大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第46話  霞がなんだか構ってくるんだが その1

 

 昨日、タ級たちの処分が下って色々手続きをしたらしい。そんな話を、さっきすれ違ったイ・ハ級に聞いたんだが、どうもスパイをやることになったみたいだな。とは言っても、艤装が無い者は出来ないらしいけど……。

その話は今はどうでも良いんだ。

 

「……」

 

「……」

 

 今俺は私室に居るんだが、どうしてこんな張り詰めた空気になっているんだろうか。今ここに居るのは俺とヲ級、そして霞だ。事を辿ると数分前に遡る。

 いつものように任務も演習も無いので私室でゴロゴロしていると、突然今日の護衛を任されていた内の1人である霞が現れた。……今回はどこから現れたかは省略しておく。

そんな俺の態度を見て現れたようだが、何も言わずに俺の目の前に正座するだけ。ヲ級も急に現れた霞に驚きはしたが、警戒することなく本を読みながらお茶を飲んでいる。一見すると普通の光景かもしれないが、霞から滲み出ている雰囲気はもう別物としか言い表せれない。

 静寂の時が遂に動き出す。

座っていた霞が立ち上がり、俺の前に立った。そして……

 

「だらしないわよ!! シャキッとして!!」

 

 プンスコしているのは見れば分かるんだが、腰に両手を当てて頬を膨らませるその様は何というかその……。世話焼き幼馴染みたいなセリフを吐いてるけど、大丈夫なのか?

 

「私室に居る時はいつもこうなんだからっ!! 全くもう!!」

 

 と言って、俺の前から離れていき、テキパキと片づけを始めてしまう。

近くでお茶を飲んでいたヲ級も何が起きているのか分かってないようでフリーズしているし、俺も動き出せない。少し頬を赤らめながら掃除を始めた霞を目で追うことしかできないのだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 そこまで散らかってなかったんだが、掃除をする前と後では結構違う状況になった。霞は捲っていた袖を元に戻して、目の前に腰を下ろす。俺も今は座っていたので正面になる。ちなみにヲ級は斜め左に座っている。

掃除を終わらせた霞は一息吐くと、俺の目の前にあるものを置いた。メモ用紙だ。いつも持ち歩いているのだろうか? 既に記入されているメモ用紙に目線を落とすと、霞は俺に向かって言った。

 

「掃除していて色々とないことに気付いたから、近いうちに買っておくといいわ。日用品、シャンプーやら石鹸やらはまだあるみたいだけど、洗面所のハンドソープが切れかかってたり、換えのタオルもなかったみたいだし……。それに棚とか、掃除道具とか置いておいた方が良いわよ」

 

「は、はぁ……」

 

「それに布団で寝るのなら衝立くらい用意しておきなさいよ。良い一人部屋貰っているんだから、空いてる部屋を物置にするんじゃなくてそっちを寝室にしちゃうとかあるでしょ?」

 

「……」

 

「大和の給料で寝室を準備することくらいできるだろうし、クズ司令官に言えば経費でも懐からでも落ちると思うけど?」

 

 ダメだ。なんだろうな、この霞は。斜め左のヲ級なんて白目剝いてるし……何があったんだよ一体。

とりあえず、俺は霞への返答をする。

 

「わ、分かったから。とりあえず、一気に言われても最後の方しか覚えてられないから」

 

「そ、そう?」

 

「通販を使っても良いんだけど、直接商品見て買いたいのが俺の性分でねぇ……」

 

「この前買い物に行ってなかったかしら?」

 

「不本意に騒ぎを起こしたから、その日は1か所行って帰ってきたんだ」

 

 少し考え始めた霞がすぐに俺に提案してきた。まぁ、俺の想像通りではあったけどな。

 

「じゃあ買い物に行きましょう。行く店に事前に連絡しておけば『急遽改装するから』とか言って貸し切りに出来るでしょう、開店前だったら大和だけになると思うわ」

 

「……確かに」

 

「じゃあ私の方で手は回しておくから、明日行くわよ。家具屋の他に行きたいところはある?」

 

 あれ? 話が思いもよらぬ方向に進んでいっている気がする。

 

「薬局と雑貨屋くらいだな」

 

「分かったわ。じゃあ、ちょっと手回しに行ってくるわ」

 

 スッと立ち上がった霞はそのまま私室を退出して行ってしまった。この場に残された俺はフリーズしているヲ級を起こして、とりあえずお茶を啜るのであった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 その日のうちに霞が再び俺の部屋に来て、色々と連絡してきた。なんでも開店前に買い物させてくれるところと、家具屋のベッドコーナーだけ貸し切りにできたらしい。それと足と護衛も既に頼んでしまったとのこと。

その時は霞に色々やってもらったので礼を言って、きっと足柄やその他の艦娘と霞が前回のように俺か、もしかしたら運転手を憲兵に頼んで行くことになるだろうと俺は思っていた。だが現実は違っていたのだ。違っていたのだ(2回目)

 指定された時間に鎮守府の門近くに来ると、既に霞一行は来ていた。霞の恰好はいつもの服ではあるんだが、出歩くにしても良いところの小学校か中学校の制服を着た女生徒にしか見えないんだが、それ以外が大問題だったのだ。

霞の他にも艦娘か誰だか分らなかったが立っていたので、恐らく霞が頼んだ護衛なんだろうけど恰好がヤバすぎる。ヤバすぎて今すぐ帰りたい。具体的に言えば……ありゃマフィアだ。

長身の女性2人とその他にも3人、全員がスーツを着用している。ここまではまぁ良いんだ。前も足柄が身分詐称でSPしていたからな。だがそれだけじゃない。

黒髪ロングで長身の女性はパンツスーツに加え、サングラスをしている。その横に立っている栗色ショートの女性は……ワインレッドのスーツ。黒とかではない色のスーツを着ており、どちらもサングラスをしている。

ヤベェ、この人たちそっち系の人たちだ!! って見た刹那思ってしまったからな。だけど、鎮守府内に居る時点で艦娘か憲兵以外ありえないのでそこまで警戒する必要がないということに、少し経ってから徐々に気付いてく。そして俺を見つけた霞が俺のところに走り寄ってきた。

 

「おはよう!!」

 

「お、おはよう」

 

「じゃあ、足がそろそろ来るからそれで行くわよ」

 

 震え声(この時はまだ艦娘か憲兵以外ありえないことに気付いてない)のまま言葉を交わし、霞に続いて黒ずくめ+1のマフィアっぽいのが近づいてくる。

そんなマフィアたちに警戒していると、自動車が2台、目の前に止まった。止まったんだがなぁ……。どうして黒塗りセダンなんだよ。なんでだよ!!

完全にマフィアじゃないか!!

 

「えーっと、行く前に聞いて良いか?」

 

「ん? 何?」

 

 俺はこれで行ってしまうと聞く機会を逃すと思い、意を決して霞に疑問に思っていることをぶつけてみた。

 

「……この人たちは?」

 

「え? 気付いてなかったの?」

 

 と心底驚いた表情をした霞は、黒髪ロングで長身のパンツスーツ+サングラスの女性に声を掛けた。そうすると、その人はサングラスを取って俺に話しかけてくる。

 

「気付いていると思ったんだがなぁ……。私は呉第〇二号鎮守府所属 戦艦長門だ」

 

「……あれ?」

 

 この人怖すぎでしょ!! ……ということは。他のも……。

 

「私は陸奥よ。長門と同じ所属」

 

 長門と対の派手なスーツの女性は陸奥だったらしい。

 

「私は矢矧だ。呉第二一号のな、忘れてもらっては困るぞ」

 

「磯風だ。同じく」

 

「この前も護衛したのに……足柄よ」

 

 全員がサングラスを外し、俺に自己紹介をする。……いや、全員面識あるんだけどな。特に呉第〇二号の長門とかよく苦労しているところを見るからな。手練れらしく、旗艦の副艦をよくやっている姿を見るからなぁ……。

 

「あはは……。本物のマフィアかと思ったぞ」

 

「まさかな。私と陸奥も今日は丁度オフでやることなくて考えていたところに丁度霞から連絡が来てな、暇つぶしに私たちもついて行くことにしたんだ」

 

 ありがとう、本当。ちなみに呉第〇二号鎮守府の長門と陸奥も、俺に普通に接してくれる艦娘だ。仲良くさせてもらっている、つもりだ。あっちはどうだか知らないけどな。

 ということは、この黒塗りセダンは……。

 

「そのセダンは提督から借りてきた」

 

 長門がそう言った。だろうな、とは思ったよ俺も。ウチの鎮守府にはないからな。ちなみに借りてきたってことは、運転している人がいる訳だが……艦娘は運転経験が無いから運転することはないとして、誰が運転しているのだろうか。

そんなことを考えていると、運転席からエンジンを切って降りてきた人物。

 

「運転手は私でーす!!」

 

 ゆきだった……。ちなみにもう1人の運転手は暇をしていたウチの憲兵らしい。以降省略。

 





 今回から数回は、他の艦娘とは違う感じに構ってくる霞の話です。
何だかアレですよね……。はい(トオイメ)

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