:C
幸運:B
神器:『
禁手:『
容姿:原作より幼くした金髪の少女。胸は原作より幼くなった都合上、貧乳。
原作キャラでの転生悪魔第一号。
英雄「ジャンヌダルク」の子孫。
幼い時に教会に無実の罪で裁かれそうになったとき主人公に助けられた。
その時に恩と恋慕の情を抱き主人公の眷属になった。
神器や戦闘方法は原作同様の戦い方で、神器で作った聖剣を使い戦う。
ただし、戦闘技術は『女王』により、原作より桁違いに上がっており、もしグレモリー眷属にトレードされたとしたら木場くんが号泣して喜ぶレベルである。
原作との相違点は本来なら英雄派に入る時にはお姉さん体型になっている筈だが幼い時に眷属になり、寿命が伸び、成長が遅くなったことで未だ少女の見た目で胸が未成熟なところ。
それがコンプレックスとなっており、主人公が巨乳にデレデレしていると般若になる。
原作開始時は主人公の元に唯一残っている人物で主にツンデレ、突っ込み、苦労人キャラと様々な役割を果たす。