大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第29話  プロパガンダってなんだっけ? その1

 プロパガンダ。良い意味で使うようなことのない言葉だと、俺は勝手に決めつけている。

この際だから、ちゃんとした意味を調べてみよう。

 

『プロパガンダ:、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った宣伝。通常情報戦、心理戦もしくは宣伝戦、世論戦と和訳され、しばしば大きな政治的意味を持つ(※注 Wikipedia「プロパガンダ」より抜粋・改稿)』

 

 良い意味……ではないのかもな。俺個人の持つ価値観とかのせいだろう。

 それはともかくとして、だ。

どうして急に『プロパガンダ』を話題に出したのか……。

 

「海軍兵力だけが他の2軍よりも貧弱だから、広告塔に大和を使おうって海軍部長官が直々に命令書を送り付けてきたんだけど」

 

「そうみたいだな」

 

「てな訳で大和ぉー。ちょっと海軍部広報課の取材を受けて雑誌とかポスターに出てくれないかな? こればっかりは反対も何も出来ないからさ」

 

 目の前で拝み倒しているゆきが言った通り、俺を使ってプロパガンダ広告を作る軍の方針に従うべく、命令を受理していたところだった(させられていた)のだ。

扱い的には軍人である俺は上の命令には背けない。職権濫用な内容は拒否権と共に全ての法の上に立つ『男性保護法』の前にはどうすることもできなくなるが、今回の命令は書面上問題ないし仕事でもあるので、俺は抵抗することなく受理するのだ。

 

「つまりは海軍軍人を集めるための広告塔をしろ、ってことだろう?」

 

「端的に且つ簡単に言えばそうだねぇ。いやぁ……理解が速くて助かるよ」

 

「良い。こういう広告のやり方は基本中の基本だ。あまり関係ないとはいえ人員確保のためだ。精一杯やるさ」

 

「ありがとう~!!」

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺の了承を得た、ということで早速その話は動き始めた。

俺たちが大本営やら横須賀に向かうのかと思ってたが、どうやらあちらが呉に来てくれるみたいだ。それに加えて、俺の知らないところで色々と決まり事を作ったとのこと。

日程は広報課が決めるみたいだが、大雑把にしか決めておかないらしい。俺の体調とかを気にして、変更をしやすくするためみたいだ。内容はポスター用と雑誌・軍のホームページに添付する写真撮影、インタビューを行うとのこと。出来れば訓練・演習中の写真も欲しいとのこと。その辺はこっちで俺を交えて検討するらしい。

 そんなこんなで時は過ぎていき、遂にその広報課が呉第二一号鎮守府に来る日になった。

昨日、一度ゆきに呼び出されて再度確認を行ったが、この時にこちらはこちらで決めることは決めておいた。

1つ目、護衛(矢矧ら)を常時付けたままにすること。2つ目、インタビューの時にはヲ級を付けること。3つ目、一応憲兵同伴。

最初はまだしも2つ目と3つ目が不安しか感じられないんだがどうだろう。

 という訳で、俺は今初顔合わせをしているところだ。

同席しているのはゆきと護衛の矢矧たち。あとは広報課から派遣されてきた事務官4名だ。ここに俺も合わせて13名だ。会議室での顔合わせ。室外には建前的な意味で憲兵も立っている。

命令が伝達された時にはかなり騒がしかったけどな。『え? 大和くん関係で?! いやっほぉぉぉぉぉぉぉ!!!』とか『超ラッキー!! 今年の運全部使い果たしたかもぉ!!』とか言っていたが、俺は知らない。なんでそんなに喜んでいたのか俺は知らないからな。

 

「わ、我々は大本営海軍部広報課より派遣されました、青谷中尉です。こちらは部下の一ノ瀬、新野(あたの)江樫(えがし)です。よろしくお願いしましゅ」

 

 初っ端から噛んでるぞ、中尉殿。クールぶってるけど、残念ながらもうその仮面も使えないな。

 

「本日から海軍広報活動のために、御足労いただきまして誠にありがとうございます」

 

 御足労いただいたのは自分らだろうが。この人、表情とは打って変わって相当テンパってるな。隣に座っているゆきが笑うの我慢しているし……。

 

「早速なんですが、先日お伝えしました訓練・演習中の写真撮影などはどうしましょう」

 

「別に良いんじゃないですか? 今日の演習には強引に大和を捻じ込みましたから」

 

 何それ聞いてないんだけど……。訓練・演習に編成された艦娘(俺も含む)には前日に通達があるんだよな?! たまにというかだいたい、俺がそういうのに参加する時って事前連絡ないのな!!

散々男性保護法云々ってあったけど、ゆきが一番それに引っかかってるんじゃないんですかねぇ!!

とかなんとか心の中で叫んではいたが、一応は上司。俺は黙って従う。不満なら後でいくらでも言えるからな。御機嫌取りだとか云って、どこかに連れてかれそうでもあるけど。

 

「そ、そうですか……」

 

 ちなみにこれまでの話は全てゆきに向けて話していたものだ。事務官たちは何故だか俺の方を向こうとはしない。

そんなんで仕事はやっていけるのだろうか、と心配している間にも話は進んでいく。

 

「では……コホン」

 

 何か咳払いしたな。それと俺の方を見た。

……うん。顔赤すぎだろ。赤すぎだろ(重要だから2回言った)。

 

「しょれでは、さっしょくしゅらいをはじめさせていたらきまふ」

 

 全然言えてないんだけど……。何が言いたいのかは分かるんだけどさ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 色々聞き出されはしたが、俺が答えたくないものに対しては全く言及してこなかった。そりゃそうだろうな。色々言って俺が不快に思ったりだとかして訴えれば、すぐに牢屋にぶち込まれるもんな。

そういう対応をするのが、この世界での"普通"なんだろう。今まで会ってきた人たちが異常だったんだな、きっと。

 それはともかくとして、終始挙動不審だったところがなんとも言えない。

途中から部下がインタビューするのを変わっていたくらいだからな。部下は部下でどもっていたけど……。

 

「戦線にも参加されているとのことですが、やはり前線で戦うこともあるんでしょうか?」

 

 今では中尉程どもることはないけどな。

 

「たまにありますよ。掃討任務とかですけど」

 

「そうなんですか。……やはり前線に出るとなると、負傷して帰還することもあるでしょうけども、その辺りはどう思われますか?」

 

「何とも思わないと言えば嘘になりますが、戦いに赴くのは怖いことですよ。ですけど、政府の保護下には入らずに残ると決めたんです。覚悟はできています」

 

 俺はそう言い切ったが、何の覚悟が出来ているのだろうか。

"死ぬ"覚悟なんて出来ていないというのにな。

 

「なるほど……」

 

 なんか納得したような感じでメモを取ってるんだけど、一応これって軍人ならテンプレで答えるような内容だよな?

そんな俺のことは知ったこっちゃないと言いたげに、インタビューは進んでいく。

ちなみにさっき、矢矧とゆきは出て行った。その代わりにヲ級が入ってきているんだけどな。一応、ロシア系の名前を自分で付けてそれを名乗っていたが問題ないだろう。

ウェーブの掛かっている髪も、今日はストレートになっていた。アイロンでも掛けたんだろう。

 

「……これでインタビューは終わりです。ありがとうございました」

 

 どうやらインタビューは終わったみたいだな。かれこれ30分くらいだけだったが、雑誌の記事に出来る程度の内容は取れたのだろうか。

 

「体調の方は大丈夫でしょうか?」

 

「え?」

 

 いきなり何を言い出すのだろう。まぁ、気を配っているんだろうな。

 

「平気ですよ。このまま写真撮っちゃってください」

 

「良いんですか?」

 

「えぇ。早く終われば貴女方の仕事も早く済ませることができますよね? それに、すぐあとに演習も控えていますから」

 

 そう言って、俺は派遣されてきた4人にさっさと写真を撮るように言う。

すぐにカメラを取り出し、撮影に入った。あれこれとシチュエーションを指定しての撮影。相手が居ないというのに、さも誰かに話しているような身振りをして写真を撮らせるというのも、なんとも変な感じがする。もちろん立ち姿の写真も撮られた。それだけだった。

 案外あっさりとしているものだ。

インタビューの内容も写真のポーズ指定も何もかも……。もっと根掘り葉掘り聞かれるのかと思っていたし、なんか過激なショットとかの注文もあるのかと思っていた。流石、軍の広報用というだけあるな。そういう下心を全く感じさせない内容だった。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺がインタビューを終えたことをゆきに報告すると、そのまま演習へとい入っていく。

ちなみに写真撮影をするために、撮影係の艦娘が演習に同伴することになった。その艦娘はというと……。

 

「広報用の撮影を任されました、青葉ですっ!! お久ぶりですね、大和さん!!」

 

「あ、あぁ……香羽曹長に連行された」

 

「その青葉ですぅ!! あれ以来エンカウントすることがありませんでしたが、今日はよろしくお願いしますね!!」

 

 何て元気な艦娘なんだろうか。雪風までとはいかないが、アレだな。うん。

そんなことをしていると、演習艦隊の面々が集まってきていた。

 今日の演習は横須賀から来ているゆきの同期であり友人、第三二号鎮守府の白華 透子だ。

そこの艦隊との演習。色々と決め事とか手続きを踏んでいる、双方ガチの真剣演習を行うことになっていた。

 

「今日はよろしくね」

 

「あぁ。よろしく」

 

 俺と青葉が話しているところの近くで、ゆきと白華提督が話している。

そこからまた少し向こう側に、演習相手の艦隊が控えていた。見る限りだと、こちらの編成に合わせてきた雰囲気がある。

ガチンコ勝負を望んでいるようだな。編成は旗艦に長門、陸奥、羽黒、木曾、蒼龍、飛龍だ。

ちなみにこちらは旗艦が俺、足柄、古鷹、北上、翔鶴、瑞鶴。

あちらはどうなっているか分からないが、こちらはゆきが好きな戦法で攻めるつもりだ。空母の2人には艦戦ががん積みされている。少しだけ艦爆が積んであるけどな。

航空戦は敵攻撃隊の壊滅を主眼に置いている状況で、艦隊戦のケリは水上打撃で付けるとのこと。別に俺としても面白いから気にしないんだけどな。

 

「じゃあ、そろそろ始めようか」

 

「そうだね」

 

 2人の話も終わったようで、ゆきがこっちに向かってくる。

もう演習を始めるのだろう。俺たちは所定位置に向かい、演習開始の号令を待った。

 




 今回は少し真面目な話をします。とは言っても、こっちの空気で真面目にやるので身構えないでくださいよwww
 
 それと活動報告を更新しましたので、ぜひご覧ください。

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