超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第八十一話 両手に咲くは熾烈の華

わたしは今、かつて無い程の窮地に立たされていた。強大な敵が現れた?----違う、敵ならば倒すなり退けるなりすれば良いから、ある意味ではむしろ楽だったりする。なら、政治的な問題が起きた?----それも違う。確かにそれだったらわたし的に面倒だし厄介でもあるけど、なんだかんだで乗り切れちゃうのがわたしだからかつて無い程の窮地にはならない(といっても記憶飛んでるから、記憶にある政治経験なんて僅かだけどね)。

だったら、何がそこまでわたしを追い詰めているのか。それは……

 

「ネプテューヌ、私のプリンあげるよ。あーん」

「ほら、私のプリンあげるわネプテューヌ、あーん」

「え…っと、あの……」

『あーん!』

 

二人同時にわたしにプリンをくれる親切な友達……否、左右からプリンでもってわたしを追い詰める、双極の女神その人達だった--------。

 

 

 

 

プラネテューヌの街中での戦闘、そしてユニミテス討滅から一週間。ノワールの言う通り、あの後わたしを待っていたのは女神としての職務、公務の山だった。ありがたい事に書類仕事やわたし以外でも構わない仕事はいーすんや早速復帰してくれた職員のおにーさん達が手伝ってくれたけど、わたし直筆じゃないと不味い書類の作成とか企業の視察、それに今回の出来事の被害者のお見舞いとかは任せる訳にもいかなかったから、文字通りの働き詰めだった。しかもわたし女神だから労働基準法が適応されないらしいんだよ?月の残業が100時間超えてもお構いなし、しかもそもそも残業代なんか出ないんだよ?……まぁ、お見舞いだけはそこまで嫌じゃなかったけどね。入院中の職員のおにーさん達とゲームしたりもしたし。

と、いう訳で激動の一週間を何とか乗り切ったわたし。やっといーすんからお休みを貰えたわたしはさぁ皆と遊ぼう!…と意気込んでこんぱのアパートに来たんだけど……

 

「ブランとアイエフと少しやりたい事がある故席を外させてもらおう」

「ベール様とファルコムと一緒にネトゲの予定が…ごめんねネプテューヌさん」

「コンパさんのお買い物にブロッコリーちゃんと付き合うんだ、行ってくるね〜」

 

まるで示し合わせたかの様に次々と出ていく(ネトゲ組は…ネカフェかなぁ…)我がパーティーメンバー。対するわたしは色々予想外過ぎて「あ、え…う、うん…」みたいな、面白味も何にもない反応しか出来ずに廊下に立ち尽くす。……偶にわたし嫌われてる!?…みたいな事言うけどさ、まさかほんとにわたし嫌われてるとかじゃないよね…?七十六話でわたしが見た光はわたしの幻覚じゃないよね?

 

「……プリン、貰おっかな…」

 

何だか心の中に木枯らしが吹く様な感覚を味わいながらキッチンのあるリビングへと向かうわたし。パーティーメンバーは寂しい事言うけど…プリンは温かい〜……なんて、ね…。

 

「プリンさーん、君の虜のネプテューヌがやってきたよー…っと、あら?」

「あ、ネプテューヌ…お仕事は?」

「ネプテューヌ…貴女まさか仕事ほっぽり出してきたんじゃないでしょうね?」

「違うよ、お仕事はちゃんとやってきたって…」

 

リビングルームに入ったわたしが見つけたのはイリゼとノワールの姿。二人は何かを話していたのか、テーブルに湯呑みを置いて向かい合う形で座っていた。

 

「それはお疲れ様、もうゆっくり出来るの?」

「んー、まぁ取り敢えずはね。二人は何話してたの?格好良いおじ様の話?」

「私達は某同人ゲーム制作部のイラスト担当じゃないんだけど…女神の仕事の話よ。女神の普段の仕事について興味があるって言ってたから教えてあげてたのよ」

「げっ、仕事の話…?」

「うん。この時代に私の国はないけど、一応私も女神だからね」

「そ、そう……」

 

とんだ藪蛇だった。やっとの事でお仕事を終えてこんぱのアパートに来たのに、やっと始まった雑談の内容はまさかのお仕事の事だった。…というか、何でこの二人は休みにまでお仕事の事考えようなんて思えるのさ!真面目系キャラの座を盤石にでもしたいの!?

 

「…ネプテューヌも参加する?何ならしっかりレクチャーしてあげても良いわよ?」

「わ、わたしはプリン食べるからいいよ!お仕事の話はお二人でどうぞ!」

「言うと思った…冗談だから安心しなさい、第一もう話は終わりかけてたし」

「仕事で体力を持ってかれてるんだから止めてよ…さーてプリンプリン〜…って、あれ?」

 

明らかにわたしがお仕事を苦手にしているのを分かってて言ってるノワールに軽く弄られつつも、一先ず気を取り直して冷蔵庫前へと向かうわたし。そしてうきうき気分で冷蔵庫を開けたところで…わたしは手を止める。

こんぱの性格が現れている様な、清潔さのある冷蔵庫の中。……しかし、そこに…プリンの姿は、無かった--------。

 

「…あ、コンパは食材が切れたからって鉄拳ちゃんとブロッコリー連れて買い物に行ったし、プリンは無いと思うよ?」

「それは先に言ってよぉぉおぉぉぉぉ……」

 

期待を正面から撃ち壊す言葉を前に、膝から崩れ落ちるわたし。酷い、酷過ぎる…こんなのあんまりだよぉ……。

 

「やっと、やっと仕事を終わらせて皆と遊ぼうと思ったら皆出かけちゃうし…愛しのプリンはわたしを待ってくれてないし…うっ、うぅぅ……」

 

床に手をついた状態で嘆くわたし。あまりに残酷な現実にわたしの目からは大粒の涙…は流石に出なかったけど、普通に泣きたい気分だった。悲しみと、開けっ放しの冷蔵庫前から来る冷気でわたしは冷たくなっていく。

 

「…ネプテューヌ…あんなに休みを楽しみにしてたなんて……」

「まぁ…普段が普段だし、余程大変だったんでしょうね…」

「うーん……」

「はぁ……」

 

悲しみに打ちひしがれるわたしを他所に、何やらイリゼとノワールは話している。主人公オブ主人公、小さなお友達から大きなお友達まで幅広い人気を誇る、皆大好きネプテューヌさんがこんなに泣きたい気分でいるにも関わらず、和気藹々とガールズトークなんかしていた。そしてそれはわたしの心にクリティカルヒットだった。……うぅ…ほんのちょっぴり、二人なら慰めてくれると思ってたのに…二人とは本当に仲良い友達になれたと思ったのに…いいもん。だったらもうグレてやる--------

 

『…もう、仕方ない(なぁ・わね)…ネプテューヌ、私が一緒にプリン食べに行ってあげる(よ・わ)』

「……え?」

「……え?」

「……え?」

『…………え?』

 

その瞬間、わたし、イリゼ、ノワール…そして最後には三人同時の都合四連続「え?」が発生したのだった。

 

 

 

 

そして、今に至る。何故だか前門の虎、後門の狼にも似た威圧感のある今に、至る。

 

「あ…ノワール、私があげるからノワールはあげなくても大丈夫だよ?」

「いや、イリゼこそ無理にあげなくても良いのよ?ネプテューヌには私があげるから」

「いやいや、私があげるって」

「いやいやいや、私があげるわよ」

「……へぇ…」

「…ふぅん……」

 

プリンを載せたスプーンを片手に視線を交わらせるイリゼとノワール。一見すればいつも通りの二人。だけどそれなり以上に付き合いのあるわたしには分かる。二人の瞳の奥に灯る光は、明らかに戦闘時のそれだった。

 

「…ちょ、ちょっと良いかな二人共……」

『なぁに?ネプテューヌ』

「う、うん…わたし二人から貰う必要あるかな…?」

 

既に若干気圧されていながらも、何とかこの状況を変えようと声を上げるわたしに対し、二人は笑顔で同時に答えてくる。その笑顔が、わたしにとってはむしろ余計に怖かった。

ここで一つ閲覧者の皆の為に補足しておくと、まずわたし達は喫茶店に来てそれぞれプリンを…具体的に言うと、イリゼはチョコプリン、ノワールはカスタードプリン、そしてわたしはこの喫茶店で取り扱ってるプリン全種を楽しめるオールスタープリンとか言う奴を頼んでいた。…うん、大体の人は気付いたと思うけど、わざわざ二人から貰わなくてもわたしの所にチョコ味もカスタード味もあるんだよね、オールスタープリンだから。…なのに何でこの二人はこうもわたしにくれようとするのかな……。

 

「え?……あるよねぇ、ノワール?」

「えぇあるわ、ありまくりよ。だから…」

『あーん!』

「……おぉう…」

 

二人プリン載せスプーンを突きつけられるわたし。もうスプーンが凶器か何かにしか見えなかった。そしてこの二人は剣呑な雰囲気を出しているくせに妙に連携が取れていた。…って、そんな事はどうでもいいんだよどうでも!こ、こういう場合は多少非情だったとしてもどちらかを選ぶ方が良いよね…?

 

「よ…よーし!決めたッ!……チョコプリン、一口頂だ……」

「…え……?」

「あ…い、いややっぱカスタードプリンを……」

「……っ…!?」

「…やっぱり、何でもないです……」

 

がっくしと肩を落としながら引き下がるわたし。…だ、だってしょうがないじゃん!イリゼもノワールも選ばないと狼狽した様な顔した後凄くしゅんとした表情浮かべるんだよ!?わたしあんな顔されたら選べないよ!ちょ、昨今のヒロイン一人だけを選ぶ主人公さんに応援呼びたいレベル何ですけど!?

と、わたしが心の中で動揺している内に……

 

「ちょっとイリゼ、ネプテューヌが困ってるじゃない」

「そうだね、という訳でノワールは引いてくれない?」

「そうねぇ…私が引いても良いけど、ここはイリゼが引いた方が丸く収まるんじゃない?」

「そうかなぁ…私はノワールが引く方が適切だと思うよ?」

「…………」

「…………」

 

……うん、何でたった十数秒で輪をかけて剣呑になってるのかなぁ!ここにきて二人共犬猿の仲キャラにでもなるつもり!?…なんてわたしが心の中で突っ込みを入れても意味はなく、かといって口に出したら余計面倒な事になりかねない。もうほんとに厄介な状況だった。

くっ…だったらもうわたしの十八番、ボケ倒しで乗り切るしかないよ!

 

「しまった!プリンを食べる時の作法忘れてた!」

「いや今までそんな作法行ってなかったよね?」

「あ、録画したアニメ見ないと…」

「録画してあるなら急がなくたっていいじゃない」

「え…青蘭島に新たな異変が!?」

「コラボ第三弾のお知らせは出てないよネプテューヌ」

「実はわたし…プリン、嫌いなんだよね…」

「だったら貴女が注文したのは何なのよ」

「流石突っ込み担当二人だね!突っ込みの競合も起きない辺り手慣れたものだね!うわぁぁぁぁんっ!」

 

半ば叫びながらテーブルに突っ伏すわたし。突っ込みがあってこそボケが生きるのであり、わたしのボケについてきてくれる事は本当にありがたいんだけど、今回だけは着いてきてほしくなかったよ…。

……って、テーブル?……あ。

 

「…このテーブル大きめだしさ、わたしに食べさせようとすると結構腕疲れちゃうんじゃない?」

『……それは、確かに…』

「でしょでしょ?だから無理に食べさせ様としなくていいって!ね?」

 

怪我の功名…とは少し違うけど、とにかく突っ伏す事でテーブルのサイズを再認識した事で突破口を見つけるわたし。正直長時間腕を伸ばし続けでもしない限りそこまで疲れそうじゃないけど…ここは畳み掛けて勢いで何とかするのがベストだよね!

……と思って更に言葉を紡ぐわたしだったけど、それが裏目に出てしまう。

 

「やー残念だなぁ。二人がくれるなんて凄い嬉しいけど、二人を疲れさせちゃったら悪いもんね」

「…ほんとに?貰えたら嬉しい?」

「うんうん嬉しい嬉しい超嬉しい。だけどこの場じゃそうはいかないし仕方ないから諦め……」

「……だったら、こうすれば良いよね?」

「……あっ…」

 

すたっ、ぽてぽて、すたっ。イリゼが隣にやって来ました。そう、わたしが座ってるのは長ソファだったから普通に隣に座れるのです!…残念アピールし過ぎたぁぁぁぁ……。

そして何故か、わたしよりも先にノワールが反応する。

 

「い、イリゼ…何やってるのよ貴女!?」

「何って…何か駄目だった?」

「そ、それは…駄目ではないけど…」

「でしょ?ほら、ネプテューヌあーん」

「あ、いやその…」

「……っ!…ま、待ちなさいよイリゼ!だったら私は…こうよ!」

 

すたっ、しゅばっ、すたっ。ノワールが隣にやって来ま--------むにっ。隣に来たノワールがわたしの腕を引っ張り、二の腕に胸を当ててきました。

…………。

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

「ほ、ほら…あー、ん…」

「あーん、じゃないよ!?の、ノワール!?」

「ノワールこそ何考えてるの!?私の事言えないよそれ!」

「う、うっさい!同性だからセーフよ!悔しかったらイリゼもやれば良いじゃない!」

「い、いやだねノワールさん、そういう問題じゃ……い、イリゼ!?」

 

追記、イリゼも腕を引っ張り二の腕に胸を当ててきました。おおぅ、ファンタスティック…ってそうじゃなくて!

 

「何故ここでイリゼまでやるの!?な、何!?対抗心!?対抗心燃やしてるの!?」

「そんな事はどうでも良いの!ほらプリンだよプリン!」

「だからプリンは私があげるって言ってるでしょ!ね、こっち向いてネプテューヌ!」

「いやいやいやいや!落ち着こうよ二人共!最早ボケの域超えて普通に頭おかしいよ!?」

 

左右からの圧力(物理的なのも含めてね)にテンパるわたし。もうプリンとかそういうレベルじゃなかった。

……と、突っ込みしつつ冷静になろうとしたのがむしろ不味かった。なまじ状況を整理しようとしたせいで、わたしの両腕から頭へと、2×2の甘い魅力が伝わってくる。

ノワールは主張し過ぎず、でも人並み以上に出るとこは出ている、文字通りの優等生スタイル。わたしの腕は細い事もあって、ノワールの柔らかく温かな両胸に完全に挟まれてしまっている。わたしは何だかドギマギし始める。

イリゼはノワールより少し小さい、でも決して貧相ではない、正に無駄も不足もないスタイル。わたしの腕は細い事もあって、イリゼのハリと弾力のある両胸が完全にフィットしてしまった。わたしは頬が熱くなるのを感じる。

なんかもう…いっぱいいっぱいだった。普段わたしはそういう事をあんまり気にしないタイプだから忘れがちだけど、二人は(というか驚く事にパーティー全員が)結構な美少女だったりする事も相まって、わたしの頭は状況に対処する事を忘れ、「あ、そういえば前にも似た様な事あったなぁ」とか「もしや二人が食べてほしいのはそういうプリンなのかなぁ?」とか自分でも理解に苦しむ思考をし始める。そして極め付けは……

 

「…お願い、私のプリン…食べて…?」

「私のプリンじゃ…嫌…?」

 

やはり恥ずかしさは感じているのか頬を染め、常識がある分わたしや周りが気になるのか声が上擦り、わたしとは違う意味でいっぱいいっぱいになってるのか目に涙を浮かべているイリゼとノワール。その様子は二人に気のある人が…否、どこの誰が見ても『相手を切に求める、恋する乙女』にしか見えなかった。

流石にもう、わたしも抑えが効かなくなる。

 

「ふ…ふふふ……」

「…ネプテューヌ……?」

「いいよ、貰ってあげる…あーんっ!」

「え…りょ、両方同時…?」

 

口を大きく開けて、チョコプリンもカスタードプリンもいっぺんに口にするわたし。そんなわたしの行動に二人は目を丸くしたけど、もう関係ない。同性なのに抑え効かなくなるのってどうなのさとか、それ相対的に自分のスタイルが悲しくならない?とかの思考が介在する余地もなく、わたしは二人とは別軸で暴走し始める。

 

「ね、一口だけ?もうくれないの?」

「え…う、ううん。ネプテューヌが欲しいならもっとあげるよ?」

「やったぁ!じゃあノワールは?ノワールもくれる?」

「そ、そりゃ勿論よ。あげるに決まってるじゃない」

「わーい!あ、じゃあさじゃあさ、わたしのオールスタープリンも二人に食べさせてほしいな。二人でわたしに食べさせてっ」

 

自分の両腕を身体の方へ引っ張る事で、イリゼとノワールをわたしに密着させる。突然のわたしの行動に、目を白黒させつつも一層頬を染めるイリゼとノワール。その二人の反応が、理性の機能不全状態に陥っているわたしを更に刺激してわたしの暴走を加速させる。

 

「ふ、二人で…?」

「…ど、どうするイリゼ…?」

「…こう言われたら、二人で交互にあげるしかない…よね…?」

「そ、そうね…分かったわ、ネプテューヌ…」

「ほんと?わぁい!二人共大好きっ!」

『……っ!』

 

こうしてわたし達は、三人で注文したプリン全部がなくなるまで端から見れば緩くない百合バカップル三人組そのものという、完全にカオスな時間を過ごしたのだった……。

……因みに、プリンを食べ終わった後に冷静になったわたし達は、自主的にお店とその時いたお客さん達に頭を下げた。女神三人が一般人に揃って謝るという、ある意味では冷静になる前以上にカオスな状況が生まれていたりもした。

 

 

 

 

「何やってるのかしらね、私達は…」

 

喫茶店からコンパのアパートへと戻ってから十数分後、プリンでお腹がいっぱいになってぐてーっとしているネプテューヌに気付かれない様に私とノワールは外の空き地へと出ていた。……数十分前までやってた事がやってた事だけに、ちょっと気まずい…。

 

「返す言葉もないよ…冷静さを見失う、って怖いね…」

「ほんとそうね…でも、まさか貴女がそこまで行動的だったとは思わなかったわ」

「ノワールこそ女神化してるのかって思う程大胆だったじゃん。…いや、ひょっとしたら女神化時以上かも…」

「…それを否定しきれないのが心にグサっとくるわね……」

『……はぁ…』

 

大きな、大きなため息を二人で吐く。心にもない事をしてしまった…という訳ではないけど、今日は色々とアレ…そう、アレだった。…具体的に言うのは辛いんで、勘弁して下さい……。

そして数十秒の沈黙の後、ノワールがぽつりと言う。

 

「…ねぇイリゼ。確かに今日は雰囲気とか勢いとか対抗心とか、色々加速させる要因はあったけど…それだけじゃ、あそこまではならないわよね」

「…そうだね。それに、そもそもの話として加速させる要素が生まれる為の『きっかけ』は確実にあると思うよ」

「……じゃあ、聞かせて頂戴。イリゼ、貴女は……ネプテューヌを、どう思ってるの?」

 

静かに、でもはっきりと聞こえる声でノワールが言う。二人で外に出た時点でこういう話になる様な気はしていたし、ノワールが言わなければ私が言っていたかもしれない。

ネプテューヌをどう思っているか。質問としてはかなり漠然としているけど…ノワールの質問の真意は、私には伝わっている。だからこそ…私は、偽りのない本心を口にする。

 

「…よく、分からないの。大事な友達だと思ってるし、大切な仲間でもある。…でも、それだけじゃない。きっと私にとってはそれ以上の存在。……だけど、それが一体何なのかは…正直、自分でも分からない」

「そう…ごめんなさいね、変な事訊いて」

「いいよ別に。それに…ノワールも同じ気持ちでしょ?」

「……今の貴女には、嘘も誤魔化しも効きそうにないわね。イリゼにだけ言わせるのもアンフェアだし…そうよ。確証はないけど、きっと私の抱いてる気持ちはイリゼと同じだわ」

 

ノワールの回答を聞いた瞬間、私は不思議な気持ちだった。少しだけ胸の苦しくなる様な、でも心がすっきりする様な、不思議な気持ち。ただ一つ言える事は…お互いに、この気持ちは知って良かった、という思い。

 

「…私もノワールも、今後も色々と苦労しそうだね」

「同感よ。全く…ネプテューヌには振り回されるって分かってるのに、どうしてこう想っちゃうのかしら」

「ふふっ、そう想わせるのがネプテューヌ何だよ、きっと」

「…それも同感、ね」

 

いつか私達は、この想いのせいで衝突する事になるかもしれない。でも、だからってこの気持ちを捨てる気になんてなれないし、もしかしたら私もノワールも納得出来る形になれるかもしれない。だから、私達は今まで通り、友達であり仲間であるイリゼとノワールでいたいと思う。

 

「これからも、宜しくねノワール」

「えぇ、こっちこそ宜しく頼むわイリゼ」

 

そうして私達は苦笑交じりの微笑みを浮かべて、固い握手を交わした。




今回のパロディ解説

・パーティーメンバーは寂しい事言うけど…プリンは温かい〜
ニトリNウォームのCMのパロディ。小説アニメ漫画にドラマ、二次三次と色々パロディをしてきた訳ですが、CMのパロディというのは我ながら中々斬新ではないでしょうか?

・某同人ゲーム制作部のイラスト担当
ステラのまほうの主人公、本田珠輝の事。年上好きキャラというのは結構いますが、彼女の様におじ様(しかもかなり渋い)が好きなキャラはかなり珍しいですよね。

・青蘭島
アンジュ・ヴィエルジュシリーズに登場する島の名前の事。メディアミックスの一つであるアプリ版でコラボしていましたし、ネタではなく本当に知っているのかも…?

・緩くない百合
ゆるゆりシリーズのパロディ。ゆるゆりは実際日常ものですが、本作はギャグ戦闘パロディetc…もの(?)なので、実際は色々違いますね、まぁ当然ですが。

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