戦艦大和。世界最大級の超弩級戦艦で世界最大級46cm三連装砲を装備してる。
大戦中の有名な軍艦と訊いたなら大概の人が『戦艦大和』と答えるだろう(※リアルで個人的に調査済み)。勿論、俺もそうだと思う。だが実際は当時の海軍は極秘にしていた。その姿、その強力な砲、全てが極秘とされていて、当時の人々は軍人でも海軍の人間でなければ知り得ないものだった。
さて俺が何故こんな話をしているのか……。それは、たった今、その戦艦大和が建造されたからだ。
『大和型戦艦、一番艦、大和っ!』
「キタアアアァァァァァァァァ!!」
艦隊これくしょん。通称、艦これ。俺はこのゲームにハマっている。
軍艦を美少女に擬人化した"艦娘"を集めて、謎の敵、深海棲艦と戦うブラウザゲームだ。一時期社会現象とはいかないが、爆発的な人気を打ちだし、ゲームがリリースされてから約3年経った今でもサーバーが一杯で新規登録が難しいと言われている。
話を戻すが、俺は今さっきその大和を建造で手に入れた。建造という資材を使って艦娘を建造する事が出来るのだが、大和はそれ以上に莫大な資材を投入して建造を行う、大型艦建造でしか手に入らない。しかも大和が建造できる確率は極めて低い。そんな低確率を俺は引き当てたのだ。しかも俺が艦これを始めたのはこの大和が実装されたと聞いてからだ。
幼い頃から軍艦に興味があり、その中でも大和が好きだった。巨大で強い、小さい俺が好きになるのには十分すぎる理由があった。それも俺は未だに持っていて、大和が好きなのだ。そして今日、遂に念願の大和を手に入れた。
(早速鍵かけて、レベリングしないとな!!!)
そう考えながら大和の建造時のセリフを聞く。
『推して参ります!』
可愛らしくも凛々しいセリフに俺は聞き入る。だがそんな俺は突然、パソコンの画面が光りだし、目を覆わざるを得なくなった。
ーーーーー
ーーー
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目を開いたが、何も見えない。どうしてだろうか。
さっきのパソコンの光で目を覆ったが、そのまま気でも失ってしまったのか。俺は周りの状況を把握しようと動くが、真っ暗な為に何も情報を手に入れられずにいた。
というか、パソコンの画面ってあんなに光るものなのか?眩し過ぎるものだったので目を覆って閉じてしまった。
(なんだよここ......。何も見えないし、意味が分からない。)
そんな時、目の前にある数字が出た。
[08:00:00]
その意味、どういう意味だろうか。表記的には時刻だろう。8時だな。
だが突然そんな数字が出る意味が判らない。何なのだろうか。その数字をぼーっと見ていると変化が起きた。
数字が[07:59:32]を過ぎた辺りで急に小さくなっていくのだ。そしてほんの数秒で[00:00:00]となったのだ。
その刹那、俺はまたもや光に包まれた。
ーーーーー
ーーー
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「どっちだろう。私的には大和がいいんだけど。」
「それはそうだろう。世界最大、最強の艦だからな。それに我が鎮守府に居ないのは大和だけだ。」
そんな声が俺の目の前でする。まだ光で目が見えないというのに、そんな話し声が聞こえてくるのだ。どちらも女性の声。
そして何だが、鉄と油の臭いがするその場所で俺は遂に光を見た。
「まぶしっ!!」
こんな状況になって発した最初の言葉がまぶしいだったが、そんな俺の目には見たことのない、否、見たことのある人が目に飛び込んできた。
当たりは薄暗い場所で、見るからに工場だ。だが、俺の顔を覗き込んでいる2人の女性の片方には見覚えがあった。
「これはっ!!???」
「む、貴様。」
片方の女性は褐色の肌、白髪、胸にサラシを巻き、特徴的な服装をしている。
見るからに艦これに登場する艦娘、戦艦 武蔵だ。
その武蔵が俺の顔を覗き込んで、そのまま俺の身体を舐め回すように見ると、俺の顔を睨んだ。その武蔵の表情からは素人、凡人の俺からでも判る程の殺気が籠っていた。
「何奴っ!!」
「はっ?!」
俺は慌てて後ろに仰け反った。どういう事だろうか。
そんな時、ふとある事を思い出した。俺の真っ暗で何も見えないところで見えた数字。[08:00:00]という数字は今の状況から察するに建造時間だったのではないか。そして、[08:00:00]という数字だとしたらそれは大和型戦艦の建造時間だ。
「どうして建造ドックから男が出てくるのっ?!」
「提督っ!そんなの私が訊きたいっ!それで貴様は何者なんだっ!!」
そう俺は武蔵からは砲を、横の白い学ランの女の人からは軍刀を向けられた。
一体、何がどうなっているのかさっぱり分からない。どういうことなのだろうか。
「俺が訊きたいっ!そもそもここはどこなんだ?!」
「ここは呉第二一号鎮守府の建造ドックよ。貴方は何者なの?」
白い学ランの女の人はそう言った。
「チンジュフ?......ちんじゅふ......鎮守府......。」
俺は顎に手を当てて考える。
鎮守府という単語は俺はよく耳にしてたし、文字も見てきた。俺が間違ってなければ鎮守府とはあの鎮守府だろう。
「早く名前を言わぬかっ!」
そう武蔵に怒鳴られ、俺は答えようとしたその時、腰に何かが付けられた。腰に付けたのは多分足元をちょろちょろとうごめく何か。よくよく目を凝らして見てみるとあの艦これに出てくる妖精にそっくりなのだ。
目の前で起きている事象の辻褄が俺の中で合った。目の前に居る武蔵と白い学ランの女の人、そして足元の妖精......つまり俺はあの光に包まれて艦これの世界に転生?転移?したみたいだ。これがアレだ。よくラノベとかにある転生とか転移モノって奴だな!!
「おいっ!」
武蔵にそう言われるが俺は気にせずに腰に付けられたものに手を伸ばして確認をし、キョロキョロと自分の腰に付いたものを肉眼で確認した。
腰を後ろと横を多く程の大きな板の上に15.5cm三連装副砲が2基、12.7cm連装高角砲が左右合わせて6基、その副砲の後ろに巨大な三連装の砲塔があり、背中にもギリギリ見えないが同じものを背負った状態になっている。そしてそれは前に居る武蔵と同じもので、俺が焦がれた存在も背負っていたモノだった。
「貴様っ!ここで吹き飛ばしてもいいんだぞっ!?」
そう言った武蔵が46cm三連装砲を動かし、こちらに砲門を向けたその時、俺は答えた。
「俺の名前は真木 大和(まき まさかず)。」
そう答えるが2人は訊く耳を持たなかった。俺の背中に付いたものを見ている。
「あれって大和型の艤装だよね?」
「そうみたいだな。というか何故、男が艦娘にしか扱えないものを......。」
「名前を言えって言っておいて無視は酷いな......。」
そう言うとやっと気付いてくれた2人は俺がさっき言った名前をもう一度言った。
「何だっけ?」
「確か、真木 大和とか言ってたが?」
「何でドックから出てきたのがそんな名前を言ってるの?」
「私が分かるわけないだろう?」
そんな掛け合いを俺の目の間で繰り広げるが、さっきからずっと『真木 大和』『真木 大和』と言い続けているが半分の確率で『真木 まきかず』になっていた。どうしてか俺は自己紹介をするとそうやって名前を噛まれる。そんなに言いにくいものなのか。
そしてそんな2人が話し終わるのを待っていると結局、白い学ランの女の人が俺にある事を言ってきた。
「ねぇ真木君。」
「何ですか?」
「その背中の奴、動かせる?というかもう動いてるけど。」
そう言われて俺は背中のを見ようと後ろを見ると、確かに動いていた。さっきは全部砲門を前に向けていたのに今後は後ろを向いている。
「俺、触ってませんよ?」
「今こっち向いた時、砲もこっち向いたね。うん。」
そう白い学ランの女の人は言った。俺からじゃわからないので、そうなのだろう。
「提督、どうするのだ?艦娘ではないが、男が艤装を使うなど聞いた事が無い。」
「どうしようね......。まぁ取りあえず身元確認って事で。真木君、これに氏名、年齢、住所を書いて。」
「はい。」
俺は白い学ランの女の人、さっきから武蔵は提督と呼んでいるので俺も提督と呼ぼう。その提督が俺に白紙の紙とボールペンを渡してきた。
それを受け取り、俺は名前を書くがどうしてだろう、住所が書けない。というより思い出せない。さっきから書こう書こうとするのだが、全くペンが動かないのだ。
「住所は?」
「......おかしいな。書けない。」
そう言われたが、提督は俺の書いたものを覗き見た。そして驚く。
「真木君、貴方が大和なの?!」
「はっ?!大和ぉ?!」
そう言われて俺は苦笑いを返すしかなかった。
俺が生きてきたこの十数年。あだ名は一貫して大和だった。というか、それ以外で呼ばれた事が無い。
「大和は......まぁ、その......あだ名的な?」
俺が頬を掻きながら言うと、提督は『そうねー。』と言って書いてる最中の紙を持ってかれた。そして新しいペンを出すと、その場で真木に横線を2本書いた。
「何か分からないけど、貴方。これから大和ね。」
「「はい?」」
武蔵とシンクロしてしまった。
「もう何言っても分からないし、艤装付けれて動かせるならもういいの。」
「おい、良いのか、提督っ!」
「問題ないよ。そもそも建造ドックから出てきたのなら艦娘だし。ねぇ、大和?」
「適当だなぁ......それに俺、艦娘じゃないですよ?」
そう言うと提督は俺にじゃあ何と訊いてきた。そこにこれは答えを言う。
「艦娘って女の見た目じゃないですか?俺、どっからどう見ても男だし、アレ付いてますし。」
「マジ?」
「マジです。」
そういう俺と提督のやりとりをただ訊いていた武蔵は補足した。
「提督。しかもこの大和、普通の大和じゃない恰好をしてるだろう?一体袴を着た大和がどこに居るというのだ?」
「確かにっ!!」
何だかもう面倒になってきたので流されるままに行こう。それがいい。
結局、俺は大和という事になり。呉第二一号鎮守府の正式な所属にさせられた。強制。俺が流されるままでいいやって思ったからだけど、俺が何かする訳でもなく、すぐにそういう事になってしまった。
そして自己紹介があった。俺が勝手に心の中で提督と呼んでいた白い学ランの女の人は......
『海軍呉第二一号鎮守府艦隊司令部司令官。つまり提督の、山吹 ゆき海軍大佐だよ。よろしくー。』
というらしい。
斯くして、俺は晴れて呉第二一号鎮守府艦隊司令部所属の戦艦 大和となりましたまる
初めまして、しゅーがくと申します。と最初に言いますが、多分初めましてじゃない人もいらっしゃると思います。
本作はあらすじにも書いてあった通り、『艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話』の特別編『俺は金剛だ!』の新規独立化したものです。
不定期更新を予定してますので、独立元の様にほぼ毎日更新は難しいです。良くて週一と考えて下さい。
ご意見ご感想お待ちしてます。